霧ではなく、あれですよ。
北京がこの冬最悪の大気汚染に見舞われた、その日。
温暖化対策の新しい決まりを話し合うCOP21が開幕しました。
と主張するインドの現状はこちら。
ちょっと!さっきから説得力ないんですけど。
そもそも、この会議、批判的な意見は多いし。
最近、温暖化についてこんな観測結果まで。
ねえねえ、COPって…どうなの。
こんばんは。
これでわかった!世界のいまです。
今夜のゲストは気象予報士の井田寛子さんです。
きょうはCOPについてお伝えします。
井田さんもパリの同時テロがなければCOPに行く予定だったんですね。
残念ですが、毎日COPの動きに注目しています。
先ほど南極の氷が増えていると言っていましたが、どうなんでしょうか。
COPは意味があるんでしょうか。
確かに地球温暖化の逆をいくような現象があるのは知っています。
大きな影響を受けているところもあります。
まずは太平洋の島々の今をご覧いただきたいと思います。
の映像は太平洋の島国、フィジーです。
地元の研究者が、ことし、撮影しました。
これ、分かりますか?沿岸の木が倒れているんです。
海面の上昇で、水につかって根腐れしたり地面が削り取られたりしてこうなってしまったそうです。
フィジーは、人口およそ90万でこのうち8割以上が海沿いで暮らしています。
でも、2030年までに今より最大で16センチ海面が上昇するという予想もあるんです。
取材に応じてくれたジョウリーさんですが、今回のCOP21で合意できなければ今以上に水没の危機にさらされてしまうと訴えていました。
今回はフィジーについて紹介しましたが先月COP21を前にアジアの気象学者が集まる会議がありました。
行ってきました。
そこでも、サモアやクック諸島の気象学者たちは海面上昇は深刻だと話していました。
地球温暖化については否定する意見もありますが、そこを議論するよりは今ほかにすべがないわけですから何か行動しなければいけないときです。
そういう意味でも今回のCOPは意味があるかなと私は思います。
今回は成果があるんでしょうか。
きょうは、この人に聞いてみましょう。
山登りが好き社会部、石井顕デスク。
熊に何度か遭遇しながらも日本アルプスを制覇。
エベレストにも。
自分の足で確かめる。
海外取材の経験は豊富だ。
COPのことを教えてくれって?全力で解説します。
きょうの先生の登場です。
社会部の石井デスクです。
石井さん、VTR作り込んでいましたね。
まずはCOPです。
いつももめている印象があります。
今回のCOPは成果が出るんでしょうか。
今回は期待できると思います。
COPは確かに足取りが遅い印象はあると思いますが一歩一歩前進しているというのは事実です。
COPというのはカンファレンスオブザパーティーズこちらの英語の頭文字を取ったものです。
条約を締結した国々が話し合う会議という意味です。
今回のCOP21というのは、21回目の会議という意味です。
今回がふんばりどころなんです。
ヨーソロー。
千里子、井田さん、COPが歩んだ苦難の歴史については俺に説明させてくれ。
時は1997年。
千里子のふるさと、京都の話でございます。
COP3という会議を開き、世界で初めて一緒に二酸化炭素を減らそうという画期的な決まりを作りました。
その名も、京都議定書。
先進国が率先して減らすことになりました。
今回は自分たちが頑張るから、次の決まりでは発展途上国も減らしてねと言いだしたのであります。
しかし。
途上国は、二酸化炭素を出しまくってお金を稼いできたのは先進国じゃない。
先進国は、お前らも出しているんだから一緒に減らせ、と責任をなすりつけ合いました。
アメリカは、二酸化炭素をいちばん多く出していたのに、京都議定書すら抜けてしまい中国も金持ちの国になりたくて二酸化炭素をバンバン出していきました。
その後…。
新しい決まりを作る会議を幾度開いても先進国と途上国の対立はどうにもこうにも収まらない。
今回だって、どうなることやら。
ハラハラ、ドキドキの攻防が今現在も続いているのでございます。
すごいですね。
スタッフの動きがすごかったです。
なかなか難しいんですね。
COPというのは全会一致が原則となります。
多国間の交渉です。
1か国でも反対してしまえばまとまらないんです。
このCOPには何か国が参加していると思いますか。
たくさんの国々でしょう。
50ぐらいですか。
195の国と地域が参加しています。
この前、12か国が参加したTPP交渉でもまとまるまでに5年もかかったことを考えるといかに難しいかが分かるのではないでしょうか。
