安い商船に意地の張り合い
海賊で商船を奪い合うカードゲーム。R.クニツィアが1992年にアミーゴ社(ドイツ)発表し、第2回アラカルトカードゲーム賞を受賞したものを、今年グループSNEがイラストも新たにリメイクした。ミニマルな手番の流れから生み出されるジレンマは、複雑化する現代では却って新鮮に感じる。
手番にやることは商船・海賊船のカードを1枚引くか1枚出すかのどちらかだけ。商船は自分の前に出し、海賊船はほかのプレイヤーの商船につける(海賊船を誰が出したかは、カードを置いた角度で見分ける)。商船は、1周の間に海賊船に襲われなければ得点、海賊船は、それを上回る強さの海賊船がほかに出されなければ商船を奪える。
ポイントは最初に出された海賊船の色に合わせなければいけないこと。商船には価値(コイン)の違いがあり、高い商船はみんなに狙われるため、どの色の海賊船で襲うかの選択が大事だ。みんなが出しきったと思われる色であれば、弱い海賊船でもものにできる。
ほかのプレイヤーがより強い海賊船を出した場合、カードを足して挽回ができる。各色の最強カード「船長」と1枚しかないオールマイティーカード「提督」は一気に片を付けられるカード。しかしあまり価値の高くない商船なのに意地の張り合いになることも。先に出した海賊を無駄にしたくないという「損失回避性」の心理だ。
しかしその間に、もっと価値の高い商船が出てくるのは悶絶もの。「うおー、こっちを捨てるしかないのか!」意地を張り合っているうちに美味しいところを持っていかれる漁夫の利も頻繁に起こる。危険を承知で商船カードを出港させるか、航海中の商船を海賊船カードで襲わせるか、将来のために手札を補充するか、プレイヤー同士の様々な思惑や利害が入り乱れて、奥深い駆け引きが展開する。
5人プレイで20分ほど。「提督」が早々と出てしまったので、商船を取れるかどうか読みやすくなったと思いきや、商船の出てくる順番で複雑な状況が生まれた。価値の高い商船を終盤まで取っておく人と、それを見越して少し前に出す人が現れ混戦模様に。ゲームが終わって蓋を開けてみるまでトップが分からないほどだった。短時間で細かな戦術が散りばめられたゲームを楽しめるのは素晴らしい。
Korsar
R.クニツィア/グループSNE(2015年)
2~6、8人用/10歳以上/20分
コメントする