『交響曲第5番運命』
(箱崎ますみ)先生締め切りを過ぎてるんですよ?
(箱崎咲良)描き直す。
(藤枝宏樹)うわ…もう4時半になりますね。
(真山文彦)いやあ参ったな…。
このままじゃ印刷が間に合わない。
(藤枝)あちょっと!編集長執筆中は入るなと言われています。
印刷所に掛け合ってきます。
おい。
俺が行く。
(刺す音)あっ…!
(咲良)Tamen,teamo.それでも君を愛す。
(ドアの開く音)
(真山)おい…!編集長…時間かかりましたねぇ。
(真山)原稿は?完成しました。
(真山)箱崎咲良3年ぶりの復活がこの内容…。
伝説の最終回になりますよ!これを描いたのは私じゃありません。
神様です。
(真山)ありがとうございました!
(藤枝)すぐに印刷に回します。
(真山)私も失礼します。
お送りしてきます。
(パトカーのサイレン)
(伊丹憲一)おう。
(芹沢慶二)ああ先輩。
(芹沢)被害者はダイムエンタテイメント社長原田良輔さん40歳。
(伊丹)なんの会社だ?
(芹沢)「漫画家・箱崎咲良のマネジメント著作権管理」ってありますね。
(伊丹)しかしまあ…随分芝居がかった感じだな。
っていうかこれも何語だ?
(芹沢)死亡推定時刻は午前5時から6時27分の間だと思われます。
おっ刻むねぇ。
なんで6時27分って?これ見てください。
(芹沢)何人かがこの現場の写真アップしてます。
最初の投稿が6時27分。
「死体見つけちゃったかも。
やばーい」って。
こんな事書く時間があったら通報しろってんだ。
(米沢守)杉下警部!
(冠城亘)はい〜?あれ?あっ…。
右京さんは立ち寄りです。
コーヒーでも淹れましょうか?結構です。
お客様のようにゆっくりしている時間はありませんので。
失礼します。
なんですか?これをご覧ください。
(真山)「この事件が起こっていた頃箱崎先生はまさにこの漫画を描いていました」「私はその場に立ち会っていました」「つまり先生はこの殺人を…予言したんです!」
(真山)「この奇跡を明日発売の『月刊ジュピター』で確認してください」箱崎先生は3年前石段から落ちて大ケガをし漫画家として再起不能と言われました。
そこからの復活そして今回の奇跡…。
素晴らしいと言うほかありません!奇跡というか普通なら漫画を描いた人が一番怪しいと思いますけどね。
そこなんですよ。
先生に疑いの目が向けられるような事は私には耐えられません。
つきましては杉下警部にぜひこれが奇跡だという事を証明して頂きたいのですよ!それ私に任せなさ〜い。
法務省キャリアの…あなたにですか?ここが現場か…。
ん?これはラテン語だな。
(杉下右京)Tamen,teamo.それでも君を愛す。
ええ。
ラテン語ですねぇ。
なんですか?突然。
殺人予言だとか。
ただの殺人事件です。
ちょっとよろしいですか?はいどうぞ。
それはそうと君随分事件に熱心ですねぇ。
ええまあ…。
箱崎咲良って30そこそこの漫画家ですよね。
『彼方の星』は累計で1400万部売れているそうですからねぇ。
1冊450円として印税が10パーセントなら…。
6億3000万。
印税だけでです。
速っ…。
『彼方の星』は世界で展開されているようですねぇ。
アニメだけではなくこの会社ではゲーム化キャラクターを利用した商品展開グッズの開発など様々な事を一手に行っているそうです。
1つのヒット漫画は今の時代莫大な利益を生むようですねぇ。
(木下学)突然の事でびっくりですよ。
(芹沢)原田社長と箱崎先生お二人はどういった関係だったんでしょう?お邪魔します。
邪魔だとわかってたらやめて頂きたいです。
気になさらずに続けてください。
(木下)社長はずっと箱崎先生のファンで先生の才能がもっと多くの人に認められるべきだと思っていました。
そこで5年前に会社を立ち上げ箱崎先生の漫画をアニメやゲームにする事でファンを広げたんです。
(三輪里香)これだけの功績を上げた社長がどうしてこんな…。
(伊丹)原田社長に何かトラブルは?僕には思い浮かびませんが…。
1つだけよろしいですか?警部殿…!1つだけ。
箱崎咲良さんはどうして漫画で殺人を予言する事が出来たのでしょう?
