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ワタミが過労死訴訟で和解した理由は、決算書で読み解ける

前川修満 [公認会計士、税理士]
2015年12月16日
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外食、介護業界の成功企業として一目置かれていたワタミ。なぜこのような事態になってしまったのか Photo by Ayako Suga

主力事業の1つである介護事業の売却決断、2008年に起きた過労死事件損害賠償請求の和解という2つの大きな契機を迎えたワタミ。一時は外食産業と介護事業の成功企業と一目置かれていた同社はなぜ、このような事態に陥ったのか。

先日、ソニーや東芝など注目企業の真実を決算書から紐解く『会計士は見た!』を出版した公認会計士の前川修満氏が、ワタミに起きた二大事件の背景を決算書から解説する。

「ワタミはブラック企業」
イメージを植え付けた過労死事件

 先日、2008年に起きたワタミの過労自死事件の損害賠償請求訴訟が、和解により終結しました。当初は、「道義的責任はあるが、法的責任はない」として争う姿勢を示していた創業者の渡邉美樹氏も、和解当日、清水邦晃現社長とともに和解協議の場に現れ、遺族に謝罪しました。

 なぜ、このタイミングでの和解となったのか。

 筆者は、ワタミの決算書を読みながら、その背景にはこの2年の急激な業績の悪化があると、強く感じました。

 上記は、2004年度以降のワタミの、売上高と各種利益をまとめた表です。これを見ると、2013年度には当期純利益(法人税等を支払った後の最終損益)が49億円の赤字となり、翌年の2014年度には更に業績が悪化した結果、128億円の赤字を計上していることがわかります。

 この赤字額は、それまでの黒字額と比べてみても、ワタミにとっては非常に大きな負担となるものでした。事実、この2年の赤字がワタミに与えたダメージは凄まじく、それまで積み上げてきた留保利益は一気に食いつぶされ、その額はマイナス6億円にまでなってしまっていました。

 つまりワタミは、ここで業績悪化に歯止めをかけなければ、近い将来、確実に債務超過に転落し、破綻してしまうという、ギリギリの状態に追い込まれていたのです。

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前川修満[公認会計士、税理士]

1960年金沢市生まれ。公認会計士・税理士。日本証券アナリスト協会検定委員。同志社大学卒。澁谷工業、KPMG港監査法人(現、あずさ監査法人)を経て、フリーに。2006年にアスト税理士法人を設立。代表社員に就任し、現在にいたる。日本税務会計学会会員。著書に『決算書はここだけ読め! 』『危ない会社は一発でわかる』(以上、講談社)、『会計士は見た!』(文藝春秋)などがある。

 


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