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【社会】

野坂昭如さん死去 「この国に戦前がひたひたと迫る」

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 九日に心不全のため八十五歳で亡くなった作家で元参院議員の野坂昭如(のさかあきゆき)さんが、亡くなる直前の九日午後四時ごろ、担当する雑誌連載の最後の原稿を新潮社に送っていたことが分かった。末尾の一文は「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」。「焼け跡闇市派」を自称した野坂さんは体の自由が利かない中、戦争体験者として最後まで日本人に警告を発し続けた。 

 連載は、雑誌「新潮45」(二〇一六年一月号、十八日発売)の「だまし庵(あん)日記」。約十二年間続いた連載は、この百六回目が最後となった。

 版元の新潮社によると、原稿は日本の都会で暮らす人々の間で自然や農業への関心が薄れていると、食への危機感を表明。テロが脅威となっている世界情勢にも言及し、空爆では解決できない「負の連鎖」を断ち切ることが必要だとしている。

 七日に放送されたTBSラジオの番組「六輔七転八倒九十分」には手紙を寄せ、アナウンサーが読み上げた。野坂さんはこの手紙で「僕は、日本が一つの瀬戸際にさしかかっているような気がしてならない」と憂えた。

 野坂さんは二〇〇三年に脳梗塞で倒れた後、闘病生活の中で、妻の暘子(ようこ)さんによる口述筆記の助けを借りながら積極的に発言を続けていた。

 葬儀・告別式は十九日午前十一時から東京都港区南青山二の三三の二〇、青山葬儀所で。通夜は親族のみで行う。喪主は暘子さん。

 

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