(爆発音)
(亀山薫)え〜「2006年手帳フェア開催フロアの変更のお知らせ」。
あとは読めませんね。
(杉下右京)また書類としておきましょう。
はい。
書…類。
(角田六郎)おい!暇か?ならこんな時間まで残ってません。
ああ連続放火の…。
ええ。
はぁ…。
このブツはどこの?昨日放火された本屋です。
これも書類で。
はい。
萬屋書店ねえ。
その仕分け一課に押し付けられてんだ。
頼まれればなんでもするのが我々の仕事ですから。
はぁ…死んでるんだよねえ2人。
まったく世の中病んでますよ。
(電話)はい特命係。
どうも。
わかりました。
右京さん早く終わらせて帰りましょうよもう。
今夜も帰れそうにありませんよ。
え!?また放火事件です。
また!?
(消火鐘)やっぱこっちの方からきてるね。
そうですねぇ。
窓側が相当激しく燃えて…。
(芹沢慶二)あっご苦労様です。
(伊丹憲一)おう。
焼け死んだ被害者です。
(伊丹)なんて読むんだ?
(芹沢)コヤナツキリコ42歳。
お客様相談室勤務で労働組合の組合長ですよ。
(伊丹)労働組合の組合長ねぇ。
(三浦信輔)ガイ者の家族には?知らせましたけど札幌なので来るのは明日に。
旦那は?被害者は独身です。
独身か…。
(米沢守)あ…これが出火元です。
(芹沢)またヒーターっすよ。
連続放火の手口はすべてヒーターだったな。
ああ間違いないな。
とうとう6件目か。
ああ…ってなんでいる?呼んだだろ。
ではこちらお願いします。
おめえはおめえの仕事にさっさと戻ってとっとと出てけ!なんだ〜呼び出しといてこの野郎!呼び出して悪いか。
さっさとっとだこの野郎!なんだとこら!なんだよ。
失礼。
ちょっとよろしいですか?
(三浦)口出しは無用ですよ警部殿。
申し訳ない。
1つだけ。
(米沢)なんでしょう?これ消火器ですよね?
(米沢)ええ消火器ですね。
火が出て慌てて被害者が持ってきたんでしょう。
なるほど。
(伊丹)余計な事言うな。
冷てぇ。
(内村警視長)いつまで放火犯をのさばらしとくつもりだ。
すでに3人焼き殺されてるんだ。
でこの6件に怨恨の線は?
(芹沢)いや6件全部に怨恨を持つ奴ってのは…。
俺の捜査方針が間違ってるとでも言うのか?いいえそんな…。
あの部長。
無差別犯の線も視野に入れて捜査を。
今回の放火は手口は統一されてる。
(中園警視正)は。
ストーブなどで現場にあるものが燃やされてます。
だから同一犯だとは思いますが。
はいごめんくださ〜い。
はいはいよいしょ…。
これねあの…。
これ5件目に放火された本屋の…。
さっさと置いてとっとと出てけ。
(伊丹)さっさとっとな。
亀山君そちらを持ってください。
はい。
(内村)連続放火犯の動機は絶対に怨恨だ!で放火の6件怨恨の線はどこを調べた?
(中園)放火された会社の客や従業員は調べたのか?
(一同)はい。
客と従業員…それで何も出なかったのか?
(一同)はぁ…。
では従業員になれなかった人はどうでしょう?口出しするな!失礼。
待て。
従業員になれなかった奴?それも立派な怨恨の線ではないでしょうか?あんな扱いされてなんでわざわざアドバイスなんか。
一刻も早く放火犯を逮捕しこれ以上事件を起こさせないようにする。
そう考えてはいけませんか?いいえいいと思いますよ。
まあ人がいいっちゅうかなんちゅうかですけどね。
右京さん?消火器がどうかしました?出火原因の近くにも置かれてました。
ああありましたね。
ただあったのではなく置かれていたんです。
はい!?このようにホースも外さずピンも抜かず火事になって慌てて持ってきた。
そんなふうに見えますか?ああ確かに。
火事になって慌てて持ってきたんだったらこれを手にしたまま死んでてもおかしくないですよね?つまりあの消火器は火事になる前に用意されていた。
火事になる前に?まるで火事になる事がわかっていたかのように。
わかっていたのに焼け死んだんですか?そこです。
どこです?彼女は本当に焼け死んだのでしょうか?え!?
