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 結婚した夫婦の姓をどちらかに合わせる「夫婦同姓」を定めた民法の規定は憲法違反だとして、東京都内の事実婚の夫婦ら5人が国に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は16日、この規定は「憲法に違反しない」と判断し、請求を退けた。裁判官15人中10人の多数意見。

 判決は、「結婚の際に氏の変更を強制されない自由」は憲法で保障された人格権にあたるとは言えないと指摘。夫婦が同じ名字を名乗ることは社会に定着しており、「家族の呼称を一つに定めることは合理性が認められる」と判断した。

 さらに、改姓した側が「アイデンティティーの喪失感を受ける場合が多い」としつつも、旧姓の通称使用が広まることにより一定程度緩和される、と指摘。夫婦同姓が憲法の定める「個人の尊厳」や「男女平等」に照らし、合理性を欠くとは認められないと結論づけた。

 この訴訟では、明治時代に始まり、「家」制度を廃止した戦後の民法改正でも残った規定が、憲法の「法の下の平等」などに反しないかが争われた。

 原告は「国会が長期にわたって法改正を怠ったことで精神的苦痛を受けた」として、国に計600万円の慰謝料を支払うよう求めて2011年に提訴。一、二審とも請求は退けられていた。

 厚生労働省の昨年の調査では、結婚した夫婦の約96%が夫の姓に合わせており、原告側は「事実上、女性に改姓を強いている」と主張。「姓の変更を強制されない権利」は人格権として認められており、「個人の尊重」を保障した憲法13条に反する、などと訴えた。

 これに対し国は、最高裁の過去の判例を挙げ、規定が憲法で保障された権利を侵害し、国会が法改正を長期間怠った場合にのみ、国の賠償責任を問えると指摘。夫婦同姓の規定は、憲法で保障された権利を侵害していないと反論していた。