エバンジェリスト:
自分の「わくわく」を伝える技術
究極のマーケティングを実践しよう
エバンジェリズムとは、自社の製品・サービスの卓越性を世間に説くことである。著述家、講演家としても著名な本稿の筆者ガイ・カワサキは、アップル創業時、エバンジェリストとしてマッキントッシュの成功に寄与した。今日の企業のマネジャーは誰もがエバンジェリストであるべきだと言う筆者が、ソーシャルメディア時代のエバンジェリズムに必要なスキルを伝授する。
エバンジェリズムは
マネジャーの責務
1990年代末のインターネット黎明期の頃、「エバンジェリズム」がビジネス界の流行語になった。実際、私はアップルの2番目のソフトウェアエバンジェリストとして、この言葉の普及に一役買ったのだ。その概念はシンプルである。元のギリシャ語の大意は「よい知らせ(福音)の告知」であり、エバンジェリズムとは、自社の製品、サービスがいかに人々の生活を向上させるかを世間に説くことである。
アップル時代の私の仕事は、「マッキントッシュ」によって誰もがもっとクリエイティブかつ生産的になるという福音を告知することだった。ただ単に、コンピュータを売り込んでいたのではない。他の人々にもぜひ体験してほしいと思うほど、あの製品の価値を信じていた。現在の私の仕事は、Canvaのチーフエバンジェリストとして、誰もが容易にデザインできるプラットフォームを普及させることである。エバンジェリストとは、心底から他者のためを思う存在なのだ。
多くの企業が、顧客はエバンジェリストになりうると考えている。最も熱心な顧客たちは、あなたの会社の製品、サービスに関するクチコミを無償で広めてくれるだろう。
しかし、忘れてはならないことがある。マネジャーたちも(マーケティング部門以外のマネジャーだとしても)、エバンジェリストになりうるのだ。私はこの数十年間、テクノロジー分野で働き、他業界でもコンサルタントとしてサービスを提供してきた。そこで学んだのは、いかなる部門の幹部もエバンジェリズムを実践すれば、会社と自分のキャリアに大きな利益をもたらしうるということである。
あなたがリーダーならば、自社とその製品、サービスの伝道に努めるべきだ。社内であれば休憩室、あるいはメールや協働プラットフォームを通じて、社外であれば業界の会合、リンクトインやフェイスブック、ツイッターを通じて、内外どちらに対してもエバンジェリストとしての役目をすすんで果たさなければならない。ソーシャルメディアの時代では、エバンジェリズムは全員の責務である。
会社が考案して販売する製品・サービスがあなたの眼鏡にかない、心から支持できるものならば、伝道はたやすいだろう。私の場合、それにふさわしいものは、深い洞察に基づき(ユーザーが必要とする機能すべてを先取りしている)、知的(苦痛を減らすか、楽しみを増やすための斬新かつ絶妙な方法を提供する)で、完全(適切なサポートも含む)で、人々に力を与え(自力で扱えるようにする)、エレガント(機能性と外観の美しさを兼ね備えている)であることだ。
しかしあなたの会社も、おそらく何か価値あるもの、他社とは違うもの、すなわちエバンジェリズムに値するものを提供しているのではないだろうか。たとえ販売しているものが、マッキントッシュやブライトリングの腕時計、テスラモーターズの自動車、ヴァージン・アメリカの飛行機旅行などではなかったとしても、である。それはモノでもサービスでもないかもしれない。企業価値、先進的な会計実務、あるいは柔軟な在宅勤務方針かもしれない。
影響力のあるエバンジェリストは、自社を売り込むだけではなく、他の従業員の模範となる人物だ。情熱的かつ献身的なチームメンバーであることを示し、同僚を鼓舞し、みずからのリーダーシップ能力を行動で示すのである。職場を見回せば、エバンジェリストはどこにでも見つかる。パネルディスカッションの場でいつも活躍している副社長、業界研究についてツイートする同僚、ピンタレストのフィードに新製品の写真を載せている役員秘書。こうした人々こそ、今日企業が各部署にいてほしいと思うリーダーなのだ。であれば、あなたも必要なスキルを開発して仲間に加わらなければならない。私の経験では、効果的な伝道法は3つある。雑談という昔ながらの方法、スピーチという方法、そしてソーシャルメディアを使う方法である。
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