NEXT 未来のために「少女たちの再出発 ヘイトスピーチを乗り越えて」 2015.12.10


6年前の12月京都市内の学校に現れた男たち。
在日コリアンの子どもたちが通う小学校がヘイトスピーチの標的とされました。
「キムチくさいねんと叫ぶ声」。
子どもたちはどうしているのか。
私たちは取材を続けてきました。
しかし子どもたちに危害が及ぶのではないかと撮影の許可は下りずにいました。
事態が変わったのは1年前。
学校を襲ったヘイトスピーチは違法とする判決が確定したのです。
それをきっかけに2人の少女が撮影に応じてくれました。
高校2年生の女子生徒です。
ヘイトスピーチに遭ったのは小学5年生の時。
事件を機に通っていた小学校は廃校になりました。
中学2年生の女子生徒。
小学2年生の時すぐ近くで罵声を浴びました。
染みついた恐怖感。
学校の外では周囲を気にしてしまうといいます。
葛藤しながら前に進もうとする子どもたち。
その日々を見つめました。
京都・東山。
銀閣寺に向かう参道です。
6年前ヘイトスピーチを受けた小学生たちは今中学高校生になりました。
彼らが通う…生徒数はおよそ180人。
韓国籍と朝鮮籍がそれぞれ半数程度です。
学校に着くと女子生徒は民族衣装のチマチョゴリに着替えます。
朝鮮学校は戦後在日コリアン1世が母国の言葉や文化を伝えていこうと設立しました。
授業は朝鮮語。
日本の学校と同じ科目を学びながら朝鮮半島の歴史や文化も勉強します。
6年前にヘイトスピーチを受けた高校2年生のソナさんです。
自分と同じつらい経験をほかの子どもたちにしてほしくないと取材に応じてくれました。
ソナさんは京都で生まれ育った在日4世。
放課後はいつも友達とおしゃべりをして過ごします。
ローラローラ知ってる!好きなアイドルは嵐の櫻井君。
スマホが手放せない今どきの女子高生です。
ダレノガレめっちゃかわいい。
GACKTもフォローしてんだよ。
ほらこれ見て。
ソナさんがヘイトスピーチに遭ったのは小学5年生の時でした。
通っていた京都朝鮮第一初級学校です。
校庭が狭いため隣接する公園を運動場として利用してきました。
6年前の12月十数人の男が現れ学校が公園を無許可で使っていると抗議。
民族差別的な言動を繰り返すヘイトスピーチを行い罵声は教室にいた子どもたちにも聞こえていました。
威力業務妨害などの罪に問われた男4人は裁判で有罪が確定しています。
学校周辺でのヘイトスピーチはその後2度にわたって行われヘイトスピーチを行ったグループによって映像がネット上に公開されました。
2年後中学生になったソナさんを更なるショックが襲います。
小学校が統廃合され無くなる事になったのです。
ヘイトスピーチのあとここでは子どもたちが安心して学ぶのは難しいとの判断でした。
幼稚園から小学6年生まで10年間通った思い出の詰まった学校。
校舎は取り壊されさら地になりました。
自分が悪いのではと考えるようになったソナさん。
今まで当たり前のようにしてきた事に抵抗を感じるようになりました。
ソナさんの母パクさんです。
ヘイトスピーチを行ったグループの責任を明らかにしたいと学校と一緒に損害賠償を求める民事裁判を起こしました。
パクさんには現状への危機感がありました。
30年前高校時代のパクさんです。
今と違いチマチョゴリを着て登校していました。
しかしパクさんの卒業後チマチョゴリが切り裂かれる嫌がらせが多発し学校は通学中の着用を自主的にやめました。
そしてヘイトスピーチ。
子どもを取り巻く環境をこれ以上悪化させてはならないと考えています。
子どもたちを守りたいと裁判に奔走するパクさん。
しかし自分の存在に自信が持てなくなっていたソナさんからある日思いがけない言葉を投げかけられました。
もう一人今も恐怖心を抱えたままだという生徒が取材に応じてくれました。
中学2年生のユナさんです。
ユナさんは小学2年生の時ヘイトスピーチの罵声をすぐそばの教室で聞きました。