(里香)それは先生が天才だからだと思います。
(桜岡肇)先生はいつも紙に向かうとイメージが降ってくるとおっしゃっています。
今回もきっと天から降ってきたんでしょう。
どういう展開であのラストになるのか楽しみでもあり怖くもある。
ね?
(2人)はい。
あ…という事は皆さん最終回のストーリーはご存じないという事ですか?
(3人)はい。
皆さんはえー…取締役そして社長の秘書というお立場ですね?
(3人)はい。
こちらの会社では箱崎咲良さんの著作権を管理なさってるにもかかわらずどういう最終回が描かれているのか皆さん把握してなかった?この会社と箱崎さんの間に何かトラブルでもあったとか?先生との関係は良好でした。
ただ…。
ええ。
ただ?
(桜岡)ここ何カ月か社長と清河出版の真山編集長がもめていてこの最終回についてはうちの会社はタッチ出来なかったんです。
(芹沢)真山編集長か…。
(記者)今回の殺人事件本当に箱崎咲良さんは殺人事件を予言していたのでしょうか?
(ますみ)どうぞ。
先生はまもなくいらっしゃいますので。
箱崎ますみさんとおっしゃいましたね。
ご親戚の方ですか?姉です。
ああ…なるほど。
お二人で住んでるんですか?はい。
(ますみ)先生は3年前に事故に遭われて足が不自由です。
このままで失礼します。
警視庁の杉下と申します。
冠城です。
率直にお聞きします。
あなたの漫画は殺人の予言なのでしょうか?
(ますみ)予言だと騒がれている事は私たちもテレビで知りました。
(ますみ)驚いてるんです。
つまり予言で描いているわけではないという事ですね?こうしようと決めて描いてるわけではありません。
紙の前に座ると神様がこう描けと教えてくれる。
でもこの絵が突然降って湧いたわけじゃないんですよね?
(ますみ)ご説明します。
こちらにどうぞ。
(ますみ)これがネームと呼ばれる下書きです。
漫画の設計図とも言えるものです。
よろしいですか?はい。
なるほど…。
ああ…主人公は女性のキャラクターに殺されるんですね。
はい。
主人公は自分の運命を察知していますが愛するこの女性に会うため花束を持って呼び出された場所へ行きます。
その場所というのが…。
こちらですねぇ。
はい。
事故の前に散歩に行っていた場所です。
先生が気に入って舞台にしたんです。
Tamen,teamo.最後の場面花束にカードがついています。
「それでも君を愛す」どういう意味でしょうね…。
これ気になりますねぇ。
編集長と藤枝さんにこれを見せて打ち合わせをしました。
他にこの内容を知ってた人間は?最終回の内容は極秘でした。
でも普通漫画家さんはアシスタントがいるって聞きますけど…。
普通の漫画家はアシスタントを使って背景や脇役を描かせます。
でも私は全ての作業を1人でやります。
1人で神様の声と向き合いたいんです。
それが先生がカリスマと言われる理由の一つです。
これに漫画を描くんですね。
触らないで。
すいません…。
随分大きく描くんですね。
B4と言われるサイズです。
B4…。
1つお願いがあるのですがこちらの最後の場面の生原稿というのでしょうかねそちらも拝見出来ますか?原稿は漫画家にとって子供と同じです。
簡単にお見せしたくありません。
本当に奇跡なんです!
(電話)あれが最終回なんですよ。
決してやらせじゃありませんよ!いつもの5倍売れるぞ!箱崎先生さまさまだ!奇跡なんです。
偶然一緒に…。
あなたと原田社長がもめていたという証言があるんですよ。
もめもしますよ!はっきり言わせて頂くとあの人は箱崎先生に取りついた寄生虫です。
元イベント屋か何かで世間知らずの天才を見つけて利用してたんですよ。
でも私は事件があった時間この藤枝くんと一緒に先生の家の応接室で原稿を待ってましたから。
なあ?
