1時間目

地球規模の問題

 

1.国際化

 みなさんこんにちは、ではいきなり授業を始めます。世の中国際化の時代だなんて言われていますが、みなさん国際化ってどんな状態かイメージできますか? まず、日本の中に外国から人やモノが入ってきて、日本から外国に人やモノが出て行く…。こんなことをいうと、どんなものを想像しますか?

 例えば、日本国内では10年前よりもずっと、白人や黒人の人たちをよく目にするようになりました。あるいはスーパーではフィリピン産のバナナやオーストラリア産の牛肉など外国から輸入した商品がけっこう並んでいます

今度は外国に目を向けてみましょう。みなさん知っていますか?ニュージーランドで走っている車の半分以上が日本車だということを…。あるいは最近では日本のアニメ「ワンピース」が世界各国で大人気です。しかもアジア人であれば「ドラえもん」を知らない人はほとんどいません。このように外国ではけっこう日本製品があふれています。しかし、外国に進出する日本人も多くなったかというとそこはまだまだ、中国人や韓国人などに比べたら、外国に移住する勇気はまだ負けているかなという気はします。

ニュージーランドで見かけた日本のアニメ
ドラえもん ドラゴンボール ワンピース 
とっとこハム太郎 ポケットモンスター 
遊戯王
 スラムダンク セーラームーン 
宮崎駿作品 など

 まあともあれ、このように最近は、世界を身近に感じることができるようになりました。このような状態のことをグローバル化(世界が一体となる状態)あるいはボーダレス化(国境がなくなるような状態)といいます。微妙に意味は違いますが、センターレベルではほぼ同じ意味でとっておいてもらってかまいません。ここで大事なのはグローバル化・ボーダレス化がどのような状態なのかをイメージすることです。というわけでみんな想像してください。はい、ジョン・レノンも歌ってました。「♪想像してごらん。国境のない世界を…♪」国境がない状態ってどんな状態ですか。なぜこのような状態になってきているのですか。はい想像しましょう。「♪その気になれば簡単なことさ…♪」

 

2.NGOとNPO

 国際化がすすんだおかげで、国際的な問題もたくさん出てきました。例えば環境問題なんかが代表的ですが、それらの問題についてはあとで詳しく説明していきます。とりあえずそれらの問題は、それぞれの政府の代表が国連なんかに集まって、解決しようとするのが普通なのですが、国際化が進むにつれて、いろいろな国の個人がそれらの問題を解決するために集まって、独自の組織を作るようになって来ました。しかも、それらの組織はどこの国からも命令されず独自に行動するそんな組織のことをNGO(非政府組織)といいます。かっこいいよね〜。政治家たちの思い通りにならず世界的な問題に取り組む。しかも彼らは、企業と違って利益を得ることを目的とせず、ボランティアで、寄付金なんかを頼りに行動するすごくいい人たちです。ただ、最近は大きいNGOなんかは、寄付金をもらうことに必死になって本来の目的を忘れているNGOもいます。お金は怖いよね。主なNGOを以下にまとめます。

アムネスティ・インターナショナル…「良心の囚人」と呼ばれる宗教や思想の違いを理由に、独裁者などに、刑務所に入れられている人を釈放してもらうため、「その政府に手紙を書きまくる」という嫌がらせをするという団体です。ノーベル平和賞を受賞しました。

国際赤十字・・・基本的には、戦争中に、どこの国の人でも平等に治療をすることを目的に作られた、医療ボランティア団体です。つまり、「おれは日本人の医者だから、日本人の兵隊は治療するけど、アメリカ兵のケガ人にはとどめを刺すよ。」なんていう医者を批判してます。

国境なき医師団・・・基本的には国際赤十字と考え方は同じです。ただ、国際赤十字が政治には口出ししない方針であるのに対し、戦争や貧困などの問題解決を政府に意見するところなんかがちょっと積極的です。

地雷禁止国際キャンペーン・・・1997年にノーベル平和賞を受賞しました。亡くなられたダイアナ元イギリス皇太子妃が支援していたことで有名です。この人たちの活動により国連で、対人地雷禁止条約が締結されました。

   グリンピース・・・環境問題、野生動物の保護などを訴える団体ですが、日本では食用捕鯨の禁止を訴えた団体として有名になりました。おかげで日本では鯨肉が食べにくくなりました。

