町山智浩『スターウォーズ フォースの覚醒』公開直前特集

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、最新作『フォースの覚醒』公開を目前に控えた『スターウォーズ』シリーズについて話していました。

スター・ウォーズ/フォースの覚醒 (ムビチケオンライン券)

(赤江珠緒)それでは映画評論家、町山智浩さん。今日もアメリカ カリフォルニア州バークレーとお電話がつながっています。もしもし、町山さん?

(町山智浩)はい。町山です。どうも。

(赤江珠緒)よろしくお願いします。

(町山智浩)よろしくお願いします。じゃあもう、音楽いきましょう!今日は『スターウォーズ』です!



(町山智浩)はい。懐かしいですね。これ、わかります?みんなが聞いている『スターウォーズ』と違うの?

(赤江珠緒)なんか違いますよね。私も『違うな』と思って。

(町山智浩)これ、ディスコバージョンなんですよ。

(赤江珠緒)ディスコバージョン!?

(山里亮太)そんなのあるんだ。

(町山智浩)はい。『スターウォーズ』、最初公開された時に、アメリカで公開されてから1年、日本での公開に時間がかかったんですね。で、その間にこのディスコバージョン。Mecoっていう人が演奏しているんですけど。そういうのがやたらと流行って。もう予告編とかなんとか、全部見た後で、さんざん内容を知った後に僕、見せられてがっかりしたんですけど(笑)。でもやっとね、こうした形で。もう30何年ぶり?1作目からね。

(ラサール石井)そうだ。見ましたよ。オールナイトで。あ、ラサール石井です。

(町山智浩)あ、どうも。はじめまして。

(ラサール石井)はじめまして。僕、町山ファンなんで、残って聞かせて頂いております。

(町山智浩)あ、そうなんですか(笑)。どこでご覧になられました?最初は。

(ラサール石井)渋谷の、ええといまはないところですね。

(町山智浩)あ、東宝ですね。あのへんですね。

(ラサール石井)そうですね。渋谷の。あのへんです。道玄坂だったかな?

(町山智浩)道玄坂にありましたね。東宝の映画館が。

(ラサール石井)コント赤信号でストリップ劇場に出ていたんで。渋谷の。で、リーダーと小宮が嫌がったんですね。『だって、SFだろ?』って言われて。それぐらい、SFがバカにされていた時代だったんですよ。

(赤江珠緒)はー!
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『フォースの覚醒』プレミア直後

(町山智浩)そうなんですよ。でも、これでね、みんながSFっていうのは子供だましのものじゃないっていうことを知るようになったんですけども。で、ただね、やっぱり『スターウォーズ』、いまだにやっぱり・・・あ、そうだ。ちょうどさっきですね、新作『スターウォーズ フォースの覚醒』のプレミアがロスアンゼルスであったんですよ。

(赤江・ラサール・山里)ええーっ!?

(町山智浩)さっきです。終わったところです。

(ラサール石井)えっ?それは見たんですか?

(町山智浩)いや、見たか見てないか、あれですけど。見たとしても、言えないんですよ。なにも。

(ラサール石井)ああー、そうか。

(赤江珠緒)すっごいね、厳戒態勢みたいですね。

(ラサール石井)すごいな。そういう決まりがあるんですね。

(町山智浩)水曜日まで、アメリカ人も見た内容について、語れないんですよ。一切。

(赤江珠緒)語れない。へー。

(ラサール石井)あの、日本がアメリカと公開が同じなのは、今回初めてなんですよね?

