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黄金伝説展開催中 10/16-1/11 【動画】古代地中海世界の秘宝 国立西洋美術館で「黄金伝説展」

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【コラム】

筆洗

 幕末期、江戸の治安は乱れに乱れ、追いはぎが夜な夜な出没したそうである▼その時代を描いた落語の「蔵前駕籠(くらまえかご)」。追いはぎが出ようとも駕籠で遊びに出かけたいという男と、駕籠屋さんの意気。こんなクスグリ(本筋とは関係なく軽い笑いをとる話)がある▼追いはぎが迫る。「身ぐるみ脱いで置いてまいれ」。仕方なしに脱ぐと「誠に殊勝である。寒い時でもある。襦袢(じゅばん)(肌着)だけは許してやるぞ」。「ありがとうございます」。「…なんて礼を言うが、よく考えてみれば、てめえ(自分)の物。気が動転しているからこういうことになる。襦袢(自慢)にならぬってえのはここからきた」▼冷静に考えれば、これもやっぱり「てめえ」のカネではあるまいか。再来年四月の消費税率10%に引き上げ時に導入する軽減税率で与党が合意した。対象は食品全般。生鮮食品と加工食品は8%のままである。「ありがたい」とおっしゃるかもしれぬが、そもそも、10%への引き上げがなければ、礼なんぞ言うこともない話ではないか▼財源は約一兆円。社会保障制度の維持、財政健全化のために10%引き上げが必要と言いながらのこの額である。引き上げ慎重派から見ても、政府と与党の対応は整合性に欠けており、その分、怪しげである▼「参院選も近い時期である。食品全般は許してやるぞ」。「ははっ」では、襦袢にならぬ。

 

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