ノーベル賞の授賞式が10日、ストックホルムで開かれる。今年は、東大宇宙線研究所長の梶田隆章教授(55)が物理学賞、北里大の大村智特別栄誉教授(80)が医学・生理学賞に輝いた。なぜ、日本の自然科学はこんなに強いのか? その理由を指摘する本がヒットしている。
「深く思考して新しいものをつくり出す作業は母国語が適している。ひらめきや違和感を、言語化するところから始まるからだ。そこは外国語ではできない。日本人のノーベル賞受賞が相次いでいるのは、まさに日本語教育の集大成といえる」
こう語るのは、日本企業や日本社会の安易な“英語化”に警鐘を鳴らした『英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる』(集英社新書)の著者、九州大学大学院の施光恒(せ・てるひさ)准教授だ。同書は発売4カ月余りで6刷に達した。
施氏は同書で、先人が苦難の末、自前の翻訳で近代化を成し遂げた明治以降の日本の歩みを再評価し、「母国語での思考こそ、創造性の源泉」と強調する。英語化が進んでいる諸外国よりも、日本が技術面、研究面で優位に立っている現状に触れ、国内で「英語化政策」がもてはやされていることを批判する。日本語の力は偉大なのだ。
2000年以降、日本人受賞者は計16人(米国籍含む)に上り、今や日本は世界第2位の「ノーベル賞大国」となった。
自然科学分野でのノーベル賞受賞を熱望する隣国の人々にも読ませたい1冊といえる。