クロスロード【河合行雄/ミニチュアドールハウス作家】 2015.12.12


ひと昔前の東京下町。
人の話し声とか工場の音もいろんな音が聞こえてきましたよね。
あの頃から半世紀移り変わる時代のなかで今も活気を絶やさずモノづくりに取り組む職人がいます。
この町工場で一枚の板から作られているのは意外なもの。
ロールアップと言われるパンとか入れておくような…。
今作ったのがこれで色をつけたのがこれになります。
これは発祥は16世紀初頭のヨーロッパ。
当時の貴族が自慢の屋敷の模型を作らせたのが始まりと言われています。
すべてが本物の12分の1サイズ。
これを手がけているのが昔ながらの機械で金属を加工し組み立てている職人です。
『行列のできる中華料理店』と題された作品。
おやおや?ずいぶんとリアルですね。
これはお昼どきの慌ただしさを表現したもの。
河合さんの作品は単なる模型ではなくそこに物語が秘められているのです。
『聖夜』と名付けられたこちらの作品はクリスマスの夜に年老いた夫婦がご馳走を作り離れて暮らす息子の帰りを今か今かと待ちわびているというストーリー。
気持が伝わってくるようですね。
河合さんを支えているのは妻と娘。
もっと薄くていいよ。
もっと薄い?家族3人の共同作業といえば町工場ならではの美談に聞こえますが…。
自分の主張といちばんいいものを作りたいっていうのがぶつかり合うから。
価値観も微妙に違ってくるからほんとにバトルだよね。
ほんとですか?それは…。
毎回そうだよね。
自分の主張をお互いにね。
そんな家族の題材は昭和モダンの華やぎを今に伝えるレストラン。
それを丸ごとミニチュアに。
すごく作りがいがあるものだと思います。
更に本場ヨーロッパの展示会に初出展。
メードイン下町が世界に挑む。
いらないって。
見せろ下町の底力。
チーム河合の奮闘を追いました。
下町の路地裏にひっそりとたたずむこの工房。
店舗と作業場をかねたチーム河合の本拠地です。
作品はすべてが手作り。
キッチングッズを中心に500種類以上のミニチュアがところ狭しと並べられています。
毎朝9時にやってくる河合さん。
と取り出しましたのは1枚の金属の板。
ここから何を作るのでしょう?まずは機械を使って板を裁断。
更に折り曲げていきます。
これらのパーツが揃ったらいよいよ組み立て。
12分の1の世界では1ミリのズレも許されません。
出来上がったのはここの線とここの線が狂ったりするとあれなんですけど…。
揃ってますねはい。
また中に食材とか入ってくるとまたリアル感が出ると思うんですが。
その食材など金属以外でミニチュアを作るのが妻と娘の担当。
色の異なる紙粘土を重ね合わせることでさまざまな食材を作り出すのです。
娘のあさみさんは…。
ちょっとずらして。
色をつけた紙粘土を指先に置いて伸ばしていきます。
でベースに…くっつけます。
花びらを一枚一枚重ねるとバラができました。
家族3人の力を結集して完成するチーム河合の作品。
気の遠くなるような根気と忍耐を要する作業は河合さんのこんな信念に支えられています。
嬉しいなっていうのはありますよ。
依頼主の1人のお宅を訪ねました。
あっこんにちは。
どうもいらっしゃいませ。
いいですかおじゃまして?はいどうぞ。
これです。
あ…こちらに。
横山さんが作ってもらったのはとある中華料理店のミニチュア。
ランチタイムでしょうか?忙しい店内の様子が見事に再現されています。
この汚い椅子。
向こうの…同じなんです。
亡くなって今日で4年目なんです。
他界した夫の思い出にと依頼したものでした。
出来上がってご覧になったときはどう思われました?う〜んなんか…泣きそうでしたよねほんとにね。
ミニチュアなればこそ凝縮された依頼主の思い。
今や天職とも言えそうなミニチュアドールハウス作り。
しかし河合さんが取り組んだのは10年ほど前から。
おりしも苦境のどん底にいたときでした。
戦後まもなく産声をあげた河合さん。
父は金属プレス工場を経営していました。
朝子さんとの結婚を機に工場に入り父の跡を継ぐことに。
2人の子宝にも恵まれ順風満帆の日々でした。
当時作っていたのは工業製品の部品。
これを1日何万枚と作っていました。
私と親父含めて11人とか12人くらいとか。
そういう多いときには…。
しかし河合さんが50歳を過ぎた頃バブルが崩壊。
追い打ちをかけたのが製造現場の中国への移転。
職人も去り残ったのは河合さんただ1人になったのです。
再起のきっかけは妻の何気ないひと言でした。
うちの家内がドールハウスの趣味でそういうお教室とか通ってましてね。