(町山智浩)ええと、時差があるからどういう関係になっているのかわからないですけどね(笑)。日本の方が先に日が明けちゃうんで、いつもどうしてるのか、ちょっとわからないですけど。

(赤江珠緒)でも、同時公開ということで。

(町山智浩)こっちではね、17日の夜に公開なんですけどね。

(赤江珠緒)でね、日本もそれに合わせてね、午後6時半っていう風に聞いています。

(町山智浩)あ、じゃあ同時にするんだ。完全に。時差を考えて。

(ラサール石井)そのチケットが取れなかったんだよなー。予約がもう、いっぱいで。次の日には見ます。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。

(ラサール石井)ららぽーと船橋が取れたんで(笑)。

(町山智浩)船橋まで(笑)。

(赤江珠緒)だから楽しみにされている方、多いでしょう?ついにね。

(町山智浩)そうなんですけど、でも、僕は1回、『ファントム・メナス』で結構、ものすごく興奮して。『ファントム・メナス』っていうのがあったんですね。プリクエルっていう新三部作と言われるもので。それが、3ヶ月ぐらい前から映画館にみんな並んでいたんですけど。結構それでがっかりした人がいっぱいいるんで。今回はそれほど、みんな気合いを入れないようにしている感じですけどね。アメリカでも(笑)。

(ラサール石井)そう。あん時はね、結構みんなうるさかったんですよ。がっかりした!とか。

(赤江珠緒)ああ、そうか。

(町山智浩)そうなんですよ。映画館の前で3ヶ月暮らした人とかがいたんでね(笑)。結構大変だったんですけど。

(赤江珠緒)すごいな!気合い入りすぎてるな(笑)。

(ラサール石井)3ヶ月ってすごいな。

(町山智浩)でね、今回はだから『スターウォーズ』の新しい映画の話はしちゃいけないことになっているんで、しませんので。申し訳ないです。はい。ただ、たぶん僕以外の映画評論家も含めてスターウォーズファンも、あんまり話していないことを話します。『スターウォーズ』の町山だけが知っていること。っていうか、まあ知っている人は知っているけど、あんまりみんな言わないことですね。

(赤江珠緒)ふんふん。

『スターウォーズ』シリーズへの誤解

(町山智浩)でね、誤解があるんですよ。『スターウォーズ』って結構。いろんな誤解があって。誤解のひとつは、『スターウォーズがハリウッド映画である』っていう誤解なんですね。ひとつは。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)これは、一作目はハリウッドで撮影して、ハリウッドの映画会社の20世紀フォックスのお金で作ってはいるんですけど。その後は全部、監督ジョージ・ルーカスがひとりで資金を調達して、ハリウッドじゃない彼の自宅があるところで撮った映画なんですよ。ほとんど。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)それか、イギリスで撮った映画。

(ラサール石井)ああ、そういえばそうですね。

(町山智浩)そうなんです。だからハリウッドを経過してないんですよ。実際は。

(赤江珠緒)ええっ?あんな壮大な話を?

(町山智浩)はい。それはどうしてか?っていうと、一作目を撮った時に、『監督料はいらない』って言ったんですね。ジョージ・ルーカスは。『いらないから、商品化権だけ俺にくれ』と。

(ラサール石井)上手い!これがね、上手かった。

(町山智浩)で、映画会社は『なんだ、そんなんだったらいいよ』っつってOKしたら、商品化権のおもちゃとかいろんなもののお金の方が、映画のチケットの興行収入の何十倍も稼いだんですよ。

(赤江珠緒)へー!まあ、グッズもいろいろ出ましたもんね。

(ラサール石井)グッズとかそういうものの、いちばん最初なんですよ。それまでそんなの、なかったんです。

(町山智浩)そうなんです。それまでは『007』しかなかったんです。そういった映画で当たったものって。

(赤江珠緒)そうか。私も子供の頃、ダースベイダーノートってもらって。なんじゃ、これ?ってその時、わかんなくて。思いましたもんね。

(町山智浩)(笑)。それでものすごいお金を得たんで。『スターウォーズ』の権利を全部、20世紀フォックスから買い占めたんですよ。ジョージ・ルーカスが。

(ラサール石井)はー!なるほど、なるほど。

(町山智浩)だから、20世紀フォックスはもう『スターウォーズ』を配給させてもらうだけになって。あとは基本的にジョージ・ルーカスの個人の所有物になったんです。『スターウォーズ』は、すべて。で、お金も全部自分で資金調達して作っていったんで、基本的にハリウッド映画じゃなくて、いわゆるインディペンデント映画。自主映画なんですよ。