 また、NGOと紛らわしい言葉としてNPO(非営利団体)というのがあります。何が違うかというとはっきり言って、やっていることはほぼ同じです。ただ、最近では国際的な活動をして国連なんかにも出席する権利を持っているような大規模な団体をNGO、基本的に国内で活動が盛んで小規模な団体をNPOと呼ぶ傾向があります。特に日本ではNPO促進法(特定非営利活動促進法)により、簡単な申請によりNPOを作り、しかも税金の優遇など政府からの支援も受けられるようになりました。

 

3.科学技術の発達

 このような国際化を可能にしたのは科学技術の発達が大きな役割を果たしています。つまり、飛行機、船舶、鉄道などの交通網の発達やインターネットなどのコンピュータネットワークの発達(IT化が世界の一体感を強め、グローバル化・ボーダレス化を可能にしました。はい、というわけで今度はコンピュータが発達した状況をイマジンしてください…。パソコンって便利ですよね。例えば、飛垣内なんかは、けっこうマニアックなCDや本を買うときは、インターネットで買い物します。インターネットで注文して、商品は近所のセブンイレブンで受け取ることができます。しかも送料は無料。これは便利です。しかも、この前、卒業生に飛垣内お気に入りの鉛筆をプレゼントすることにしたんですが、その鉛筆が、前売ってた店においてありませんでした。そこでインターネットで検索したところ、飛垣内と同じ趣味の文房具をネットで売っている人を見つけて、なんとかインターネットで購入することができました。ちなみにこの人は、音符や楽器の形や模様の入った文房具を専門に売っている人でした。普通、商店街なんかで、そんなマニアックな専門店なんか作れんよね。しかも、店を開いたら商品を並べるスペースもいる。しかし、ネット上のお店は、そんなスペースを必要としないし、日本中、うまくいけば世界中の人たちを相手に商売できる。そんなネット上のお店やオフィスのことをSOHO(Small Office Home Officeといいます。みんなも何かいいアイデアがあれば、ネット上でお店を開いてみてもいいかもね。

 しかし、パソコンもいいことばかりではありません。特に最近問題になっているのが、デジタル・ディバイド、つまり、パソコンを使いこなせる人は確かに生活が便利になっているけど、パソコンが使えない人、特におじいちゃん、おばあちゃんなんかは全くパソコンの恩恵を受けることができず、パソコンを使える人と使えない人との情報量、便利さの格差が広がっていることをいいます。パソコンを使える人でも、時々パソコンの調子がおかしいとけっこうパソコンに振り回されます。先生たちの中でも、パソコンでテストを作っていて、完成直前にパソコンが止まって、データが全部消えてしまったなんて、よく聞く話です。パソコン社会も決して便利なものではないことも忘れないように。

 以上、科学技術の発達により、生活が便利になったことを説明しましたが、最後に一言、科学技術は便利だけれども、科学技術に頼りすぎることは危険であることも忘れないでください。例えば、原子力発電所は、ちょっとの燃料で大量の電気を発電することができるけど、事故が起こったら大変なことになります。でも、電力会社の人たちは地元住民の人たちに「絶対に事故は起こりません。」なんて説明します。でも、忘れないでください。あのタイタニック号も「世界一安全な船」「絶対に沈まない船」なんていわれていたことを、そんな船がどうなったかは、映画を見てください。そう考えると「クローン技術は安全です」なんていっている人も入るけどどうなんだろうね。まあ、さすがに日本はクローン規制法により、クローン技術の人間への応用は禁じられているけど、将来はどうなるんだろうね。優秀なクローン人間たちが世界を支配して、バカな飛垣内みたいな人間は全員抹殺されるなんて、そんな時代が来なけりゃいいけど。

 

4.人口問題

 それでは、国際化が進むことにより世界レベルで議論されるようになった諸問題を見ていきましょう。まずは人口問題です。飛垣内が高校生の頃(1990年ごろ)は、世界人口は約50億人と覚えていましたが、2005年現在で世界人口は約65億人ですこれは、1年間に約7400万人、世界人口が増えている計算になり、1日に20万人、1時間に8400人、1分間に140人、1秒間に2人ずつ増えているということになります。またこれは、1年間に6300万人が死んで、1億3700万人が産まれている計算になります。

