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米軍普天間飛行場の移設に伴う沖縄県名護市辺野古沿岸の埋め立て工事に、政…
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米軍普天間飛行場の移設に伴う沖縄県名護市辺野古沿岸の埋め立て工事に、政府は近く着手する構えだ。大浦湾に2100万立方メートルもの土砂を投下する。だが、そこは世界で一級品の生物多様性を誇る「宝の海」だ。政府は考え直す必要がある。
どれほど豊かな海なのか。
沖縄防衛局が調べた環境影響評価書には、5334種もの生物が記録されている。
このうち、国の天然記念物ジュゴンをはじめ262種が環境省などが選んだ絶滅危惧種だ。世界トップクラスの生物多様性だと、研究者を驚かせた。
評価書にない新種も次々と報告されている。この10年でハゼやカニ、エビ、クマムシの仲間など新種26種が見つかった。学名もない体長3メートルものナマコなどもいる。調査が進めば、まだまだ新種が見つかるはずだ。
なぜこれほど豊かなのか。
地元のダイビングチームが出した図鑑「大浦湾の生きものたち」(南方新社)によると、湾とそこに注ぎ込む大浦川河口一帯には、マングローブや干潟、サンゴ礁、海草(うみくさ)・海藻(かいそう)藻場、砂場や泥地、浅瀬から水深60メートルの深い谷まで様々な環境が広がっている。それぞれの生態系が相互に影響し合っていることが、多様性の秘密だという。
防衛省は、事業の環境影響評価書で「環境保全への配慮は適正」などと結論づけた。だが昨年、日本生態学会など国内の21学会が「この海域の特異性がきちんと評価されていない」「埋め立てで環境が永久に失われる可能性がある」と警告した。
県の環境保全指針で、海域は最も厳しい保全を求める「ランク1」とされる。ジュゴンのえさ場やサンゴの移植計画もあるが、専門家には成功の可能性は低いとの見方がある。それでも前知事は埋め立てを承認した。
翁長知事がその承認を取り消した大きな理由は「現況や影響を的確に把握しているとは言いがたい。環境保全措置が適切に講じられているとは言えない」と判断したことだった。
野生のジュゴンは埋め立てや乱獲などで激減した。国内では防衛省が確認した3頭以外に信頼できるデータはない。辺野古沖にはその1頭が食事に来る。
豪州のジュゴンや米国のマナティーは、広い保護区を設けて厳格に保護されている。だが、日本のジュゴンを生息域ごと保護する法律はない。
世界最高クラスの生物多様性を誇る「宝の海」を失うのは、あまりにも惜しい。大浦湾は、軍事基地よりジュゴンなどの海洋生物保護区こそふさわしい。
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