(藤枝)はい。
(携帯電話)
(真山)もしもし?はい…。
原田さんとの関係は?
(ますみ)原田さんには2度救われています。
恩人なんです。
2度と言いますと?1度目は5年前です。
先生はアシスタントを使いませんから体は限界にきていました。
(ますみ)原田さんと契約をする事で面倒な事務作業や出版社との交渉事を全部お任せして漫画に集中出来るようになったんです。
2度目は?3年前の事故のあとです。
(ますみ)治療やリハビリにもお金がかかりました。
仕事が出来なかったこの3年間生活に不安がなかったのは原田さんのビジネス展開のおかげです。
先ほどおっしゃっていた原稿ですがそのうち原田さんの会社に戻されますので問い合わせてみてください。
申し訳ない。
箱崎咲良さんはファンを大切になさっているんですね。
ええ。
事故のあとは外に出るのが大変になってしまって最近はやってないんですが。
あの…。
最後に1つだけお願いしたいんですが…。
はあ…。
ジャン!
(米沢)ああっ!ああ…!な…何?何?え?貸し1ですよ。
あっはい!はい!いや〜感激です!冠城さんにお任せしたかいがありました。
まあ君もよくわかってるね。
でやはり予言だったんですか?いやそこまではまだ…。
おや。
君確かただの殺人事件だとおっしゃいましたよねぇ。
だってそうでしょう。
常識的に考えて漫画と事件現場が同じになったなら容疑者は漫画の内容を知ってた編集長編集者漫画家とその姉の4人に絞られます。
あなた…本当は先生を疑ってるんですね?ただ車椅子ですからね。
だったら姉のますみさんをお疑いなんですか?可能性は十分あるでしょう。
まったくあなたという人は…。
これをご覧ください!え?姉のますみさんが箱崎先生をどれだけ支えてこられたかここに書いてあります!3年前の事故のあとそれは苦しいリハビリを2人で乗り越えてきたんです。
そんな人が人を殺すはずがない!ひどい事故だったようですねぇ。
あれはちょうど連載が最終回前に来た時でした。
(米沢)先生は神社の石段で何者かとぶつかって転落したんです。
意識は半年戻らずその後も体の自由を失ってもう一生漫画を描く事は出来ないだろうと言われていました。
先生が復活しようとしてもどうせ失敗するに違いないとネットに書き込む輩もいたんです。
だけどファンはいつか先生に戻ってきて最終回を描いてほしいと切望していました。
今回の最終回で奇跡の復活を遂げてもらいたいと心から願ってるんですよ。
でその事故の時にぶつかった相手は見つかったのでしょうか?それがまだわからないままなんです。
『交響曲第5番運命』
(藤枝)ここだけの話なんですけど編集長は4時半頃印刷所に行くと言って出ていって原稿が上がる直前まで戻ってきませんでした。
編集長と原田社長が何でもめていたのかあなたなら知ってるんじゃありませんか?
(原田良輔)おい!最終回の件はうちは了承してないぞ。
先生本人が描きたいっておっしゃってるんだ。
反対するのはおかしいでしょう!原田社長は最終回を描かせたくなかった?理由まではわかりませんが…。
(伊丹)どうも。
どうも。
どうも。
ああ警部殿。
今回は我々のほうが早く真相に近づいてるようですよ。
それは素晴らしい。
予言の謎が解けたんですね?予言…。
何を言ってんですか。
漫画の内容をいち早く知る事が出来て動機がありしかもアリバイのない人間を見つけたんですよ。
誰ですか?おっ…。
おっほほほ…。
行くぞ。
はい。
真山編集長ですか?はい。
おい!