このように人口が急激に増えることを人口爆発といいます。特に、この人口爆発はアジアやアフリカの発展途上国で起こってます。なぜなら貧しい農業国では、子どもたちは農作業をするための貴重な労働力だからです。農作物を育てるためにはたくさんの子どもたちが必要となります。ちなみにヨーロッパなどの先進工業国では人口はそんなに増えてません。それは、発展途上国と違って、先進国では女性の社会進出が盛んで、女性が仕事を持つ関係で、産むことのできる子供の数が安定しているからです。逆に、仕事が忙しすぎて子供を生む余裕のない日本なんかは2010年からは人口が減ってしまうという予想まで出ています

 人口爆発を200年も前にすでに予想していた人がいました。マルサスです。マルスですよ。マルスとごっちゃにしないでください。マルサスは『人口論』という本の中で、「食料は等差的(1,2,3,4,5,6,7…)に増加するが、人口は等比的(1,2,4,8,16,32,64)に増加する。」と予言して、食糧の増産が人口の増加に追いつかないことを警告しました。当時はこの意見はバカにされていたんですが、マルサスが死んで200年以上たった今、危機は現実のものとなりつつあります。そういった意味ではマルサスはえらかったと思いますが、ただ、そんな人口問題の解決策として、彼は、「結婚を控え、戦争をたくさんすることが、人口を減らすためには必要だ。」なんてことを言っています。「なるほど〜」なんて思わないでくださいね。人口問題を解決するためには「みんな死んでしまえばいいんだ。」なんて、エヴァンゲリオンみたいなことを考えないでください。もっと平和的な解決方法を考えましょう。

 13億人という世界の5分の1の人口をかかえる中国1979年から一人っ子政策を実施しています。これは、子どもが一人の家庭には国から育児費を支給するけど、2人目以上を生んだ家庭は、給料の10%をカットするという過激な政策です。この政策は確かに効果はあったのですが、2人目が産まれても政府に報告しなかったり、どの家庭も一人っ子なので、あまやかされてわがままな子どもが増えたりと、問題も多く抱えています。ちなみに、飛垣内の通っている学校の、英会話クラスに3人の中国人がいましたが、授業中に先生が、「あなたたちの兄弟のことについて話してください。」の問いに、彼らは全員、「兄弟はいません。」と答えたのには、本当に一人っ子政策をやっているんだということを実感させられました

 人口問題について話し合う国際会議も開かれました。まず、1974年に世界人口会議というのがありましたが、この会議で先進国が発展途上国に人口の抑制を提案しましたが、発展途上国の強い反対により、失敗に終わりました。しかし、1994年にエジプトのカイロで開かれた国際人口開発会議は、ある意味前向きな話し合いが行われました。それはこの会議で「性と生殖に関する健康と権利(リプロダクティブ・ライツ)」が採択されたこと。「性と生殖に関する健康と権利」とは、子どもを産む、産まない、何人産むかは女性が決めるという権利のことです。というのが、多くの発展途上国では、特に宗教上の理由から「女性の仕事=子どもを産んで育てること」という考え方が根強くあります。だから、子どもを少ししか産まないのは、「女性としての仕事をサボっている」ということになるのです。そして、基本的には女性は男性につくし、じっと家にこもっているだけだから、勉強なんかも必要ない。それが現実です。

 だから、人口問題対策として、女性に地位を向上させ、女性の社会進出を促進させる。そして、子どもを産み、育てること以外にも女性の生きがいを見つけてあげることが、必要ではないかと考えられるようになりました。だから女性には、夫の命令でたくさんの子どもを作らされ、ひたすら子育てに励むだけの人生を拒否する「性と生殖に関する健康と権利」が必要になるわけです。

 さらに、人口の増加に対応できるだけの食料を確保する取り組みも行われています。その代表的な例が「緑の革命」。発展途上国の砂漠では農作物なんて作れませんでしたが、大量の農薬と機械による灌漑設備(畑に水を供給する設備)を整えることにより、砂漠でも農作物を作ることを可能にしました。ただ、この方法で農業を行うには高い農薬と機械を買わないといけないので、本当に貧しい国では実施することができません。意味ないじゃん!

