10年前の今月、W-ZERO3が発売しました。私が10年前から購読している伊藤浩一さんのブログより。
W-ZERO3は2005年12月に発売されたSHARP・WILLCOMの通信端末。OSにWindows Mobileを搭載したWILLCOMの事実上のスマートフォンです。
当時、海外ではPDA(個人情報端末・電子手帳)が通話機能を取り込み、スマートフォンへと進化していました。日本では、SONYはCLIE、SHARPはZaurusといったPDAをリリースしていましたが、それらが電話機能を搭載することはなく、CLIEに至っては撤退してしまっていました。
日本の携帯電話市場は当時いわゆるガラパゴスで、携帯キャリアの垂直統合の下、各社はガラケーを作らされていたので、なかなか日本市場では高機能スマートフォンが登場しませんでした。端末はキャリアのサービスやコンテンツを売ってナンボですからね。(当時私はパソコン用のサイトを閲覧できるガラケーのみ買っていました)
ちなみにNokiaの端末は、非公式な手段ですが個人開発アプリをインストールできましたし、当時キャリアから購入できるスマートフォンと言える枠内の端末では唯一の選択肢だったように思います。SIMロック前提の商慣習と海外との通信規格の違いもあり、端末の海外輸入というは現実的な選択肢ではなかったと思います。(海外スマホを輸入したとしてもPDAとしての使用が限界)
そんな中、登場したのがW-ZERO3です。SHARPのZaurusのノウハウを活かし、Windows Mobile 5.0 for Pocket PC (Classic)に無理矢理、通話機能を組み込むことで実現したものです。(OS起動前にSERVICE MENUを呼び起こすと”Zaurus Test”モードに入れましたね。)
自由にPCのようにアプリケーションを入れて、PCのようにファイルをファイラーで管理できて、端末の深い部分まで自由にカスタマイズできたのは楽しかったですね。もちろん見られるサイトはほぼPCサイトのみでしたが。国内メーカーが開発、タッチパネル搭載、スライド物理キーボード搭載ということで、とてもワクワクしたのを覚えています。
ただ、OS自体が全くもって不安定でした。あの時、MicrosoftにPHSへ公式対応してもらい、ちゃんとスマートフォン用のWM5 Phone Editionを搭載していればよかったものを、それを待たずしてPDA用のOSを魔改造し、W-SIM(PHS通信機能内蔵SIM)に対応したためです。通話中にフリーズとかザラですからね。(まあ、当時HTCが日本市場へのWMスマートフォン投入の機会を伺っていたので、『日本初のWMスマートフォン投入』の栄誉を獲得することを優先しての判断なのだと思いますが)
その後、W-ZERO3シリーズはW-ZERO3[es]でテンキーを手に入れ小型化、Advanced/W-ZERO3[es]はスペックも順当に進化していきました。他社からもWindows Mobile搭載機が続々と登場してきました。X01Tは通信こそ高速で、海外端末G900ど同一機体でROM焼きもできましたが、内蔵メモリも少なく、あまり出来は良くなかったです。X02HTはWM6 Smartphone Editionを搭載した非タッチパネル・前面QWERTY搭載機で、カスタマイズに従来以上にコツが必要・メモリ不足に悩まされましたが、キーボードの打ち心地は最高でした。WILLCOM 03も迷走感こそありましたが、デザインもいいですしキーボードの打ち心地は個人的には全ての機体の中で最も良かったです。
PDAから進化したスマートフォンの勃興。あくまでPDAの延長上にあったので、使いこなすためには覚えることがたくさんありました。入れるべきアプリのインストールや、バッドノウハウと言うべきレジストリカスタマイズまでして、やっと手に馴染んでくるんですね。伊藤浩一さんを始めとしたモバイラーの皆さんのブログを参考にしつつカスタマイズしていたのが懐かしいです。つまり、使いこなすにはちょっと敷居が高かったのです。それ自体を楽しめないと、苦痛な部分もありましたね。そのおかげで、上陸してきたiPhoneの方が盛り上がってきつつありました。
それでも、当時上陸したてのiPhoneよりは、自由度も高く、フリック入力よりも高速に入力できる物理キーボード+ATOK for WMのおかげで、WM機は最後の機種まで使っていました。(まあATOKをインストールして使えるようにするのに苦労した機種も多々ありましたが。)Touch Diamondと初代Snapdragon搭載のT-01Aは、メーカー独自シェルには不満があれど、使い勝手は悪くなくて、これでキーボードさえあればなと思う出来でした。(それがTouch ProとT-01B/IS02です)SamsungのSC-01BはX02HTの画面がタッチパネルになったようなモデルで、打鍵感が硬いことに慣れませんでしたが、なかなか愛着はわきました。(個人的にはSC-01Bは好きで、それ以上にGalaxy S SC-02Bが凄すぎて、買った直後の記憶が今でも鮮烈にあります。)確かiida G9、SC-01B、Xperia X10 SO-01Bの組み合わせで使っていました。そして最後のWM機となるdynapocket IS02は、静電式タッチパネルが使いづらい以外は良かったですね。
ちなみに個人的には一番良かったのは、前面QWERTYストレートの端末です。スライド式はギミックとしてはいいのですが、シャーシが歪んできたりフレキシブルケーブルが断線してきたり、寿命が短いのですよね。
そしてブランクを経て、SIMフリーとMVNOが普及しつつある今、またWindows 10 Mobileとして日本に帰ってきてくれたことがとても嬉しいです。(惜しむらくは愛すべきSHARPが危機、チャレンジャーWILLCOMが存在しないことです。)当時の機種は楽しくも悪戦苦闘でしたが、あの楽しさ・便利さ・自由さを誰もが享受できる時代が来たのです。思い出を噛みしめてスマートフォンを楽しんでいきたいところ。またあの時ほど悪戦苦闘することがあるとすれば、スマートフォンが本格的にメガネや腕時計に進化する時でしょうね。それもまた今後の楽しみのひとつです。