(「シンフォニエッタ」)「ららら♪クラシック」今回は…チェコの国民的作曲家ヤナーチェクが71歳の時に書いた作品です。
2009年に出版された村上春樹のベストセラー小説に登場し一躍注目を集めました。
あまり耳にした事がない独特のメロディーにはヤナーチェクの祖国チェコへの深〜い愛が込められています。
そして彼はいわゆる「遅咲き」の作曲家。
創作意欲をたきつけたのは30以上も年の離れた…今日はチェコを愛し創作の女神に愛された男の物語をご紹介します。
「ららら♪クラシック」今日はヤナーチェクの「シンフォニエッタ」です。
不思議と耳に残る独特の作品ですよね。
では今日のゲストをご紹介しましょう。
クリス松村さんです。
(一同)よろしくお願いします。
クリスさんこの曲はご存じですか?いや知らなかったんですけど聴いただけでワクワクするような…派手どちらかというと。
華やかな感じがしました。
今の部分特にねファンファーレのような雰囲気でしたけれども衣良さんはこの作品は?これはやっぱり僕は村上春樹さんの「1Q84」を読んで自分のCDの棚から引き出してきて聴きました。
聴いてなかったんでね。
買ってあって。
この曲を作ったヤナーチェクは「モルダウ」のスメタナとか「新世界から」のドボルザークと並ぶチェコの作曲家。
スメタナドボルザークと並ぶ!そうですね。
それではですねチェコの作曲家ヤナーチェクに関してここで「ららら♪クイズ」です。
おお〜。
私が嫌な事で「人が多い所が苦手」。
正解は残念ながら3番。
あらあ違ったか。
どういう事ですか?駅の表記がチェコ語ではなくドイツ語表記だったからという事なんですね。
結構意味が深い。
そうなんです。
当時チェコはねオーストリア=ハンガリー帝国の一部だったために表記がドイツ語のみという駅もあって人一倍愛国心が強かったヤナーチェクやはり母国語のチェコ語がないと電車に乗らなかった。
という事は今の話を聞いてると演奏とか音とかの中にも多分その主張が隠れてそうな気がする。
鋭いところ突いてきましたね。
だって今の話を聞いたらそう思わざるをえないです。
それではどんな曲なのかこちらをご覧下さい。
「シンフォニエッタ」とは「小さな交響曲」という意味。
ヤナーチェクがこの作品を作曲したのには当時のヨーロッパの社会情勢が影響しています。
レオシュ・ヤナーチェクが生まれたのは現在のチェコ共和国。
当時のチェコは長きにわたり近隣諸国の支配を受けており街ではチェコ語だけでなくドイツ語が広く使われていました。
人一倍愛国心の強かった彼は祖国が支配下にある事に大きな反発心を抱いていたといいます。
街にある…そして1918年祖国がようやく独立を勝ち取ります。
ヤナーチェク64歳の時でした。
彼はこれまでの苦難の歴史と解放の喜びを込めて「シンフォニエッタ」を作ったのです。
この作品は5つの楽章で出来ておりそのいくつもが生涯の大半を過ごしたチェコの街ブルノの情景をモチーフにしています。
後にヤナーチェクは独立した日の印象をこう記しています。
う〜んなんか音楽ってねやっぱりその祖国とかそれから占領されたとかいろんな事だからそういう思いを込めてクラシックでできてそして継承されてるわけだけどなんかこうそう思うとね涙が出てきそうになりますね。
そうですね。
なかなか聴いてて分からないですからね。
あと昔の建物を役目が終わっても残しておくっていうチェコの国の文化のすばらしさ。
確かに「城」とか「女王の修道院」という標題が付いているんですけれども…ここは重要だと思いますね。
ヤナーチェクのねこの祖国愛の深さを裏付ける話というのが実はもう一つあって彼が長い間集めていたものがあるんですがクリスさん一体どんなものを?祖国愛を持って集めていたもの。
ヒントはねさっきのクイズの中にもちらっと出てきている。
あっ分かった。
チェコの看板を集めてた。
チェコ語の看板を集めてた。
惜しい!違います?何ですか?えっどういう事ですか?こちらをご覧頂きたいんですがこれがヤナーチェクの手帳のコピーなんですけれども…イントネーションをそのまま譜面にした。
どこに行く時もこの小さな手帳を持ち歩いて周囲の言葉を書き取っていったそうなんです。
ものすごいですよ。
ここの所をね…。
特にこの右下の部分ご覧頂きたいんですがご自分の娘さんが息を引き取る寸前についたため息。
それも音符にできる…ため息を?ではちょっと再現を。
言葉は読み切れませんけど…。
・「アーヤー」…みたいな。
すごいですね。
ただの集めてるっていうのとは全然違いますもんね。