ユナさんがつづった当時の心境です。
「キムチくさいねんと叫ぶ声」。
ユナさんは今も通学中に教科書を開く事はありません。
この夏ユナさんは所属する朝鮮舞踊部でヘイトスピーチを題材にした踊りに取り組んでいました。
聞こえてくるのは…。
(ヘイトスピーチの音)ヘイトスピーチの怒号。
ユナさんが演じるのは小学生をかばいヘイトスピーチに立ち向かっていく中学生の役。
裁判を戦う大人の気持ちを表現します。
しかし…。
恐怖心を抱えたままのユナさん。
立ち向かう大人の気持ちが理解できません。
この踊りを作ったのは舞踊部の顧問…子どもから大人になる時期にあえて過去のつらい体験と向き合わせました。
この日舞台演出の専門家が指導に訪れました。
専門家は演技の事を話す前にいまだにヘイトスピーチをなくす事ができないじくじたる思いを語り始めました。
「子どもを守りたい」。
大人の率直な気持ちでした。
ヘイトスピーチのあと自分の存在に自信を持てないでいたソナさん。
気持ちを切り替えるきっかけになった場所があります。
2年前から通っている在日コリアン1世2世が利用する介護施設です。
介護のボランティアをする間にさまざまな話を聞く事ができました。
若いやろ?90でもな。
朝鮮半島から日本に渡ってきた在日1世の人たち。
貧しさの中でどんな仕事でもしてきたという苦労話や差別体験。
今まで聞いた事のない話ばかりでした。
ソナさんが自信を取り戻し始めた頃母パクさんは娘を裁判に誘いました。
証言台に立つ自分の姿をソナさんに見せるためです。
去年12月最高裁で判決が確定。
学校側の勝訴でした。
学校周辺で行われた街宣活動は人種差別撤廃条約で禁止された人種差別にあたり違法だとしておよそ1,200万円の賠償が命じられました。
パクさんは娘や自分に危害が及ぶのではないかと顔を隠して会見に臨んでいましたがこれをきっかけに顔を出して取材に応じるようになりました。
裁判が終わって1年。
ソナさんと小学校の跡地を訪ねてみました。
狭いです。
その夜ソナさんはこれまで話せなかった思いを初めて母親のパクさんに打ち明けました。
今までそうやからそうであって自分がそうじゃなかったら嫌やなとか思った事ないけど…。
やっぱりそうじゃなかったら何か違うかったんかなとも思ったし…。
それはつらかった?やっぱりな。
あんたは何にも申し訳ない事ないよ。
申し訳ない事ないかもしらんけどさ少しでもそう思っちゃった事がな…。
ソナさんを苦しめたヘイトスピーチが違法と確定して1年。
デモは各地で続いています。
ソナさんは新たな試みを始めていました。
ファミリーレストランでのアルバイトです。
卒業後は専門学校に進学し日本社会で頑張っていきたいと考えています。
自信を持って生きていきたい。
子どもたちは次の一歩を踏み出しています。
2015/12/10(木) 00:10〜00:40
NHK総合1・神戸
NEXT 未来のために「少女たちの再出発 ヘイトスピーチを乗り越えて」[字]

6年前、京都の朝鮮学校の前で行われた「ヘイトスピーチ」。民族差別的な言動で校内にいた小学生たちが傷つけられた。いま中高生となり、前に歩み始めた子どもたちを追う。

詳細情報
番組内容
「‘朝鮮に帰れ、キムチくさいねん’と叫ぶ声。私は学校に通うのが怖くなりました。」6年前のヘイトスピーチに傷つけられた子どもたちは、今どうしているのか?去年、朝鮮学校に向けられたヘイトスピーチは違法とする判決が確定したのを機に、二人の少女が取材に応じた。今も恐怖心が消えない中学2年生。失いかけたアイデンティティを取り戻し、日本の専門学校に進むことを考え始めた高校2年生。少女たちの葛藤と再出発を追う。
出演者
【語り】一柳亜矢子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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