妻との夫婦関係を円滑にするため、毎週末、予定を入れるようにしている。今日は、予定を入れていくことの重要性と効果について実体験からお話したいと思う。
僕らは「共通の趣味がない」夫婦だった
僕と妻には共通の趣味というものがない。後者には性欲すらない。共通の趣味があれば、潤滑油のように夫婦間を円滑にするのだろうが、僕らにはそれがない。脆弱な関係だ。そういう事情から、僕は多少強引にでも予定を入れて、夫婦の時間をつくるようにしている。妻と談義したことはないが、妻も週末が近づくと「今週の予定は?」と執拗に聞いてくる。お互いに危機感を持っているのだろう。
旦那でも奥様でも恋人でもいいのだけど、もし、そういう相手がいるなら、週末はその人と共通の予定を無理矢理にでも入れていただきたい。予定は「スポーツ観戦」「コンサート鑑賞」といった、イベント的なものがいい。なぜ、わざわざ大袈裟な予定を入れるのか? それは「退屈な日常を少しでもスペシャルなものにする」ため。そして「将来、ひとりの時間をつくるため」だ。
週末は無理矢理にでも予定を入れろ
「カンタン・便利・超楽チン」への反逆で人生を楽しくする
インターネットの発達によって、買い物もコンサートも指先ひとつで済ませられる世の中。超便利。超楽チン。だが、その姿を俯瞰すると、眼下に広がるのは「いい歳した大人がスマホ片手に終日ゴロゴロ寝ているだけ」という無惨な光景。《面倒や手間を避け、切り捨てる》。実に素晴らしい。だが、それを突き詰めすぎてしまうと、面倒に付随している面白いものまで切り捨ててしまいかねない。
所帯をもってしまうと面倒は増える。妻が美容院に行けば、その変化が肉眼で確認できないほど些細なものであっても「うわー!見違えるようだよ。僕のマリー・アントワネット!」と称賛しなければならない。月9ドラマの退屈な感想を聞かされては「意外だなー。山Pは肉体だけのアイドルだと思っていたよ~」と口先だけで合わせなければならない。
増殖する面倒。低下する知能。擦り減っていく自尊心と神経。“人間として最低限度の生活”以上のことをする余裕はない。スマホをポチポチするだけの、味気ない堕落生活。多少無理をして波を起こすようなことでもしないと、人生は無為のまま終わってしまう。そんな人生は送りたくない。苦悩の果てにうまれたのが毎週末のイベント化なのである。
「現在」を犠牲に家族の理解を得る
「君はアホか。イベントと称して奥方と毎週末出かけていたら、余計疲れるだけじゃないか」「大人の男はひとりの時間を確保するために皆苦労している。書斎を欲しているのはそのためだ!」といった非難の声が聞こえてきそうだ。そういう一方的な価値観はいつも僕を悲しくさせる。
俗世間のことを忘れ、趣味に没頭できる、ひとりだけの時間。だがその理想郷は家族からの孤立ではなく、理解と援助があってはじめて得られるものということを忘れてはならない。ひとたび所帯をもってしまうと、完全に独りになることはひどく難しい。ならば将来の理想郷建設のため、現在を犠牲に捧げ、家族を自分のイベントに巻き込み、理解とお金を得るほうがはるかに利口ではないか。そういう理由で僕は週末には必ずイベント的な予定を入れているのだ。
趣味の共有で人生の幅が広がる
妻がつば九郎のファンになった
隠居したら毎日プロスポーツ観戦がしたい。とりわけプロ野球が観たい。憧れのスタジアムで生観戦。当初、それは叶わぬ夢に思われた。妻は、野球のルールすら知らない。わからないもの、興味のないものに近づく奇特な人間はいない。絶望的。妻はいった。「野球の何が面白いの?」このままでは僕は死ぬまでプロ野球観戦が出来ないだろう。
妻を積極的にスタジアムにつれていくようにした。「なぜプロ野球を観ないといけないの」最初はイヤイヤであった。それならば、球団マスコットから興味を持ってもらおうと、つば九郎で有名な東京ヤクルトスワローズの試合に連れて行った。最終的には東京ヤクルトスワローズ検定試験を受けてもらい、プロ野球のファンになってもらえた。今はシーズンで数試合を一緒に観戦出来るまでになった。よかった。これで隠居後も一安心。問題は「つば九郎が大活躍する神宮球場以外での試合観戦」が難しいことだ。しかし、それは今後の課題とポジティブに考えている。
一方、僕は劇団四季のファンになった
この世はギブ&テイクなので、僕の趣味を受け入れてもらった以上、妻の趣味も取り入れなければならない。妻の大好きなミュージカル鑑賞に僕もつれていかれるわけである。僕はミュージカルが好きではなかった。喧嘩のシーンや求愛のシーンでいちいちタコのように踊ったり歌ったりするのが理解できなかった。しかし、妻に連れられ劇団四季の「ライオンキング」「オペラ座の怪人」を鑑賞した僕は、その作りこまれた世界観に魅了され、気が付くとカーテンコールで立ち上がり、熱い涙を流していた。今や、劇団四季のファンクラブに入会し、ファン会誌が届くのを楽しみにしている。僕の人生の幅が広がったのだ。
夫婦生活は”しあわせな背水の陣”の連続
妻「え? 予定入れてないの? どうして?」
このように、自分の趣味だけでなく相手の趣味を取り入れて予定を入れていくと、世界が広がり人生が充実するので超おすすめである。ただし僕ら夫婦のように「毎週末イベントを入れなければ」という極端に走ってしまうと弊害が発生する。たとえば、予定を立てるのを失念したり、陳腐・マンネリであったりするだけで「今日の予定は?」「え?予定入れてないの?どうして?」「また、カラオケですか……」と詰問され、精神的に追い込まれてしまうので注意が必要だ。
予定の悪魔合体で楽しい休日を
追い詰められないために僕は常日頃から週末の予定について考えている。しかし魅惑的で、前例のない、斬新な予定が無限にあるわけがない。途方に暮れていたが、テレビ番組の特番音楽番組のコラボからヒントを得て、【野球×ヒーローショー】【焼肉×カラオケ×フットサル】【図書館×映画】といった具合に、寝食を忘れ、予定の悪魔合体をおこなっている。「とりあえず今週末を乗り切れば……」という”しあわせな背水の陣の連続”が夫婦生活だと考えるようにしている。