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リハクは本当にダメ軍師だったのか

リハクは本当にダメ軍師だったのか

リハクという人、口癖が「海のリハク、一生の不覚」であることから分かるように、気の毒な位に不覚な人生を送りました。
 あの乱世の中で生き残ったことだけは賞賛しましょう。しかし、結局、古巣の南斗は崩壊し、宿敵であったはずの北斗陣営にすがって生きる羽目になったのですから、人間、長生きすりゃあ良いというものではありません

一生の不覚.jpg ←「一生の不覚」を何回後悔すれば気が済むのか

 しかし、リハクは本当に不覚なだけのダメ軍師だったのでしょうか。あのラオウに「世が世なら万の軍勢を縦横に操る天才軍師」とまで評されたのですから、何かしら立派な点はあったのではないかと思うのです。
 管理人は、あえて、リハクの再評価という難題に挑んでみたい。




リハクのどこが不覚と言って第一に、その用兵術です。
 「万の軍勢を縦横に操る天才軍師」どころか、たった5人の五車星さえも使いこなせず、次々と犬死にさせてしまいました。まず、一人ずつラオウにぶち当てるという基本方針からして間違ってますね。神風特攻隊レベルの無謀作戦です。

 
そもそも、南斗陣営の目的は、ラオウの進軍を遅らせ、ケンシロウとユリアを一刻も早く会わせることだったはず。だったら、ケンシロウを迎えに行くのに鈍重なフドウは適任ではありません。機動力が高いヒューイの方が目的に適っています。ユリアの直筆手紙なんかを持たせれば完璧です。

「そういえば南斗最後の将なんてヤツがいたなあ」とラオウが思い出す前に、ヒューイのバイクでケンシロウをかっさらってユリアの元に連れて来ちゃえば、五車星は誰も死なずに済んだのです。
 それをわざわざ、もっとも動きが重いフドウを使いにやったのは何故でしょう。フドウがのんきに鶏を追っかけたりしている間にヒューイは無駄死にしてるのです。




それから、さらに不覚なのはリハクが城にこしらえた「仕掛け」とやらです。通称リハクのピタゴラ装置。
 万人が一目で気付いたように、あのピタゴラ装置はラオウを一秒たりとも足止めできませんでした。ラオウは飛んで来る矢を掴んで投げ返す男ですよ。槍だの鉄球だのが当たる訳が無い。

 
趣味のピタゴラ装置をどうしても作りたいなら、ラオウの進軍途中の山道に仕掛けた方がマシじゃあないかしら。もちろん、ラオウは毛一筋ほども傷つけられなかったでしょうが、ラオウ軍をちょっぴりは減らせただろうし、運よく黒王を倒せたら大金星です。

 
何よりも、あのピタゴラ装置の爆裂級に不覚な所は「最後の仕掛け」ですね。
最後の仕掛け」が作動して床が落ちていくその先は、ユリアとケンシロウが待ち合わせる部屋だっていうんだから、リハクも頭がどうかしています。主人の身の安全とかね、もうちょっと考えるべきなんじゃないのかな?全然何にも考えてないか、もしくは主人を抹殺しようとしていたとしか思えません。

最後の仕掛け.jpg ←あと数mでユリアは即死


 
と、ここまで考えて、管理人はハッとしました。「もしかして、リハクはユリアを殺すつもりだったのでは?」と。
 いいえ、ユリアだけではありません。ラオウ、ケンシロウ、五車星という自分よりも強い者たちを皆殺しにすることによって、自分は座したまま、スッポリと天下を手に入れようとしたのではないかしら。

 そう考えると、リハクの無茶苦茶な用兵術も、役立たずのピタゴラ装置も、辻褄が合ったものになるのです。「そんな馬鹿な!」って?まあ、そう言わずにチョイと管理人の妄想を聞いていって下さいませ。





この計画、ラオウがその版図を広げ、天下取りが目前になるまで待たねばなりませんでした。ラオウが平定した地域をそのまま手に入れる計画なのですから、ラオウには最大限働いてもらい、強力な敵はつぶしておいてもらいたかった。
 ですから、ラオウ帝国を阻む最後の敵サウザーが倒れ、ラオウの腹心の部下リュウガがいなくなった所で、ようやくリハクは動き出したのです。