(赤江珠緒)自主映画でこの規模!?(笑)。

(町山智浩)そう。世界最大の自主映画なんです。『スターウォーズ』っていうのは。まあこの間、ディズニーに売却したんで。もうまた、ハリウッド映画になりましたけどね。

(ラサール石井)その売却益を全部寄付したんですよ。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)40億ドルかなんかですね。慈善団体を作って、そこで運営してるみたいですけどね。詳しいですね!(笑)。

(ラサール石井)あ、いやいや。そこそこ。『映画秘宝』とか読んでますから。

(町山智浩)ああ、そうですか(笑)。ありがとうございます。あとね、もうひとつの誤解で、『スターウォーズっていうのは良い子も楽しめる娯楽活劇』って思われているんですよね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)それがまず、すごく間違いなんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(町山智浩)『スターウォーズ』って主人公のルーク・スカイウォーカーを中心にして見ると、悲劇でしかないんですよ。

(山里亮太)えっ?

(町山智浩)まず、自分の育ての親を殺されて、自分の師匠を殺されて。で、それを殺した犯人のいちばん悪いやつと思っていたダースベイダーが自分の父親だって言われて。

(赤江珠緒)うんうん。そうでした。

(町山智浩)で、しかも手首を切断されて。自分の父親に。最後はね、父親が目の前で死んでいってそれを荼毘に付すっていうね。

(赤江珠緒)ああー、そうか。

(ラサール石井)だからギリシャ悲劇みたいなんですよね。

(町山智浩)そうなんですよ。だからぜんぜん本人幸せになっていないし、しかも、銀河を救ったのはルークなんですけど、そのことはたぶん、誰も知らないんですよ。

(ラサール石井)ああ、そうか。歴史に残ってないってことですね。

(町山智浩)そう。宇宙中の人はイウォークとハン・ソロたちがデス・スターをやっつけて、銀河帝国を滅ぼしたってたぶん思っているでしょうね。

(ラサール石井)なるほど。しかも今回、ルークがどう出てくるのか、誰もわからないんですよね。

(町山智浩)誰もわからないんですよ。だからルークっていうのは本当に悲劇の主人公なんですけど。みんな勘違いして、明るい映画だと思っているんですけど。なんでこんなに暗いんだろう?って思ったら、これは僕、実際にジョージ・ルーカスに直接会っているんですけど。本当に暗い人なんですよ。この人は。

(ラサール石井)ああ、はいはい。そうなんですか。

監督 ジョージ・ルーカス

(町山智浩)そうなんです。で、彼が生まれた町にも行ったことがあるんですけど。モデストという町で。僕の家から1時間半ぐらいなんですけど。車でね。本当に農業の町で。畑と荒野以外なにもない、だだっ広い地平線の彼方まで何もないところなんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)そこに生まれて。で、お父さんはその町でいちばんの事務用品のお店の経営者だったんですね。で、ものすごく意地悪で頑固で保守的で権威的なお父さんだったんですよ。

(ラサール石井)ふんふんふん。

(町山智浩)で、ジョージ・ルーカスっていう人は僕より身長が低くて、やせっぽっちで体が弱くて。それに交通事故で怪我して。とにかく、あんまり強い人じゃないんですね。いじめられっ子で。

(ラサール石井)そうなんですか。ちょっと偏屈な人ですか?

(町山智浩)ジョージ・ルーカスさんはね、謙虚でおとなしい人なんですけど。お父さんがすごい偏屈だったみたいなんですよ。

(ラサール石井)じゃあそのエディップス・・・ファーザーコンプレックスみたいな

(町山智浩)エディップスコンプレックス。そうですね。で、『映画を作りたい』って言ったら、『お前はこのうちの店を継ぐんだ。お前はこの店を継ぐために生まれてきた』っていう風に言われて、反対されて。で、結局家出同然にしてハリウッドに飛び出したらしいんですね。ジョージ・ルーカスは。

(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)で、その時もお父さんは普通だったら『がんばれよ』って言うべきなのに、こう言ったんですって。『お前、映画なんかやったって絶対に失敗するぞ!』って言ったらしいんですよ。お父さんが。

(赤江珠緒)うわー・・・そんな?

