NHK俳句 題「雪」 2015.12.09


「NHK俳句」司会の岸本葉子です。
第1週の選者は池田澄子さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
そして今日はゲストにジャズピアニストの山下洋輔さんにお越し頂きました。
ようこそおいで下さいました。
よろしくお願いします。
山下さんはなんと「HAIKU」という曲をお持ちだそうです。
一体どんな曲なんでしょうか?早速ご披露頂きましょう。
山下洋輔さんの演奏で「HAIKU」です。

(拍手)ありがとうございました。
池田さん俳句を感じましたか?何か俳句を作りたいようなざわざわしてきました。
山下さんこの五七五のリズムというのは気持ちがいいですね。
はいそうなんです。
すごく気持ちがよいのでテーマに使ってしまうんですね。
この曲は海外でも演奏なさる事があるんでしょうか?はい。
ニューヨーク・トリオでねニューヨークのジャズクラブでやりました時にちょっと説明を加えてやりましたらね最初のテーマで「わ〜っ」と日本人の方に大ウケしちゃって周りの外国人の方が「何でこいつらウケてんだ?」ってキョロキョロしてましたが何か気持ちよかったです。
それだけ私たちの体に染みついたリズムなのかもしれませんね。
はいそのとおりだと思います。
それでは本日の一句です。
今日の兼題「雪」ですけれども池田さん冒頭の句は…?まああの…そんな事です。
読んだ方はどう思われるんでしょうね?山下さんどんなふうに鑑賞なさいましたか?ええあの〜雪なのにやっぱりすごく温かい気持ちが伝わってきます。
「さむいさむい」と言いながら何か好きでちょっと喜んでるような感じが伝わってきますね。
後ほどまたいろんなお話を伺います。
それでは池田さんが選んだ入選句をご紹介していきます。
池田澄子選入選九句。
まず1番です。
この雪はもう一晩中やまずに降るんだろうなとこの作者は思ったんでしょうね。
で明日の朝起きたらばまず第1に雪掻きをしなきゃいけない。
で玄関の端っこか何かにシャベルとか長靴とかねちり取りとかそういうものを用意してそして寝についたって書いてらっしゃるんですけども本当にリアルですよね。
何の説明もなくてこのサラッとしているところがいいなと思いましたね。
山下さんこれ何かそれこそスコップとか見えてきそうな…。
そうですね。
雪掻きはしなきゃなんないけど今はしないというところが面白いですね。
今してもまたどうせ朝までには積もってしまうという…。
あ〜そういう事ですね。
なるほど。
2番にいきます。
楽しい句ですね〜。
何かねいびつなおだんごを2つ作って雪だるまにこうボンボンってくっつけた。
もうその雪だるまも目に見えてくるしこの「誰だ」って言いながらねあきれて笑って喜んでるこの作者も目に見えてきますね。
楽しい句ですね〜。
俳句でこんな楽しい句も作れるんですよね。
そうですか。
本当にびっくりして喜んでおりますね。
これは大好きです。
山下さんこれは誰だと思われますか?僕はね詠んでるのはお母さんでその雪だるまにそれくっつけたのは娘さんじゃないかと思うんです。
あ〜!まだちっちゃいねうん。
池田さんはどう思われます?私男の子かと思った。
私もそう思った。
そんな楽しみ方できますね。
3番にいきます。
目が覚めた時に「我あり」って感じるのは喜びなのかあるいは戸惑いなのか。
その辺が「雪の気配あり」っていう言葉に託されているヒントがね。
でそのヒントもまた説明がなくて作者に委ねられているというところがとても心憎いと思いましたね。
とても共感できます。
う〜ん。
山下さんこれも印象的ですね。
そうですねこれはちょっと今日も自分は生きてるぞというような事を感じました。
4番です。
無人駅ですからいつも駅員さんいらっしゃらない訳ですよね。
でたまたま電車でその駅まで来て降りた作者なのかあるいは電車に乗ろうとして無人駅に来たのかどちらかは分からないんですけれどもどちらにしても人の気配っていうの?雪を掻いた人がいたんだっていうようなのにちょっとこうびっくりして誰にお礼を言ったらいいんだろうっていうようなそんな感じが漂ってますね。
5番です。
随分威勢のいい句ですね。
で色鮮やかな句と思いますけれどもこの「友」っていうのはう〜ん…これ拝見すると作者は女性ですよね。
でその友は男性かもしれないんだけれども私何だかすごくすてきな女性がね赤い新車から降りてきたっていうふうに読みたいなあと。
でともかくこの「初雪」がいいですよね。
「初雪」がないと何ていう事はない。
6番です。
離陸したばかりのまだ飛行機が斜めになっている時と思いたいんですね。
