(テーマ音楽)緩やかな渓流と美しい緑。
中国山地の細見谷です。
初夏色鮮やかな広葉樹の葉が森を包み込みます。
水辺の森はツキノワグマをはじめとする貴重な動物たちの揺りかごです。
緑の木々が色づく秋。
魚たちが躍動します。
水に恵まれた森に命あふれる細見谷を見つめます。
どこまでも続くなだらかな谷。
中国山地西部に広がる広島県の細見谷です。
初夏谷底には青々とした若葉が茂ります。
その下には小さな渓流。
ここは源流部にもかかわらず川底が平らで水も豊富。
川の両岸には背の高い木がそびえます。
この森を代表するサワグルミ。
高さ20メートルにもなります。
他にもトチノキやカツラなど水を好む落葉広葉樹がたくさん生えています。
こうした川の上流に広がる森を渓畔林といいます。
その長さが5キロにも及ぶ細見谷。
伐採などの開発を免れ西日本有数の規模を誇ります。
渓畔林の特徴は他にもあります。
川に接する森の中に水の流れがあるのです。
広葉樹の森は水がめ。
雪解け水や雨水は落ち葉が堆積した土に蓄えられます。
それがしみ出し水たまりやせせらぎをつくっています。
水は夏でも冷たく水温は15℃を下回ります。
生い茂る緑の葉は天然のクーラー。
強い日ざしを遮ってくれます。
この渓畔林の水辺にどんな生き物がいるのでしょうか。
水の中をのぞいてみましょう。
まず見つけたのはふ化したばかりのオタマジャクシ。
魚も泳いでいます。
全長およそ20センチ。
アマゴです。
おや?右から他の種類の魚も登場。
中国地方の一部だけに生息するイワナの亜種…魚たちはここで森の木の葉から落ちてくる虫などを捕らえて食べ栄養を蓄えます。
渓畔林の斜面の奥。
(動物の鳴き声)美しい声が聞こえてきました。
幹にあいたうろの中に何かいます。
(鳴き声)子育てのため南の国から渡って来ています。
巣を作るのは大抵朽ちたブナの老木。
くちばしがキツツキほど丈夫ではないからです。
カエルをくわえています。
繁殖期オスは食べ物をメスにプレゼントして恋を実らせようと懸命です。
水辺には他にも鳥が子育てに利用する木があります。
樹齢100年を超えるトチノキ。
太い根はコケに覆われ土が削れて空洞になっています。
こうした環境を好むのが…。
コケを集めて…。
飛びました。
コケなどを使って巣を作っています。
渓畔林のあちこちにあるこうした空洞はさまざまな生き物たちの住みかになっているのです。
6月半ば雨の季節です。
周りの山に降った雨が斜面を一気に下り谷へ集まります。
森の中を流れる沢やせせらぎも水かさが増します。
大雨になると渓畔林の平たんな所は水浸し。
森の一部は湿地になってしまいました。
水たまりが出来るのを待ち構えていたのが…。
モリアオガエル。
水面に突き出た枝の先に卵を産みつけています。
自分よりも一回り大きいメスに必死にしがみつくオスたち。
粘りけのある白い泡がメスの卵を乾燥から守ります。
卵は一週間もすると白い泡と共に水面に落ちそこでオタマジャクシが育ちます。
降りやまぬ雨の中渓畔林の斜面で貴重な生き物を見つけました。
広葉樹の枝に設けられた鳥の巣。
幻の鳥…首を伸ばして枝のフリをしています。
東南アジアなどから渡って来て日本で子育てするミゾゴイ。
世界で2,500羽に満たないとも言われ絶滅の危機に瀕しています。
生い茂る広葉樹の葉が雨を遮ってくれます。
もう一羽飛んできました。
パートナーです。
巣には小さなヒナが4羽いました。
主な餌はカエルやミミズなど。
南の国へ渡るまで3か月の間にヒナたちはここで大きく成長します。
広葉樹に覆われた細見谷。
その森づくりを担う動物がいます。
毎年この時期にやって来るのがヤマザクラの木です。
高さ15メートルほどの枝先。
赤い実が熟しています。
これをお目当てにするのは…。
カメラに映った黒い体。
ツキノワグマです。
太いツル植物を足掛かりに木を登ります。
この春生まれた子グマです。
近くで親が見守る中ごちそうにありつこうというわけです。
枝先に到着。
熟した実を夢中で頬張ります。
クマが実を食べるとフンの中には種が含まれます。
森をあちこち移動する事で種が遠くに運ばれていくのです。
森づくりを担う哺乳類は他にもいます。
夜活動を始めたウサギ。
地面に落ちた果実を探します。
タヌキやキツネもよく現れます。
更にテンやイタチも。
なんとにぎやかなのでしょう。
5か月後渓畔林の風景が一変。
森の広葉樹が色づき赤や黄に染まります。
この時期渓畔林を流れる沢の上流に集まってくるものがいます。
ゴギです。
産卵の時期を迎え下流の水辺から遡上してきました。
流れがよどんだ所でペアを見つけました。
手前の大きいのがオス。
もう一方はメスです。
メスが川底に尾びれを打ちつけています。
卵を産む場所をつくっているのです。
ここにはゴギの産卵場所に適した細かい石がたくさんあります。
足早に過ぎ去る秋。
やがて森は深い雪に閉ざされます。
豊かな水で潤う中国山地の細見谷。
手付かずの自然が多くの命を育んでいました。
2015/12/07(月) 15:41〜15:55
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「中国山地 細見谷」[字]
広島県の細見谷は、太田川の支流が頻繁に氾濫する場所。渓畔林と言われる独特の環境だ。湿潤な環境を好むカツラなどが巨木となり、オオコノハズクなどが洞に営巣する。
詳細情報
番組内容
広島県の細見谷は、太田川の支流が頻繁に氾濫する場所。川の傾斜が緩く、大雨が降るとすぐに周辺が水につかる。そこは「渓畔林」と言われる独特の環境。湿潤な環境を好むカツラやトチなどが巨木となり、オシドリやオオコノハズクなどが洞に営巣する。夏に熟すウワミズザクラの実、そして秋に実るドングリなどの恵みがあふれ、西日本有数のツキノワグマ生息地になっている。初夏から秋、躍動する生きものたちを見つめる。
出演者
【語り】中村慶子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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