◇「東西冷戦期の最も悪い時代を想起させる」
【モスクワ杉尾直哉】ソ連最後の最高指導者で1990年にノーベル平和賞を受賞したミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領(84)が毎日新聞のインタビューに応じ、ウクライナ危機やシリア問題で対立する米露関係について「東西冷戦期の最も悪い時代を想起させる」と指摘、「『熱い戦争』が現実に起きる危険性もある」と懸念を表明した。
ゴルバチョフ氏は、ソ連末期に米ソの対話で冷戦を終結させた経験を引き合いに出し、テロ対策で米露が立場を超えて協力するための「大きな対話」を行うよう米露双方に訴えた。
ゴルバチョフ氏は、パリなど欧州でテロが繰り返され、中東などから難民が押し寄せる現状について「非常に危機感を持っている」と述べた。国際社会がテロ対策に有効策を打ち出していないことに関しては「主要国間で対立が深まり、国際政治における信頼が崩れているため」と批判。信頼関係回復に向け、国連安保理での首脳・閣僚級会合の定期開催のほか、国連を中心とした「反テロ協定」締結の必要性を訴えた。
反テロ協定には、各国の軍や情報機関の協力に加え、「武装組織に武器を渡してはならない」との条項を盛り込むべきだと主張した。シリアやリビアで欧米諸国が反体制派武装勢力を支援し、内戦に発展したことを踏まえた発言だ。ソ連軍によるアフガニスタン侵攻(1979~89年)で、米国の支援を受けてソ連軍を撃退した中東出身者がその後、国際テロ組織アルカイダなどのメンバーになったことも念頭に置いている。
ゴルバチョフ氏は91年8月の保守派によるクーデターで政治力を失い、同12月に大統領を辞任、ソ連は崩壊した。ゴルバチョフ氏は総裁を務めるモスクワの「ゴルバチョフ基金」本部で11日にインタビューに応じ、質問に対して書面と口頭で回答した。
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