(せい)ここは責任重大だ。
自分の道を貫いて下さいな。
美和。
せわぁない。
私たちもダンスを。
ドアを開けるとフクロウがお出迎え。
ここは今話題のスポットフクロウカフェ。
(鳴き声)フクロウとの触れ合いを求めて女性や家族連れ外国人にまで大人気。
中でも人気なのがメンフクロウ。
お面をかぶったようなかわいい顔。
触っても逃げない人なつっこい性格。
本日の主人公です。
その素顔は腕利きのハンター。
華麗な飛行術を駆使して素早いネズミをキャッチ。
名付けて「ネズミ狩りのプロ」!狩りのワザが生きるのは子育て。
フクロウ界ナンバーワンの子だくさんなんです。
ヒナを育てるためネズミをとりまくり!そんなメンフクロウに今中東イスラエルの農家の人たちが大注目。
畑にたくさんの巣箱を置いて呼び寄せネズミ退治に役立てているんです。
人々に愛され人とともに生きるメンフクロウ。
畑で大活躍する姿に密着します。
(テーマ音楽)3つの宗教の聖地がある町エルサレム。
人種も宗教も違う人々が世界各地から集まってきます。
今日の舞台はここから車で1時間ほど。
イスラエル中部の農村です。
パッチワークのような畑が広がります。
雨が少ないためイスラエルは国土の半分以上が砂漠地帯。
人々は長い時間をかけて農業用水などを整備し実り豊かな畑へと変えてきました。
イスラエルの食料自給率はなんと95パーセント。
知られざる農業大国です。
日が沈むころ。
麦畑にメンフクロウが現れます。
完全な夜行性のためこれまで映像に捉えることは大変でした。
今回最新の超高感度カメラを2台用意。
夜の暮らしを狙います。
こちらは通常のカメラの映像。
地平線がかすかに見えるくらいでほとんど真っ暗です。
右が超高感度カメラ。
生えている植物や夜空の星もはっきりと見えます。
ほらもう映ってますよ。
メンフクロウです。
全長40センチ。
体重は300グラムほど。
畑の上を飛び回っています。
狩りが始まったようです。
獲物は主にネズミ。
急降下。
狙いを定めて…。
やりました!もう一度見てみましょう。
ネズミはフクロウのほうを向いているのに全く気付いていません。
その理由は飛ぶ時に羽ばたく音がほとんどしないから。
メンフクロウの得意ワザ「消音飛行」です。
フクロウの仲間が持つ特別な翼に秘密があります。
「風切羽」と呼ばれる一番大きな羽。
その先端にギザギザがあります。
普通の鳥の場合翼に当たった空気が大きな渦となってしまい音が出ます。
ところがフクロウは翼のギザギザが空気の流れを整えるため渦ができにくく音があまり出ません。
メンフクロウはギザギザがよく発達しフクロウの中でも特に静かに飛ぶことができるんです。
もう一つメンフクロウの翼には特徴があります。
体の大きさに比べて翼が大きいんです。
他のフクロウと比べると一目瞭然。
大きな翼は宙に浮く大きな力を生み出します。
それを生かしたワザがこのホバリング。
顔の位置にご注目。
翼は動かしているのに顔は微動だにしません。
こうしてかすかなネズミの動きを見極めます。
茂みからわずかに顔を出したとたん…。
メンフクロウが急降下!見事に捕らえました。
ネズミが素早く逃げても…追いかけてスライディングキャッチ!一晩で25匹ものネズミをとったという記録もあります。
メンフクロウはまさに「ネズミ狩りのプロ」なんです。
フクロウが狩りをしていた畑を昼間訪ねてみました。
周囲を見渡すと白いものが点々と立っています。
あちらにも。
ほらここにも。
まるで郵便受けみたい。
これは全部農家がメンフクロウのためにたてた巣箱です。
農家にとって一番の悩みはネズミが作物を荒らすこと。
そこで目をつけたのがメンフクロウの狩りの能力。
住まいを提供する代わりにネズミ退治をしてもらう作戦です。
毎年5月メンフクロウの調査が行われます。
この時期メンフクロウは子育ての真っ最中。
すべての巣箱を見て回りヒナの数を調べます。
20年にわたりメンフクロウを研究しているヨアブ・モトロ博士です。
この巣箱は使われているようです。
お母さんにちょっと失礼して中を確認します。
ヒナが卵からかえっていました。
ヒナはまだ目も開いていません。
大きな口で大あくび。
かわいいですねぇ。
メンフクロウのお母さんお邪魔しました。
ヨアブ博士今度は地面で何か見つけました。
畑の至る所にこうした巣穴があります。
イスラエルは冬でも気候が温暖なためネズミは一年中活動ができます。
ほうっておくと高い繁殖力でどんどん増えてしまいます。
かつてネズミ駆除といえば殺鼠剤と呼ばれる農薬を使うことが普通でした。
毒を塗ったエサで殺す方法です。
しかし毒性が強いためネズミ以外の動物も死んでしまいました。
