駄目だ駄目だそれじゃ。
網が駄目になっちまうよ。
俺がやるからお前カゴの準備しとけ。
はい。
この道40年のベテラン漁師が漁の最中突然倒れた。
ううっ!ああ…。
大丈夫か?どうした?駄目だ…腹いてぇ。
おやじ!上げてくれそっち。
(吾郎)
一緒に漁をしているのはせがれの玲司。
2年前サラリーマンを辞めて漁師になったんです
先行って向こう。
氷出して氷。
はい。
私とせがれで沖へ出て引き網漁で主にシラスを取ってます。
若い頃から体力だけは自信があって救急車に乗るような事は一切ありませんでした
しっかりしろよおやじ!
なのにこんな事になっちまって…
救急車呼ぶか?おやじ救急車。
うん。
先生何とか助けて下さい
患者を救え!吾郎さん船上で産気づいちゃって。
腹痛ですよ。
痛い痛いっつってましたよね。
腹痛でしたけどさあゲストアンミカさんどうですか?力を入れて抜いた瞬間な感じするので。
腸捻転。
腸捻転出ましたね。
大体そういう場合は盲腸ですよ。
虫垂炎。
一番最初に疑いますよね。
あれだけ痛い痛いっつってたら大体盲腸じゃねえのかと。
それでは今回の症例を解決したドクターGの登場です。
(玉ちゃん)今回のドクターGは京都府洛和会丸太町病院…
(拍手)さあ先生初登場。
そして吾郎さんがね大変な事になっちゃいました。
腹痛ってものすごいよくありますよね。
皆さんよくあって。
でも鑑別って今聞いただけでもすごいたくさん挙がってたんですけどそれこそ産気づいたとかね。
まあ吾郎さん男ですけど。
今回の症例も一筋縄ではいかないと思うんですよね。
救急車に乗ってきましたけども先生は救急科の先生なんですか?私は…救急総合診療科の上田剛士先生の特徴は…緊急で運び込まれる患者のどんなささいな変化も見逃さない。
患者の体に何が起きているのか。
それが今回のドクターG上田先生だ。
さあ病気の正体を探り当てるために全国から集まって頂いた研修医はこちらの3人です。
(玉ちゃん)VTRを見てどんな病気考えましたかね?突然の発症という事で大血管など命に関わる疾患が考えやすいのでお若い事もあり何としても診断して助けたいなと。
(玉ちゃん)藤野先生どうでしょうか?突然発症して汗も伴っているような腹痛だったので血管病変だったりとか腸の穿孔そういった病気が怖いなと思って見てます。
さあ田代先生どうでしょうか?急性発症で恐らく生活習慣も偏りのありそうな方だったので右下腹部痛という事でさまざまな鑑別診断考えながらビデオを見させて頂きたいと思います。
さあ上田先生今回の症例ずばり難しいですか?でも上田先生は?ちょっと待って下さい。
難しいと言ったんですよね。
これを使って気付かなきゃいけないところに気付く事ができればそこから道は開けてくと思います。
分かりました。
さあそれでは再現ドラマを見て頂きましょう。
正しい病名にたどりつき患者を救う事ができるのか?ドクターGの症例に研修医が挑みます。
ドクタージェネラル!1時間ほど前に沖で漁をしてる最中に下腹部の痛みを訴え息子さんより救急要請がありました。
息子さんですね?はい。
中でお待ち下さい。
(玲司)はい。
移動しますよ。
123!分かりますか?はい。
(看護師)ちょっと服めくりますよ。
到着時痛みでお話しをする事はできませんでしたが意識ははっきりとしていました。
発症前後はありません。
お腹が痛いんですね?お名前は言えますか?はい…船井吾郎です。
お話できますか?はい。
どの辺りが痛みますか?この辺り…ですね。
この辺ですね。
大丈夫です。
ないです。
さっきよりちょっとはましです。
痛いかもしれませんがお腹を触りますよ。
はい。
押しても押さなくてもあまり変わりないです。
分かりました。
痛みは変わらないんですね。
はい1時間前です。
いや〜ちょっと分かりませんでした。
吾郎さん。
いや漁に出る前から痛みはあったんです。
漁に出る時はいつも4時過ぎに起きるんです
いえ起きたあとに痛みがあったんです
うっ…。
おおいてぇ。
おはよう。
おはよう。
なに?また頭痛いの?頭じゃねえ。
腹だ腹。
はいはい。
今日は下痢なのね。
ったく…いつも飲み過ぎるからいけないのよ。
トイレに行けば治ると思ったんです
いえ下痢はなかったです
はい少し
いえ変わりません。
色も固さもいつもどおりです。
治まったとまではいかなかったんですが…
(弥生)ちゃんと歯磨いてよ〜。
うん。
ここのところの時化で漁に出られていなかったので仕事に出る事にしたんです
(弥生)もう出たかと思ったわよ。
(小さい声で)玲司はどのぐらいで出た?えっ?玲司は?ああ氷やるって4時過ぎに出たわよ。
はいお弁当。
そうか…。
(弥生)いってらっしゃい。
ええまあ…。
早いうちはシラスが少なかったもんで修業中のせがれに任せていました
大体15キロあるかないか。
どう?次行けそう?