(町山智浩)嫌なオヤジなんですよ。

(ラサール石井)なんか、ダースベイダーとルークみたいな。

(赤江珠緒)そうですね。押し込められていたんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。それで、ジョージ・ルーカスさんが最初に作った映画『THX 1138』っていう映画は、遠い未来で、人類が自由のない都市に閉じ込められていて。その主人公が警備を破って外の世界に脱出するっていう話なんですね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、その次に撮ったのが『アメリカン・グラフィティ』っていう映画で。これは、ジョージ・ルーカスさん自身の話で、モデストが舞台なんですよ。田舎町で、行き場のない主人公が田舎町を飛び出す決心をするっていう話なんですね。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)で、『スターウォーズ』をその次に作るんですが、『スターウォーズ』は砂漠の惑星で、農民として暮らす主人公ルークが、もう絶望的な気持ちになって。『ずっとここで生まれて死んでいくのか』っていう気持ちになったところで、夕日を見るっていうシーンがあるんですよ。

(ラサール石井)2つの夕日を。

(町山智浩)そうなんですよ。2つの夕日をね。あれはもう完全にジョージ・ルーカス自身なんですよね。

(赤江珠緒)ああー、じゃあ父親の呪縛を断ち切りたい!みたいな、そういう思いがずーっと作品にあるんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。実際に父親に『お前は俺の後を継ぐんだ!』ってやられてますからね。

(ラサール石井)そうだ。ダークサイドに落とされようとしてるんだな。

(町山智浩)そうなんですよ。だからすごくね、リアルな話なんですけども。で、結局ルークはそこから出てですね、巨大な帝国に挑むんですけど。ジョージ・ルーカスもその頃、ハリウッドでは資本家とプロデューサーが牛耳っていて、監督は自由に映画を作れなかったんですけども。この『スターウォーズ』によって完全な自由を勝ち取ったんですよね。彼は。帝国に対して。

(ラサール石井)なるほど。

(町山智浩)だから本当にルークがやったことを自分もやったんですよ。『スターウォーズ』で。

(赤江珠緒)はー!ハリウッドが帝国だったんだ。

(町山智浩)ハリウッドはその頃すごい、完全な帝国だったんですよ。で、監督の自由はまったくなくて。ファイナルカット権っていうんですけど、最終編集権は監督にはなかったんですよ。当時は。

(赤江珠緒)ええーっ!?

(ラサール石井)編集家のものですもんね。

(町山智浩)編集はもうプロデューサーが決めるんですけど。ジョージ・ルーカスがこれで『スターウォーズ』によって完全な自由を勝ち取って。帝国から自由になったんですよ。わずか33才ですけどね。

(ラサール石井)すごい。まあ、映画を変えましたもんね。

(町山智浩)そうなんですよ。だからもうハリウッドがそれで変わったんですけども。ただですね、この後、『ジェダイの復讐』までずっと3作つくって、巨大なルーカス帝国を作るんですね。自分自身が、ハリウッドから離れたところに。ただね、その後どんどん不幸になっていくんですよ。ジョージ・ルーカス自身は。

(赤江珠緒)えっ?

成功後、不幸になるジョージ・ルーカス

(町山智浩)まず、ルーカスフィルムっていう会社を作るんですけど。そこで経営をするんですけど、すごくワンマンになって、他の人のことを聞かなくなって、どんどん友達がいなくなっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)あらら。

(町山智浩)で、しかも、その3作をずーっと作った時にですね、編集をしてくれたのは奥さんなんですね。映画の編集を。映画学校で会ったマーシャさんっていう人なんですけど。で、マーシャさんっていう人は、この人ね、編集の天才だったんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)で、『スターウォーズ』であれだけ複雑な編集をやって、アカデミー賞をとっているんですね。しかも、『タクシードライバー』もマーシャ・ルーカスの編集なんですよ。で、『帝国の逆襲』。二作目もそうだし、特に『ジェダイの復讐』っていうのはものすごく複雑な、4つぐらいの場面で話が同時進行する話なんですね。あれをまたマーシャさんが編集して。天才的な編集者なんですね。マーシャ・ルーカスっていう人は。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)ただ、ジョージ・ルーカスはルーカスフィルムの経営でもって忙しくなっちゃって。仕事に没頭するあまり、奥さんを放ったらかしにしたら、奥さんが自宅の豪邸のステンドグラスのデザイナーと不倫しちゃったんですよ。

(赤江珠緒)あらー!