土壌汚染や人体への悪影響も心配されたんです。
そこで大学や自然保護団体が殺鼠剤の代わりにメンフクロウにネズミ退治をさせようと提案しました。
効果はてきめん。
メンフクロウに任せれば農薬を使わなくても大丈夫だということがわかったんです。
高価な農薬を買わずに済むため農家の出費も減らせます。
今ではイスラエルの国中の畑で巣箱が使われています。
その数実に3,000個以上。
人にも環境にも農家の懐にも優しい「メンフクロウ農法」はこうして広まったんです。
いや〜感心感心!いいお話じゃないですか。
でしょ。
ヒゲじい。
う〜ん…でもちょっと待った。
うん?これってメンフクロウでないとダメなんですか?ほかのフクロウでもやったらどうですかね?それがですねメンフクロウじゃないとダメなんです。
えっどうして?一つにはメンフクロウの人なつっこい性格があります。
メンフクロウは英語で「納屋フクロウ」。
昔から農家の納屋や屋根裏に住み着いてきました。
人と仲よく暮らすのが得意なんです。
ふ〜ん。
加えてネズミ退治にもってこいのある性質があります。
えっどんな?それは縄張りについての習性です。
普通フクロウの仲間は縄張り意識がとても強く自分の狩り場にほかの者が侵入することを許しません。
ほうほうほう。
一方メンフクロウは縄張り意識が低く狩り場をほかの者が使うのも許すんです。
半径500メートルほどの狩り場で30羽が一緒に狩りをしたという報告もあります。
こうして大勢で畑のネズミをとことんとり尽くしてくれるんです。
うんなるほどね。
それにねメンフクロウはフクロウ界ナンバーワンの子だくさん。
平均すると5〜6羽。
多い時にはなんと13羽の大所帯。
いや〜そりゃまたすごい数ですな。
うわ!こんなにいてみんな巣立つんですかね?はい。
メンフクロウはネズミの数に応じて産む卵の数を柔軟に調節することができます。
つまりネズミが大発生すればそれだけ子だくさんになりいつも以上にネズミを退治してくれるというわけです。
う〜んそりゃ頼もしいですな。
でもヒナがたくさんいるとケンカして大変なんじゃないですかね?ご心配なく。
実はメンフクロウならではのヒナが平和的に育つ驚きの仕組みがあるんですよ。
えっ平和的?そりゃ気になりますなぁ。
それはね第2章でご紹介します。
だぁはは!それはめん「ふ」くらいました…なんて。
メンフクロウのおかげで農家は苦労知らずの「不苦労」…なんちゃって。
子育て頑張って下さいね〜!ネズミ狩りのワザと子だくさんの習性を巧みに利用した「メンフクロウ農法」。
その生みの親と呼べる人がいます。
農家のシャウリ・アビエルさんです。
およそ30年前に始まった取り組みを農家として一番はじめから支えてきたんです。
でも最初に作った巣箱は大失敗。
子育て中に28羽いた親鳥がすべて死んでしまいました。
原因は夏の暑さ。
巣箱の温度が上がり熱中症になってしまったんです。
そこでシャウリさんたちは巣箱を白く塗って太陽の光をブロック。
また小さく数が少なかった通気口を大きく広げ熱が逃げやすいように改良。
さらに巣箱の高さを3メートルにアップ。
地表の熱の影響を受けないようにしました。
こうした積み重ねでメンフクロウが安心して子育てできるようになったんです。
今シャウリさんのもとには世界中から視察団がやってきます。
人にもフクロウにも優しい取り組み。
もっと広がっていくといいですね。
6月上旬。
メンフクロウたちは子育て真っ盛り。
私たちは麦畑に暮らす親子に密着することにしました。
巣箱には4羽の兄弟がいます。
生まれて4週間ほど。
食欲旺盛なヒナのため親は狩りに大忙し。
一晩に何度も獲物を運んできます。
(鳴き声)1羽がネズミをもらいました。
ここで不思議なことに気付きませんか?ほかの兄弟は全く食べようとしません。
ほら見ているだけですよね。
例えばこちらのアナホリフクロウの場合。
常に食べものをめぐる厳しい競争があります。
食事ができるのは兄弟を押しのけ競争に勝ち残った者だけ。
体が小さいと食べものにありつけず命を落とすことも少なくないんです。
でもメンフクロウのヒナの間ではこうした食べものの奪い合いはほとんど起こりません。
一体どうしてなんでしょうか。
この不思議な習性について近年驚きの報告がありました。
ヒナたちは食べものについて鳴き声で交渉しているというのです。
研究によると親が狩りをしている間ヒナは鳴き声を出し空腹さをアピールし合います。
そして大きな声で鳴き続けたものがほかのヒナたちから認められ次の獲物を食べる権利を得るといいます。
本当でしょうか?まず青で囲んだヒナが鳴きます。
続いて赤。