(拍手)ブラボー。
箱崎咲良伝説の最終回本日発売です!どうぞ順番にお並びください。
編集長は雑誌の売り上げのために奇跡を作ろうとした。
そして原田を殺し漫画の場面どおり死体を演出。
奇跡を作り上げた。
筋は通っていますがねぇ…。
やっぱり予言じゃなかったんですね。
原稿を見るまではなんとも言えませんがね。
(桜岡)お待たせしました。
桜岡さん。
はい?咲良さん今とサインが違いますねぇ。
え?あ…はい。
3年前の事故のあと先生は心機一転したいとサインを変えられたんです。
なるほど。
原稿は今お持ちしますので。
ではどうぞこちらに。
冠城くん。
はい。
はいはいはいはいはいはいはいはい!箱崎咲良さんは原稿は子供のようなものだとおっしゃっていましたねぇ。
その子供のような原稿がなぜご本人のもとに戻らないのでしょう?どうぞ。
ああ…。
それはうちが箱崎先生の著作権を管理しているからです。
そういう契約になってると?はい。
確かその契約5年前でしたねぇ。
これによりますとますみさんが咲良さんを助けるようになったのは3年前の事故のあととあります。
つまり原田さんと咲良さんの契約はますみさん不在で行われた事になりますねぇ。
漫画の事しか知らない天才は契約書の内容まで吟味出来なかったでしょうね。
それにしても子供のような原稿を手放す契約に咲良さんは納得していたのでしょうかねぇ?それは…。
(木下)お待たせしました。
こちらが最終回の原稿です。
拝見します。
(米沢)これは…!原稿から直接コピーさせてもらいました。
僕は普段はあまり漫画には縁がないんですがね…。
ちょっと失礼。
これ!これは真に迫ってますねぇ。
愛する女性に刺された主人公が最後の力を振り絞って女性に向かって手を伸ばす。
この血のついた手からはなんとしても生きるんだという執念が感じられますねぇ。
確かに。
絵が懐かしいですね…。
え?懐かしいとは?こちらへどうぞ。
これはデビューの頃の先生の絵です。
ええええ…。
髪の毛や顔の輪郭の線がやわらかく印象に残ってます。
でも『彼方の星』の連載が始まった頃から先生の絵は変化していきました。
あっ確かにこの『彼方の星』のほうは顔の線がシャープになって絵に緊張感がありますねぇ。
そうなんです。
筆致というんでしょうか…筆遣いが変わってます。
で今回デビューの頃に絵が戻っている気がするんですけども…。
ちょっと待ってください。
咲良さんは心機一転したいと言ってサインを変えた。
にもかかわらず絵のほうはデビューの頃に戻っている。
これどういう事でしょう?どういう事でしょう?
(角田六郎)おお。
おや。
暇…じゃなさそうだね。
例の殺人予言の件か。
コーヒーもらってるよ。
ちゃんとしたコーヒー淹れましょうか?いい!いいのいいの。
俺こっち派だから。
知ってますよ。
ハハ…。
捜査一課のほうハズレだったみたいだな。
ああ…編集長ですか?うん。
印刷所へ行くと言って漫画家の家のそばで不倫相手の女と会ってたらしい。
(角田)別れ話がもつれていて女のほうが話をしようと車で待ち構えてたんだと。
それは大変だ…。
うん。
ところがその女が面白いものを見たらしい。
…といいますと?漫画が描かれていた時間誰かがこの家から出て行くのを見たと言ってます。
(芹沢)女性だったそうです。
(伊丹)顔までは見えなかったと言ってますがこの家で女性といえばお二人だ。
外に出る事が出来たのは…。
私です。
おっしゃるとおり先生が仕事をしている間にこっそり抜け出しました。
(伊丹)それじゃ詳しい話は警察で。
咲良は子供の頃からおとなしくてあまり友達もいない子でした。
「だから私が漫画の描き方を教えたんです」
(ますみの声)咲良はすぐに夢中になって…。
描いて描いて!ちょっとわかったわかった…。
(ますみの声)高校生になっても漫画ばかり描いていました。
(ますみの声)私は咲良に自信を持ってほしくて勝手に新人賞に応募したんです。
お姉ちゃーん!
