(せい)ここは責任重大だ。
自分の道を貫いて下さいな。
美和。
せわぁない。
私たちもダンスを。
寒い冬には熱々の鍋!ここ博多の定番はなんといってもモツ鍋。
きょうのイッピンはモツ鍋…じゃなくてこちらの器。
なんともおいしそうですが。
ですよねぇ。
器の模様にご注目!放射状に刻まれています。
福岡県の小石原焼です。
小石原焼は茶碗などふだん使いの器です。
素朴ながらも美しい模様で九州では長年愛されてきました。
その人気は今九州を越えて広がっています。
東京・渋谷のセレクトショップ。
人気デザイナーのナガオカケンメイさんがディレクションをしています。
良いデザインは実用的で美しい。
各地で作られるデザイン性の高い品を厳選しました。
小石原焼はナガオカさんが今最も注目しているものの一つです。
ナガオカさんが「かわいい」と絶賛する模様。
今こんな所にも。
銀座のおしゃれなカフェ。
パリに本店を持つこの店ではほとんどの器が小石原焼。
料理を引き立てると大好評です。
福岡生まれの素朴な器。
その魅力に迫ります。
小石原焼のふるさと福岡県東峰村。
大分との県境にある山あいの村です。
その小石原地区は江戸時代からの焼き物の産地。
およそ50軒の窯元が並びます。
きょうのイッピンリサーチャーは加藤夏希さん。
早速名人のもとを訪ねました。
こんにちは。
はじめまして加藤夏希です。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ずらりと並ぶ器は皆太田さんが作り出したもの。
ひときわ目立つのがあの放射状の模様です。
すごいすてき〜。
すごいですねぇ。
(太田)これも全部手で。
手作業なんですかこれ?そうなんですね。
手作業でやってるんですね。
え〜!この精緻な模様は機械ではなく太田さんの手が生み出したものでした。
しかも茶碗や鉢などどんな器にも施される小石原焼を代表する模様なのです。
いったいどんなワザによって作られるんでしょうか?工房へと案内してもらいました。
わぁすご〜い。
きれいですね。
わぁすごい。
月に一度の窯入れを待つ器。
毎月およそ800の陶器を制作しています。
さあ模様付けです。
器をろくろにセットして足で蹴って回しかなりのスピードになったところで「かんな」と呼ぶ道具を当てていきます。
へぇ〜。
速い!すごいきれい!あっという間ですね。
フッ〜。
そうですね。
これが「飛びかんな」というワザ。
なんという早業でしょう。
かんなの動きについて行けません。
今度はハイスピードカメラで見ていきます。
かんなが生地の上を跳びはねるように動いていくのが分かります。
だから「飛びかんな」だったんですね。
刻みを入れた反動で跳ね返り再び戻って刻みを入れています。
そして徐々にかんなをずらす事で模様が生まれていました。
かんなが見事に飛ぶのには秘密があります。
かんなは薄い鋼の板を太田さん自らが削ったものなんですが実は意外なもので作られているんです。
それは古い時計のゼンマイバネ。
絶妙な弾力性を持ち太田さんをはじめ多くの窯元が使う伝統の道具です。
かんなを使いこなすのにはコツが要ります。
それは角度。
太田さんが器に対し常に一定の角度でかんなを当てているの分かりますか?コツはもう一つ。
外側に向かって一直線にかんなをずらす事。
こうして美しい放射状の模様ができるのです。
これ力とか入れる加減とかは…。
あんまり力を入れると深く入ったりとか。
それで最初は柔らかく行って中でちょっと力を入れて深くして最後はそのまんま。
回転している間うまく削れているか目で確かめられません。
そこで頼りにするのは音。
(音)ブーン。
音のブーンっていう感じが出るとこれが飛んでる感じですね。
なるほど。
でもすごいきれいに…。
はい。
え〜!大変な事ですね。
1日にそれこそ300枚とか…。
そんなに!ええ。
飛びかんなを入れていくものだから。
装飾が終わるといよいよ窯で焼きます。
小石原焼は焼き上げると大きく変化します。
なんと2割も小さくなるんです。
これ同じものですか?ええ。
これが原型なんですよ。
縮み具合を考慮して刻む間隔を調整していたんです。
さらにかんなの力加減によって器の表情を大きく変える事ができます。
抑えを強くするんですね。
はい。
強く抑えるとこういうふうに…。
へぇ〜。
力強さの出る飛びかんなができるんですね。
なんかこういうのにはカツとか置きたいですね。
あ…いいですね。
ちょっとスタミナ系のものを入れて。
こっちはお総菜とか入れてみたいな。
(笑い声)力を少し加えただけで豪快な模様が出来上がりました。
かんなの形状でも変わります。
左は通常のかんな。
右は四角く整えたもの。