そのなかでということで私にそれを作れないかというようなことで。
これはもう…。
それを今仕事にして。
初めてのミニチュア作品は妻のために作った鍋。
そういう今までの工業製品を作ったところで誰もすごいねって言ってくれないんで。
仕事で人を喜ばせることができる。
それも夫婦力を合わせて。
進む道が決まりました。
娘のあさみさんは京都の美大を卒業後現地で就職していました。
しかしある事件が起こったのです。
倒れて入院したとかやりすぎて…。
両親を気遣い帰京したあさみさん。
美大で磨いたセンスが活かされることになりました。
こうしてチーム河合はスタートを切ったのです。
この日新たな依頼を受けて題材となる場所へ。
やってきたのは千代田区のレストラン。
すみません今回はよろしくどうぞお願いいたします。
今度は無理なことを言いまして。
依頼主はちょっと強く思ったものだから。
こちらは40年前のオープン。
昭和モダンの流れを汲む独特の内装が特徴。
林さんは15年間ここで毎月講習会を開いてきたそうです。
これはおもしろい素材だと思いますよ。
店内にそびえ立つのはシンボルの街灯。
内装の複雑なデザインをつぶさに記録していく河合さん。
厨房のミニチュアも作ります。
金属製品が多く手間がかかりそうですが当の本人は。
こんな近くでねこういうものを見られることもないんですごい興奮してますね。
かつてない力作になりそうです。
下見から戻ったチーム河合。
夕食の間も…。
これはどこ?今のところ。
これ?すごい大きな寸胴なんだね。
スープの。
これね。
これだって1つはあったほうがいいと思う。
いつしか食事もそっちのけ。
夢中になるとこんなこともごく当たり前。
翌日からレストランアラスカのミニチュア作りが始まりました。
これは厨房器具のようですね。
一方妻朝子さん何やら色のついた液体を型に流し込んでいきます。
たくさん型を作って同じので量産できるようにしとくと。
これが出てきます。
ラベルを貼ってこんな形に出てきます。
なんと日本酒が出来上がりました。
親子3人ひとつ屋根の下にいながらそれぞれの作業に黙々と向き合っています。
これがチーム河合のありよう。
完成したときはね充実感があるんですけどその工程が長いんですよねひたすら。
完成までに10回以上も絵の具を重ねるそうです。
製作開始から2か月。
この日河合さんが作るのは…。
大きな街灯がたってたんで作り上げていきますはい。
レストランのシンボル街灯。
この複雑なデザインに挑みます。
今回の作業で河合さんにとっての最難関。
素材となるのは針金。
2つのペンチを使って手作業で曲げていきます。
微妙な力加減が要求される作業。
苦労を余儀なくされました。
試作はもう3回目4回目でようやく納得できるものが出来たんで。
針金の種類や太さを試行錯誤。
ようやくあのデザインを再現できたのです。
これがここにこんなふうにくっつきます。
ちょっとお母さんすみません。
この街灯が形になったんでそっちのほうで合わせてみたいので。
えっもう大きさ決めるっていうことね?そう。
大きさって長さでしょ?高さと。
あ〜わかった。
重要なのは全体のなかでのバランス。
他の部分担当の家族とすり合わせ。
お姉ちゃんちょっと見てもらえる?こういう感じ高さはどう?これくらいでうん。
いいや。
ここに合わせたとき。
ハァ難しいとこだね。
わずか数ミリを巡ってかんかんがくがく。
3人が納得できる答えを探します。
まあ遠近感的にいうとちっちゃくてもいいような気がする。
そうなの。
じゃあ妥協して5ミリ。
うん。
結局5ミリ短くすることにしました。
こうして完成に近づいていきます。
そのかたわら数々のイベントにも参加していたチーム河合。
そんななかビッグオファーが飛び込んできました。
この日河合さんがイメージを巡らせていたのはふだんとはまったく別のもの。
イギリスという土地柄も考えてですね花屋の店先にあるようなものをちょっと見ていただければ。
ガーデニングの盛んなイギリスの展示会から招待を受けたということで取り組んだ新作。
66歳にしてミニチュアドールハウスの本場初挑戦。
なみなみならぬ決意で臨みます。
ドールハウスって世界が向こうから来たんであれば向こうのほんとのこう好きなマニアのお客様に見てもらって受け入れられた形のを作っていきたいと思ってますので。
下町のミニチュアで本場の人々を驚かせたい。
その思い実るでしょうか?着きましたね。
あ〜着きましたね。
展示会が行われるのはイギリス第二の都市バーミンガム。