 

5.環境問題

 次は環境問題についてお話します。まずは主な環境問題を表にまとめて見ました。

温暖化 酸性雨 オゾン層破壊 森林減少・砂漠化
原因 二酸化炭素などの
温室効果ガス
窒素酸化物(NOx)
硫黄酸化物(SOx)
フロンガス 森林伐採
農地の拡大
被害 気温が上昇し、陸地減少、異常気象発生 森林が枯れ、建造物が溶ける 有害な紫外線が増え、皮膚がんが増加 居住地区の減少。食糧不足による飢餓。
主な場所 南太平洋の島国
オランダ
ヨーロッパ
アメリカ、中国
南極、北極 アフリカ、アジア、
南アメリカ

 この中で特に要注意は、温暖化オゾン層破壊です。特に温暖化は最近シャレにならない影響を世界に与えてきています。例えば、小さな島国のツバルやモルジブなんかはここ数年で、マジで国自体がなくなってきています。はい、地図帳を持っている人は確認してください。モルジブなんかは一番高い山が標高4mなんて国です。山じゃないじゃん!こんな国、すぐに沈んでしまいます。これらの国の中には先祖代々海辺の家で生活していたのに、今は家のあった場所が海になっている人もマジでいます。これは温暖化により南極・北極の氷が解け、海面が上昇しているためです。さらに、日本でも最近、暖冬や猛暑、台風なんかが多いのは、温暖化による異常気象が原因ではないかといわれています。というわけで、二酸化炭素はじわじわと地球を痛めつけています。特に石油を使うのはできるだけみんな避けましょう

 さらに、自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOI)工場の排気ガスに含まれる硫黄酸化物(SO)が雨雲の中で水(2)と化合し硝酸(HNO)、硫酸(SO)となって降ってくるのが、酸性雨です。みんな硫酸が空から降ってくるんですよ!硫酸の怖さは映画「エイリアン」を見てください。エイリアンの血は硫酸という設定になっています。そんな危険な雨のせいで、特にヨーロッパでは森林や大理石の建造物が溶けたり、湖の魚たちが全滅してしまったりしています。特に、酸性雨でやっかいなのは、酸性雨の雨雲は風に乗って移動するため、ドイツが出した排気ガスでスウェーデンの森が枯れたり、アメリカの排気ガスでカナダ、中国の排気ガスでモンゴルといったように、ある国のわがままが他の国に迷惑をかけているところです。ひどいよね。

 次はオゾン層破壊、太陽から放出される有害な紫外線から生物を守るため、地球にはオゾン層があるんですが、クーラーや冷蔵庫なんかに使われていたフロンガスが空気中に排出されることにより、オゾン層が壊されています。日本はまだそうでもないですが、フロンガスは地球の自転により、南極、北極に集まっていく傾向にあるので、南極にはオゾン層がほとんどなくなっているオゾンホールが出来上がっています。また、南極に近いオーストラリアやニュージーランドなんかも紫外線の量は何と日本の7!飛垣内も夕方、太陽の方向に向かって歩くときなんかは、太陽光線がまぶしくて前が見えないし、昼間ジョギングをした次の日は、必ずといっていいほど顔の皮がむけます。たった2時間なのに…!

 最後は森林減少砂漠化。これらは表に書いた原因のほかに、温暖化も原因の一つとされています。というのが、特に、サハラ砂漠周辺のサヘル地域は、昔はまだ草原が広がって農業もできていたのに、最近は気温が急激に上がり、すっかり雨が降らなくなりました。そのせいですっかり、草木が枯れ、いつの間にかサハラ砂漠の一部になってしまいました。これも地球温暖化の影響を受けた異常気象だといわれています。

 とりあえず、上の表は頭の中に入れておいてください。とくに、原因となる物質は要チェックです。

このような地球環境問題は、1つの国が頑張ったところで、どうにでもなるものでもないから、環境問題を解決するために、国際会議が開かれたり、国際条約が結ばれたりするようになりました。それらを以下にまとめます。