(吾郎)群れが散っちゃったな。
(小さい声で)移動する。
えっ?移動するぞ。
一旦メシ休憩しない?さすがに腹減ったわ。
じゃあそうすっか。
7〜8回網をあげたあとだから10時ごろだったと思います
シラスとごはんです
ええ
おやじ何か元気なくねえ?別に。
いえ特にそういう感じはありません。
まあ朝からシクシクと痛い感じがあったくらいです
10回目くらいの網をあげてる時でした。
う〜ん…。
息子さんはどうでしょう?いや特には。
そういえばやけに汗をかいてるなとは思いました。
おおでかいじゃん。
行く?まだ早いか。
ああ。
じゃあ網おろせ。
(玲司)
夏は汗だくですけど今は上着を脱いでれば動いていても沖で汗はかきません
(小さい声で)おいそろそろ巻くぞ。
えっ?網巻け。
はい。
(玲司)
ふだんは自分が網をあげるのをやらせてもらってるんですけどその時は…
おお結構入ってる入ってる。
よいしょ!駄目だ駄目だそれじゃ。
網が駄目になっちまうよ。
俺がやるからお前カゴの準備しとけ。
はい。
(玲司)
ちょっとシラスの量が多かったんで代わってもらったんです
(荒い息遣い)
(玲司)
それで次に気がついた時はおやじが倒れた時でした
ううっ…ああ…。
おやじ…おやじ大丈夫か?おやじどうした?おやじ?駄目だ…腹いてぇ。
大丈夫かよおい。
そうでしたか。
この辺りが同じように痛くなりました。
ないです。
ないです。
2〜3年前に高血圧と糖尿の気があるって言われました
1年前の健康診断で…
いや特に調子が悪いって事もなかったんで受診していません
では体を起こして背中を向けて下さい。
はい。
左右の背中をたたきますから痛かったらおっしゃって下さい。
はい。
どうですか?痛いです。
反対側もたたきますね。
どうですか?大丈夫です。
背骨をたたきますね。
どうですか?大丈夫です。
脇腹の辺りもたたきますね。
どうですか?あ大丈夫です。
はい。
(呼吸音)はい結構です。
(玉ちゃん)さあさあ吾郎さん。
ねえ。
絞り込むのは難しいかもしれませんね。
さあこちら船井吾郎さん58歳のバイタルデータですよね。
(玉ちゃん)先生SpOってこれ…。
酸素がどのぐらい体にあるかという値なんですね。
普通の方であれば95以上ぐらいですね。
ですから96であれば正常ですね。
(玉ちゃん)その他どこか。
体温が37℃。
なかなか微妙な値ですよね。
痛みのせいか血圧が少し高めで脈も速いといったところですね。
それでは研修医の皆さん疑われる病名をフリップにお書き下さい。
(玉ちゃん)どうですか?アンミカさん。
生活習慣病は怪しいですよね。
だからどうかというのが全然分からない。
背中こうして痛いというと何かちょっと分かんない。
ほとんど息子さんに任せてたっておっしゃってましたよね。
(玉ちゃん)ああ急な運動で。
歯を磨いていかなかったって関係あるのかなってずっと気になってたんですけど。
いやいや今までありましたよそういうのも。
さあ研修医の皆さんが病名を書き終わったようです。
さあ一体どんな病名が飛び出すんでしょうか?それでは一斉にお出し下さい。
フリップオープン。
(玉ちゃん)さあ出ました。
じゃあまずは篠田先生からどうぞ。
上腸間膜動脈塞栓症を考えました。
(玉ちゃん)藤野先生。
はい腎血腫を考えました。
(玉ちゃん)田代先生。
肺外結核を考えました。
(玉ちゃん)全部割れましたね。
さあここからはドクターGと研修医との真剣勝負。
カンファレンススタート。
はいそしたらまず篠田先生から。
その病名を簡単に説明してもらっていいですか?上腸間膜動脈という血管が血栓が突然詰まってしまって。