今のシップ劇場を年表で整理しましょう。
歴史が続いていますね。
まずはこちらのCOP3です。
ここがいちばんの高まりです。
日本の京都で開かれました。
COP3で採択された京都議定書は画期的な成果をもたらしました。
温室効果ガスの排出削減を義務づける世界で初めての枠組みです。
採択されたときは地球が救われたということで世界中が沸き立ちました。
達成できない場合の罰則もあるという非常に厳しい枠組みでした。
ただし削減が義務づけられたのは先進国だけです。
当時、先進国の排出量が世界全体のおよそ6割を占めていたためです。
その後、この削減を全世界に広げていこうという中で、先ほどのシップ劇場のような問題が起きたんです。
1つはアメリカです。
2001年です。
当時、世界最大の排出国だったアメリカが京都議定書から離脱してしまいます。
僅か数年で離脱するんですね。
もう1つは先進国と途上国との対立です。
私が取材したのは2004年、10回目のCOP、アルゼンチンで開かれました。
このときは最終段階になってインドが京都議定書の次のステップでも途上国の削減義務につながらないことを合意文書に明記するように求めて紛糾してしまいます。
このときは議長が疲れ果てて交代したり、通訳が時間切れで会議のお金がなくなっていなくなったりということもありました。
非常に混乱しました。
このころのCOPでは、先進国と途上国の対立が毎回繰り返されて現場には徒労感が広がっていました。
先進国と途上国の溝が深いんですね。
それが最も顕著に現れたのが2009年、デンマークのコペンハーゲンで開かれましたCOP15です。
途上国を含めた新たな削減の枠組みをいよいよ作ろうと各国の首脳まで参加して今回のCOP21と同じですね成果が大いに期待されましたがやはり先進国と途上国とが激しく対立して失敗してしまいます。
コペンハーゲン・シンドロームといったことばも生まれるほど喪失感が大きかったんです。
COPを続ける意味があるのか存在意義すら問われたということです。
それでも諦めずにCOPは続いてきたんです。
もともとみんな自分の国のことしか考えていないから、いくら話し合ってもむだな気がします。
確かにそのとおりです。
特に大きな排出国が参加しない削減といっても、なかなか実効性がないんです。
こちらをご覧ください。
これは世界の二酸化炭素の排出量の内訳です。
2012年、京都議定書の第1約束期間です。
その最終の年の内訳です。
京都議定書で削減が義務づけられた国は22%余りです。
これがこれまでのCOPを巡る状況でした。
ところが今回のCOP21はかつて離脱したアメリカ、そして2007年に世界最大の排出国となった中国、これまで温暖化対策に後ろ向きだったこの2つの国が前面に出てきたんです。
ことし9月の米中首脳会談でCOP21を成功に導くと宣言しまして、ぐいぐいと引っ張ろうとしている、つまり局面がこれまでと全然変わったということです。
なぜ変わったんですか。
それは、こちらで説明します。
まずはアメリカです。
オバマ大統領が任期の最後に歴史に残る実績づくりをしたいという思いがあると指摘されています。
でもそれだけではないんです。
大統領ができもしないことを宣言したりはしません。
政策転換の背景には京都議定書を離脱した当時のアメリカとは全然違う経済環境が生まれてきている。
ダイナミックに変わっているんです。
オバマ大統領はことしの8月、二酸化炭素の排出が多い石炭火力発電所の新規建設などを事実上ストップする画期的な政策を打ち出しました。
なぜ、そんなことができるのか。
最初の理由はシェールガスです。
技術革新によって二酸化炭素の排出が比較的少ない天然ガスの価格が下落して石炭よりも安くなったんです。
さらに再生可能エネルギー、風力や太陽光のコストが大幅に下がって成長産業になりつつあるんです。
京都議定書のころは温暖化対策は経済の足を引っ張ってしまうと思われていましたが今は逆に経済成長を後押しする存在になるといわれています。
もちろん来年の大統領選挙で温暖化対策に懐疑的な共和党の候補が勝てば、揺り戻しはあるかもしれませんがアメリカの経済環境がこのようにダイナミックに変わっているということを踏まえれば大きな流れは変わらないのではないかと思います。
それでは中国はどうですか。
中国が排出削減に積極的な背景には国内外の事情があります。
まずは冒頭の映像でも紹介しました深刻な大気汚染です。
毎回ニュースに出てきます。