ヤナーチェクはこうした…彼の作品の中には言葉はないのにチェコの人が聴くとまるで人々が言葉を交わしているように聴こえるものもあるそうなんです。
そんな祖国愛にあふれたヤナーチェクですがもう一つ大きな原動力となった愛があるんです。
続いてはこちらをご覧下さい。
ヤナーチェクは1854年現在のチェコにあるモラヴィア地方で生まれました。
11歳の時修道院の聖歌隊員となり音楽を学びます。
そして進学先のプラハで後のチェコ音楽の大家となるドボルザークと出会い作曲家への思いを強くします。
その後…作曲家としてはいくつかヒット作はあるものの60歳を過ぎるまでほぼ無名の存在でした。
そんな彼の音楽人生に大きな転機をもたらしたのが偶然知り合った25歳の女性…当時ヤナーチェクは63歳。
38も年の離れた女性でした。
2人とも結婚しているにもかかわらずヤナーチェクは一目で恋に落ちたのです。
その後11年間にわたってカミラに600通を超えるラブレターを送っています。
初めの数年はヤナーチェクの片思いのような関係だったものの彼のいちずな思いに次第にカミラも心を開いていきます。
彼からの手紙を待ち望むようになりいつしか互いに気持ちを通わせていくようになるのです。
そして8年がたったある日2人が散歩に出かけた際に野外音楽堂から軍楽隊の演奏が聴こえてきました。
(ファンファーレ)愛する女性と聴いたファンファーレの音。
幸せな思い出とともにそれはヤナーチェクの心に深く刻み込まれました。
その翌年ある記念式典のために音楽を依頼されます。
その時ヤナーチェクの頭に浮かんだのは2人で聴いたあのファンファーレでした。
そして彼は独自のアレンジを加えたファンファーレに始まる交響曲「シンフォニエッタ」を書き上げたのです。
結局ヤナーチェクはカミラと結婚する事はできませんでした。
しかし彼女を愛した晩年の11年で「シンフォニエッタ」をはじめ多くの代表作を書き上げています。
創作意欲をかきたてる愛の力。
ヤナーチェクにとってカミラはかけがえのないミューズだったんですね。
チェコの歴史だけだと思ってたらカミラさんの愛もその中に入ってたんですね。
晩年の38歳も年下の…。
ほっとしましたよ。
祖国愛だけで作曲されたら嫌だなと思ってたんだけど…。
やっぱり愛だったんですね。
この番組で取り上げた曲の最高齢の作曲じゃないですかね。
なかなか60っていうのは…。
ちょっといないですね。
ほんとにもうお孫さんのいる世代ですもんね。
ベートーベンやバッハもう亡くなってますからね。
いっぱい言葉のコレクションなさってた。
引き出しにいっぱい詰めてた。
だけどそれを披露する時間がなかったけど…カミラさんやっぱりすばらしい。
クリスさんはどうですか?恋愛がうまくいっている時の方がお仕事は調子いいですか?それはそうですよ。
だって何でも許せるもん。
嫌な事とかいろんな事があっても…だからそれって愛じゃないですか。
一番やっぱりそれがうまくいってる時は…でも恋が盛り上がりすぎてお仕事そっちのけみたいな事にはならない。
それは私はならないですね。
お仕事そっちのけの愛一回経験してみたい。
それはね憧れです。
クラシックにまつわる素朴な疑問にお答えしま〜す!答えて下さるのはオペラ公演のプロデュースも手がける歌手の…ただしオペラ歌手が踊るという事もないわけではなくて…それでそういう訓練も受けます。
私もね優等生かどうかは別として日舞と洋舞はやってますので。
あとは「カルメン」なんかを歌う人は必ずフラメンコをどうしても付加価値を高めるためにやっぱりカルメンがそこで一緒に踊れたらすごいし踊るまでいかなくてもフラメンコ立ちっていうんですかね。
そういうフラメンコっぽく立てたら非常にアピールがあるので。
なるほど!踊りもできると表現の幅が広がりそうですね。
番組ではクラシックにまつわるあなたの疑問・質問をお待ちしています!今日の名曲は…チェコの作曲家ヤナーチェクが祖国が独立した時の喜びを込め作った作品です。
愛する女性と聴いたファンファーレの音。
幸せな思い出がこの曲を生み出す大きな力となりました。
「シンフォニエッタ」の演奏にはオーケストラとは別に「banda」と呼ばれる小編成のアンサンブルが加えられています。
そのバンダが奏でる独特のメロディー。
不思議と耳に残るその秘密を作曲家の美濃さんが解説します。
さあこの曲ね何といっても特徴的なのがファンファーレ。
今日はそのポイントを見ていきたいと思うんですがよく耳にする一般的なファンファーレ例えばロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」。
