- 増税後、生活必需品の購買は前年比マイナスを推移
- 若年層ほど生活必需品の節約志向へ
- 支出が増えても収入が増えず、将来への不安から、購買心理は悪化
- 品目によって購入頻度減少やPBシフトの特性
株式会社インテージが保有するリサーチデータやリサーチ基盤を活用し、2014年4月から始まった消費税増税の影響を分析するプロジェクトです。今回の増税前後の影響について食品、日用雑貨品の分野を対象に、『市場』『消費者』『店頭』の3つの視点で分析し、その知見を活かして企業の消費税対策に向けたマーケティング活動を支援します。
今回の調査レポートにおいては、食品(生鮮食品除く)、清涼飲料、アルコール飲料、日用雑貨品、化粧品、ペットフード、ペット用品と定義しています。
- SCI‐personal
(全国個人
消費者パネル調査)*
- 全国男女 50,000人のパネルモニターによる消費者市場動向のトラッキングサービスです。食品(生鮮・惣菜・弁当などを除く)・飲料・日用雑貨品・医薬品の消費者購買パネル調査です。消費者購買パネルモニターが購入した商品のバーコードを携帯端末でスキャンし、インターネット調査画面から、その商品を購入したルートや個数・金額などを入力することで、日本全国の男女 50,000 人の消費者購買行動が分析できます。
- インターネット調査・調査概要
- 調査方法:インターネット調査 調査地域:全国 調査対象者:インテージ・ネットモニター“キューモニター”20〜69才男女1,000人 ※ウェイトバック集計値
- 分析者
- 中村 勇揮(消費税増税影響分析プロジェクトリーダー)
消費者パネルデータ : SCI-personal は、 SCIへ名称変更いたしました。
調査結果のまとめ
本調査では、増税後における消費者の購買実態の変化を、心理的変化と行動的変化に分解し、変化の要因を分析した。
まず、購買実態について、4月の増税後に落ち込んだ生活必需品全体の購買金額・数量は、5月末までは順調に回復するも、6月から回復が停滞。その後も前年比マイナスを推移している。年代別の傾向を見ると、年代が高いほど回復が早く、若年層ほど生活必需品の節約志向が高い状況になっている。
この状況を消費者の心理の変化の面から見ていくと、給与やボーナスで収入増をした消費者は少なく、増税によって家計負担は実質増加。「生活のゆとり」はどの世代でも去年より悪化し、特に30-40代で「生活が苦しい」消費者が多い。
支出が増えても収入が増えず、将来への不安から、購買心理は悪化しているといえる。
また、消費者の購買行動の変化の面から見ていくと、6月以降の回復停滞期には、生活必需品の購入頻度が減少。日々の生活に必要な食品での購入頻度減少は小さいが、飲料や日用雑貨での購入頻度減少が目立った。ビールや冷食などでは購入をやめたり、頻度を減らし、消費を抑えようとしている消費者が多い。
一方でトイレットペーパーは「減らせない」ため、プライベートブランドや特売での購買傾向へ向かっていることが分かった。
全体として、若年層を中心に購買心理が悪化し、節約志向となっているが、品目によって「節約」の仕方は異なることが見えてきた。
消費税10%への増税は延期された。しかし、増税により「消費者の購買心理が悪化」しており、更に「円安による原料高」という状況にある。
このような環境の中、生活必需品メーカーや小売店には価格や製品付加価値に関するマーケティング戦略が求められる。
調査結果
1.本分析の対象品目
本分析では図1の赤枠内を「生活必需品」と定義し分析している。
- [図1]
- 本分析の対象品目
2.生活必需品の購買金額・数量は前年比マイナスが続く
増税前後の消費者の購買実態の変化を見てみると、増税後、5月末までは順調に回復するも、6月から回復が「停滞」。増税分前後の金額前年比、数量前年比がマイナスのままとなっている。
- [図2-1]
- 生活必需品全体の購買金額・数量前年比
データソース:SCI- personal
データ指標:前年比(100人当り数量・金額) 対象モニター:15〜69歳
対象品目:食品・飲料・酒・日用雑貨・化粧品
購買ルート:全ルート エリア:全国(沖縄除く)
カテゴリーごとの実態を見ても、一時期はプラス回復するも、前年比ではマイナストレンドのままとなっている。
- [図2-2]
- カテゴリーごとの購買金額・数量前年比
データソース:SCI-personal
データ指標:前年比(100人当り数量・金額) 対象モニター:15〜69歳
対象品目:食品・飲料・酒・日用雑貨・化粧品
購買ルート:全ルート エリア:全国(沖縄除く)
3.年代別では60代の回復が一番早く、若年層ほど回復が遅い
生活必需品品目全体の購買前年比推移(週)を年代別にみると、60代が増税前に購入金額、購入数量共に1番伸びた。また、60代が増税後の回復が一番早く、7月時点でほぼ前年水準まで回復している。
一方で若年層ほど回復が遅い。
- [図3-1]
- 生活必需品全体の年代別購買金額前年比
データソース:SCI-personal
データ指標:前年比(100人当り数量・金額) 対象モニター:15〜69歳
対象品目:食品・飲料・酒・日用雑貨・化粧品
購買ルート:全ルート エリア:全国(沖縄除く)
カテゴリー別の購買金額を見てみると、各カテゴリーで60代は回復するも、現役世代では前年比マイナスが続いている。 一方で若年層ほど回復が遅い。
- [図3-2]
- カテゴリーごとの年代別購買金額前年比
データソース:SCI-personal
データ指標:前年比(100人当り数量・金額) 対象モニター:15〜69歳
対象品目:食品・飲料・酒・日用雑貨・化粧品
購買ルート:全ルート エリア:全国(沖縄除く)
4.増税前から増税後に掛けて市場は伸びたのか?