上腸間膜動脈塞栓症は大腸や小腸へ酸素と栄養を送る動脈に血栓などが詰まる病気。
一番根拠となるのはどんなシーンでした?突然の右下腹部から正中にかけて痛がっている。
ちょうど右側の方に出て血管の走行も一応矛盾はしないかとは思います。
そしたら藤野先生。
腎臓という臓器に血腫血の塊ができてしまう病気で。
腎血腫は腎臓や腎臓の表面に血の塊ができる事。
血腫とかそういったものがあってそれがどんどん大きくなると圧迫されてしまって体勢によって痛みが変動するのかなって思って腎血腫って考えたんですけれども。
最後に田代先生。
肺以外にも結核菌が出ていっちゃう事があって。
通常結核は肺に感染し発症しますが肺から別の器官に運ばれる事があります。
腸や骨関節など全身の至る所に運ばれ痛みや発熱などの症状が現れます。
一番これらしいなと思う点はどこですか?症状が多岐に渡っていた事です。
腸結核とかもよく起こりやすい所で。
あとは腸腰筋という腰の筋肉ですね。
足を曲げるための筋肉なんですけどもこういった所にも一応総合的に説明がきくかなというふうに。
こんなふうに病気の種類がいっちゃうのかなと思ってびっくりしましたねお腹が痛いっていうだけでね。
お腹が痛いっていったらねそういう盲腸だとか。
虫垂炎ってすごい有名ですよね。
押した時の痛みとかが非常に乏しかったというのは。
腹膜が刺激されてるとこういうふうに腹膜が揺すられるとすごい痛むんですけども。
腹膜刺激徴候はお腹を押したり素早く離したりした時に痛みを感じる事。
腹部の臓器のほとんどは腹膜という膜に包まれています。
腹膜の中にある臓器に大きな問題があると臓器そのものより痛みに敏感な腹膜が激しく痛みます。
例えば肝臓ありますね。
肝臓はものすごくいろんな働きをしています。
働く事がいろいろあるのでここに痛みの神経を中に入れる余裕がないんですね。
ですから肝臓の中はあまり痛みを感じません。
小腸であったり大腸腸ですよね。
腸というのは食べ物が入ってそして便として出しますね。
その時に痛みがあっては困るので少し鈍感にできてるんですね。
大体こういう虫垂炎だったりとか腸に穴があいてしまったりそういった病気で腹膜刺激徴候というのは出るんですけどもこういったものは外科の先生に診てもらわないといけないと。
腹膜刺激徴候があるものを「外科腹」と呼んでます。
これ診察する前に実は分かってるんですよね。
どこかVTRで気付きました?診察する前に?ない事が分かったという事ですか?ない事が。
ストレッチャーからおろしてその時に十分振動が伝わってるはずなので負荷は腹膜にかかっているのではないかと思いました。
よく見てましたね。
123!吾郎さんはストレッチャーから移される際の振動を痛がってはいない。
腹膜刺激徴候がない事から腹膜の中の臓器に大きな問題がある可能性は低くなった。
見逃してはいけない病気ってありますよね。
それはどんな病気がありますか?腹部大動脈瘤破裂。
大動脈解離。
大動脈は腹膜の後ろ側にあるため問題があっても腹膜刺激徴候は現れません。
大動脈解離は大動脈の内側の膜が裂け血流が妨げられる病気。
腹部大動脈瘤破裂は腹部の大動脈にできたこぶが破裂し出血する病気。
(玲司)
やけに汗をかいてるなとは思いました
吾郎さんは船の上で汗をかいていた。
冷汗と先生言ってくれましたよね。
冷や汗と。
それでもう一度考え直してほしいのが汗をかいてたのはどのタイミングでした?痛がってらした時。
痛がってた時?痛みの前。
痛みの前。
もしかしたら…何の汗ですか?感染症にかかると体内に侵入した細菌やウイルスを攻撃する免疫機能が働き熱が出ます。
