国際オリンピック委員会(IOC)のグニラ・リンドバーグ調整委員長がこのほど韓国を訪れ、「多様な分野にわたり非常に生産的な結果を導き出した」と評価した。一見すると大きな問題がないという言葉に聞こえるが、果たして本当にそうなのだろうか。
IOCは世界205カ国の国内オリンピック委員会(NOC)と政府を相手にする世界最高のスポーツ団体にふさわしく、対外的な表現が多分に修辞的かつ暗黙的で政治的だ。時にはどういう本音なのかを把握するのが難しい、あいまいな表現を使うが、相手を目の前にしてうそをつくこともない。
2010年に死去したフアン・アントニオ・サマランチ元IOC会長は、五輪のたびに「史上最高(the Best Games Ever)」という表現を使った。しかし、真の評価はほかの言葉の中にある。冷戦体制の下、東欧諸国と西欧諸国が12年ぶりにそろって参加した1988年のソウル五輪では「the Most Universal(最も全世界的な)」、充実した運営が際立っていたリレハンメル冬季五輪は「the Best Organization(最高の組織)」という表現を使った。サマランチ氏に続きIOC会長を務めたジャック・ロゲ氏は北京五輪に「The Truly Exceptional(本当に例外的な)」という形容詞を付けた。全世界が舌を巻いた開会式・閉会式の規模や華やかさに対する賛辞のようにも受け取れる。だが、「わざわざあそこまでやらなければならなかったのか」という否定的な見方が込められているとも言える。
平昌冬季五輪におけるIOCを代表するパートナーのリンドバーグ調整委員長は、これまで準備状況に関する質問に対し「具体的な成果があった」「組織委員会が準備に万全を期している姿を見ることができた」「大会の準備は順調に進んでいる」など外交的な表現ばかり前面に出してきた。これは、国内のメディアを通じ「満足感を示した」という言葉をもって解釈されてきた。しかし、これまでにIOC内部で指摘された平昌五輪の準備状況に対する懸念は非常に強かったと言われている。