(米沢)解剖の結果小柳津桐子さんの死因は窒息死ですね。
拝見します。
火災の煙による窒息…ですか?だと思います。
「思います」とは?連続放火では他に2件死んでるんですがその2件とほぼ同じ解剖所見なので同じ窒息死だろうと。
「ほぼ同じ」という事は違うところもある?まあ今回は死体の損傷が激しいですね。
つまり首を絞められた跡があっても確認出来ない。
く…首を絞められた?いやしかしあの…今回だけ絞殺による窒息というのは…。
他の現場で出火元に消火器はありましたか?いいえ。
それも今回だけですね?ええまあ。
放火犯に絞め殺されたって事ですか?だから消火器を用意したのに使えなかった。
まあそういう可能性もないとは言えませんけど…。
少しでも可能性があるのならば…。
調べるんですよね。
はい。
(河上茂)消火器ですか?ええ。
普段こちらでは消火器はどちらに?
(河上)えっと…一番近くて廊下ですね。
そうですか。
亡くなった小柳津さんはここに遅くまで残ってらっしゃる事ってよくあったんですかね?最近は毎晩タクシーでご帰宅でしたよ。
毎晩!?タクシーで?いい身分ですよまったく。
はは…よくご存じですね。
まあ有名な話なんで。
毎晩遅くまで小柳津さんは一体何をなさっていたのでしょう?さあ…組合は今忙しい時期じゃないんで。
(浅野仁志)言われてみればなんで毎晩残ってたんですかね?僕たち役員も今ここに来るのは週1ですよ。
昨日はお2人はこちらには?いや来てませんけど。
(浅野)僕もです。
しかし小柳津さんは毎晩のように残っていた。
する事があったんですかね組合長として。
なるほど。
小柳津さんは組合長でしたね?小柳津先輩です。
あっどうも。
(河上)組合長には自ら立候補したんです。
正義感の強い人だったんで。
フッ独身だから身軽だったんだよ。
ああ…42歳だったんですよね。
ご結婚は一度も?ええ。
最近は見合いしたみたいですけど。
お見合いを?なんか会社の人間に勧められたらしくて。
先ほどから彼女の事ホントによくご存じですよね。
そりゃまあ有名人ですからね。
有名人?組合長だからですか?その組合活動が度を越してたんでね。
とおっしゃいますと?会社とは社員の待遇だけ交渉してくれりゃいいのに他にもいろいろいちゃもんつけたりするから。
いちゃもん?会社の製品にクレームつけたりね。
自社製品にクレームをつけるんですか?この機能はいらないとかこのデザインがどうだとかまるで「社内クレーマー」ですよ。
まあ仕事熱心な人だったんで…。
その独りよがりが嫌われてたんだよ。
嫌われてましたか?小柳津は嫌な奴。
え?いや…そんな言葉が流行ってたほどね。
はぁ…。
あの…教えてもらえませんかね?は?小柳津さんを恨んでたような人。
って言われても…。
いやいやいや…。
あなたから聞いたって事は秘密にしますから。
じゃなくて…いかんせん多すぎて。
あお忙しいところすいません。
検品課長の恩田さんはどちらでしょうか?恩田ですか。
一番奥です。
あありがとうございました。
(恩田義男)最後の最後まで会社は迷惑をかけられました。
小柳津さんが火事を出したわけではありませんよ。
ええ。
警察は放火だと考えてます。
だとしてもその場にいながらみすみす火をつけられるなんてどうかしてる。
確かにそれは不思議ですねぇ。
同じ社の人が殺されたのにその言い方…。
はぁ?恨んでるんですね?彼女を。
別に私は…。
あなたは去年まで設計部長だったそうですね。
設計部長。
ちょっとチェックしてもらえますか?うん…。
どうだ?それが小柳津さんのせいで検品課長に降格した。
って聞いたんすけど…。
私の設計です。
設計部長だった時にですね。
「バイキンブロック」。
バイキンをブロック。
このボタン押すと洗濯しながら洗濯層もクリーニングするんです。
なるほど。
これは便利ですね。
そのせいで検品課長に降格です。
はい?タイマー機能を使うとその機能が働いていない事がわかったんです。
あらららら…。
ミスがわかったのは出荷前で基板を入れ替えればすむ話でした。
それをあの女が大げさに騒ぎ立てて…。
すべての部品を検査し直せって…。
総検査!?