年代が上がるほど、増税前後累計の前年比は改善している。
- [図4-1]
- 生活必需品における2月3日週~10月27日週までの累計前年比
データソース:SCI-personal
データ指標:前年比(100人当り数量・金額) 対象モニター:15〜69歳
対象品目:食品・飲料・酒・日用雑貨・化粧品
購買ルート:全ルート エリア:全国(沖縄除く)
カテゴリー別に見ると、食品・雑貨は年代が上がるほど、増税前後累計の前年比が改善している。
- [図4-2]
- カテゴリーごとの2月3日週~10月27日週までの累計前年比
データソース:SCI-personal
データ指標:前年比(100人当り数量・金額) 対象モニター:15〜69歳
対象品目:食品・飲料・酒・日用雑貨・化粧品
購買ルート:全ルート エリア:全国(沖縄除く)
5.参考:世帯年収によって購買動向に差はあるのか?
世帯年収が低いほど去年より生活のゆとりが悪くなっているが、購買の変化は小さい。
「生活必需品」のため、世帯年収に関係なく「買わないといけない」ため、影響が小さいと想定される。
- [図5-1]
- Q:去年と比較して生活のゆとりはどのように変わりましたか
- [図5-2]
- 生活必需品全体の世帯年収別購買金額前年比
データソース:SCI-personal
データ指標:前年比(100人当り数量・金額) 対象モニター:15〜69歳
対象品目:食品・飲料・酒・日用雑貨・化粧品
購買ルート:全ルート エリア:全国(沖縄除く)
6.購買金額減少の要因となった消費者心理の変化とは?
給与やボーナスで収入増をした消費者は少なく、増税によって家計負担は実質増加している。
- [図6-1]
- 4月以降の収入と夏のボーナスの増減
「生活のゆとり」はどの世代でも去年より悪化している。特に30〜40代で「生活が苦しい」消費者が多い。
- [図6-2]
- 生活のゆとりについて
また、増税による個人消費への見通しが徐々に悪化している。
- [図6-3]
- Q:増税により個人消費にどのくらいの影響があると思いますか?
7.購買金額減少となった購買行動の変化とは?
6〜10月回復停滞期の減少要因について、購入頻度が減少(購入インターバルが拡大)したのは、「買わなくなったのか?」「使用量・頻度を減らし購入インターバルを伸ばしているのか?」を仮説に分析したところ、購入回数が減ったためということが分かった
- [図7-1]
- 生活必需品全体の購買回数と購買単価のトレンド
カテゴリー別に月ごとの購入回数と1回あたりの購入金額を見たところ、日々の生活に必要な食品での購入頻度減少は小さい。また、飲料や日用雑貨での購入頻度減少が目立つ。
- [図7-2]
- カテゴリーごとの購買回数と購買単価のトレンド
データソース:SCI-personal
データ指標:前年比(100人当り数量・金額) 対象モニター:15〜69歳
対象品目:食品・飲料・酒・日用雑貨・化粧品
購買ルート:全ルート エリア:全国(沖縄除く)
8.増税後、消費者の「購入の仕方」はどう変わったか?
「スーパーマーケット販売統計調査」では生鮮の売上が拡大。冷食⇒生鮮へのシフトで節約している可能性がある。
ビールや冷食などでは購入をやめたり、購入頻度を減らした消費者が多い。
一方で、トイレットペーパーは「減らせない」ため、PBや特売での購買傾向となっている。
- [図8-1]
- Q:増税後、購入の仕方についてどのような変化がありましたか? (購入者ベース)
また、消費の仕方を見てみると、ビールや冷食では増税を機に「利用頻度」が減少。これにより購買頻度や量の減少が起きていると考えられる。
- [図8-2]
- Q:増税後、消費の仕方についてどのような変化がありましたか? (購入者ベース)
トイレットペーパーでは更に購入単価が増加傾向。増税+単価増により、PB比率の拡大傾向も。
- [図8-3]
- トイレットペーパーの容量単価・PB比率のトレンド)
若年層を中心に購買心理が悪化し節約志向となっている。しかし、品目によって「節約」の仕方は異なる。
- [図9-1]
- 2014年増税後動向まとめ
来年に向けてやるべきことのキーワードは「価格」と「付加価値」。
消費税10%への増税は延期された。しかし、増税により「消費者の購買心理が悪化」しており、更に「円安による原料高」という状況にある。
このような環境の中、生活必需品メーカーや小売店には価格や製品付加価値に関するマーケティング戦略が求められる。
- [図9-2]
- 来年に向けてやるべきこと
調査結果プレスリリースPDF
『消費税増税 影響分析プロジェクト』2014追跡レポート関連調査レポート
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- ex)
- インテージ ビジネスパーソン意識調査『男性の美容意識』 2015年2月調査
株式会社インテージのビジネスパーソン意識調査『男性の美容意識』(2015年2月調査)によると・・
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