年号 事件 内容
1971 ラムサール条約 ・水鳥の生息地として貴重な湖沼や湿地を指定して、保護していくための条約。
 ※日本では現在、釧路湿原、琵琶湖など13ヵ所が指定されている。
1972 国連人間環境会議
inストックホルム
「かけがえのない地球」をスローガンに環境問題について話し合う。
・環境問題に取り組む専門機関としてUNEP(国連環境計画)を設置。
・会議の成果は人間環境宣言にまとめられる。
1975 ワシントン条約 ・絶滅が心配される野生動物を指定して、保護するための条約
 ※マウンテンゴリラ、オランウータン、パンダ、サイなどが指定
1979 長距離越境大気汚染条約 ・酸性雨の被害の多いヨーロッパにおいて、窒素酸化物、硫黄酸化物の削減を目標とする。
1987 モントリオール議定書 1985年のウィーン条約からの話し合いにより、1995年までに特定フロンガスを全廃することを決定。
1989 バーゼル条約 ダイオキシンなどの有害廃棄物の国境を越えた廃棄の禁止。
1992 国連環境開発会議
(地球サミット)
inリオデジャネイロ
「持続可能な開発」をスローガンに環境問題について話し合う。
・会議の成果はリオ宣言にまとめられる
アジェンダ21…21世紀に向けて国・企業・個人などが環境のために 守っていかないといけない行動計画をまとめたもの
生物多様性条約…野生動物・植物・生態系を守るための条約
気候変動枠組み条約…温暖化を食い止めるための条約
1994 砂漠化防止条約 ・熱帯雨林の減少・砂漠化の進行を食い止めるために、国連で締結。
1997 京都議定書 1990年の二酸化炭素排出量を基準に、20082012年の5年間に削減する二酸化炭素の具体的な数値を設定する。
例:EU諸国(8)、アメリカ(7)、カナダ(6)、日本(5)、ロシア、ニュージーランド(0)、ノルウェー(1)、オーストラリア(8)
※欠点 世界最大の二酸化炭素排出国(全世界の4分の1)のアメリカが脱退
 発展途上国には設定基準がないので、排出は自由
 ★お金を払えば、二酸化炭素を排出する権利を他国から買い取ることもできる(排出権取引
 参加国の二酸化炭素排出量が、全世界の排出量の50%を越えないと発効できない
2005年ロシアが参加を表明したことにより、めでたく発効!
 しかし、アメリカは不参加

 まず、よく聞くのは「年号や地名は覚えておいたほうがいいのですか?」と言う質問。とりあえず、センター試験では、条約が結ばれた年号や地名が聞かれることはまずありません。しかし、こんな聞かれ方をします。「この会議は1992年にリオデジャネイロで開かれ、主に先進国と発展途上国の環境対策への考え方の違いが問題として取り上げられた。」これは、「国連環境開発会議」に関する記述ですが、後半部分の文章の意味がわからなくても「1992年」「リオデジャネイロ」というキーワードを覚えていれば、「国連環境開発会議の記述だな」ということが推理しやすくなります。というわけで、年号や地名を丸暗記する必要はありませんが、もし覚えていれば、問題を解くヒントになることは間違いないです。結論!「できたら」覚えましょう!

 さて、上の表の中でよく出てくるのは「国連人間環境会議」と「国連環境開発会議」、そして「京都議定書」です。まず「国連人間環境会議」は、1972年スウェーデンのストックホルムで開かれ、世界初の環境問題をテーマにした国際会議ということで注目されました。そのときのスローガンは「Only One Earth(かけがえのない地球)」。つまり1個しかない地球を大事にするために、みんなで環境問題に真剣に取り組もうね!というのがこの会議のテーマでした。しかし、この会議には大きな課題が残されました。それは、「環境問題に取り組む=便利な生活を我慢する」ということです。具体的に言うと、今まで散々地球を汚しながら経済発展してきたアメリカ、日本、ヨーロッパなどの国々は十分金持ちだから「便利な生活を我慢」してもいいかもしれないが、貧しい発展途上国の国々はせっかく今から工業化を目指していこうとしても、環境問題のために、工業化を制限されるというのは、貧困から抜け出せないと言うのを意味しました。

 その反省を生かして、国連人間環境会議の20周年を記念して開かれたのが、「国連環境開発会議(地球サミット)」です。ブラジルのリオデジャネイロで開かれました。このときのスローガンは「続可能な開発」つまり、環境問題に取り組みながらも、環境に悪影響を与えない方法で便利な生活は続けようと言う考えです。なんか、地球のことを考えたら、考え方が後退してしまったような気もしますが、発展途上国とも協力して環境問題に取り組むにはこういう考え方しかないのかなと言う気もします。もう一度言い換えると「環境のために、原始時代の生活に戻る」のではなく、「環境のために、最新の技術を使って環境に悪影響を与えない経済発展を追及する」と言う方向に変わったということです。まあ、そのほうが現実的かな。