(ラサール石井)それは知らなかった。

(町山智浩)そうなんです。それで『ジェダイの復讐』の後に、離婚してるんですよ。

(赤江珠緒)えっ?4、5、6と作った時点で離婚しちゃった?

(ラサール石井)マーシャの復讐。

(町山智浩)離婚してるんです。そう。マーシャの復讐なんですよ(笑)。で、しかも奥さんが浮気したんだけど、カリフォルニアでは法律でどっちのミスであっても財産は真っ二つに分けることになっているんで。マーシャ・ルーカスさん、50億円以上持っていっちゃったんですよ。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)それで、ジョージ・ルーカスは何をしたか?っていうと、自分の周りにマーシャ・ルーカスが二度と現れないように、自分の知り合いのフランシス・コッポラとかマーティン・スコセッシとかスピルバーグとかジョン・ミリアスとか、そのへんの監督。ブライアン・デ・パルマとか全部に『マーシャ・ルーカスを使わないでくれ』ってやったんですよ。

(ラサール石井)あら!?意外と嫌なやつ?

(赤江珠緒)あら。意外とそういう根回ししちゃう?

(町山智浩)会いたくないから。で、特にマーティン・スコセッシは『タクシードライバー』とかでずっとマーシャ・ルーカスの世話になっていたんで。すごく辛かったみたいですね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)だからね、ジョン・ミリアスっていう監督は『マーシャ・ルーカスを失ったことはハリウッドにとって本当にデカい損失だ』って言ってるんですよ。でもまあ、会いたくなかったんですね。まあ、変な男に取られちゃったから。

(ラサール石井)人の映画、やったっていいじゃんね?別に会わないじゃん。

(山里亮太)復讐じゃない?それこそ。

(町山智浩)まあ、そうなんですけどね。でも、そのへんのいま言ったメンバーってハリウッドを仕切っているメンバーですからね。はっきり言って。これはもう、どうしようもない。ただね、お父さんとは和解してるんですよ。

(赤江珠緒)へー。

(町山智浩)あのね、1989年にお母さんが病気で亡くなっているんですね。その時に、ルーカスは『インディー・ジョーンズ 最後の聖戦』っていう映画を作るんですよ。それは、主人公インディー・ジョーンズとお父さんが和解する話なんですよ。

(ラサール石井)あ、ショーン・コネリー。

(町山智浩)ショーン・コネリーと。しかもシニアとジュニアっていう名前担っているんですね。インディー・ジョーンズとお父さんの名前が。ジョージ・ルーカスのお父さんもジョージ・ルーカス・シニアっていうんですよ。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)ジョージ・ルーカスはジュニアって呼ばれていたんですよ。

(赤江珠緒)すごくリンクしてますね。自分のことと。

(町山智浩)その映画の中ではシニアがお母さんを放ったらかしにしたんで、お母さんは病気で死んじゃったっていう話になっていて、本当の話なんですよ。それは。

(ラサール石井)なるほど。これ、そのうちジョージ・ルーカスの伝記映画がかならずできますね。

(赤江珠緒)そうですね。

(町山智浩)(笑)。ねえ。だから自分の人生をそのまま映画に出している人なんで。だからその次の、プリクエル三部作っていう、アナキン三部作と言われる、アナキン・スカイウォーカーっていうルークの父親がダースベイダーになる話っていうのが、ものすごくジョージ・ルーカス自身を映しだした内容になっちゃったんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)っていうのはこのアナキンっていうのは天才的な戦士として、非常に貧乏な惑星で発見されるんですけども。銀河共和国に取り上げられて、優秀な戦士として世界を救うんですね。ところが、すごく驕り高ぶっていって、どんどん孤立していくんですよ。

