深き沈黙の娘
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遠野ふきは、生き別れの父を尋ねてシチリアへ渡った。だが自分が生まれたことさえ知らない父を前にすると、彼を苦しめた女の娘であるふきが名乗っても拒絶されるだけではないかという恐怖が先に立ち、ふきは沈黙したまま無為に年月を過ごす。
父の隣で笑う美しい妻と娘の存在。父への復讐心に燃え執拗に命を付け狙う女アビガとの戦い。心ときめかせた相手の冷たい態度。敵になり味方になりふきを翻弄する従兄弟。悪夢となって甦る葬り去ったはずの忌まわしい過去。現実はいつだって残酷で、ふきは精神を磨り減らしていく。
愛と憎しみが同じコインの裏表なら、自分が宙に放り投げたコインはどちらの目を出すのだろう。