 あとは、最近入試問題に出まくっている京都議定書についてです。京都議定書は1992年の地球サミットで作られた気候変動枠組み条約に基づき、具体的のどこの国が何%の二酸化炭素を削減するのかを数字で定めた画期的な条約です。しかし、この条約、実際に効力を持たせるには参加国の二酸化炭素排出量が、全世界の排出量の50%を越えないとだめ、なんてルールを作ったものだから、ある問題が発生しました。というのが、世界の二酸化炭素の約4分の1をアメリカが排出しているのですが、石油会社、鉄鋼会社などと仲のいいアメリカのブッシュ大統領が、アメリカは京都議定書には参加しないことを宣言してしまいました。そのため、京都議定書は2008年からの実施を目指していたのですが、間に合わないのではないのかとも思われていました。しかし、2005年に二酸化炭素排出第3位のロシアが参加を表明してくれたおかげで、日本やヨーロッパなどを含めて、排出量が50%を突破したので、めでたく発効できることになりました。ただ、アメリカが本気で二酸化炭素削減に取り組まないと、あんまり意味はないのかなと言う気もします。

 さらに、京都議定書では、お金を払えば、二酸化炭素を排出してもいい権利(排出権)を外国から買い取ることができると言う排出権取引というルールもあります。そのせいで日本は、外国から排出権を買い取ることにより、問題を解決しようとしています。何でもお金で解決。さすが日本!

 

6.公害問題

 次は、日本国内の公害についてです。このあたりはだいたい経済分野の範囲なんですが、環境問題と関連して問題として出されることが多いのでここで扱います。まず、日本で初めて公害が問題となったのは、明治時代の足尾銅山鉱毒事件ですが、その後、公害問題が深刻な問題になったのは1960年代、高度経済成長期の四大公害裁判の頃からです。

新潟水俣病 四日市ぜんそく イタイイタイ病 水俣病
裁判の始まり 1967 1967 1968 1969
場所 新潟県阿賀野川 三重県四日市市 富山県神通川 熊本県水俣市
原因 川に流された
有機水銀
空気中の
亜硫酸ガス
川に流された
カドミウム
海に流された
有機水銀
症状 手足がしびれ、目耳が不自由になり、苦しんで死ぬ。 ぜんそくとなり、呼吸が苦しくなる。 内蔵と骨がボロボロになり、「痛い、痛い」と叫んで死ぬ。 手足がしびれ、目耳が不自由になり、苦しんで死ぬ。

 ここでのポイントはまず、環境問題と同じく原因物質です。あと、受験生がよく混乱するのは「水俣病」と「新潟水俣病」。病気として名前が付いたのは水俣病のほうが先ですが、裁判がスタートしたのは新潟水俣病が先で、その2年後が水俣病です。ここはよく間違えます。あと、これらの裁判は例外なく被害者の住民たち(原告)が裁判に勝ち、企業から賠償金をもらうことに成功したこと。しかし、残念ながら既に病気で亡くなった遺族の人たちは戻ってきません・・・。なお、企業とグルになって、公害の証拠を隠そうとしていた国の責任はつい最近まで裁判が行われてきました。

 ただ、これらの裁判が話題になった頃から、日本政府も本気で環境対策に取り組むようになりました

年号 事件 内容
1967 公害対策基本法

7つの公害(大気汚染,水質汚濁,土壌汚染,騒音,振動,地盤沈下,悪臭)の認定。
・行政による公害対策への取り組みを始める。

1971 環境庁の設置 ・環境問題に取り組む専門の行政機関の設置。
1973 OECD総会で
PPP (汚染者負担の原則)
を採択
・公害の汚染者が公害防止費用や被害者救済の費用を出すべきだとする考え。
⇒汚したやつが、金払って責任取れ!
1993 環境基本法 ・公害対策基本法を廃止し、パワーアップ。
1997 環境アセスメント法 ・大規模な開発を行うときには事前に環境に与える影響を調査することを義務付ける。
容器包装リサイクル法 ・ペットボトル,ビン,,紙パック,プラスチック容器のリサイクルの促進。・地方自治体(市町村)が分別回収し、リサイクルの費用は企業が負担。
1999 ダイオキシン類対策特別措置法 ・ごみ焼却場や工場からのダイオキシンの削減を目標。
2001 環境庁が環境省に格上げ ・よりいっそうの環境対策に取り組む。
家電リサイクル法 ・冷蔵庫、エアコン、テレビを小売店が回収してリサイクルする。
・リサイクル費用は消費者が負担する。
⇒リサイクル費用の負担を嫌う人によるごみの不法投棄が増加する。
グリーン税導入 ・ハイブッリドカーなど燃費の低い低公害車ほど税金を安くする。