(ラサール石井)それが自分自身なんだ。

(町山智浩)自分自身なんですよね。それでどんどんどんどん孤立していって。でも、『俺はこんなに天才なのに、なんでみんなわかってくれないんだ!?』ってなっていって。それで、奥さんとも仲悪くなっていって、自分の奥さん。アミダラ姫っていうんですけども、自分の奥さんが自分の親友のオビ=ワン・ケノービと浮気してるって思い込むんですよ。

(ラサール石井)本当だ。似てる。

(赤江珠緒)本当だ!

(町山智浩)そうなんですよ。それで、最後はオビ=ワン・ケノービに立ち向かっていって、両手両足を切られちゃうんですよね。アナキンは。それで暗黒面に落ちるんですけど。これ、銀河の運命を変えた暗黒面に落ちる理由が奥さんに対する浮気の嫉妬だったっていうのが、原因がとんでもない内容なんですね。

(ラサール石井)確かにそうですね。

(町山智浩)でも、それはジョージ・ルーカスが本当に憎んでいた父親に彼が実は気がつかないうちになっていたっていうことでもあるんですよ。

(ラサール石井)そうです。そうです。たしかにそうだ。

(町山智浩)だからそう思うと、結構本当に重たい話なんですよね。

(山里亮太)宇宙でドンパチっていう映画じゃないんですね。

(赤江珠緒)なんかあの曲にちょっと飲まれてね、楽しい感じになっちゃってましたけど。

(ラサール石井)いま現在、ジョージ・ルーカスはどんな気持ちなんですかね?

ジョージ・ルーカスの近況

(町山智浩)ええとね、この暗い暗い、地獄に落ちる、暗黒面に落ちるアナキン三部作を撮り終わった後ですね、親友のスティーブン・スピルバーグからメロディ・ホブソンさんっていう女性を紹介されるんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)これ、スピルバーグの会社、ドリームワークスの重役の人なんですけど。当時、まだ30代なんですけども、スターバックスの重役も兼ねていて。で、自分自身の投資会社の経営者でもある、天才的な投資のすごい人だったんですね。この人は。で、そっちに写真があると思うんですけど。アフリカ系の人です。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)で、この人はアメリカでもっともパワフルな女性の1人と言われてるんですね。フォーブスとかいろんな経済誌で。で、この人と恋に落ちました。ジョージ・ルーカスは。


(赤江・ラサール・山里)へー!

(町山智浩)はい。でね、いままで養子はいたんですけど、初めての生物学的な子供も授かったんですよ。写真があると思うんですけど。子供、かわいい赤ちゃんがいるんですよ。ジョージ・ルーカスは。


(赤江珠緒)本当ですね。うんうん。

(ラサール石井)そうか。

(町山智浩)いま、70ですけどね。ジョージ・ルーカス。

(ラサール石井)年の差婚と聞くと、なんか人事とは思えない。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)(笑)。まあこの奥さんもね、ちょっといま40ぐらいなんですけど。見た目はすごく若く見える、かわいい感じの奥さんですね。メロディさん。

(ラサール石井)メロディさん。名前がいいですね。

(町山智浩)それでいま、ものすごく幸せなんで。要するに、彼がずっと何十年も抱えてきた闇がやっとね、消えたんですよ。

(赤江珠緒)あ、そうですか!よかった、それは。

(町山智浩)だから、『スターウォーズ』を売っぱらったんですよ。

(ラサール石井)これ、呪縛から解き放たれようとしたんですかね?

(町山智浩)そうなんですよ。売っぱらってすぐに結婚したんですよ。彼。

(赤江珠緒)へー!

(ラサール石井)なるほど。人生をやり直しているんだ。

(赤江珠緒)もういいと。『スターウォーズ』は。

(町山智浩)そう。『スターウォーズ』っていうのは彼の心の闇だったんですよ。自分の人生を全部詰め込んだのが『スターウォーズ』だったんだけど、やっと幸せを掴んだから。いいんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ!?この長い大作が、そんな個人的なことだったとは!?

