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2005-03-15

国会図書館長降格!こりゃ図書館政治史上の大事件だよ

この記事,一般の方にはつまりません。時代のメモとして書くだけだから。

船橋西図書館事件のとき,つくづく業界自由派の思想的怠慢にたいして腹がたったのに,なんにも書かなかったことを反省して,ここに書くなり〜。司書は中毒するから読まないが吉。

春秋会事件以来の図書館大事件だよ

この前サンケイ報道であったけど,国会図書館長の大臣待遇格下げになることが与野党政治的合意となっているようだ。

春秋会事件以降の,衆参事務局長天下り素人図書館長ならば,大臣待遇は高すぎるという意見に,わたしは大賛成なわけし,業界の連中は,業界全体にたいしていいことをせず,ひとりで威張ってる国会図書館の館長が減給される,ぐらいの認識なんだろうけど(まー,事実ではあるが)。

でも,個人の意見はべつとして,業界全体の日本国内政治的地位という観点からいうと,これはゆゆしき問題ですぞ。それこそ春秋会事件以来の。なぜか。

役人のエラサとは何か

わたしもくだらないと思うし,業界の主流の自由派・左派の人たちはハナもひっかけないと思うが,役人には偉さ(本質的な偉さではないので,ここではエラサとしておく)というものがある。

エラサは何で示されるか? ○×大臣とか△□局長とか,という職名か? そんなことじゃ,エラサの本質はわからない。

たとえば,自治体図書館長のエラサはどれくらいか。まー,よくて課長館長かな。つまり本庁(知事部局)の課長待遇の課長ってところ。昔ならその地方を代表する文人であったはずの人間が。わるくすると係長館長。係長って,中央省庁じゃ30才のハナタレキャリア小僧がやってる…。ほんとは立派な文人が,役人の世界じゃハナタレ小僧と同格ってところが,よくもわるくも笑える(笑うしかない)。

おなじ「課長」って職名でも,本庁なのか出先なのか,国なのか地方なのかでまたエラサが違う。地方へいけばいくほど,おなじ課長でも格下になる。職名じゃエラサはわからないのよん。

その,××待遇というのは,端的にいって,給料のこと。×級○号俸(国会職員だと×級○号給ね)。これが,役人の本当のエラサを示している。だから,もしあなたが出会った役人の本当のエラサをしりたければ,何級か聞かないとだめ。肩書きだけ麗々しくても,木っ端役人かもしれないぞ〜 ちなみに数字は大きい方がいい。1級より2級のほうがエライそれから号でなく級のほうがエラサを表している。

だから,たとえば○×研究所長が来ました,だれが出迎えますか,ということになると,その所長さんの俸給をしらべて,それに対応する役職のものが出迎えるということに(あー,ばかばかし)。

ただ,どんなにばかばかしくて,どんなに本質的無意味でも,そのようにしかお役所はまわっていないし,これからもそうだし,さらに(ここが最重要だが),図書館は消費しかしないセクターだから,本質的政府地方政府)におすがりしなけりゃ存続できないということがある。

今回の事件の図書館史意味

で,先走っていきなり結論なんだけど,日本国内でイチバン俸給の高い図書館員たる国会図書館長が1階級降格するということは,じつは日本国内の図書館員全員が1階級降格するということなわけだ。

もちろん,現在ただ今,制度的にはそうではない。だからみな,のんきでいられる。けれど,つぎのことを指摘しておこう。まず第一に,国会図書館員があのように処遇がいい(=給料がたかい)のは,全国の図書館員の代表として高給となるように制度的に設計されていたという事実があるということ。第二に,制度はともかく,事実上政治的発言力が低下することがある。

第一の点については,いま手元に史料がないので省略。ただ,この前廃止された職階法の世界では,そう構想されていたと言っておく(この職階法司書職の関係についても,まともな研究がない)。

第二の点については,いまならば,国会図書館長がほかの省庁に,なにか相談だかお願いだかをしにいったときに(文句でもいい),むこうは今まで大臣待遇の奴がでてきたけど,これからは,金輪際その子分しかでてこないということだ。

低い職位のほうが限られた権限しかもたないのは,これは古今東西あたりまえのことだ(階級を廃止していた時代の赤軍は別(笑))。

まあ,国会附属図書館長が,日本という大陸法を継受した国で,トンチンカンなまでに地位が高かったといわれればそれまでだけど(あれば米国議会図書館猿まね)。まあ,憲法と占領時の立法で部分的英米法を継受したと解釈すればいいのかもしれんが。

図書館側のオカシサ

まずは業界。おそらく何がなんだか,その意味わからんのだろう。もちろん役人のエラサなどより,文献提供や資料保存の使命や職務のほうがずーっと重要ではあるが,図書館員の大多数はいちおー役人なわけだから,役人としてのエラサにも目配りしていーんじゃないだろか。本質的な偉さ(司書としてのスキル)と,かりそめの世俗的なエラサ(俸給)とを混同していばらなけりゃいいんだから。