(桐子)すべきです!欠陥が一つでも見つかった以上。
しかし!どうなんですか?工場長。
(沖健次郎)総検査になれば製造ラインが止まってしまいます!発売日をズラせばすむ話です!発売日にあわせて営業も宣伝もしているんですよ。
それがズレれば億単位の損害が出るなぁ。
(恩田)結局発売日をズラしての総検品となりました。
私の設計ミスを業界紙に告発するとあの女が…。
またすごい事言いますね。
会社を脅迫したんですよ。
自社の設計ミスを暴露するなんて前代未聞だ。
正気じゃない。
なるほど。
そうなればどんなに小さな設計ミスでも会社のイメージダウンは計り知れない。
だから彼女の要求に従わざるを得なかった。
あの女ならやりかねないんでね。
で損害の責任が全部設計者のあなたに…。
これを知ってますか?ヒーターですか?コードレスヒーターです。
コードレス。
いやいや…コードありますけど?充電すればコードレスで使えるんですよ。
はぁ便利ですねぇ。
持ち運べてね。
世界で初の充電式暖房機です。
これですか…。
確かかなりヒットした製品ですよね。
業界で賞ももらいました。
たくさん…。
この大きさでしかもコードレスで八畳の広さを暖められるんですよ。
設計には苦労しました。
え?この設計もあなたが?それなのに…。
(三浦)従業員になれなかった人間の履歴書です。
こっちが最初の出版社の不採用者。
こっちが3件目のパソコンメーカーのです。
残りの4件は?4件とも不採用者の履歴書は処分してました。
しかしこの2件に共通点が…。
黒川英明。
2件とも落とされてます。
(内村)一流大学を出てるな。
(電気がつく音)やっぱり来ると思ったよ。
黒川さん。
先日ここの採用試験落とされてるよね。
筆記試験は満点だったみたいよ。
でも面接がねぇ…。
うおおーっ!危なっ!先輩!おい!!
(伊丹)黒川!痛ってぇなもうホントに…!黒川!とりあえず不法侵入と公務執行妨害な。
おい!はい。
おい立て!行くぞほら!
(黒川)僕は一流の大学を出てます。
簿記だって一級を…。
一級は税理士試験を受けられるほど難しいんです。
優秀なのはもうわかったよ。
なあ。
それより放火した会社の…。
僕はそういう人間なのに…。
(机をたたく音)人の話を聞け!