国民の不満が高まっているんです。
クリーンな環境にしていかないと政権の正当性が問われる事態になりかねないということで本気で取り組んでいます。
この大気汚染対策が結果的に温暖化対策になるんです。
さらに国外的な事情もあります。
中国は途上国のリーダーを標ぼうしています。
しかし、例えば、1人当たりの温室効果ガス排出量が日本やEUの水準に近づいています。
ほかの途上国からしっかりとした対策を取るように求められているのです。
それなりの責任を果たせということですね。
こうした背景もあってことしの6月、国連に中国が提出した削減目標は二酸化炭素の排出の総量を2030年ごろまでに減少に転じさせるという内容が書き込まれてきました。
歴史的な転換点です。
2030年は、まだまだ先ですよ。
でも、そこがねらいでもあるんです。
そのとおりです。
今回はあえてそれでよしとしました。
先ほど失敗したといったCOP15ですが、このときは京都議定書のときと同じように削減目標を上から割りふるということを目指そうとしましたが中国もアメリカも受け入れなかったために失敗したんです。
今回はその中国やアメリカを含めた世界180か国以上が各国ごとに決めた削減目標をあらかじめ国連に提出しています。
この目標というのは自分たちで決めたものです。
自分たちで作ったものでよいというのがCOP15のときとは決定的に違っています。
きつい目標にすると京都議定書のアメリカのように逃げられてしまう。
ですので、まずは枠組みを作るということを重視しています。
変われる気がしてきました。
それではCOP21、現地はどうなんでしょうか。
パリには取材を続けている中村記者が行っています。
おはようございます。
そちらの会議、今回はまとまりそうでしょうか。
今回のCOPはなんとしても合意をまとめようという各国の熱意が伝わってきます。
アメリカは毎日のように記者会見を開いてアメリカの意見や交渉の経緯について説明していますし、中国も記者会見こそ開かないんですが会場にある各国ごとの展示ブースに行きますと政府関係者がシンポジウムを開いて中国は合意に向けてアメリカとともにリーダーシップをとるんだとアピールしていました。
先週1週間は実務者レベルの作業部会が開かれまして、合意文書案のたたき台をもとに各国が意見を述べ合う形で議論が進められてきたんです。
一定の進展もありました。
各国が温室効果ガスについて自国の削減目標を定期的に提出することや5年ごとに世界全体でどれぐらい削減できたかを検証することについては表現が、ほぼまとまりました。
しかし残りの部分はある程度予想されていたことではあるんですけれどもやはり大きく分けると先進国と途上国で立場の違いがはっきりした印象です。
毎回デリケートなところでぶつかりますが、今回はどういうところで立場の違いが目立ちますか。
主な対立点は各国の削減目標の達成を義務づけるかどうかという点なんです。
太平洋の島国などは義務づけるべきだとしていますが中国などは先進国だけに義務づけるべきだと主張していますしアメリカも義務化は避けたいと主張しています。
またヨーロッパ各国や日本は削減に向けた努力の義務化には応じる立場なんです。
さらに深刻なのが資金の支援の問題です。
途上国の温室効果ガス削減の対策では巨額の資金が必要となるんですが、途上国は先進国からの支援の規模を大きくすることを強く求めているのに対し先進国は金額までは義務づけられたくない立場です。
あすからいよいよ閣僚レベルの会合が始まりますね。
そうです。
予定では1週間、各国の閣僚が合意文書の文言一つ一つについて、本格的な詰めの議論をする予定です。
合意文書案はまだ数多くの点で各国の意見が両論併記されたままになっています。
あすからの本格的な議論でこの両論併記がどれくらい減っていくのか、そして最終的な合意文書が全体として地球温暖化を防ぐためにどれくらい意義のあるものになるのか各国にとって毎日が真剣勝負の交渉になります。
パリ近郊の会場から中村記者でした。
文言を詰める作業をなんで閣僚たちがやらないといけないんですか。
文言こそが大事なんです。
こちらをご覧ください。
実務者レベルの交渉を終え出たばかりの最新の合意文書の草案の一部です。
拡大しました。
7日から閣僚たちが集まって交渉をするたたき台になります。
どのことばを使うか。
かぎかっこに入っていることばこれを組み合わせていくんです。
中村記者が中継で対立点としていました削減目標についてです。
それぞれの地域はshallやるべきなのか。
