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【本紙前ソウル支局長公判】
韓国は起訴、裁判をどう報じてきたか 「産経新聞記者を擁護する立場は取りにくい」メディア関係者
【ソウル=藤本欣也】韓国の主要メディアは、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の在宅起訴や一連の公判について、「言論の自由」の観点から関心をもって報道してきたとはいえない。なぜなのか。
韓国の大手紙は保守系が朝鮮日報、中央日報、東亜日報など、左派系がハンギョレ、京郷新聞などに大別される。保守系の朴槿恵政権に対し、左派系メディアの方が批判的な報道を展開する傾向にある。
こうした中、昨年10月、加藤前支局長が朴大統領への名誉毀損で在宅起訴されると、左派系の京郷新聞は「検察側は加藤前支局長のコラムに関し、『虚偽』『悪意的』だと強調するが、立証するのは容易ではないとみられる」と批判的に報じた。ハンギョレも、加藤前支局長が引用した朝鮮日報のコラムと、加藤前支局長のコラムの内容を比較する特集を組み、両コラムとも同様の趣旨であると結論づけた。加藤前支局長に絞った検察当局の偏った捜査を批判したわけだ。
一方、保守系メディアでは、中央日報が加藤前支局長の在宅起訴について「大統領に関する名誉毀損で外国人ジャーナリストが起訴されたのは初めて」とその異例ぶりを指摘した。しかし総じて「言論の自由」の観点というより、加藤前支局長が取り上げた噂の内容が「男女関係」である点を強調し、事件を矮小化する報道が目立った。その理由として、あるメディア関係者は「韓国で極右とみなされている産経新聞記者を擁護する立場は取りにくい雰囲気が社内にある」と明かす。