(芹沢)面接落ちるわけだ。
そんな僕を雇わないなんてバカですよ。
だから「創紀出版」を放火したのか?しましたよ。
あの出版社の連中はホントにバカだから。
あっさり自白…。
認めるんだね出版社の放火を。
バカは死ねばいいんですよ。
(黒川)焼け死ねばいいんだ。
じゃあ2件目のIT企業の…。
ホントに世の中バカばっかりです。
あぁ…俺は無視かよ!だから「ソフトエッジ」も放火したのか?それは知りません。
僕はバカが一番嫌いです。
知らない?1件目は自白。
2件目は否認。
(伊丹)「おいホントに知らねぇのか?」だってバカが会社を仕切ってると僕みたいな…。
(伊丹)質問に答えろよ!優秀な人間が苦労するじゃないですか。
じゃあ「オレンジコンピューター」の放火は?しましたよ。
あの会社は能無しばっかだから。
2件目否認3件目自白。
あの放火魔が否認したこの3件。
人が死んでるのが共通点ですね。
だから否認したんでしょうかね?他にはないのでしょうかね?え?この3件の共通点。
どの現場もストーブやヒーターで放火されてるんっすね。
それで書類などに火をつけます。
現場にある物だけを使うのが手口ですね。
やはりありました。
え?2件目と4件目と6件目の共通点。
人が死んでる以外にですか?この3件同じヒーターが出火原因です。
あぁ。
あのコードレスヒーターじゃないですか!売れてるヒーターですね。
私も持ってます。
このヒーターが2件目と4件目では倉庫で燃えていますね。
倉庫で?ああそういえばしまわれてたみたいで。
つまりコンセントに繋がれていなかった。
まあコードレスですからね。
昨年使った際の充電が残ってたんでしょうね。
あそれを知った犯人がスイッチを入れた!でしょうね。
うん…。
人間だけでしょうかね?え?ヒーターのスイッチを入れるのは…。
よーっしゃあいきまーす。
えー斉藤弘志タクシーキャッスル交通。
タクシーの乗車票ですか。
ええ。
24時10分。
残業帰りですね。
これもそうだ。
えーキャッスル交通25時8分林和則。
こちらもキャッスル交通。
なぜ同じタクシー会社ばかりなのでしょう?あこれじゃないですか?タクシーチケット。
ええ。
きっとこのタクシー会社だけなんすよ使ってるの。
なるほど。
あまだあった。
えーキャッスル交通24時6分小柳津…あこれ被害者の女性のですよ。
ああ他にもありますね小柳津さんの名前で。
彼女は最近毎晩タクシー帰り…。
え?最近は毎晩タクシーでご帰宅でしたよ。
だからこんなに乗車票が。
しかし…。
これは少し変ですよ。
は?これは小柳津先輩の…。
ええ彼女の乗ったタクシーなんですが。
えーキャッスル交通グリーン無線。
宝和タクシーKMライン。
毎晩違うタクシー使ってるんですよね。
本当ですね。
どうして…。
放火された夜はどうだったのでしょう?あの夜は確か…王子キャブだったと。
また違うタクシー会社ですね。
ええ…。
これはこちらで使ってるタクシーチケットですよね?ええうちはキャッスル交通だけなんで。
うちはみんなこれを使ってます。
せっかくのタクシーチケットをなぜ彼女は一度しか使わなかったのでしょう?さぁ…。
毎晩違うタクシーを使っていた…。
なんか関係あるんすかね今回の放火事件と。
それはもうすぐわかると思いますよ。
え?このプラグが…コンセントに繋がれている場合。
はい。
あるいはこのように充電が残っている場合。
ええ。
たとえ人がスイッチを入れなくても…。
勝手に入るんですか?ある偶然が起きればですが。
偶然って…まさかホントにネズミ?米沢さん。
はい。
周波数を自由に変えられる無線機です。
この電波をこのヒーターの近くで飛ばすと…。
(ヒーターの作動音)あっ!つまりヒーターの近くで電波が発せられると勝手にスイッチが入るんです。
すごい偶然ですね。
なんの電波なんですか?タクシー無線で使われている周波数帯です。
タクシー!その偶然を起こすタクシーが…。
わかりましたか?はい。
これですね。
やはり王子キャブでしたか。
あの夜は確か…王子キャブだったと。
なるほど…。
きっと気づいたのでしょうね小柳津さんは。
気づいた?彼女の職場はお客様相談室でした。