ホテルにチェックインした夫婦は早速準備に取りかかります。
今回持ち込んだミニチュアはスーツケース4つ分。
およそ250個の作品。
そうだね見せたいっていう…。
そうですよね。
自分たちの作品を本場の目の肥えたファンに見てもらいたい。
一つひとつ思いを込めてピカピカに磨きあげていきます。
展示会までの2日間この作業が続きました。
そして迎えた当日。
イギリスでも最大規模のコンベンション会場。
ここで開かれるのが今年で65回を数える伝統の展示会。
153組のミニチュア作家が集いそのほとんどが常連です。
そのなかにただひと組の日本人。
下町の町工場で作った作品が並びます。
そのなかにはガーデニングをイメージした新作も。
果たして本場でチーム河合の実力は認められるのか。
午前10時開場。
チーム河合のブースにもお客が集まりました。
険しい表情で作品を目利きする本場のお客。
彼らのお眼鏡にかなうのでしょうか。
いらないって。
いらない?うん。
やはり本場とはレベルが違うのか。
期待が不安へとしぼんでいきます。
展示会もお客が増えいよいよ佳境。
すると…。
おっ売れましたよ。
皆さんまるで少女のように瞳を輝かせてチーム河合の作品を見つめています。
おやあの新作を手に取る方が。
丸ごとになりますね。
よかったですね。
持参した250個がほぼ完売。
初めての挑戦は大成功でした。
帰国後1か月。
レストランのミニチュアお披露目の日。
早くずっと作って。
まだ何かあるんですか?もう1つ寸胴が欲しいんです。
完璧な作品に仕上げるため最後の最後まで製作を続けます。
なんとか約束の時間に到着。
あとは依頼主を待つばかり。
果たしてその出来栄えは?すごい。
うわすてき。
メガネ取るとよく見えるんで。
食い入るように見つめる依頼主の林さん。
レストランアラスカのミニチュアドールハウス。
厨房は今まさに料理が作られているさなかの活気を見事に表現。
食欲をそそる香りまで伝わってきそうです。
閉められているはずの冷蔵庫の中にもこだわりが詰め込まれています。
そして昭和モダンの面影を今に伝えるレストランホール。
シンボルの街灯も複雑なデザインを見事に再現。
色とりどりのボトルが華やぎを演出。
今にもパーティーが始まりそうな雰囲気です。
予想以上です。
こんなのこう作ってみたいなと思ってたのね。
やっぱり依頼主さんの思いが心の中に一緒に込めて一緒に作らないとうまくいかないかな。
我々がそれ以上に思いを抱いて作っていかないと最終的には作品にならないのかなというのは毎回感じますね。
町工場のモノづくりで見る人々を感動させるチーム河合を応援します。
2015/12/12(土) 22:30〜23:00
テレビ大阪1
クロスロード【河合行雄/ミニチュアドールハウス作家】[字]

ミニチュアドールハウス作家、河合行雄。妻と娘と3人で運営する工房で作るミニチュアは、国内のみならず海外でも高い評価を受けている。一家の作品作りに密着。

詳細情報
出演者
【ナビゲーター】
原田泰造
番組内容
東京・荒川区に工房を構えるミニチュアドールハウス作家の河合行雄。もともとは父親の代から続く町工場の職人。妻から頼まれ、工場にある金属プレス加工の古い機械を使い、ミニチュアの金属製のフライパンを作って喜ばれたことがきっかけとなり、10年ほど前からミニチュアドールハウス作りをするようになった。現在は妻と娘と3人で工房を運営している。番組では一家の作品作りの様子に密着する。
番組概要
様々な分野で活躍する、毎回一人(一組)の“挑戦し続ける人”を紹介。彼らが新たなる挑戦に取り組む今の姿を追う。挑戦のきっかけになったもの、大切な人との出会い、成功、挫折、それを乗り越える発想のヒントは何からつかんだのか?そして、彼らのゴールとは?新たにどこへ向かおうとしているのか…。そんなクロスロード(人生の重大な岐路)に着目し、チャレンジし続ける人を応援する“応援ドキュメンタリー”。
音楽
【エンディングテーマ】
「youth」竹原ピストル
(JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント)
ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/official/crossroad/

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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