 
天下取り目前のラオウにケンシロウをぶつけて共倒れにし、ユリアも戦いに巻き込まれて事故死、その過程で五車星は次々と殉職、というのが理想のシナリオです。

 
そのためにはまず、ラオウを南斗の都におびき寄せなくてはなりません。ヒューイ・シュレンはそのためのエサとして使われたのです。
 そもそも、南斗最後の将のことなどきれいに忘れていたラオウ。最後の将に「どうしても会いたくなったわ」となっちゃったのはこの二人の見事な死に様のせいだったことを思い出してください。

会いたくなったわ.jpg ←こういうことを薮蛇と言う

 行方不明だった
ジュウザも生きていてもらっては困ります。ジュウザはユリアの兄ですから、傍流とは言え、南斗正統血統の家柄に関わっています。ユリアの死後、南斗の都に顔を出されたら跡目争いが起こりかねない。だから、わざわざ探しだし、ラオウとの戦いに赴かせたのです。

 
フドウに関しては死なせるつもりは無かったと思われます。孤児たちを育てる環境さえ整えてやれば、権力には関心を見せない男と踏んでいたのでしょう。
 逆に言えば、孤児たちを人質にすれば、如何様にも言うことを聞きますから、いざという時の切り札として温存しておく腹づもりだったに違いありません。




この天下取り計画のためには完璧なタイミングが必要でした。ケンシロウが早々と南斗の都に着いてしまっては都合が悪くなります。ケンシロウがユリアと手に手を取って逃げてしまったら、怒り狂ったラオウ軍を南斗軍だけで受けなければならないからです。

 だからリハクはわざわざ鈍重なフドウを使いにやってケンシロウのスピードを削いだのです。フドウ以外の五車星を捨て駒として無駄死にさせること、ケンシロウとラオウをほぼ同時に南斗の都に到着させること、両方をリハクは見事にやってのけました。

 ピタゴラ装置作動のタイミングを図るための
微妙な時間調整はトウに命じました。リハクはトウがラオウに想いを寄せていることを知っていました。また、ラオウは女を殺さないことも知っていたはずです。
 時間稼ぎにはちょうど良かったはずなのに、トウの自死という思わぬ結果を招いたのは、トウの想いの深さを測り違えたせいでしょう。

 こうして計画を進める一方で
、リハクは自分一人、せっせとピタゴラ装置を作ったのです。ラオウ・ケンシロウ・ユリアの三人を同時に倒す必殺の仕掛けです。
 ケンシロウが仕掛けの部屋に登って来たら、床が崩れてラオウと共に転落死、ユリアは頭上に天井が落ちてきて圧死…。
 ケンシロウがユリアと二人、階下で待っていたら、落ちてきた天井で仲良く圧死、ラオウは転落死…。完璧な計画です。




このコマを御覧下さい。リハクは「い…いかん 最後の仕掛けが!!」と叫んでいます。数ある仕掛けの中で、あの仕掛けが最後に作動するとどうして決め付けていたのでしょう。
い⋯いかん.jpg ←こうなる前に「ソコ踏むな!」って言え


 
おそらく、他の仕掛けはダミーなのです。あんな飛び道具がラオウに当たるなんて、リハク自身も思ってはいなかった。
 ヒモを大量に張っておいて「策がある」と言えば普通の人間ならヒモを避けて通ります。避けて歩いていくと必ず、あの「最後の仕掛け」のスイッチを踏むように仕組んであったのでしょう。つまり「最後の仕掛け」だけが重要だったのです。

 下図は
ラオウが仕掛け部屋に入って来た時のコマです。リハクがユリアの玉座の上にいることに注目して下さい。ここだけは床が落ちないようにしてあったに違いありません。本来なら、リハクはこの安全圏で「最後の仕掛け」の作動を眺める予定だったのです。