あっ客からの電話?家にタクシーを呼んだら勝手にヒーターのスイッチが入ってしまった。
そのような苦情を受けたのでしょう。
だから毎晩会社に残って実験してた。
ええ毎晩違う会社のタクシ−を呼んで。
本当にスイッチを入れるタクシーがあるかどうか探してたんですね?そのようですね。
言ってましたね確かにそんな事を。
具体的にはどのようにでしょう?私の設計したコードレスヒーター。
勝手にスイッチが入る事はないかって。
それにタクシー無線が関係してるかもしれない。
って言われたんすね彼女に。
いえそれは初耳です。
恩田さんは彼女のクレームにはどのようにお答えになったのですか?別に。
あの女のクレームはいつもの事だし。
取り合わなかった。
漠然とスイッチが入るなんて言われてもね。
調べりゃいいでしょう。
簡単に言いますね。
簡単な話じゃないすか。
調べてる間工場を止める事になるんです。
だからなんすか!あの時点ですでに2人死んでるんですよ。
あのヒーターのせいで!あなたの設計ミスで!私のせいじゃない!大体そんな重大な不具合があるなら生産してる工場から連絡がなきゃおかしいんだ!責任転嫁ですか。
だって工場長も…。
そうですか工場長もご存じだった。
(沖)じゃあそれでラインの工程とコストを削減出来るんだね?はい。
よしわかった。
早速取りかかってくれ。
わかりました。
よしよしグーグー。
工場長警察の方がお見えですけど。
ああ聞いたよ。
あのコードレスヒーターの事でね。
スイッチに問題があるって言ってたな。
問題があるそれだけですか?彼女…放火で亡くなったんですよねぇ。
タクシー無線。
やっぱり小柳津さんからそこまで聞いてましたね?なんの事だか…。
聞いててあなたはそのクレームを無視した。
彼女のクレームは今に始まった事じゃないんでねぇ。
だからお調べにならなかったんですか?納期を考えたらラインは簡単に止められないよ。
現にそれで人が死んでるんですよ。
それでもこのまま作り続けますか?工場長。
確かな根拠もなしに工場は止められません。
根拠って…この期に及んで何言ってんすか。
ホントにそんな重大な欠陥があるなら…。
ありますよ。
それがはっきりしたんだ!それが本当なら…社長がリコールの決断をするはずだ。
また責任転嫁ですか。
製造中止は社長の裁量だ。
小柳津からクレームがあったあん時だって…。
なるほど。
社長も彼女からクレームは聞いていた。
(奥寺美和子)じゃあ会社ぐるみじゃない。
ああ。
書くか?新聞に。
え?亀山くん。
書きたいけどウラ取らないと。
ウラ?だから証拠。
なんだよまどろっこしいな!だってそっちだって証拠ないんでしょ?だけど!検品課長も工場長も社長もあのヒーターの欠陥に気づいてた。
なのに誰も対処しなかった。
それは事実だ。
まるで無責任の連鎖ですねぇ。
自社製品で死亡者が出たにもかかわらずその欠陥に気づいていた事さえ認めようともしない。
タチの悪い連中ですよ。
(宮部たまき)いつからそうなっちゃうんでしょうかね。
え?人間って。
元々はそんな人間じゃなかったって事ですか?長く会社にいるうちにそうなってしまうのでしょうかね。
会社の体質って事ですか。
会社の体質なら…その責任は社長にあるはずですよね。
社長にでも会いに行くつもりですか?いけませんか?美和子さんの言うように証拠がない以上検品課長や工場長のようにとぼけられるだけだと思いますよ。
でもそれでも!それでもこのままってわけにはいきませんよ。
欠陥隠しのために小柳津さんが殺されたんだとしたら…。
(卯月庄一)タクシー無線…ですか。
ええ。
小柳津さんはそれに気づいていたとしか思えません。
まさか。
ならなぜ私に報告がないんですか。
彼女からお聞きになってますよね?聞いてたらほっときませんよ。
いや聞いてて無視したんだ。
私がなぜそんな事を?利益優先のためですよ。
それにいつもクレームをつけてくる小柳津さんを嫌っていた。
私はね彼女に見合いを勧めていたほどでしてね。
なるほど。
はじめは断っていましたが近頃ではその話を受け入れるようになっていた矢先だったんですよ。