(ますみの声)咲良の漫画は賞をとってすぐにデビューが決まりました。
(2人の歓声)
(ますみ)「でも上京して…」『彼方の星』の連載が始まってから咲良の人生は変わりました。
(ますみ)ほとんど家から出ずに描き続けたんです。
漫画が売れている実感も自分が有名になっているという実感もなかったと思います。
(ますみ)5年前原田さんが現れました。
咲良はファンだと言ってくれた原田さんを信頼したんです。
でも原田さんは…儲ける事しか考えてなかった。
今回咲良が最終回を描きたいと言った時も…。
悲劇の漫画家だから商品価値がある復活したら意味がないって言ったそうです。
許せなかった。
原田さんを漫画どおりに殺したのは私です。
やっぱり予言ではなかったようですね。
(伊丹)なんですか?あ?あ…?ああっやっぱりもう!
(芹沢)出た。
1つだけ。
本当に1つだけ。
すみませんがこの紙いっぱいに円を描いて頂けませんか?
(ますみ)え…?円ですか?ええ。
お願いします。
そういう事でしたか。
(ますみ)え…?なるほど。
どうもありがとう。
あっ…。
ちょちょちょちょ…ちょっ…おっ!どの出版社もあなたの次回作をとりたいようですねぇ。
復活を発表した時にはどうせ失敗するだろうという声もあったようですが殺人の予言という奇跡によって見事に復活を果たしました。
お話というのはなんでしょう?こちらへ来て頂けますか?テーブルのところでちょっとこれを見て頂けますか?そうなんですよ。
じゅうたん邪魔ですよねぇ。
車椅子の生活の方は車椅子のままテーブルを使います。
いちいち椅子に座り直していたら一苦労ですからねぇ。
ところがあなたがお使いになっているテーブルの下にはじゅうたんが敷かれている。
ええその邪魔なじゅうたんが。
なぜでしょう?咲良さんの足は治ってるって事ですね?そのようですねぇ。
それなら現場に行って犯行を行う事も可能です。
私はずっと漫画を描いていました。
抜け出して原田さんを殺す時間はなかった。
これは昨日あなたに頂いたサインのコピーです。
事故の前のあなたのサインはこの口偏のところが丸でしたねぇ。
なぜサインを変えたのでしょう?心機一転のためです。
そうでしょうかねぇ。
かの手塚治虫さんはフリーハンドで真円が描けたそうです。
ですが晩年それが描けなくなってしまい衰えを感じたと。
あなたも同じではありませんかねぇ?リハビリで回復はしたものの以前と同じように手が使えるわけではない。
あなたはそれがバレないようにサインを変え人前に出なくても済むように足の回復を隠し車椅子をお使いになってる。
アシスタントを使わずに全て1人で描く事が人気の理由の一つならその手が回復してない事は大問題ですね。
最終回はどうやって描かれたのか?ますみさんに描いて頂きました。
最終回はお姉さんが手伝った。
恐らくデビュー当時もそうだったんじゃありませんかねぇ。
そう考えればその頃の絵に戻っている事も説明がつきます。
漫画の一部をますみさんが描いていたのだとすればあなたには外出する時間があったはずです。
つまり犯行が可能だった事になります。
漫画と同じシチュエーションで事件を起こせるのは妹しかいない。
ますみさんはそう考えてあなたをかばうために嘘の供述をしたんじゃありませんかね。
全ておっしゃるとおりだとしても私が原田さんを殺したという証明にはなりませんよね。
おっしゃるとおり。
ではお帰りください。
最後に1つだけ。
ドイツ人の建築家ミース・ファン・デル・ローエは「神は細部に宿る」という言葉を好んで使っていたそうです。
「神は細部に宿る」。
この言葉を聞いてあなたはどう思われますか?「神は細部に宿る」…。
そう信じて漫画を描いてます。
そうですか。
さっさと帰って!
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(記者)箱崎さん今回の事件は予言されていたのでしょうか?あんな予言騒ぎがなくても私の漫画はちゃんと評価を受けていたはずです。
(記者)今回の事件でお姉さんが警察に事情を聞かれたという情報ですが?姉は無実です。
それは断言出来ます。
(記者)お姉様を信じてるんですね。
いえ姉が犯人ではないと知ってるんです。
(記者)どういう意味ですか?犯人をご存じなのですか?
