ポートレートの新しい教科書

第3回:ミックス光による色の偏りを補正しながらポートレートを撮る

ミックス光で撮影を行う場合、各光源の色温度の差が描写の弊害となることがあります。ここではポートレートを題材に、色みの偏りとその軽減手法について少し考えます。

色温度変換フィルターをストロボにつけて3000Kで撮影

ストロボの発光部に黄色みの強いアンバー系のフィルターをつけ、室内灯の色温度に合わせる格好で撮影。ストロボは天井バウンスさせています。WBはマニュアルで3000Kに設定し、色の偏りを補正。ミックス光下での撮影ですが、画面全体で色みが統一され、落ち着いた仕上がりになっています。

マニュアルモード/F2.8/1/30秒/ISO800/色温度設定/3000K/55mm

ポイント

  • ミックス光は色温度がずれるので注意
  • 色温度を合わせるにはフィルターが最適
  • 基本は室内灯の色温度に、ストロボ光の色温度を合わせる

・色温度変換フィルターをつける
色温度変換フィルターは主にブルー系とアンバー系に分けられ、個々で色の濃度もさまざま。このように発光部につけて使用します。なお、フィルターは重ねることでも色温度を調整できます。例えば、アンバー系のフィルターを2枚重ねれば、それだけ色温度を低く調整できます。

プラスα:カラーメーターについて

カラーメーターは特定の光源の色温度を割り出せる機器。主に大型ストロボを使う際の色合わせなどに用いることが多いです。これを使うと各色温度を数値でしっかり比較でき、より正確にそしてスピーディーに色合わせが行えるようになります。

SEKONIC社の「スペクトロマスターC-700」。色温度だけでなく、どれだけ正確に色再現ができているかを示す演色性も測定できる、ある意味究極のカラーメーターです。

・ストロボを発光し3000Kで撮影
同じように天井バウンスでストロボを発光。今度は色温度を室内灯に合わせ3000Kにしましたが、ストロボは色温度が高いため、照射された部分が青白く写ってしまいました。

・ストロボを発光し5000Kで撮影
天井バウンスでストロボを発光。色温度はストロボに合わせ5000Kにしましたが、もとから色温度の低い室内灯がさらに黄色く写ってしまいました。

・室内灯のみを使いWBオートで撮影
室内灯は白熱灯で、かなり黄色みが強いです。WBオートの場合、自動でWBが補正されますが、それでもこれだけ色みに偏りが出ています。

フィルターを使って各々の色温度の差をなくす

上の作例は黄色みの強い室内灯下で撮影した写真群です。その場の光源を活用しながら、足らない分をクリップオンストロボで補っています。つまり、定常光とストロボのミックス光です。こうした場面で悩むのが色温度です。室内灯は色温度が低く、ストロボはこれが高めです。例えば、この場面で色温度をクリップオンストロボに合わせると、室内灯の光源は一層黄色みが増し、逆に室内灯に合わせると、今度はストロボに照射された部分が青白く写ってしまいます。

ここで登場するのが色温度変換フィルターです。例えば、ストロボの光源に対し黄色みの強い色温度変換フィルターをつけると、室内灯との色温度の差が縮まり(ストロボの色温度を室内灯の色温度に変換するため)、統一した色みで撮影が行えるようになり、理想的な色みが割り出しやすくなります。このフィルターはミックス光での撮影時に非常に有効。使い方を覚えておけば、さまざまな場面で活用できます。

モデル:京美里(nikolaschka)

MdN刊「ポートレートの新しい教科書」(著:河野鉄平)税別2,200円。11月24日発売

本連載は、MdN刊「ポートレートの新しい教科書 きちんと学べる人物撮影のスタンダード」(著:河野鉄平)から抜粋・再構成しています。

初心者に向けた基礎知識から、屋外・屋内・スタジオでの撮影をそれぞれカバー。ライティングの組み方や、便利なライティングアクセサリーの使い方、撮影後のレタッチのワークフローまで総合的に紹介されている1冊です。

また、本書の発売を記念して「思いどおりのポートレートを撮る〜 『ポートレートの新しい教科書』発売記念セミナー 〜」が2016年1月16日(土)に開催されます。参加費1,000円、定員50名で参加申し込みを受け付けています。

(河野鉄平)