青。
赤。
赤。
赤が青と比べ大きな声で鳴き続けます。
赤が優勢です。
(鳴き声)親が戻ってきました。
確かに赤が食べものをもらいほかのヒナは奪おうとしませんでした。
メンフクロウのこの平和的な行動。
ヒナ同士の争いをなくし体力の消耗を防ぐメリットがあると考えられています。
さらにもう一つ大きなメリットがあります。
それは体の小さなヒナでも鳴き声なら互角にアピールできることです。
こちらをご覧下さい。
黄色で囲んだ一番小さなヒナが大声で鳴きしきりにアピールしています。
周りの兄弟も最初は声を出しますが次第に鳴かなくなります。
(鳴き声)今親が帰ってきました。
獲物を受け取ったのは確かに一番小さなヒナ。
ヒナの大きさは生まれた順番で決まるためあとから生まれたヒナほど不利になります。
でもこの「声の交渉」のおかげで全員が十分に食べものを得ることができるんです。
麦畑の収穫が始まると風景が一変します。
そんな穏やかな日のこと。
巣箱の様子がいつもと違います。
よ〜く見ると…ヒナが顔を出しています。
飛びました!巣立ちです。
4羽の兄弟がこの日皆巣から飛び立ちました。
子どもたちはすぐに食べもの探しを始めます。
何か見つけました。
小さな虫です。
捕らえたのはワラでした。
今度は茂みに向かいます。
ネズミがいます。
ところがやぶに阻まれました。
残念。
子どもたちは巣立ちから3週間ほどはこうして狩りの練習をしながら過ごすんです。
(ジャッカルの鳴き声)夜空に響く不気味な声。
キンイロジャッカルです。
狩りの練習をしている子どもを狙って来たんです。
兄弟は一斉に飛び回って相手を威嚇。
(メンフクロウの鳴き声)力を合わせ見事追い払いました。
兄弟たちは固い絆でピンチを乗り切ったんです。
(鳴き声)数日後。
兄弟たちの絆を象徴する出来事を目撃しました。
巣箱の近くにやってきたのは体の小さな末っ子とそのすぐ上の子です。
まだ狩りが苦手な子どもたち。
親が運んでくる獲物を待っているんです。
しばらくすると親が戻ってきました。
獲物をくわえると…。
(鳴き声)鳴き続けて空腹をアピールしていた末っ子に与えました。
上の子は声の交渉のルールを守り獲物を奪おうとはしません。
でも相当おなかがすいているようです。
すると末っ子は食べるのをやめ上の子が残りを食べ始めました。
メンフクロウは兄弟で食べものを分かち合う姿がよく見られます。
とことん争いを好まない鳥なんですね。
同じころ研究者から朗報が入りました。
向かったのはアーモンド畑。
この年2回目の子育てを始めた夫婦を見つけたというんです。
ヨアブ博士もうれしそう。
ヒナと卵を抱くお母さん。
今回も子だくさんです。
メンフクロウは条件さえ整えば一シーズンで20羽近くものヒナを育てることができるんです。
再び麦畑の4兄弟を訪ねました。
巣立ちから1週間余り。
狩りの腕は上達したんでしょうか。
ネズミが跳びはねるやいなや…。
すかさず捕らえます。
もうすっかり一人前です。
そこへフラフラとやってきたのはまだ体の小さな末っ子です。
狙いを定めて…。
飛びました!うまく捕まえられたかな?ネズミをくわえています。
よかった〜。
こうして子どもたちは「ネズミ狩りのプロ」への道を歩んでいきます。
そして間もなく兄弟と別れパートナーを探す旅に出るのです。
優れた狩りの腕を見込まれ人々に頼りにされるメンフクロウ。
これからも人の傍らで優しくたくましく命をつないでいくことでしょう。
2015/12/10(木) 16:20〜16:50
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「ネズミ退治に大活躍!人気者フクロウ」[字][再]
お面をつけたようなカワイイ顔のメンフクロウ。その巧みな狩りの腕前に中東イスラエルの農家が注目。ネズミ退治に役立てている。畑で大活躍する人気者メンフクロウに密着!
詳細情報
番組内容
お面をつけたようなカワイイ顔のメンフクロウ。人なつこい性格で、話題のフクロウカフェでも大人気だ。その素顔は、華麗な飛行術を操る腕利きのハンター。いま、見事な狩りの腕前に中東イスラエルの農家が大注目。畑に巣箱を置いて呼び寄せ、ネズミ退治に役立てている。名付けて「メンフクロウ農法」。環境に優しいため、急速に広がりをみせている。人に愛され、人のかたわらで狩りと子育てに励むメンフクロウに密着!歌:平原綾香
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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