(カメラのシャッター音)
(記者)もしくは…。
もしくは…?「私が犯人だとでも?」「どう解釈して頂こうと構いません」どう考えても彼女が犯人でしょう。
そんな…!だとすると1つわからない事が出てきます。
彼女は「神は細部に宿る」という言葉を信じて漫画を描いていると言っていました。
…にもかかわらずこの2つは決して同じではありません。
死体の指先に血がついてませんね。
ええ。
犯人はなぜこの血を再現しなかったのでしょう?待ってください。
聞き逃しませんよ。
はい?今犯人が漫画を再現したという主旨の発言しましたよね?右京さんは予言であるという考えを捨てたわけですね。
いいえ。
視点をちょっと変えてみただけですよ。
負けず嫌いですね。
でも確かにこの漫画を手本にした場合細部まで似せようとしますね。
手本…手本…。
そうそれかもしれません。
咲良さんは3年前この階段から落ちた。
倒れていたのはこの辺りですね。
こっからここまで血がついてなかった。
B4サイズですね。
やはり3年前に最終回は存在したんですよ。
咲良さんは事故があった日その原稿を持っていた。
そしてぶつかった犯人がその原稿を持ち去った。
これで容疑者は広がってしまいましたね。
原稿を描いた本人の咲良さんとここで咲良さんとぶつかった誰か。
他にもこの3年で原稿を見た人間がいたらみんな容疑者です。
特定のしようがない。
そもそも最終回が奇跡になったのには理由がありましたねぇ。
起こった事件と漫画が同じだったから。
ええ。
正確にはネットに出回った現場写真と漫画が同じだったから…ですね。
なるほど。
(木下)この箱崎先生のメールどういう意味なんだ?「警察やマスコミから犯人扱いをされています」「私の無実を証明できるものを原田社長が持っていたはず」
(里香)探しましょう。
先生が犯人にされちゃ困る!
(2人)はい!
(チャイム)桜岡です。
ますみさん…。
疑いは晴れたんですね。
ええ。
お入りください。
(桜岡)失礼します。
あっ先生…。
我々の事はお構いなく。
…はい。
先生が探していらっしゃるものはこれじゃないかと。
ああそれ…。
3年前に描かれた原稿ですね。
描き終えたけど満足出来なかったんです。
それでどう直したらいいのか教えてほしくてこれを持って神社に行きました。
ちょっとよろしいですか?あっなるほど。
今回の事件の犯人はこの3年前の原稿を手本に事件を起こしたのでしょうね。
だからほら死体の手に血がついていない。
(桜岡)原稿は社長が持っていました。
社長が誰かに見せたとすると先生の疑いは晴れますよね?
(咲良)疑われているとメールをしたのは杉下さんに頼まれたからです。
えっ…?今回の事件でネットに出回った写真のパターンは5枚。
それぞれ別の人物が撮ったものでした。
その中で1枚だけこの漫画のコマと同じアングルの写真がありました。
これです。
そう。
この写真があったからこそ咲良さんの漫画は予言となったんです。
鑑識に優秀な人がいましてね。
写真を投稿したパソコンをIPアドレスたどって突き止めました。
これが投稿されたのはある漫画喫茶のパソコンでした。
防犯カメラの映像を調べれば誰が投稿したかすぐにわかる。
僕じゃありませんよ。
お願いします。
あなたをずっと見張ってたんですよ。
この原稿あんた自分の家に持ってただろう。
事故があった日咲良さんにぶつかった相手は桜岡さんあなたですね?そうです。
僕です。
(桜岡)うわーっ!
