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大村さん 梶田さん まもなくノーベル賞授賞式
12月10日 20時52分

大村さん 梶田さん まもなくノーベル賞授賞式
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ことしのノーベル賞の授賞式が日本時間の11日未明、スウェーデンの首都ストックホルムで行われ、物理学賞に選ばれた梶田隆章さんと医学・生理学賞に選ばれた大村智さんにメダルと賞状が授与されます。
スウェーデンの首都ストックホルムでは、10日午後4時半(日本時間の11日午前0時半)から中心部にあるコンサートホールで、平和賞を除くノーベル賞の授賞式が行われます。
授賞式では、物質のもとになる最も基本的な粒子の一つ「ニュートリノ」に質量があることを世界で初めて証明し、物理学賞に選ばれた東京大学宇宙線研究所所長の梶田隆章さんと、熱帯の寄生虫の病気に効果がある抗生物質を発見したことで知られ、医学・生理学賞に選ばれた北里大学特別栄誉教授の大村智さんに、スウェーデンのグスタフ国王からメダルと賞状が手渡されます。
授賞式を前に、会場ではリハーサルが行われ、梶田さんと大村さんも参加しました。
ホテルに戻った大村さんは「セレモニーについて、どういうところに注意したらよいか教えてくれました。大丈夫です。よく教わって来ましたから」と話していました。
また梶田さんは、「いよいよ本番が近づいたなと感じています」と話していました。
2人は、授賞式のあとは市庁舎に移動して、スウェーデン王室の王族らと共に晩さん会に出席することになっています。

大村さんの発見は抗がん剤にも

大村さんは、熱帯病の特効薬を生み出す細菌を静岡県のゴルフ場の土の中から見つけ出し、今回の受賞につながりました。
今、大村さんが発見した細菌からは、抗がん剤のもとになる物質などが生み出され、高額な薬をもっと安く作り出せると研究が進んでいます。
大村さんがゴルフ場の土の中から見つけ出した細菌は「ストレプトマイセスアベルメクチニウス」です。
この細菌が生み出す物質が、「イベルメクチン」と呼ばれる、年間2億5000万人以上が服用する熱帯病の薬になりました。今、産業技術総合研究所などのグループは、この細菌に別の細菌の遺伝子を導入し、薬の候補となる物質を100種類以上、生み出しています。
中でも注目を集めているのが、抗がん剤になる物質です。抗がん剤になる物質は現在、製薬企業の工場で何十というステップを踏んで合成されたりするため、膨大なコストがかかります。
一方、大村さんが発見した細菌の力を使えば、自然の力で生み出せるため、大幅なコストダウンが可能だということで、現在、製薬会社などが実用化を進めています。
産業技術総合研究所の新家一男上級主任研究員は、「大村さんの見つけた菌で、いままで少量しか作れなかった抗生物質を大量生産し、コストの低下に貢献できるとともに、これまで人類が作れなかった抗生物質も作れるようになっている。産業的な意味でも大村さんの最初の発見は非常に大きな意味がある。将来新しくいろんな応用ができるようになると思います」と話していました。

10万人が感染の皮膚病でも活用

大村さんが発見した抗生物質から作られた治療薬、「イベルメクチン」は国内でも年間およそ10万人がかかる皮膚の病気の治療にも使われていて、まもなく始まる授賞式を前に、医師や患者たちからも喜びの声が聞かれました。
「イベルメクチン」は失明につながる熱帯病「オンコセルカ症」などの特効薬として知られますが、実は国内でも年間およそ10万人がかかる皮膚の病気「かいせん」の治療薬として使われています。
東京・千代田区にある九段坂病院の皮膚科には、保育園でこの病気にかかった子どもや高齢者施設で感染したお年寄りなど年間70人ほどの患者が訪れています。
「イベルメクチン」は現在、この病気に効く唯一の飲み薬です。この病気にかかると皮膚の状態が悪化し、夜も眠れないということですが、週に1度のペースで2回服用すれば多くの人の症状はよくなります。この日は皮膚の症状のため眠れない日々が長く続いたという40代の男性患者などが「イベルメクチン」の処方を受けていました。
九段坂病院の大滝倫子医師は、「イベルメクチンを使えば、週に1度飲むだけで患者さんも症状がよくなり、喜んでくれるので、皮膚科の医師からすれば本当に偉大な薬です。そのもととなる抗生物質を発見した大村さんにはありがとうと言いたい」と話していました。

微生物は思わぬところに

授賞式前の記念講演で「微生物は無限の資源だ」と語った大村さんですが、大村さんのチームは、年間数十万人が死亡するマラリアの新薬の候補を思わぬところにいた微生物から見つけ出し、いま実用化に向けた研究を進めています。
年間数十万人が死亡するマラリアの新薬の候補が見つかったのは、研究室のメンバーがふだん飲み物やお菓子を入れている冷蔵庫の中でした。
実はここに大村さんが、地元山梨のお土産として研究チームに差し入れしたブドウが入っていました。それを取りだしたところ、1粒だけ濃い深緑色の微生物=カビが生えていたのです。
これを見た若手研究者たちが「大村さんから頂いたものだから何か発見につながるかもしれない。これは調べるべきでないか」と盛り上がり、培養してみたと言います。すると、そのカビが作り出す抗生物質がマラリアの原因となる原虫を殺すことが分かり、いま研究チームで新薬の実用化に向けた研究が進められているのです。
チームでは、このカビにラテン語で「ヴィティコーラ」=「ブドウに住むもの」という名前を付けました。
研究チームの岩月正人さんは、「微生物の力を信じて抗生物質を探し続ける姿勢を教えられていたからこそ、見つけられたのだと思います。大村さんの教えを受け継ぎ、マラリアやほかの熱帯病の治療薬を世の中に出し続けていければよいなと思っています」と話していました。

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