 1967年、まさに新潟水俣病の裁判がスタートした年に、申し訳ないように公害対策基本法が制定されました。しかし、最初の公害対策基本法はあまり、政府の本気さが感じられるものではなく、少しずつ改正されていきました。そして、1992年の地球サミットの影響を受け、公害対策基本法は「国内の公害対策」だけでなく「地球規模の環境対策」にも取り組むために、環境基本法へとパワーアップしました。と言うわけで公害対策基本法は、今はもうありません。ここもポイントです。

 リサイクル政策1997年の容器包装リサイクル法から本格的にスタートしましたが、はっきり言って日本政府自体がそんなに乗り気でないので、国民もそんなに積極的にリサイクルしてくれません。だから、山の中には不法投棄されたテレビが散らかっています

 その他のポイントとして、日本の公害対策では無過失責任制が原則とされています。これは、企業に悪気がなくても、公害により被害を受けた人がいればお金を払って損害賠償しなければいけないという原則です。もう一つ、今まで、日本は企業が排出する汚水や排気ガスの濃度を規制する濃度規制を行ってきましたが、この方法だと、汚水を水で薄めて排出する悪どい企業も出てきたので、一定期間に企業が排出した汚染物質の総量を規制する総量規制に規制方法を変えました。それだけ日本人の環境・公害対策に対する意識は低いと言うことです。

 では、環境対策がすすんでいるドイツの例をここで紹介します。

●日本とドイツ ゴミ事情
面積 人口 ゴミ発生量 焼却率 ダイオキシン発生量 焼却施設数
日本 38万平方km 1.2億人 5030t/ 72% 39008769g/ 1,854
ドイツ 36万平方km 0.8億人 4350t/ 34% 68928 g/ 53

 

●環境先進国ドイツの試み
ゴミ @ゴミの焼却は原則としてしない。
A住民と業者にゴミの分別・回収を徹底している。分別用BOXを街のあちこちに設置し、随時ごみを回収。
B業者に容器のリサイクルを義務付け、再利用している。
C買い物にビニール袋はつかわず、買い物かごを持っていく。
D生ゴミは回収後、工場で肥料にする。
交通事情 @環境定期券を発行し、格安料金で電車に乗れるようにして、電車に乗ることをすすめる。
A広い自転車道を整備して、自転車に乗ることすすめる。
B石油に代わるエネルギー(水素ガス、電気など)で動く自動車の開発に力を入れている。
税金 @石油、ガス、電気などの販売に環境税をかけ、集まった税金は環境対策に当てる。
自然保護 @ビルや建物の屋上に植物を植える、屋上緑化に力を入れる。
A森林がある場所を開発しないといけないときは、森林の引越、移動を行う。

 もし、ニュージーランドでお金が貯まれば、飛垣内はドイツに行って、これらを確認して来たいと思っています。

 

7.資源・エネルギー問題

 さあ、次は資源・エネルギー問題です。

 

 

 この表を見ると、石油危機で石油が値上がりする前の1970には大量に石油を使って、火力発電も盛んだったのが、最近は石油の使用割合が減り、原子力の割合が増えてきていることがわかります。ただ、石油の割合が減ってきていると入っても、あれだけたくさんガソリンスタンドが建っていることからもわかるように、石油が日本にとって一番重要なエネルギーであることは忘れないように、あと、注目すべき点は、やはり原子力石油が値上がりしたことから、日本は原子力発電に力を入れるようになって来ました

 しかし、原子力発電の欠点は何といっても安全性。だって、原子力というのは広島を一瞬で滅ぼしたようなエネルギーを利用して電気を発電する方法です。確かに大量の電気が得られそうだけど、事故が起こったらとんでもないことになります。ちなみに、アメリカのスリーマイル島や旧ソ連のチェルノブイリでは大事故が発生しました。日本でもそれほどの大惨事ではないけど、放射能漏れや原子炉の火災などの事故が茨城県東海村や福井県高浜原発などでちょくちょく起こっています。事故が起こってからでは遅い!原子力に頼りすぎるのは絶対危険だと思います。