来た時はどうですか?救急外来に来た時は。
それほどかいていない。
熱が出る時ってどうですかね最初寒気しますよね。
そして熱上がりますよね。
その次熱が上がりきったあとどうなります?汗が出る。
救急外来では37℃でしたけど船の中ではどうでしょう。
もっと高かった可能性ありますよね。
先生は今バイタル最初に見た時にそれを気付いてたんですか?そうですね37℃ってこういった時には他のいろんな事を合わせてこの熱が意味があるものなのかないのかという事を判断しなきゃいけません。
(玉ちゃん)どうですか?今日の「ドクターG」は。
いや〜もうハイレベルすぎてついていけない…。
そうするとどうですか?先ほど挙げてた動脈の病気。
そんな病気はどうなります?ちょっと否定的になりますよね。
大動脈の解離って熱あまり出ないですよね。
上腸間膜動脈塞栓症と腎血腫でも…腹痛を訴えていた吾郎さんは腹膜刺激徴候はない。
(吾郎)痛いです。
肺外結核ならこれをどう考えればよいのか?その病気だと腰痛は?あると思います。
腸腰筋膿瘍。
筋肉ですね。
筋肉の所に膿瘍をつくってしまうという事ですね。
結核菌が腹膜の外側にある腸腰筋という筋肉に感染すると膿の塊膿瘍ができる事があります。
聞いてみたい事とか診察してみたい事。
腸腰…。
腸腰…。
多分みんな一緒。
どんなサインですか?脚を後ろに曲げるんですね。
それで痛みが引き起こされてしまう。
ここについてる筋肉が伸びるんですね。
伸びて痛い。
ですから体を動かすといろいろ痛みを誘発できます。
それが筋肉の痛みだったりするんですね。
あるいは骨の痛みというのは体をひねった時とか前かがみした時とかそういう時ですね。
さあそれでは診断を絞り込むために再現ドラマの続きをご覧下さい。
ドクタージェネラル!ここ最近で筋肉や関節が痛いと感じた事はありませんでしたか?ああ…。
例えば漁の最中に…
慣れた作業なのでそういう事は…
いや…仕事をしていても気付かなかったです
ところでここ数日で…昨日は体がシャキッとはしていませんでした。
昨日は家でどうされていたんですか?はいはいお待たせ。
うちで仲間と飲んでいました
あんまり飲ませないでね。
渚!氷持ってきてやって。
この辺りは昔からの仲間が多くて集まるとつい昼間から一杯始まってしまうんですよ
ええまあ…
(玲司)
いえおやじはおとといくらいからあまり食べていませんでした。
昨日もつまみを少し口にするくらいで大したものは食べていません
あ〜もう出た出た。
またこれだよ。
もういつもじゃん。
(弥生)お父さん!ああびっくりした。
もうそんな所で寝てないでお風呂入ってちゃんと布団で寝てちょうだい。
(吾郎)分かってるよ。
ちょっと!お風呂そっちじゃないわよ。
出た。
お風呂も入らず歯も磨かずに寝るパターン。
いえ…それがあんまり。
ちょっと寝苦しかったんです
そうですか。
あおむけになって下さい。
はい。
腕を胸の前で交差させて組んで下さい。
はい。
痛かったら言って下さいね。
起き上がって下さい。
どうですか?大丈夫です。
今度は体を後ろに反らせてみて下さい。
どうですか?大丈夫ですね。
では大きく深呼吸をしてみて下さい。
はい。
まず大きく息を吐いて下さい。
はい吸って下さい。
うっ!右下腹部以外に痛い所はないですか?ここからこの辺まで痛いですね。
さあそれでは研修医の皆さん考えられる病名をお書き下さい。
(阿藤)今のきましたね。
だってこうやってもこうやっても痛くなかったのに呼吸したら。
息吸っただけでかなり。
大きく吸い込んだ時に痛みもちょっと広くありましたね。
最後の…。
動きじゃないですね呼吸?