(町山智浩)そんなものですよ。映画はみんな。はい(笑)。

(ラサール石井)まあ、原動力というものはそういうもんなんでしょうね。

(山里亮太)投影してるんだね。自分をね。

(町山智浩)そうなんですよ。だから、辛いことがあればあるほど、いい作品はできるんだけど本人は辛いっていうことですよね。

(赤江珠緒)ふーん!

(山里亮太)じゃあどうなるんだろう?今回。幸せな状況なのに。

(町山智浩)今回は、初めて『スターウォーズ』シリーズがジョージ・ルーカスの個人的な心の闇と全く無関係に作られる最初の作品なんですよ。

(ラサール石井)ジョージ・ルーカス、一応台本を書いたんだけど、却下されちゃったんですよ。

(町山智浩)そう(笑)。

(赤江珠緒)えっ?ジョージ・ルーカスのが?

(ラサール石井)のが。で、これからはディズニーだから。もっと子供も楽しめるようなものになっていくんじゃないか?と。

(町山智浩)言われてるんですよ。で、今回はジョージ・ルーカスは完全に、知らない他の人が作った知らない作品として楽しんだそうですよ。

(山里亮太)あ、もうそんな軽い感じなんだ。

(赤江珠緒)(笑)。ご本人も。へー!

(町山智浩)そう。本人はもうかわいい赤ちゃんね、娘の名前、エベレストちゃんって言うんですよ。

(ラサール石井)これがまたすごいですね。

(赤江珠緒)え、エベレストちゃん?

(町山智浩)これ、キラキラネームだろ、お前!?と思いましたけどね。

(ラサール石井)エベレストちゃんってなかなかつけないよね。

(赤江珠緒)(笑)。ちょっともう完全に浮かれてますね。

(町山智浩)エベレスト・ルーカスってね(笑)。でも、だから幸せだから、いいみたいですよ。

(ラサール石井)そうなんだな。要するに『スターウォーズ』はもう一人歩きを始めて。手を離れて。これからまた、どんどんと発展して行くわけですね。これね、ディズニーのことだからこの『スターウォーズ』ね、死ぬほどやりますよ。これから。

(赤江珠緒)ああー!そうですね。これから、いろんな形でね。へー!

(町山智浩)でもこの最初のね、6作品っていうのは本当に、みんないろいろと『なんでこんな映画なんだろう?』とか、『なんでこんなに暗いんだろう?残酷なんだろう?』って思うかもしれないですけど。これは本当にジョージ・ルーカスっていう人の本当、個人的な人生が詰まっているんで。そう思って見てもらえるとまたね、見方が変わってくると思いますよ。

(ラサール石井)いやー、これはすごい。

(赤江珠緒)そうですか。

(町山智浩)ちなみに養女の1人はね、女子の格闘家になって。日本の選手とも戦ってますね(笑)。

(赤江珠緒)本当だ。アマンダ・ルーカスさん。

(町山智浩)そこに写真があると思いますけども。


(ラサール石井)資料にありますね。

(町山智浩)総合格闘家になって、結構強いんですよね(笑)。

(赤江珠緒)いや、本当にドラマになる方ですね。周りの登場人物からして。

(山里亮太)自伝のね、映画化も。ひょっとしたらあるかも。

(町山智浩)この人もね、『スターウォーズ』シリーズに出てますよ。メイクしてますけども。

(赤江珠緒)そうですか。いや、今日はね、いよいよ公開直前という『スターウォーズ フォースの覚醒』についての特集でした。町山さん、ありがとうございます。で、町山さんは今週の土曜日の夜10時からの『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』。宇多丸さんの番組にもご出演されるということですね。

(町山智浩)それはもう、見た状態で行きますから。もう話せますんで。なんでも話します。

(ラサール石井)これは聞こう。

(赤江珠緒)今週土曜日の夜10時からでございます。で、翌週、来週『たまむすび』にはスタジオにお越しいただくということで。お待ちしております。町山さん、ありがとうございました。

(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)はい!

<書き起こしおわり>

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