失礼なんの話でしたっけ?この会社の製品で人が死んだって話ですよ。
それはこちらで調べもしそうならしかるべき措置を…。
それはもうこちらで明らかにしたんです!たとえそういう欠陥があったとしても…私たちは神ではありませんからね。
とおっしゃいますと?いつも完璧な製品を作れるわけじゃありません。
それが言い訳でしょうか?亡くなった方には同情しますがうちの製品が原因だったとしても私たちが殺したんじゃない。
事故で亡くなったと。
それでも我々は罪になるんでしょうか?あなたは知ってたんだ。
彼女からタクシー無線がスイッチを入れる可能性がある事を聞いてたんだ!困った人だ…。
それを隠すために殺したんなら立派な殺人罪ですよ。
我が社の人間が彼女を殺したと?違いますか?証拠はあるんでしょうね。
我が社の人間が殺したとまで言うのなら…。
小柳津さんを殺したのはこの会社の人間です。
それは我が社の製品が原因でという意味ですか?いいえ明らかな殺人です。
それを証明出来ますか?ええ今日中に。
どうする気ですか?どうするとは?今日中になんて言っちゃって。
まだ犯人も絞れてないのに。
ああ犯人ならもうわかっていますよ。
えっ!?誰なんすか?検品課長ですか?工場長ですか?社長ですか?
(卯月)我が社の製品の事故で人が死んだ。
その隠蔽のために告発者を社の人間が殺した。
(恩田)そんな事がマスコミに露呈したら…。
(卯月)これ以上ないスキャンダルだ。
我が社はおしまいだねぇ…。
だからバレちゃダメだ。
それからあの事も…。
お客様相談室で何件か同じような電話が。
あり得ないね。
勝手にスイッチが入るなんて。
夜寝ていたらいつの間にかスイッチが入ってたって。
寝ぼけてスイッチを押したんだろう。
呼んだタクシーが来たのでスイッチを切って出ようとしたらまたすぐついた。
それともうひとつ家族がタクシーで帰宅したらスイッチが入った。
タクシー?いずれにしてもそんな漠然とした事じゃ調べようがないよ。
そういう事ですね。
(沖)あの時我々で調べていれば…。
暖房シーズンを前に工場を止める事は出来ない…。
そう言ったのは工場長君だよ。
しかし社長。
その事には社長も同意されたはずでは…。
だから共犯だ。
この中の誰が彼女を殺したとしても…。
同罪だねぇ。
(河上)タクシー無線がこのスイッチを?ええ王子キャブのタクシー無線がね。
(浅野)王子キャブってあの夜小柳津先輩が呼んだ…。
それです。
(浅野)え?あなたは以前にもそうおっしゃいましたね。
あの夜は確か…王子キャブだったと。
あの夜あなたはここには来ていない。
そうでしたね?昨日はお2人はこちらには?いや来てませんけど。
僕もです。
彼女はあの夜ここで王子キャブのタクシーを呼んだのでしょう。
しかしタクシーには乗れなかったんです。
その前に殺されてしまいましたからね。
つまり彼女が王子キャブのタクシーを呼んだ事はここにいた人しかわからない事なんですよ。
そ…それは…。
あの夜君は小柳津さんと一緒にここにいた。
お前どうして…。
でも君はそれを隠した!隠す理由があったのでしょうね。
聞かせてもらえるかなその理由。
なぜあの夜君が彼女とここにいたのか。
先輩が…お見合いをしてるって噂を聞いて…。
(桐子)はいヨツバ電機本社前です。
はい…ええ…1238番ですね?はい10分後。
お願いします。
どういう事ですか?やめてよ!お見合いしたってどういう事ですか!答えてください小柳津先輩。
先輩。
…え?結局直らなかったね敬語。
何言ってるんですか!?なんで私なのよ。
私嫌われ者よ。
それは…先輩が正しい事をしてるからです。
ごめん…そういうとこがダメなの。
わかるように話してください!したよお見合い。
社長の紹介で。
…誰と?取引先の重役。
バツイチだけど。
そんな奴とどうして!お付き合いしてるの結婚を前提に。
どうしちゃったんですか先輩!先輩指輪は?一緒に買った…。
捨てたわ。
もう必要ないものあんな安物。
いつかこれを左手に…嘘だったんですか?はぁ…乗りかえるのよ。
…え?あなたよりも割りのいい男にね。
嘘だ…。
嘘だー!ちょ…やめて!いや!嘘だ…嘘だー!嘘だ!