(玉ちゃん)何なんでしょうかね吾郎さん。
食欲もねえっつうのもあったしな。
呼吸系か。
(アン)また歯磨いてなかったですね。
(玉ちゃん)ちょっと悩んじゃってんだね。
でも先生は10分で分かったんですからね。
目の付けどころでしょうね。
さあ研修医の皆さん病名を書き終わったようです。
フリップオープン!篠田先生からお願いします。
腸結核からの横隔膜下膿瘍波及を考えました。
(玉ちゃん)藤野先生。
腸結核を考えました。
(玉ちゃん)田代先生。
感染性心内膜炎からの肝膿瘍と。
さあそれでは再びドクターGと研修医との真剣勝負です。
最終カンファレンススタート。
はいじゃあ腸結核2人出てますよね。
腸結核は結核菌が腸に感染する病気で肺外結核の一つです。
多くは小腸が大腸につながる回盲部に炎症が起きます。
右下腹部の痛み発熱などの症状が現れます。
食欲がなくて眠れなかったという事で息を吸った時に内圧が上がった時に腸が引き伸ばされて痛みを引き起こしてたんじゃないかなと思いました。
同じ答えの腸結核とそこからの横隔膜下膿瘍。
腹腔内の細菌が横隔膜の方に波及してしまって。
結核菌などの細菌が横隔膜に感染すると膿の塊膿瘍ができる事があります。
発熱の症状があって夜間の盗汗もありますし結核でしたら横隔膜に炎症が波及してもおかしくないのではないかと考えました。
じゃあおかしいなと思う点は?突然発症でこれほど…痛みが強すぎるというのが。
そうですね結核というのはどちらかというとゆっくりくる病気ですよね。
ちょっと早いかなというところが少し合わない。
田代先生感染性心内膜炎。
正直お二人の腸結核とすごく迷ったんですけれども。
感染性心内膜炎は心臓の内側の膜や弁に細菌が感染して息切れや胸の痛みが起きる病気。
細菌の塊が血流に乗って血管で詰まり脳や消化器など全身のさまざまな場所で症状が現れます。
肝臓の血管が詰まって膿瘍ができる事があります。
決め手になったのは経過がやや急であるという事とこの人歯磨かない人ですよね。
そういう意味で口の中が汚い人だと感染性心内膜炎というのは起こしやすくなっちゃう。
それ歯医者さんで言われた事ありますよ。
合わない点は?感染性心内膜炎って血の中にばい菌が入ってる状態なのでぶるぶる震えたりとかそういった症状が乏しいなという印象は正直ありますね。
研修医たちが挙げた2つの病名はいずれも全身のさまざまな場所に症状が現れる病気だ。
しかし吾郎さんの…今キーポイントがだいぶ出てきましたよね。
このキーポイントの中で最もキーとなるのってどれだと思います?うっ!吾郎さんは深く息を吸った時に強い痛みを感じていた。
そうすると息を吸った時の痛みを説明するためには臓器としてはどこがやられてる?深呼吸時に痛みを伴っていて。
炎症が進み肺の外側の胸腔に水がたまる事があります。
下の方だったらまああっても…。
それはお腹の方も痛いんですか?どうだろう?関連痛は体のどこかに問題が起きた時その部分が痛むのではなく別の場所に痛みを感じる事です。
例えば心臓に問題があるのに脳は肩が痛いと感じる事があります。
そういう可能性が今出てきたわけですね。
脳に痛みを伝える末梢神経は脊髄から枝分かれして体の隅々にのびています。
脊髄の胸の部分胸髄からは12本の神経がのびていてそれぞれが支配する領域が分かれています。
脳が痛みの場所を取り違える関連痛は多くの場合同じ神経が支配する領域の中で起きます。
お腹痛がってたの場所覚えてますか?ちょっとへそよりも下ぐらい。
吾郎さんが痛みを感じた部分はへその少し右下。
この神経の支配領域で見てみるとちょうどTの11番の辺りだ。
肺を描いてみますとこういう形で肺ってあるんですね。
そんな所まであるの知らなかった。
でもこうすると11番という所は肺がないですね。
背中見てみると肺ってここまであるんです。