四角いかんなで削ってみると…。
お〜。
この平たい方から角が立っているんですね。
ホントだ。
今度は躍動感が生まれました。
かんな一つで自在に模様を作り出す職人ワザに脱帽です。
かんなのワザが磨かれたのには訳があります。
実は小石原の土は粒子が粗く焼き物の中で高級とされる絵付けには向いていないのです。
はい。
400年前に始まったといわれる小石原焼。
近隣の農家のために水がめやとっくりなど素朴な日用品を作っていました。
職人たちはこう思ったのかもしれません。
生活雑器でも少しでも美しく装いたい。
こうして飛びかんなが江戸時代に生まれます。
絵付けでなくとも装飾効果の高いワザです。
さらに転機をもたらしたのがイギリス人バーナード・リーチ。
20世紀を代表する陶芸家です。
昭和29年村を訪れたリーチは小石原焼を実用性と美しさを兼ね備えた「用の美の極致」とたたえました。
以後職人たちはこの言葉を糧にいっそうワザを磨いていったのです。
小石原は飛びかんな以外にも独特な装飾を発展させてきました。
粗い陶土を覆う化粧土に施す技法もその一つ。
小石原の土は焼くと濃い茶色に変色しますが化粧土は白いままです。
この性質を大胆に生かしたワザなんです。
白化粧を…。
ミルクチョコレートを塗るような。
太田さん今度はゆっくりろくろを回し化粧土に刷毛を当てていきます。
すごい。
え〜!刷毛を打って化粧土をずらしていく。
「打ち刷毛目」という技法です。
菊のような模様が浮かび上がりました。
焼くとこの刷毛目の濃淡がまた違った感じに出てくるんです。
こういうふうに生地の色が出ます。
白と茶たった2色ながら淡いグラデーションが効果的。
美しい花が皿いっぱいに咲きました。
太田さん今度はゴム製の櫛を取り出しました。
自家製ですけどね。
へぇ〜。
作って。
化粧土に凹凸をつける「櫛目」という技法。
独特なリズムの曲線が水面のようにゆらめています。
いろんな表情が出てくるのが…。
楽しいですね。
素朴な道具が作り出す無限の表情。
極められたワザのみが生む美しさです。
今新しい小石原焼が続々と誕生していると聞き村のギャラリーを訪ねました。
かわいい。
ブルーやイエローの彩り豊かな器。
カラフルな地に跳ねる「飛びかんな」が新鮮です。
そして…。
これも…。
でもこれかんななんですかね?すごいどうやってるんだろう。
なんかドットみたいな感じで。
女子は水玉模様ドットは好きですよね。
フフフ。
そう小さな丸い点。
今若い女性に大人気なんです。
この新しい「飛びかんな」を作ったのは小石原でも最も若い窯元です。
35歳。
気軽に手に取れる小石原焼を目指しています。
速度を変えていくんですよね。
わ〜全然変わりますね。
通常より間隔があきさわやかな印象です。
秘密はスピード。
比較してみると…。
その差は歴然。
和田さんはさらに工夫を重ねます。
これをもっと面白い感じにしたいなっていうのがあってこういう道具とかも自分らで作るんでどうにでもなるんです。
かんなの先端をやすりで削りとがらせていきます。
それで編み出したのが…。
もう一瞬なんです。
やり方はまた一緒ですこれ。
(音)ブーン。
こうやってやると…。
あ〜。
ドットになってる!かわいらしい点がゆったりと渦を巻きました。
自分だけの飛びかんなを入れたい。
若い職人の願いが刻まれた器です。
もう一人窯元を訪ねました。
こんにちは。
こんにちは。
おじゃまします。
従来なかった豊富な色使い。
そこに洗練された細かい飛びかんなが映えます。
太田さんは白一色だった化粧土に工夫を凝らしました。
こういう感じで。
そうなんですね。
微妙な調合を重ね小石原の柔らかな色合いを生かした新たな色を作り出したんです。
太田さんは2代目窯元。
色にこだわる事で小石原焼の可能性を広げたいと思っています。
そして新たな化粧土に施すのは伝統的なワザ。
藁で出来た刷毛を使う「藁刷毛目」という技法。
かすれの美しい渦巻きです。
さらに…最後は飛びかんな。
新たな色彩と2つの伝統技法を組み合わせた新しい器が生まれました。
伝統を守る意味でかんなを入れるという形でなくて伝統を作り上げていくような形ですね。
新しい伝統みたいな形を作り上げる。
一つ一つの器の模様に職人たちの小石原焼の伝統と未来への思いが込められています。
今全国で話題の小石原焼があります。
加藤さんその器を使っているカフェを訪ねました。
洋食にマッチした小石原焼です。
いただきます。
うんおいしい。
従来の小石原焼に比べ色が白くすっきり軽やかなデザインになっているのが大きな特徴。
洋食だけでなくどんな料理にも合うと大好評なんだそうです。
この器は村の商工会が発案した統一ブランド。