(ドアを閉める音)その後彼女の呼んだタクシーが到着した。
しかし彼女は会社を出てこない。
きっと運転手は会社に無線で確認をしたでしょう。
(爆発音)いい気味です。
浅野さん。
本気でそう思っているのですか?僕は…捨てられたんです。
この指輪と同じように。
あの夜は頭に血が上ってそう思ってしまっただけではありませんか?今でも同じ気持ちです。
ではお訊きしますがあなたはなぜ今でも指輪を外せないでいるのでしょう?好きでした…。
どんなに嫌われても…正しい事をしようとする先輩が…。
(泣き声)あなたに今出来る事は罪を償う事それだけです。
(泣き声)わかった?
(泣き声)ありがとうございました。
小柳津さんはこの会社の人に殺された。
そう申し上げました。
しかし製品の欠陥やその隠蔽とは無縁だった。
でもあんたたちはその欠陥を隠した。
私たちが隠した?そうですよ。
我々は小柳津さんの指摘を受けて初めてその可能性を知り一生懸命調査中だったんですよ。
ねぇ?ええ。
その証拠に我が社の小柳津はヒーターを調べていた…そうですよねぇ。
彼女がヒーターを調べていた事は確かです。
いい社員を持ちましたね社長。
ああ本当に。
小柳津さんには頭が下がりますよ。
彼女のおかげで製品の欠陥がはっきりしたからねぇ。
彼女の努力を無駄にしないよう今日製品のリコールをする予定なんですよ。
刑事さん。
困った人たちの結構なご決断ですね。
あんなに嫌ってたのに突然英雄扱いですよ。
小柳津さんにもガッカリですけどね。
なんの事ですか?彼を捨てて条件のいい男に乗りかえたなんて。
ホントにそう思いますか?え?彼女が彼のために身を引いたっていうんですか?まさか。
それじゃ彼が哀れですよ。
まだ自分を愛してる女を殺しちまったなんて。
早くしないとまた徹夜になりますよ。
このまま終わりなんすか?はい?あのヒーターに殺された人たちは泣き寝入りですか?ヒーターの欠陥が立証出来た今ご遺族が賠償金を請求する事は出来ます。
金じゃないでしょう。
その隠蔽が立証出来ない限り刑事罰を科す事は難しいと言わざるを得ませんね。
(ため息)結局彼らの無責任を誰も裁けないんですね。
航空機や列車による事故。
国や企業の怠慢や嘘による被害。
満足に裁けたためしはありません。
おい!暇か?まだやってんのかよ。
ふん。
はぁ…。
結構ニュースになったよねこの事件もな。
おいヘヘ。
小さいっすねぇ。
…え?こんな小さい記事で…。
(浅野)僕は…捨てられたんです。
この指輪と同じように。
(ため息)2015/12/09(水) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒season4[再][字]
「殺人ヒーター」
詳細情報
◇番組内容
“警視庁一の変人”だが天才的頭脳で鋭い推理をみせる杉下右京(水谷豊)と“おひとよしな熱血刑事”亀山薫(寺脇康文)の名コンビがあらゆる難事件に挑む!
◇出演者
水谷豊、寺脇康文、峰岸徹、笹野高史、嶋田久作、鈴木砂羽 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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