前だと11番というのはお腹の下の方なのに背中を見ると比較的上の方にありますよね。
ちょっとこの線を見てみると斜めになってます。
これ説明できる人いますか?今立ってるとこう斜めなんですけれどもちょうど四つ足のものがあるとちょうど胸髄に沿って。
直立の姿勢をこの状態にするとお腹の辺りで斜めだった神経の支配領域が地面に向かってまっすぐ垂直にのびている。
ですからもともと神経はこの状態でつくられたわけですね。
ここが人間が進化していく過程で二足歩行するという状態になった時に斜めになったと。
これで見ますと肺というのはこういう感じですね。
ですからここおへその辺りですけど痛い場所ここですね。
この痛い場所というのは神経からいくと肺がある11番辺りになります。
吾郎さんの腹痛は…今から振り返ると肺の病気かもしれないというのはVTRに何かなかっただろうか?声何か聞き取りにくかったですよね。
漁師の人って多分声大きいですよね。
それがどうも小さい声だった。
群れが散っちゃったな。
移動する。
えっ?玲司はどのぐらいで出た?えっ?他にどうでしょう。
VTRを見ていて呼吸をすると痛いかもしれないと疑う場所ってなかったですか?受診当日呼吸が速かったかなという印象が残ってます。
速いだけでした?呼吸。
では座ったままで一番楽な姿勢になって下さい。
(呼吸音)そんなに頑張ってる呼吸じゃないですよね。
吾郎さん肺だったんだな。
吾郎さんの腹痛の原因はこれまで考えてこなかった肺にある可能性が高い。
だとするとどんな病気が考えられるのか?そうなってくると少し鑑別を変えないといけないですよね。
もう一回考えてみましょうか。
膿胸ってどういう病気ですか?膿胸はですね…細菌に感染し肺の外側の胸腔に膿がたまるより重篤な病気です。
発熱があり息を吸うと胸や背中が痛みます。
多くは口の中の細菌が肺に侵入して発症します。
今挙がったものの中で最も急ぐものって…。
肺塞栓症。
肺血栓塞栓症は主に足の静脈にできた血の塊が血流に乗って肺動脈に詰まる病気です。
酸素が取り込めなくなるため治療は一刻を争います。
怖い病気なのでやっぱり除外したいですよね。
もう少し身体診察を追加で診ておきましょう。
何を診ます?肺の血管が詰まる肺血栓塞栓症。
肺を包む胸膜に炎症が起きる胸膜炎。
中でも細菌に侵され膿がたまる膿胸ならすぐに処置をしなければならない。
吾郎さんの病気は?診察って視診以外に何があります?もう一つは?何か触診で分かる事ってあるだろうか?声音振盪って聞いた事ありますか?はい。
それは何ですか?背中に手を当てて「あ〜」と声を出してもらいます。
それによって手に振動が響いてくるかどうかを調べる。
どうなったらどっちの病気ですか?声を出すと肺の中の空気が振動し背中に伝わります。
肺の外に膿や水がたまっていると振動が伝わらなくなります。
これ診察する前にレントゲン撮った方が楽なんじゃないですか?もし診察で胸膜炎膿胸というふうに分かれば次にする事は何ですか?水を抜かないといけないですよね。
水を抜いて検査をするんです。
次はこういう処置をしましょうという話がもうできますよね。
(玉ちゃん)流れるような段取りだ。
肺どの辺診察します?この腰の辺り。
そんな下なんだ。
そこはどうだろう?たたいて痛がってた場所と比べたらどう?一致します。
(阿藤)確かにね。
右下腹部痛がってましたよね。
そこの領域というのは胸髄の11番という所だったんですがそこはちょうど背中の下の方なんですね。
じゃあVTRで確認してみましょうか。
それではまず首を診せて下さい。
はい。
はい結構です。
両脚の太ももを診ますね。
はい。
(玉ちゃん)むくみ。
はい結構です。
それでは聴診をします。
胸を診せて下さい。
(玉ちゃん)心雑音。
では背中を向けて下さい。
(玉ちゃん)こんなもんなのかな?あれ?右。
聞こえなかった。