やったほうがいいのか、義務づけるのか、努力目標にするのか。
こちらが対立点なんです。
こうしたせめぎ合いを続けて現在40ページ以上ある草案を最終的には20ページぐらいの合意文書にしていく予定です。
この文言をパズルのように組み合わせていくんです。
最終的に合意ということになるんでしょうか。
確かに何らかの合意はすると思います。
ただし、最初に井田さんが紹介していました南太平洋フィジーの人たちが安心できる合意になるかは不透明です。
先ほども触れましたように削減目標の数値は各国が自分たちの判断で決めています。
各研究機関などは提出された削減目標を各国が達成したとしても地球にとって危険な水準を超えてしまうと分析しています。
このため今回のCOP21では、危険な水準を超えないように各国の目標を定期的に検証してそれぞれの削減の度合いを高めていく仕組みを盛り込めないかといったことを議論しています。
実効性がある枠組みになるかの大きなポイントでもあるので注目したいと思います。
そんな中、日本はどんな目標を立てていますか。
日本は2030年に2013年に比べて26%減らすという削減目標を打ち出しました。
政府は野心的な目標だとしていますが国際的なNGOなどからはEUやアメリカに比べて低い水準だという批判もあります。
イメージですが日本は省エネとか進んでいるイメージですが。
確かに世界的にもトップクラスの省エネ技術が進んでいるのは間違いありませんが、一方で少し気になるデータがあります。
グラフを見てください。
GDP当たりの温室効果ガスの排出量の変化を示したものです。
青が日本、緑がEU、赤がアメリカです。
1990年、京都議定書の基準となる年です。
日本は確かにずば抜けた水準でした。
下にあるほどいいということです。
排出していないということですね。
当時の日本は雑巾を絞りきっているのでこれ以上の温暖化対策は現実的ではないという声も聞かれました。
ところがその後、EUもどんどん下げてきています。
ほとんど追いつかれてEUの中の国によっては追い越されてしまったところもあります。
もっと頑張らないとということですね。
安穏とはしていられません。
エベレストの中腹といったところでしょうか。
COP21の日程は今月の11日までです。
例年1日、2日延長されることが多いのですが今回は議論を尽くしてぜひ実効性のある枠組みを作ってもらいたいと思います。
2時間目にまいりましょう。
こちらの写真、覚えていますか。
危険を冒してヨーロッパに渡る人が増えています。
そのうちの1人シリア難民のイブラヒムさんです。
9月にご紹介しました。
トルコからギリシャ経由でドイツにたどりつきました。
シリアから避難してきたイブラヒム・ハリルさんです。
ことし9月、トルコで所持金が底を突きました。
自分の腎臓を売って資金を作ろうとしましたが、買い手は現れませんでした。
見つけたのが、密航のゴムボートの運転役です。
転覆する危険、治安当局に摘発される危険もありました。
しかし、ほかに手段はありませんでした。
ドイツにたどり着いたのは先月。
一軒家を提供されました。
子ども2人、そして妹と暮らせるようになりました。
パリ同時テロ事件以降、難民受け入れの環境は厳しくなるばかり。
それでも今は、州から月10万円ほどもらって生活することができます。
不自由のない安全な暮らし。
それでもイブラヒムさんの悩みは尽きません。
妻と幼い次男がシリアに残っているのです。
2人がいるのは砲撃の続く危険地域です。
妻にかける毎日の電話では。
夫に心配をかけまいと明るくふるまう妻。
イブラヒムさんの心配は増すばかりです。
無事に着いてよかったですね。
難民の現状というのはいつまでたっても楽になりません。
こちらご覧ください。
UNHCRのグテーレス高等弁務官です。
これまで10年間、難民支援の最前線で任務にあたってきました。
今月、その任期を終えます。
そして、同じ日の夜。
国連大学を訪れて学生など300人を前に講演しました。
難民支援の難しさについて話したあと、こう結びました。
2015/12/06(日) 18:10〜18:42
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番組内容
【ゲスト】井田寛子,【キャスター】坂下千里子,井上裕貴
出演者
【ゲスト】井田寛子,【キャスター】坂下千里子,井上裕貴
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