軽減税率の導入を懸念するアカデミア有志による声明

2017年4月の消費税率引き上げに合わせて食料品全般を対象とした軽減税率制度の導入を含む税制改正が与党において合意された。

軽減税率制度は、欧州等の先行実施している諸国の実情を実証分析しても、所得再分配効果を期待できない(低所得者対策にならない)、その実施に際しては多大な社会的コストを伴い国民生活の混乱を招きかねない、軽減税率の商品別採択を巡って利権政治が横行しがちである等の問題がある。したがって、我々は、社会保障・税一体改革の原点に立ち、軽減税率制度の導入には反対の態度を貫いてきた。

軽減税率制度の導入は国民生活や経済等に直結する政策決定であり、かりに、社会的合意を経て制度導入をする場合にも、欧州型インボイスを採用し、いわゆる益税や不正の防止徹底等、消費税をはじめとする税制への信頼を確保していくことが不可欠である。こうした十分な準備を整えることなく、現状の内容や課税方式によって導入されることがあっては、将来に禍根を遺す税制の改悪になりかねないと我々は大いに懸念している。

政策関係者はもちろんのこと、広く国民全体で、この制度に内在する、メリットをはるかに超えたデメリットを議論し、あるべき社会的な合意形成を図っていかねばならない。我々は、まずは、アカデミア(経済学者、法学者、政治学者、シンクタンカー等)を対象に本声明を行うこととした。


発起人(五十音順)

赤井伸郎 大阪大学経済学部教授
井伊雅子 一橋大学国際・公共政策大学院教授
小塩隆士 一橋大学経済研究所教授
加藤久和 明治大学政治経済学部教授
亀井善太郎 東京財団研究員兼政策プロデューサー
川出真清 日本大学経済学部教授
佐藤主光 一橋大学国際・公共政策大学院教授
田近栄治 成城大学経済学部特任教授
土居丈朗 慶應義塾大学経済学部教授
冨田清行 東京財団研究員兼政策プロデューサー
西沢和彦 日本総合研究所調査部上席主任研究員
三原岳 東京財団研究員兼政策プロデューサー
森信茂樹 中央大学法科大学院教授

賛同人
池田信夫 アゴラ研究所所長


編集部より;今回の軽減税率導入に関する与党合意の内容や経緯を懸念し、アゴラ研究所としてアカデミア有志の皆様に賛同することになりましたので、発起人のお一人を通じて事務局・亀井様ブログの転載をお願いして快諾いただくとともに、池田の名前を賛同人として明記します。

なお、本声明文へのアカデミアの皆様の(経済学者、法学者、政治学者、シンクタンカー等)の賛同者の呼びかけも行っています。ご希望の方は事務局(亀井様 メールアドレス:kamei(at)tkfd.or.jp、at部分は@に変更)までメールをお送りください(お名前、ご所属を記入の上)。しかるべきタイミングで賛同者のお名前を社会に共有するとのことです。

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