ユリアの玉座.jpg←棺桶ごと落下。ユリアの上に…

 

 しかし、ラオウは普通人の発想をする男ではありませんから、チマチマとヒモを避けたりしませんでした。ですから「最後の仕掛け」はリハクが思ったタイミングでは作動せず、リハクはラオウに捕まってしまったのです。
 ケンシロウが到着した為にラオウからは逃れられましたが、ラオウに傷つけられた体では自力で安全な玉座に戻ることはかなわなかったのでしょう。

 「最後の仕掛け」が作動した時にリハクが
い…いかん」と言ったのは、「不覚」にも自分が安全圏にいない時に仕掛けが作動してしまったからなのです。
 身の危険を感じたリハクは、咄嗟に「ケンシロウさん、伏せて!!」という見事な演技でケンシロウにタックルしました。崩れ落ちる床の衝撃から我が身を守るため、ケンシロウをクッション代わりにしたのです。
伏せて!.jpg ←崩れる床に伏せるのは危険です




もう一つの「不覚」はユリアの立ち位置が予定と変わっていたことです。ユリアは従順な女性ですから「ここでお待ち下さい」と言われれば、何時間でもそこで待っていたはず。
 ちゃんと天井が落ちて来る位置で待たせるように案内の者に言い含めておいたのに、ケンシロウが置いたあのボロ布に気を取られたせいで、思わぬ位置に移動してしまいました。

待ちましょう.jpg←案内の者も困ってる

 
このコマを御覧下さい。ユリアは従順ではありますが、ケンシロウと関係することには意固地になる女です。こうなったら、この後、テコでもその場を離れなかったに違いありません。だからこそ、落ちて来る天井から逃れることが出来たのです。




さらなるリハクの「不覚」は、ラオウの生命力の強さを見誤ったことです。ド偉い高さから転落したのに、ラオウは死にませんでした。それどころか、ユリアをさらって逃げるだけの体力まで残していたのです。
 これはリハクが不覚というよりも、素直に「ラオウすげえ」と感心するべきなんでしょうねえ。

ラオウ落下.jpg ←少なくとも6階分の高さはある




こうして、いくつかの「不覚」な偶然によって、リハクの姦計は完全に失敗しました。抹殺すべきラオウ・ケンシロウ・ユリア、3人とも倒すことは出来なかった。
 しかも自分は五車星に加えて娘のトウまで失い、戦力的には丸裸同然です。さすがのリハクも観念したことでありましょう。

 
しかし、天はリハクを見捨てませんでした。ケンシロウは見事にラオウを倒した上に、天下も握らずにユリアと二人、諸国行脚の旅(通称プー太郎ツアー)に出発してくれたのです。
 邪魔者は全ていなくなりました。ラオウが平定した天下、剽悍なラオウの軍勢、豊かな南斗の都…。治める者を無くした全てが、リハクの掌中に転がりこんだのです。「世が世なら万の軍勢を縦横に操る天才軍師」にそんな完璧な環境を与えるとどのようなことになるのか。

 
結果は皆さんもご存知の通りです。物語ナレーションの言葉を借りれば「平安は時とともに貧富階層の差を生み」「世は再び混迷の時代に」…。
 天下はリハクの手に余ったということですね。リハクはやはり、無能だったのです。ラオウの言った「世が世なら」というのは、きっと「4千年くらい前の世なら」ってことなんでしょう…。

 …以上、管理人の長々しい妄想でありました。
 
最終的には、気の毒な人ってことで、北斗軍に養われることになった老リハク…。それは、思いつきだけで行動したノータリンの末路だったのか、それとも一時は天下を夢見たこともある野心家のなれの果てだったのか…。
 いずれにしても「ダメ軍師」のレッテルだけは剥がしてやれそうにありません。

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コメント 2

reizuki

凄い考察です!!
納得してしまいます!!
by reizuki (2013-03-01 08:20) 

ゆう

それこそ海よりも深く納得しました
予想通り行っていたら確かに天も握れる程の大軍師ですね
策謀家と言った方がよさそうですが
by ゆう (2013-09-10 03:23) 

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