あと,図書議員連盟が音無しってのは解(げ)しがたい。議連ってのは,国会議員サークル活動なわけなんだけど,時として,業界の利害の代弁者になる機能もある。なんにもしないのは,議連がある意味がないよ。まー,その議連の機能をぶっつぶしたのは業界団体ではあるんだけど(笑)(これについては図書館事業基本法について再論)。

政治マスコミおかし

まえにも指摘したけど,野党が賛成してどうする。わたしゃどの与党支持でもどの野党支持でもない狂接輿にすぎんが,野党国会図書館長の降格に賛同するは,論理としておかしい。与党なら電話一本で行政府からいくらでも情報をひっぱれるけど,野党はできない。じゃ,どこからひっぱるの?野党独自の調査部門? アハハ。まー,それなりの調査組織をもってるのは党官僚のいる某政党だけでしょ。

朝日がなぜ報道せぬ。サンケイマッチポンプでやってるとはいえ,逆さの観点から朝日が言及してしかるべき。でなけりゃ私が朝日を取ってる意味ないじゃん(笑)船橋西のときには,サンケイにものすごく遅れたけど,一応あったぞ。これじゃあサンケイに替えちゃうぞ。

さいごに

まーいろいろ書いたけど,わたくし的には,もうどうでもいいわけで。ただ,論理としてこうだよ,と。業界誌新聞紙もぜんぜん騒がないけど,じつは業界史的な意味があることだと指摘しておく。あとで書いても迫力ないからね。

このまえの(って40数年前)春秋会事件のとき,間宮不二雄は,ざまーみろ(要旨)って言ったわけだけど(過去記事参照),あれは,間宮が,根っからの民間人で,米国帰りで,関西人だから言えたこと。今の図書館員は,根っからの税金喰いで,ドメスティックで,「東京出銭ランド」行きたがりなわけなんで,そんなふうに思っちゃいけません。自分が間宮とおなじ地平に立ってると思うなら,それこそ不遜の極みなり。

どーもね,図書館学説史に興味があると,余計なことが気になってね。なかなか仙人になれません。

2014.6.29

文章はそのままセクションごとに別エントリになっていたのを1エントリに再編す。

2005-02-09

十年かけて買えた古本。さまつな行政法は至難!

古本生活20年にならんとするなかでも,買うのが困難なのは実用本,実務本なり。旅行ガイドとか,マニュアルとか,古いもんを買うのはむずかしいのは有名な話。で,そのなかでもとりわけむずいのは法律の実務本じゃないかと。

法学書は,実務書でなく学術書ならスグになんでも手に入るんです,カネさえ出せば。でも実務書は探し回ったのに全然ないよ〜。

先月だったか,次の2冊をやうやく入手。十年ちかくもかかったなりよ。

物品管理法講座 / 財政会計法令研究会. -- 新版. -- 学陽書房, 1980.3 1000円

逐条物品管理法精解 / 津吉伊定. -- 大村書店, 1974 1000円

最初に誤解のないように言っておかないといけないけど,モノをお金と同じように管理しようとする物品会計(物品管理)って制度はあんまりイイ制度じゃないというのはわちきの結論。

けどイイか悪いかはどんなものなのか知らないといけないわけで,調べますたよ昔。当時,日本全体の図書館にある本の3/4はお役所の所有でしたから。

こんな制度は図書館先進国アメリカにはないんで。いろいろ調べてわかったことは,まず,

わからないということ(笑)

民法とか商法とか,社会生活の根幹にかかわる法律は議論百出,判例まくり教科書まくりですぐに,その概要や問題点をしることができまする。

それが,行政法の,それも市民権利義務に関係ない内部法で,さらにはモノあまり日本でどうでもよくなりつつあるモノの管理法なんて,制度としては生きているのに,それについての説明知というのはごくごく限られたものでありました。

で,最低限の説明知をもとめることになるんだけど,ここで重要になるのは,有権解釈の一種である行政解釈をやる連中(その法律担当者)のために書かれた注釈書なわけであります。

書き手学者でもなんでもなく,役人ね。この手の行政(些末)法の注釈書は,読み捨て。法改正でもあろうものなら,そのままゴミに。古本屋も拾ってくれません。個人で,それも古本を買うようなオバカは(わたしくらいしか)おらんだろう。

でもそんなオバカがいったん欲しいとなると,とんでもない苦労することになる。法学専門の古書店はあまたあれど,いくらカネを積んでも手に入らないのだ。よよよ(涙

これもまた,十年かけて買えマスタ。よかったよかった。でもそんなにたつと,正直言って興味がうすれてしまうよ〜(あたりまえ)。

で,話をもとにもどすと,こんな,行政法の,それも些末なものに問題意識が芽生えたきっかけは,もちろん実務上の困難さなわけだけれども,その問題意識を,「ああ,これって問題と思ってもいいんだなぁ〜」と思わせてくれたのは,先人の問題意識にほかならず。