もう少しそのままの状態でいて下さい。
それでは背中に触れたら「ひと〜つ」と声を出して下さい。
(吾郎)ひと〜つ。
(吾郎)ひと〜つ。
(吾郎)ひと〜つ。
ひと〜つ。
右側の肺の下の部分で振動を感じませんね。
何が分かって何の可能性が落ちましたか?頸静脈怒張はなかったので脚もむくみがなかったので…他にもまだ診てるものありましたよね。
右下肺野の呼吸音が低下していたので水とか空気がたまっている病気なんじゃないかなというのを考えました。
打診で濁音が聞こえたので肺炎で胸水がたまったりだとかあとは膿胸とか。
最後にやった声音振盪で右下肺野で振盪が減っていたので…それでは皆さん最終診断を一斉にどうぞ。
はい正解です。
(拍手)ドクターGは吾郎さんが運ばれてきた直後に…。
123!腹膜刺激徴候がない事を確認。
浅くて速い呼吸に注目し腹痛は肺の関連痛と見抜いた。
レントゲンを撮る前に緊急性の高い胸膜炎・膿胸を疑いいち早く処置。
肺の外側には細菌感染による膿がたまっていた。
吾郎さんは抗生物質による治療を受け今は元気に漁に出ている。
膿胸ってよくあるんですか?比較的よくある病気です。
(玉ちゃん)そうなんだよね。
それを10分ですよ。
こんだけやってきてねやっと結論が出たんだけど先生10分。
こちらはもう3時間以上かかってます。
さあこの症例に込めたドクターGのメッセージをお願いします。
今回吾郎さんは膿胸でしたけども呼吸を診ようと思わなかったら頻呼吸に気付く事はできませんでした。
また漁師なのに声が小さいなというところに気付かなければ肺の病気に気付かなかったかもしれません。
…という言葉があります。
どこの臓器がそしてどんな事が。
そういう事ができるようなお医者さんに今後なって頂きたいなと思います。
主訴が腹痛だったのでどうしても腸とか腎臓とかそっちの方に目がいってしまったんですけれども入ってきた時のファースト・インプレッションだったりバイタルサインが大事だって事がすごくよく勉強になったのでこれからの診療に生かせればなと思います。
こういう事があるんだって分かってないと駄目ですね。
痛いからお腹かといったら違うという。
普通の生活で当たり前とされてる習慣って実はとても健康のために大切だったんだなって。
歯を磨くとか。
(玉ちゃん)吾郎ちゃんよかったよほんとに。
上田先生今日はありがとうございました。
研修医の皆さんお疲れさまでした。
次回はどんなカンファレンスが繰り広げられるのでしょうか。
さよなら!どうもお疲れさまでした。
2015/12/10(木) 14:05〜14:55
NHK総合1・神戸
総合診療医 ドクターG「腹がひどく痛む」[字][デ][再]
病名推理エンターテインメント番組「総合診療医ドクターG」。ドクターGが経験した難解な症例に研修医が挑み、病名を突き止める。今回の患者の訴えは「腹がひどく痛む」。
詳細情報
番組内容
この道40年のシラス漁師・船井吾郎さん(58歳)が、息子と2人で漁に出て、船の上で腹痛に襲われ、倒れた。救急車で病院に運び込まれた吾郎さんを診たドクターGは、鋭い観察眼と想像力で、わずか10分で正しい病名にたどり着いたというのだが…。病理学的な着眼と推理力がなければ、腹痛の原因にたどり着けない超難解な症例。研修医たちは吾郎さんを助けることはできるのか?
出演者
【出演】洛和会丸太町病院医師…上田剛士,【ゲスト】阿藤快,アンミカ,【司会】浅草キッド,【語り】小野寺一歩,佐竹海莉
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
バラエティ – クイズ
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
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