(「ウィリアム・テル序曲」)ファンファーレできらびやかな華やかな印象ですよね。
ではこの「シンフォニエッタ」の場合はどんなふうにファンファーレが行われるかというとこんな音型です。
(「シンフォニエッタ」)勇ましいとかねそういう感じ誇らしいとかっていうイメージがファンファーレの音楽に合ってるなと思うんだけどこれはなんか…そうなんです。
ファンファーレっていうと例えば…。
はい。
先ほどのロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」のような…今の曲はちょっとこうのんびりとしたテンポ。
でも確かにちょっと聴いていると…黒澤映画とかね。
確かに!そうですね。
実は使ってる音にも注目したいんですけれども5つの音で出来ているんです。
これが5個の音だけで出来ているんですね。
この番組でもよくね「ヨナ抜き音階」という音階が登場するんですけれどもヨナ抜き音階というのは…。
基本の音から数えて1234番目と…。
1234567番目の音を抜いたヨナ抜き。
これがよく異国情緒を感じさせる旋律として出てきます。
分かりやすくするためにまずはこの「シンフォニエッタ」調を変えて一度演奏したいと思います。
さっきのメロディーを全部白鍵白い鍵盤に置き換えるとこういう並びです。
さあ…。
これを1番とした時の…こことここ…ちょっと待って23456…2の6だ。
違うだからちょっと。
そうなんです。
これを…実は古くから日本の…例えばこの曲。
ああああああ!もう得意ですよね。
これも26抜きで出来てたりとか。
これご存じ…?はい。
「あんたがたどこさ」。
そうですね。
これもわらべ歌ですね。
非常にでも日本的な印象もあるような世界観。
ほんとですね。
それではファンファーレ部分にも注目して聴いて頂きましょう。
ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」第5楽章からカット版でどうぞ。
わあ〜ちょっとこの曲大好き。
いいね!ファンファーレがすごいですねやっぱり。
生きてて。
私流の軽い言い方すると…スケール感があってねほんとに。
でも一聴きして思ったのは…テンポから何から一切そんなお年なんか感じない。
あと後ろにいるバンダは今回の映像のせいかしれませんけれど……っていう雰囲気がすごくしましたね。
そこが「喜び」っていうのとつながってきますよね。
チェコ語が分かんないんですけどやっぱりほんとにおしゃべりをしているような途中「カミラカミラカミラ!」みたいに聴こえてきたりとか分かんないなりに…。
あのピッコロみたいなのが。
冒頭部分の弦楽器なんかも本当にチェコ語のおしゃべりのように聴こえてくる部分もあったりして。
結論は本当に60を過ぎたらちゃんと恋をしなさいって事だと思うんですけどね。
今日はねこのあと全部うまくいきそうそんな気持ちになるような音楽。
すばらしいですね。
毎日これを聴いて元気に過ごせるかもしれない。
はい。
「遅咲きの花」ヤナーチェクの人生と音楽いかがでしたか?「ららら♪クラシック」今日はこの辺で。
今年実に5年ぶりにスクリーンに帰ってきた2015/12/12(土) 21:30〜22:00
NHKEテレ1大阪
ららら♪クラシック「チェコに咲く遅咲きの花」[字]
今回は村上春樹の小説「1Q84」でも一躍話題となったヤナーチェクの「シンフォニエッタ」。チェコへの愛国心の強い男が作品に込めた思い、そして創作の女神の存在に迫る
詳細情報
番組内容
今回は村上春樹のベストセラー小説1Q84でも一躍話題となったヤナーチェクの「シンフォニエッタ」。チェコを代表する作曲家であり、人一倍愛国心の強い男がこの作品に込めたある思いとは?さらにヤナーチェクの晩年、創作意欲をたきつけたのは30以上も年の離れた人妻だった。不思議と耳に残る独特のメロディー、そこには日本人にもなじみ深いある秘密が隠されていた。チェコを愛し創作の女神に愛された男の物語を紹介する。
出演者
【ゲスト】クリス松村,錦織健,【出演】指揮者…園田隆一郎,管弦楽…東京フィルハーモニー交響楽団,【司会】石田衣良,加羽沢美濃,【語り】服部伴蔵門
ジャンル :
音楽 – クラシック・オペラ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
劇場/公演 – ダンス・バレエ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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