そうするとその飛行機の窓から見える深雪の広野が斜めにず〜っと果てなく広がって見えている。
何かとっても気持ちのいい句だなと思いました。
そうですね。
また上に上がってあこんなに降ってたんだっていう感慨が新たになりそうですね。
7番です。
もうこの大胆な比喩にはびっくりしました。
で三つ折りですからこれは敷布団ですよね。
掛け布団だったら四つに折るのがまずね普通ですからね。
でそんな形でそのくらいの分量の新雪が何かの上にこう積もってるっていう事はありえますよね。
何か端っこがちょっと布団の端っこみたいにちょっと垂れて…。
ねえ何かそういう雪あるなと思って。
随分大胆な比喩ですけれど面白いですね。
僕もこれは面白いと思いましたね。
何かホカホカしてくる…雪なのに。
ねえ。
こうして鑑賞を伺ってると雪って意外と温かいんですね。
面白いですね。
8番です。
自分が思った事のない事を詠まれると本当に感心してうれしくなっちゃうんですけれども。
確かにね軽〜い1ひらの雪が水の中に落ちた時水輪が出来る。
それは力だっていうふうに表現なさったっていう事はとても感心しました。
そうだなと思いました。
山下さん深くうなずいていらっしゃる…。
はいあの僕意味がよく分からなかったんです。
先生のお言葉で初めて池の上に落ちて輪がこういきますね。
あれが雪でも出来るんだという。
重さとかじゃなくて雪の力だって言ってるところが。
確かに水にスッと溶けてしまいそうで水輪を見たところが発見だなと思いました。
最後9番です。
「何々のように」っていう言い方は私通常はあんまり好きじゃないんですね。
ですけれどもこの雪の駅の灯がため息のようにともるって言われるとあ〜そうだなと思って何かドキドキしちゃいました。
でやっぱりタブーといわれている部分にはやっぱり例外があるんですよね表現っていうのはね。
で人待ち顔の雪の駅の灯っていうのが何かジ〜ンと来ますね。
私も俳句を勉強していると「ように」というのはよっぽどの時でないと…。
まず嫌われますよね。
使ってはいけないと思います。
逆にこういう時こそ果敢に使っていきたいなと思いました。
以上が入選句でした。
それではここから本日の特選句を山下さんと私で予想していきます。
視聴者の皆さんも是非一緒に予想なさってみて下さい。
こちらの九句が入選句です。
山下さん気になった句特にどれでしょうか?はい。
え〜やはり2番の「雪だるまに乳房作った子は誰だ」!これですね。
驚きました。
こんな楽しい句はあんまりないかもしれないですね。
何かちょっと雪だるまが土偶みたいなね生命力を持ってきそうな感じで楽しいですね。
私はそうだな…3番の「目が覚めて我あり雪の気配あり」。
確かに雪の朝って音がス〜ッと吸われて何か世界にたった一人自分がいるんじゃないかみたいな自分が降って湧いたような何とも言えない不安感のような新鮮な…。
そこは詠んでいるなと思いました。
山下さん特選が三席まであります。
もしもう一つかあるいは2つ挙げるとしたらどの句を推されますか?そしたら7番の「三つ折り」ですね「布団」ですね。
これは何だかいい紹介です。
ですね。
これも厚さだけではなくて形も表して…ね〜。
さてどの句が選ばれるんでしょうか?それでは本日の特選句です。
まずは三席からお願いします。
9番千堂富子さんの句です。
それでは二席の句を。
はい。
1番の池上吟さんの句です。
いよいよ一席です。
え〜3番です。
宮坂達也さんの句です。
澄子さんこの一席の句特にどこがよかったでしょうか?そうですね実はね私もこういう気分を詠んだ事があるんですね。
あ気分じゃないんだな。
でねちょっと言わせて頂くと…。
政治家が「遺憾」って言いますよね。
それで「目覚めるといつも私が居て遺憾」っていう句を作った事があるんですね無季ですけれども。
でこれはまあ私の句はちょっとふてくされてる訳なんですけれどこちらは自分の存在を程よく肯定しているっていうのかな?うんそこがとてもいいと思いました。
はい以上が今週の特選でした。
続いては添削のコーナーです。
ここをこうすればもっとよくなるというポイントを教えて頂きます。
今日はこの句ですね。
という句です。
これで景はよく分かりますね。
分かるんですけれどもちょっとぜいたくを言わせて頂くと「雪が一色に覆いました」っていうこの報告というか説明で終わってしまっているのがちょっともったいないなと思うんですね。
ですからもしもこの句が私の句でしたらば「被災地や」と「や」で切ります。
で真っ白なこの雪に覆われたこの土地あ〜ここは被災地だったのだっていうちょっと感慨が入るんじゃないかと思うんですね。
