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 週末には1日約10万人が訪れる東京・上野の商店街「アメ横」で、店主の多国籍化が進んでいる。きっかけをつくったのは、周囲から「兄貴」と慕われるケバブ店経営者の成功だ。商店街の後継者不足や、訪日観光客の増加も後押ししている。

 JR上野駅方面からアメ横に入っていくと、まず目につくのは魚屋や乾物屋ではなく、外国の食べ物店。肉料理のケバブや中華、台湾、韓国の各料理、欧風鶏料理などの計9店舗が軒を連ねる。

 「お兄さん、おいしい、おいしい」「モリモリだよ、寄ってって」

 香ばしいにおいが漂う中、威勢のいい片言の日本語が響く。週末、ケバブ店「モーゼスさんのケバブ」は、日本人のほか、タイ人やインドネシア人などの観光客でにぎわう。計8席の店内はほぼ満席だ。

 店主は、ガーナ出身のモーゼス・マイガさん(44)。1998年に来日し、日本人の女性と結婚。車でケバブの移動販売をしていたが、「自分の店を持ちたい」と考え、知人の紹介で、2003年に後継ぎのいなくなった鮮魚店の店舗を借りた。

 順調な滑り出しではなかった。「アメ横で飲食は無理だって言われ続けた。賃料も高く、何度もやめようと思った」。物珍しさに来る客はいたが、売り上げは伸びなかった。

 ただ、年々訪日外国人が増え、風向きが変わり始めた。「ここ5年で外国人観光客が一気に増え、経営も安定してきた。いまはお客さんの6割くらいが外国人です」。いま、アメ横では3店舗を展開する。