物品管理法が制定されんとしたその時に,国会図書館員と,会計検査院図書館員がタッグをくんで,立ち上がったのでありまする。

加藤六蔵あだ名:ロクさん 当時・支部図書館課運営係長)と守屋壮平(当時・会計検査院図書館主任)ね。

詳細は,加藤六蔵「物品管理法の成立をめぐって」『支部図書館外史』支部図書館館友会 1970 p.57-60 を参照してちょ。

現「物品管理法」(注釈書の著者つよし・さだよし,が担当官)の前に,大蔵省佐々木事務官の「物品会計法案」があったというのは上記ではじめてわかる。この物品会計法案では,17の物品分類のなかに「図書」という独立項目があった由。

けど,この「物品会計法案」は討ち死にして,現,物品管理法があるのだす。

話はとぶけど,初代の支部図書館部長中根秀雄で,「加藤君,役所のセクショナリズムは強固だからなかなうまくいくものではないよ,せいぜい四つか五つの支部図書館が発足すればオンの字だよ」と言ったとか。

この中根さんてーのは,初代のむちゃくちゃ有名な中井正一(ナカイ・マサカズ)の次の副館長ね。中井正一はまた本がでたけど,中根秀雄は,憲法大臣金森徳次郎といっしょに討ち死にして忘れさられました(たしか事件の前半で病死)。「春秋会事件」ね。

中井正一メディア論 後藤 嘉宏 (著) 著者は,あすなろくんのものぐさ一言日記ってのを書いてるみたい。

ナカイ・マサカズが偉大なのはみとめるけど,う〜ん,そんなにメディア論的に重要かな?すぐ死んじゃった人ってのがわたしのイメージなんだけど。もちろん,彼の数少ない業績の『図書館年鑑1952』は持ってるんですが。よくわからない。留保。この本買えば,わかるかな?

わたしゃ,メディア論なんかどうでもいいから,『国会図書館五十年裏面史』ってのを読みたいんですけど。そんなの書ける人,ひとりしか知らないなぁ。

技芸は長し,しかして人生は短し。たしかローマの格言。

技芸は,法制度もふくめ人間によってつくられたもの。人間は数十年で死ぬけど,人間がつくったものは,その人の死をこえて(悪いいみでも)生き続ける……。

なんでこんなことゆーかってーと,1956年物品管理法が,国立大法人化まで長らく図書館を苦しめたわけだし,なぜに,どうして苦しめられ,どんな解決方法があったのかを教えてくれたのは,加藤六蔵ほかの,当時の文献しかなかったんですよこれが。

学説史をまとめるだけで論文になってしまうという未開の沃野。まったく,図書館経営論ってのは何をやってんのかね。

あと,雑誌記事索引をひくと図書館物品管理法の文献が一件ひっかかるけど,あんま引用しないほうがいいと思う… 先行文献一切調べてないみたいだし 法文を自分の解釈だけで解釈するのって,そりゃーあんまりですがな。

わては(幸いにして)法学部でなかったんで,物品管理法のことしらべるまで法律の解釈とはなんぞやってことゼーンゼン知らんかった。で,困ったんだけど,次の文献が超イイ(法学では定番みたい)。

法令解釈の常識 / 林修三. -- 日本評論社, 1975. -- (セミナー叢書)  まだ売ってる

これ読みやすいし,だいたい法律がいいかげんなものだってことがよくわかる。で,結局,解釈する側の常識重要になるわけですね。

この本で展開されてる議論ってのは,じつは,indexing作業にまんま当てはまることにもビックリ。それについては,論文1本かけるよ。

2005-02-01

稲村徹元氏

このまえ公文堂(鎌倉)で買った『辞典の辞典』,共編者は稲村徹元さんだった。なぜ「さん」なのか。それは何年も前いちど見たことあるから(笑。ひとりでお茶してたよ。

テツゲンさん,わたしにとっては異常に細かい書誌の作者という固いイメージしかなかった。

国立国会図書館に関する文献目録. 1948-1958 / 稲村徹元. -- 稲村徹元, 1962  超こまかい!

けど谷沢永一の 日本近代書誌学細見 / 谷沢永一. -- 和泉書院, 2003.11 に斎藤昌三の弟子だってでてた。ほんと? だとしたらイメージがかなり変わっちゃう。だった斎藤昌三って戦前からの超ゆうめいな書誌学者だけど,学者ってより愛書家で,エロ出版なんかにも通じてたような憶えが。むむむ。

そういえば 古本屋探偵の事件簿 / 紀田順一郎. -- 東京創元社, 1991.7. -- (創元推理文庫)  のあとがきに出てきてたよ徹元さん。作中人物のモデルになった謎の人物に会ったことがあるんだって。その人物は,エロ出版人で「医者でブン屋(新聞記者)でMP(憲兵)で」ってなぐあいの謎いっぱい。昭和2,30年代って,なんだかワケワカラン時代だったんだね〜。

古本屋探偵〜』は創元版がでたときに読んだことがあるのに,あとがきには全然きづかなかったよ。谷沢の,斎藤昌三の弟子って記述で改めて気づいた。不思議なひと。文春文庫版のあとがきにもっと詳しい話があるはずなんで,こんど探してみよっと。

shomotsubugyo
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