で「や」で切ると特にこの上五のところで「や」で切ると形が古くなったようなね古くさいような感じがするかもしれないんですけれどもでも被災地への思いが濃く感じられるように思うんですけれども作者の方はどうでしょうね?「や」で切る事で感慨が生まれる。
はい。
以上俳句作りの参考になさって下さい。
それでは池田さんの年間テーマ「びっくりして嬉しくなる俳句」についてお話を伺っていきます。
今月のテーマは「思索の季節」。
何か寒い時って物を思いますよね。
それでこの句があります。
積もりに積もった雪ですね。
で折笠美秋は筋萎縮症でもう何年も動けずに俳句を作ってきた俳人なんですね。
ですから思いの中で見ている雪なんですよね。
で心の中の風景でありながら実景としてありうるっていうところが強いというふうに思います。
で「下の雪よ」ですから見えない雪ですよね。
でもこう詠まれた事によって何か下の雪が私たちに見えてくると思うんです。
金子みすゞは「下の雪重かろな」っていうふうに書きました。
この句は何にも言ってないんですよね。
で「下の雪よ」のこの「よ」によって私たちもこの作者の思いを共にせざるをえなくなる。
そういう句じゃないかと思います。
ではここからは山下さんに俳句についてもっともっと伺っていきます。
山下さんは芭蕉の俳句を素材に即興演奏をした事があると伺いました。
ええ芭蕉生誕の地ですね伊賀上野。
え〜っと生誕360年というからもう随分前なんですがそれの前夜祭にね呼ばれまして。
なぜかというとそれまでに僕は「五・七・五」というタイトルで「HAIKU」とかいうタイトルでさんざん演奏してましたので。
「お前はそんな俳句で何を演奏してるんだ?本場に来てやってみろ」という事で呼びつけられまして前の日に行ったら芭蕉さんの住んでいたおうちとかそれこそバショウが生えているという不思議なうちとかね。
それから句集を渡されて「この中からちゃんと選んでやれ」とかあるいは主催者の方が「これで弾け」とかね。
あそうですか。
もうさんざん命令をされましてこれもまあ勝手に「五・七・五」やってたので「はいはい」と言ってやってきましてね。
即興の中でも俳句から即興をなさるというのは何かなかなかない体験…。
あのね内容というよりはやはり五七五のあのリズムですね。
「タタタタタタタタタタタタンタタタタタン」っていうともう何か我々にはもうそれだけで音楽のリズムジャズのリズムという。
これが即興のヒントになるぞっていうような気持ちになれるんですね。
それでこれは日本人に言うとすぐ分かる。
今日は実はね番組でも山下さんに即興で…俳句から即興で演奏をお願いしたいと思っているんです。
でそうお願いしましたところ山下さん実は俳句…猫の俳句からがいいんじゃないかという…。
それはどんなところから…?あの〜私猫好きでね猫の本も出しちゃったりしてるぐらいなんですが。
俳句と言われてすぐ猫を…漠然としたところが非常に偶然なんですがしばらく前におつきあいをさせてもらっている作家の村松友さんからね「猫踏んぢゃった俳句」っていうね猫を歌っている…詠んでるですか?詠んでる。
俳句は。
失礼致しました。
そういう本を書かれて。
ご自分は全く俳句は素人だと冒頭に書きながらもありとあらゆる俳人の猫を詠んだ俳句を網羅して一冊の本が出来た。
それを見てねこれはすごい偶然だなと思いながら喜んでおりましてはい。
はい。
では最後のコーナーはお二方のセッションでお送りしましょう。
猫の句の中でも山下さんが特にお好きな山頭火の俳句こちらを池田さんに朗読して頂きそこに山下さんに即興で演奏して頂きます。
よろしくお願いします。
よろしくお願い致します。
「私も飲まう」
(拍手)ありがとうございました。
次は山下さんの俳句でお願いします。
え〜っとこの機会についつい一つ出来てしまいました。
2015/12/09(水) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「雪」[字]

選者は池田澄子さん。ゲストは山下洋輔さん。575のリズムが入った「HAIKU」という曲をレパートリーにしている山下さん。スタジオにピアノを入れ演奏してもらう。

詳細情報
番組内容
選者は池田澄子さん。ゲストは山下洋輔さん。575のリズムが入った「HAIKU」という曲をレパートリーにしている山下さん。スタジオにピアノを入れ演奏してもらう。【司会】岸本葉子
出演者
【ゲスト】ジャズ奏者…山下洋輔,【出演】池田澄子,【司会】岸本葉子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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