「やや過激な北岡素描を。「北岡伸一氏を素描する」:深草 徹氏」
憲法・軍備・安全保障
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今日、15日に、「安保法制懇」の報告書が発表され、安倍首相が、記者会見で直ちにこれを追認する「基本的方向」を出します。
北岡伸一座長代理のおしゃべりもあるますが、理論的批判には値しないものでしょう。
それに先立ってやや過激な北岡素描を。
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北岡伸一氏を素描する
1 北岡伸一氏は、私より2年後、1971年に東大法学部を卒業、同期生にあの枡添要一氏がいる。枡添氏は、卒業と同時に、同大学法学部政治学科助手として採用され、研究者として華々しいスタートを切ったが、北岡氏は、卒業後、同大学法学部大学院・法学政治学研究科に進学、1976年に法学博士の学位を取得している。
北岡氏の初期の研究課題は、日本陸軍の組織、政策であったらしく、博士論文は、「日本陸軍と大陸政策1906年−1918年」である。
研究者の略歴において、特筆されるのは、立教大学法学部専任講師、助教授、教授を経て、1997年に東京大学法学部教授に抜擢されたことである。それに先立つ数年前から、北岡氏は、研究者としての業績よりも学識経験者もしくは有識者としての政治・行政分野への進出で名前を売ることになる。。
いってみれば北岡氏の研究者としての業績のバブル現象である。
2 著書目録を見ると、博士論文「日本陸軍と大陸政策1906年−1918年」が1978年11月、東京大学出版会から出版されたのを皮切りに、最近の単著「官僚制としての日本陸軍」(筑摩書房・2012年9月)及び編著「国際環境の変容と政軍関係」(中央公論新社・「歴史のなかの日本政治」2・2013年12月)まで多数に及ぶ。その数の多さだけで評価するならば、北岡氏は一流の研究者の部類に入るのであろう。
私も、そのうちの一部を読ませていただいたが、たとえば「清沢洌―外交評論の運命 増補版」(中公新書・2004年7月、初版本は1987年1月)を読むと、戦前・戦中の自由主義評論家・清沢洌を時代背景とともに深く、適確に捉え、読者に呈示し、蒙を啓かれとともに、政治史研究者・北岡氏のみずみずしい感性に触れることができ、印象深い。
3 北岡氏は、1990年代初めころから、現代政治にかかわる論評を積極的に行い、時の政権の安保・外交政策を支持する発言が目立つようになった。時には自ら、安保・外交政策の政策リーダーと見まがうばかりの姿勢を示すこともある。
それとともに時の政権に学識経験者もしくは有識者として重用されるようになった。
具体的には、小泉政権のもとで、長期的な外交戦略検討のために設置された小泉首相の私的諮問機関「対外関係タスクフォース」委員(2001年9月から2002年11月)、外務省改革の一環として、過去の外交政策の政策評価を行うため設置された「外交政策評価パネル」座長(2002年8月から2003年8月)、外務省へ出向し、日本政府国際連合代表部次席大使としてニューヨークに赴任(2004年4月から2006年9月まで)、第一次安倍政権のもとえ日本版NSC設置検討のために設置された「国家安全保障に関する官邸機能強化会議」委員(2006年11月 から2007年2月)、日本の集団的自衛権保持の可能性について考える安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」有識者委員(2007年4月から2008年8月)、福田政権のもとで、福田首相の私的勉強会「外交政策勉強会」委員(2007年12月から2008年9月)などを歴任、政権交代後も、鳩山のもとで、日米間の密約を調査するための外務省の有識者会議の座長を務めた。
また、第一次安倍政権のもとで設けられ、その後引き継がれた「日中歴史共同研究委員会」の日本側座長もつとめている(2006年12月から2009年12月)。
なお、2012年、民主党政権下で、防衛計画の大綱に関する関係閣僚会議に参加したが、その際に、軍事が専門でないにもかかわらず、この会議で自衛隊の装備・編成にまで口を出し、物議をかもしたと言われている。
4 北岡氏の近況は以下のとおりである。
2012年3月、東京大学教授を辞職(定年退官直前?)し、同年4月より政策研究大学院大学教授に就任、同年10月国際大学学長就任。現在、国際大学学長、東京大学名誉教授。
第二次安倍政権のもとで、2013年2月再発足した安倍首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」において、座長代理に就任し、憲法9条の下で集団的自衛権行使を容認し、あるいは自衛隊の武力行使の機会拡大を容認するため、屁理屈をこね、非学術的な発言をさかんに行っている。
内緒の話であるが、私は、妻との会話では、北岡氏のことを、自衛隊オタク、武力行使マニアの「とっちゃんぼーや」と呼んでいる。
5 前記著作「清沢洌―外交評論の運命 増補版」(中公新書)の増補版への序文において、北岡氏は「それとともに、私は現代について書く機会が増えた。巨大な変化を分析するには歴史的視野が必要だからという要請がある一方、私の方でも、これまで歴史を分析してきた枠組みで目の前の巨大な変化が分析できるかどうか、興味深い知的チャレンジだと感じたからである。」と書いている。
北岡氏の最近の言動に、歴史的視野ならぬ「視野狭窄」と「没知的・蛮勇のチャレンジ」を見るのは私だけではなかろう。
北岡氏は、同書・旧版部の「おわりに」で、「逆境を切り抜けることに比べ、順境にスポイルされないことの方が容易だとは決していえない」との戒めの言葉を書いている。これは今の北岡氏にこそふさわしい言葉ではなかろうか。
(了)

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