6年前15軒の窯元が料理研究家と共に開発しました。
小石原焼の魅力をより多くの人に伝えたいと家庭で使いやすいようさまざまな工夫を重ねたんです。
どの料理でも合うという事が一つのテーマになっておりましてそこでの白というのを強調させていただきなおかつ…。
あ軽いですねそして。
そうですね。
食器というのは女性が持って毎日食卓に家族の方に並べていただける器なので…。
どんな料理も映えるように白くそして使いやすいように軽くした小石原焼。
その開発には大きな苦労が伴ったといいます。
窯元の一つを訪ねました。
こんにちは。
こんにちは。
おじゃまします。
どうぞ。
職人歴42年のベテランです。
森山さんが制作した新しい小石原焼。
スープボウルやカップなど10種類以上。
従来の小石原焼にはなかった典型的な洋食器に取り組みました。
中でもてこずったのが平皿だといいます。
実は最初に作った皿なんですけどね。
よく見て下さい。
下がってるでしょ外側が。
ああ本当ですね。
最初の平皿は焼いてみるとふちの部分が重みに耐えきれず下がってしまいました。
やはり作る時から若干上に。
上目に。
そこで成型の際にあらかじめふちを持ち上げる事にしました。
窯の温度や窯出しのタイミングなども考え合わせ最もきれいに焼き上がる形を探り当てたのです。
さらに森山さんが苦労したのは器を軽くする事でした。
小石原の土は粒子が粗く本来薄い器を作るのに向いていません薄すぎると焼いた時ひび割れを起こしてしまうからです。
ここが土が厚いんですよね。
この部分が。
だからこの部分の土を外に持っていかないと軽くならない。
森山さんは底の部分を中心に土を広げていきます。
均等にしかし薄くなりすぎないよう細心の注意を払います。
優に100枚を超える失敗を経て2割の軽量化に成功したのです。
そして装飾。
どのように装飾するかはそれぞれの窯元に委ねられます。
森山さんは新しい器にこそ伝統的な飛びかんなを施したいと思いました。
しかしそれがまた新たな困難を生んだのです。
薄いからですねやっぱりかんなを入れる時も気を使います。
器を薄くしたためかんなを少しでも強く入れると変形してしまうのです。
一方力を弱め模様を薄くすれば安全ですが森山さんはそれをよしとしません。
従来よりもさらに微妙な力加減でかんなを当てていきます。
(音)ブーン。
この部分は指先に力が入っているの分かりました今?今ちょっとグッと入ってましたね。
難関はふちへのカーブ。
平らな所は指先を固定し一定の力でかんなをスライドさせていきますがカーブにさしかかった瞬間指先に力を入れかんなをカーブに沿わせなければなりません。
短い時間の中で森山さんは巧みに力加減を調整して模様を付けていました。
かんなを入れてデザインを付けていくっていうのがすごいですね。
なんか薄いからもうこれでいいやぁじゃなくて。
自分も60過ぎてますけどね。
どんな料理にも合う新しい小石原焼。
そこにも窯元それぞれが大切にする伝統のワザが息づいています。
どの職人さんも今の自分に満足しちゃいけないと思っていてそれこそ40年以上やっている職人さんですら成長し続けている。
今後小石原焼がどういうふうに変わっていってそしてどういうふうに自分たちの食卓を華やかにしてくれるのかすごく楽しみですね。
人々に親しまれる器だからこそ心を込めワザを尽くして作り上げる。
小石原焼の素朴な模様には深い思いが込められていました。
2015/12/13(日) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
イッピン選「素朴な模様の 暮らしの器〜福岡 小石原焼〜」[字]
放射状に引っかいたような模様が素朴で美しいと、今、大人気の福岡県の「小石原焼」。江戸時代から徹底して親しみやすい器を作り続ける職人たちの心意気とワザを紹介する。
詳細情報
番組内容
今回のイッピンは、「小石原焼」。福岡県の山間にある東峰村で作られる器は、中心から外側に向かって細かく放射状に散る独特の模様が特徴。その素朴な美しさが今、注目を集めている。模様を生み出すのは「飛びカンナ」というワザ。ろくろで回転させながら「カンナ」を当てる。「カンナ」の形状やあて方ひとつで、さまざまな表情が作り分けられる。江戸時代から徹底して親しみやすい器を作り続ける職人たちを加藤夏希がリサーチ。
出演者
【リポーター】加藤夏希,【語り】平野義和
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
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