突然ですが、Amazonプライム会員のテレビCMは見ましたか?
MORE TO PRIME (もっとプライム会員に)というフレーズと共に耳に残る音楽で話題ですが、いったいなぜAmazonは必死にプライム会員を増やそうとしているのかと思いませんか?
「無料ですぐ届く」PrimeNowや「たくさんの映画が見放題」になるプライムビデオなどの様々なサービスを年会費3900円で利用できるという格別の待遇でプライム会員を増やしているんですが、それはその後に企んでいることがあるからです。
Amazonがプライム会員を増やすためにしていること
Amazonの必死さが伝わってくる一番いい例はAmazonプライムデーの開催です。
プライムデーとはAmazonによれば、Amazon20周年を記念して2015年7月15日に行われたプライム会員のための24時間限定のセールデーのことです。
注目して欲しいのはこれがAmazonプライム会員だけのために行われたセールだということです。世界中で1秒に400個のペースで商品が売れたといわれ、ブラックマンデー以上の記録で話題になりましたが、このセールについて、Amazonは”20周年を記念したイベント”だと説明しましたが、これはおそらく嘘です。
主な目的はプライム会員を増やすことです。したがって更に言えばプライムデーはおそらく来年以降も続けるでしょう。なぜならそもそも20周年の記念イベントではないからです。
また、もう一つの例としては、会員登録特典やAmazonアソシエイトを利用した会員の紹介特典です。
会員登録特典として、AmazonによるとKindle端末を買えば4000円のギフト券がもらえたりします。年会費3900円で4000円返ってくるということは実質1年無料ということですね。
更に現在Amazonはプライム会員を一人紹介するごとに500円紹介料が入り、50人紹介すると25000円が追加で受け取れるというアソシエイト・プログラムを行っています。
Amazonが一貫して行っているビジネススタイル
Amazonの基本方針はCEOのジェフ・ベゾスが実際に株主に説明している通りです。
当社は、売上高や利益を最大化することではなく、フリーキャッシュフローを最大化することを目的にしている
つまり、利益を出さずに、自由に使えるお金を増やすという方針です。
それが一発でわかるグラフがあるので見てみましょう。
シリコンバレーにあるベンチャーキャピタルに務める有名なブロガーBenedict Evans氏のブログ(http://ben-evans.com/benedictevans/2013/8/8/amazons-profits)に、Amazonのビジネススタイルについての記事があります。
そこで紹介されているのがこのグラフです。
青が売上を表し、オレンジが当期純利益を表しています。
売上がどんなに上昇しても純利益はほとんど出していません。つまり、すべて事業や設備への投資にまわしているわけです。その結果、会計報告上は純利益がゼロになっていますが、これがAmazonの隠れ蓑になっているのです。
なぜならどんなに利益が出てもすべて投資に回して純利益をゼロにするということは、Amazonが自由に使っているお金がどれくらいかあるのか誰にもわからないからです。
Amazonのビジネスモデル
では実際にAmazonが何をしているというのか。
Benedict Evans氏が言うには、Amazonはこの4ステップでビジネスを展開しています。
- 新規事業に資本を投資し、(ステップ1)
- ”人工的に”安価なサービスを展開することで(ステップ2)
- 他の企業の参入を阻止した後に利益を回収し(ステップ3)
- 利益をすべて新たな投資に回す。(ステップ4)
このサイクルで、事業を回しているわけです。
ここで、注目すべきはステップ2からステップ3への流れです。
Amazonはまず最初に低価格や送料無料といったユーザーに対する人工的に作った安価なサービスで顧客を囲い込みます。
Amazonはその後に突然安価なサービスを取りやめて利益を回収しだすのです。
その例としては、最近の有名どころで言えば
- 2013年に一部低価格商品を対象に2500円以上の“あわせ買い”をしないと購入ができない制度を導入。
- 2014年にはアメリカでのAmazonプライム会員の年会費を99ドルに値上げ。
- 2014年Amazonアフィリエイトの紹介料率を大幅に下げる。
など今まで優しかったAmazonが突然豹変する瞬間が必ずやってきます。
利益を回収したAmazonはどうするのか、もちろんすべて次の「人工的な安価サービス」に投資するわけです。ここでAmazonの純利益ゼロというビジネススタイルが隠れ蓑になっているのです。
つまりAmazonははじめから純利益ゼロという経営スタイルを持っているため、常に収益をすべてサービスにつぎ込むことが出来ます。そのため他社が真似できないようなサービスを提供することが出来、それによってユーザーは増えていきます。
そして、あるとき突然収益を回収しはじめます。しかし高品質なサービスで大量の固定客を得たAmazonからは簡単に人はいなくなりません。そうしていつの間にか莫大な収益を上げることができるということです。
これを繰り返していくことで、Amazonのフリーキャッシュフローはどんどん大きくなっていきます。これがジェフ・ベゾスのいうフリーキャッシュフローの最大化ということです。
まとめると
- 新規事業に資本を投資し、(ステップ1)
- ”人工的に”安価なサービスを展開することで(ステップ2)
- 他の企業の参入を阻止した後に利益を回収し(ステップ3)
- 利益をすべて新たな投資に回す。(ステップ4)
Amazonプライム会員を集めているのは明らかにステップ2になりますね。
つまりその後にステップ3が始まるということです。最も単純に考えるならAmazonプライム会員の年会費の値上げでしょうか。
しかもこれは送料無料を廃止するといった方法よりも圧倒的に少ないリスクで収益を得ることが出来ます。なぜならプライム会員はクレジットカード登録をしているので、突然値上げされてもわざわざ解約する人は少ないからです。
補足ですが、これだけ聞くとAmazonがまるでユーザーを騙しているかのように聞こえますが、そういうわけではありません。
まず、第一にAmazonが資本を投入しても大失敗に終わってしまった事業も山ほどあるからです。つまり、事業に投資してユーザーを増やすだけでもかなりのリスクを伴うということです。それをあとから回収するのは当然ともいえます。
第二にAmazonのビジネスのサイクルが続いている限り、ユーザーにも利益があるからです。Amazonの事業が続く限り何らかの「人工的な安価なサービス」は続いていくでしょうし、逆に言えばサイクルを続けるためにもAmazonがユーザーを裏切ることはできないということです。実際、ここまで言っておいてなんですが、この記事を書いている私も実はプライム会員になってます。仕方ないですよね、だって安いんですから。完全にAmazonの策略通りです。
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