神戸の東海道線 新駅建設の足場崩壊、緊急停車
11日午後1時ごろ、神戸市灘区灘南通5のJR東海道線(神戸線)で建設中の新駅「摩耶駅」の工事用足場が崩れた。この事故で、付近を走行中の野洲発加古川行きの下り快速(8両編成)など2本が緊急停車し、乗客計約1400人が電車内に一時取り残された。体調不良を訴えた乗客4人と電車を降りた後に転倒して頭を打つなどした乗客2人の計6人が救急搬送された。
JR西日本は甲子園口−西明石間で上下線とも運転を見合わせた。現場から足場を取り除くなど復旧に手間取り、運転再開は約9時間後の午後10時6分。上下約400本に運休や遅れが出て、38万人に影響した。
摩耶駅は、東海道線の六甲道−灘間で建設中で、来春開設される予定。JR西によると、橋上駅の外壁を覆う足場は、高さ約7メートル、長さ約31メートル、幅約60センチで重さ約2トン。新駅ホームの南側に2本ある下り線の内側線路上をふさぐ形で崩れた。
JR西の指令員から停電が起きたと連絡を受け、下り快速が緊急停止。約100メートル先で足場が倒壊していることに気付き、周囲の電車に防護無線で停車するよう連絡した。下り線の外側線を走っていた長浜発姫路行きの新快速(8両編成)が倒壊現場の真横付近で停止。乗客は最大2時間半、車内に取り残されたが、線路上を歩くなどして新駅に行き、上り線の代替輸送用の電車で移動した。
工事をしていたのはJRグループ会社の大鉄工業(大阪市)。当時は足場を使った作業は行われておらず、11日夜には足場を撤去する予定だったという。撤去作業は8日夜に始まり、隣にあった足場は撤去済み。強度は、平均風速18メートルの風を想定している。倒壊の原因は調査中だが、午後0時57分に神戸市で最大瞬間風速21・8メートルを記録しており、強風の影響で倒れた可能性がある。
西日本ではこの日午前、瀬戸内海沿いに低気圧が北東へ進んだ影響で大気の状態が不安定になった。午後に吹いた強風は、低気圧通過後の吹き返しの風とみられるという。
JR西は11日夜、大阪市内の本社で記者会見を行い、「多くのお客様にご迷惑をおかけして誠に申し訳ない。心から深くおわび申し上げます」と謝罪した。撤去途中だったことが倒壊に影響した可能性についてJR西建設工事部の村田直紀担当部長は「影響がないとは言えないと思う」と述べた。
国土交通省近畿運輸局は、大事故につながる可能性があったとして、JR西に対し原因究明と再発防止を求める警告書を交付した。【矢澤秀範、井上卓也、戸上文恵、渋江千春】
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「もし電車を直撃していたら……」。重さ2トンの工事用足場が崩れたJR東海道線の新駅建設現場での事故。11日、現場に緊急停車した電車の中に取り残された乗客らは、青ざめた表情で不安な時間を過ごした。国土交通省近畿運輸局はこの日、大事故につながる可能性があったとして、JR西日本に対し原因究明と再発防止を求める警告書を交付した。
事故が起きたのは11日午後1時ごろ。橋上駅となる「摩耶駅」(神戸市灘区)の外壁工事のために設置された足場が線路上に落ちてきた。
JR西によると、当時は足場を使った作業は行われておらず、11日夜には足場を撤去する予定だったという。撤去作業は8日夜に始まり、この足場の隣にあった足場は撤去済み。強度は、平均風速18メートルの風を想定しているが、この日の神戸では最大瞬間風速20メートルを超える風も観測された。朝から風が強かったため、工事をしていた大鉄工業の作業員が足場を点検したが、特に問題はなかったという。
現場の真横付近に停車した長浜発姫路行きの新快速に乗っていた神戸市中央区の大学生、原麻綾(まや)さん(23)は、車窓から外を見て驚きを隠せなかった。ひしゃげた鉄骨の塊が迫っており「当たっていたら、本当にやばかった」と振り返る。
車内では照明や暖房が全て切られ、換気のため窓を開けるよう放送があった。窓を開けたものの、目の前にあった鉄骨が強風であおられて何度も揺れ、「こっちに倒れてくるのでは」と恐怖を感じたという。「直撃しなかったのは不幸中の幸い」と厳しい口調で話した。
一方、現場の約100メートル手前で止まった野洲発加古川行きの快速の1両目にいた大阪府枚方市の主婦、間(あいだ)茉莉子さん(53)は2時間ほど閉じ込められた。「落ちてきた足場に乗り上げていたら、大変なことになっていた」と声を震わせた。
並行して走る阪急線と阪神線は振り替え輸送の客でごった返し、主要駅では入場規制も行われた。
JR西は11日夜、大阪市内の本社で記者会見を行い、「多くのお客様にご迷惑をおかけして誠に申し訳ない。心から深くおわび申し上げます」と謝罪した。足場の撤去途中だったことが倒壊に影響した可能性についてJR西建設工事部の村田直紀担当部長は「影響がないとは言えないと思う」と述べた。
西日本ではこの日午前、瀬戸内海沿いに低気圧が北東へ進んだ影響で大気の状態が不安定になった。午後に吹いた強風は、低気圧通過後の吹き返しの風とみられるという。