 というわけで日本では、経済産業省(旧通商産業省)が中心となってクリーンで、安全なエネルギーの開発を進めてきました。その名もニューサンシャイン計画。今、注目されているのが、風力発電バイオマスエネルギーなどです。まだまだ、実用化には時間がかかるけど、スウェーデンなんかではバイオマスエネルギーを利用したバスが普通に走っています。バイオマスって何かって?バイオマスとは、うんこやしっこや残飯から発生するガスをエネルギーにしたものです。スウェーデンのおっさんが言っていました。「俺はトイレでエネルギーを作っている!」面白いけど、そのほうが環境にはやさしいんだからすごいよね。

 

8.都市問題

 最後に都市問題です。日本の都市問題と言えば、過疎・過密化の問題です。みなさん知っていますか?東京都の人口は日本人口の5分の1です。みなさん知っていますか?関東地方に日本人口の4分の1が住んでいます。みなさん知っていますか?東京、大阪、名古屋周辺に日本人口の2分の1が住んでいます。どうりで、テレビでは東京読売ジャイアンツの試合ばっかり放送するわけです。とういうわけで、日本の都市部は人が住みまくって窮屈なのに、日本の田舎は人がいなくて、じいちゃん、ばあちゃんが寂しく暮らしています。これを何とかしないといけない。

 さらに、東京都なんかでは都心の土地が高すぎて、都心には人が住めず、その周りに住宅地が広がるドーナツ化現象が起きています。さらに、埼玉県なんかでは、東京のオフィスに通うサラリーマンたちが住む家を、急いで作ったものだから、環境を破壊しまくって、住みにくかったり、道が狭かったりと無計画な都市開発が行われたスプロール現象(スプロール=虫食い)も発生しました。

 ここからはローカルネタになるけど、福山駅前は土地が高いから、銀行とか天満屋とかが建って、住宅は少ないです。でも、周辺(木之庄、北吉津、三吉町、沖野上、草戸町なんか)には住宅地が広がってる。これが、ドーナツ化現象!(ドーナツの穴が、すごく小さい気がするけど、しょせん福山なので、許してください)さらに、伊勢が丘や坪生あたりは、NKKの社員のために、急いで住宅を作ったものだから、歩道は狭いは、段差が多くて危ないは、道はくねくね曲がって迷子になりやすいは最悪です!これがスプロール現象!(別にそこに住んでいる人が悪いわけではない!福山市の都市計画が問題!)福山市民でない人、意味わからなくてすみません。

 では、日本政府の都市計画を見てみましょう。

年号 事件 首相 内容
1962 全国総合開発計画
(全総)
池田 ・新産業都市を指定し、指定された都市を徹底的に開発していく。(拠点開発主義
1969 新全国総合開発計画
(新全総)
佐藤 ・全国を7つの広域生活圏に分け、高速交通ネットワークを整備して7つの地域ごとの開発を期待する。
1972 日本列島改造論 田中 ・全国主要地方都市と首都圏を結ぶ高速交通網によって農村地帯にも工場を立地し、過疎・過密化を解消する。
1977 第三次全国総合開発計画
(三全総)
福田 ・工業化優先のこれまでの開発を反省し、住民が住みやすい都市づくりを行う。(生活第一主義
1987 第四次全国総合開発計画
(四全総)
中曽根 ・「定住」と「交流」を柱に、高速交通ネットワーク構想と多極分散型の国土を目指す。
1998 第五次全国総合開発計画
(五全総)
橋本 ・東京都、太平洋沿岸にのみ集中する人口を分散させるため、都市部と農村部の移動時間の短縮を目標。首都移転も検討。

 まあ、中にはもっともらしいことを言っているのもありますが、これらの計画のほとんどが、建設会社に仕事を与えるために建てられたようなものです。これらの計画のおかげで、週末さえ渋滞のない、しまなみ海道や、ぜんぜん混まない国道と平行して走っている北海道の高速道路なんかが作られました。やったね!というわけで、小泉さんは六全総は作らない!と言っています。ただ、東京都から首都を移転させる話は、本気なのかどうかいまいち、わかりません。東京が大嫌いな飛垣内は移転に賛成ですが、東京都民は大反対です。そりゃそうだ。でも、東京!なんでもかんでも独占しすぎ!

 

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