(咲良の悲鳴)ああっ…!うっ…!だ…大丈夫ですか?うわあっ!封筒に触ってしまったのでしょうねぇ。
あなたはその場にいた事がバレるとまずいと思いその封筒を持ち去った。
(桜岡)事故の時怖くなって逃げてしまって…。
でもとても言い出せなくてどんな形でもいい先生を助ける事で償いたいと思って原田の会社に入りました。
でも…。
(桜岡の声)原田は箱崎先生のファンでもなんでもなかった。
箱崎咲良であと何年稼げるかね?もう描けないんだから先細りする一方だ。
いいところで別の漫画家に乗り換えるよ。
(桜岡の声)3カ月ほど前原田は本当に箱崎先生を切り捨てると言い出しました。
(桜岡)なんとかそれを止めたくてその原稿を見せたんです。
(桜岡)『彼方の星』の最終回です。
(桜岡の声)原田は先生を丸め込んで出版の許諾をとろうとしました。
描き直します。
もちろん展開もラストも変える気はありません。
でもほんのちょっとした事が今真実ではないって感じるんです。
今さら描いてもらっても困るんですよ。
えっ…?悲劇の漫画家が最後に描いた漫画が発見されるから読者は飛びつくんですよ。
今描かれちゃ台なしだ。
天才漫画家箱崎咲良にはこのまま死んでもらいましょう。
咲良さんはなんとか最終回を描き直したいと思い真山編集長に直接連絡をとった。
原田社長と真山編集長がもめていたのはその件だった。
(桜岡)はい。
原田は先生の手が治ってない事に気づいていて雑誌の発売に合わせて先生の手が治ってない事を公表しその原稿を幻の最終回にするつもりでした。
復活を潰そうとしていたんです。
あなたは咲良さんを原田さんから守り同時に復活を歓迎しない世間の空気を一気に変えるために今回の事件を思いついた。
原稿は私の手元にありました。
それを渡すという約束で原田を呼び出したんです。
(原田)お前目印に黒いジャケットで来いって言っただろ。
(桜岡)足元のそれ拾ってもらえませんか?
(原田)ああ?どういう事だよ?
(桜岡)気がつきませんか?ここは『彼方の星』の最終回の舞台です。
そんな事より早く原稿を渡せよ。
(刺す音)あっ…!
(シャッター音)あなたにとっては3年前の事故の贖罪のつもりかもしれませんがそんなもの単なる自己満足ですよ。
そのために殺人を犯すなどもっての外です。
あなたがやるべきだったのは咲良さんの前に名乗り出て心から詫びる事だったんじゃありませんか。
申し訳ありませんでした。
申し訳ありませんでしたっ!漫画家なのに動かなくなった手を見た時の咲良の気持ちがわかりますか?リハビリをしても思いどおりにならない自分の体が悔しくて咲良がどれだけ泣いたかわかりますか!?本当にすみませんでした。
すいません…すいませんでした!ただ…私感謝してるんです。
感謝…?3年前の事故の時…。
(咲良の声)ここでは死ねない。
まだ描きたいものがある。
もっと…もっともっと…。
そう思いました。
最後のコマを描く前もう一度あの神社に行きました。
(咲良の声)あの時感じた気持ちを確かめるために。
事件の日家を抜け出して…ですね?あの事故があったから今度の最後の場面が描けた。
(咲良)指先の血…。
小さな違いですが私には重要な事です。
「神は細部に宿る」。
ええ。
あなたのおかげでいい最終回が描けました。
これからもっとすごいものを描きます。
ありがとう。
(桜岡の嗚咽)箱崎先生の新作の連載が決定いたしました。
そうですか。
手が治ってない事が世間にバレてしまったのにですか?もはやそんな事は問題ではありません。
箱崎咲良は事故を経て新たな境地に達したのです。
今から新作を読むのが楽しみでなりません。
苦難を乗り越えてこそ輝く…ですか。
僕も箱崎咲良さんの連載を読むのがとても楽しみですねぇ。
今回は本当にありがとうございました。
杉下警部にはぜひ花の里あたりでお礼をさせて頂きたく思う次第でありますが…。
おや。
貸し1ですが…。
ではあなたもついでにどうぞ。
長い付き合いがありますが米沢さんに誘われたのはこれが初めてですねぇ。
行かないんですか?うっ…!行きます行きます。
2カ月前ひなたちゃんは誘拐されあの廃工場に監禁された。
(神田志乃)誘拐なんてありません。
家族みんなで事件を隠してるって事ですかね?
(銃声)我々は1つ大きな勘違いをしていたかもしれません。
2015/12/09(水) 21:00〜21:54
ABCテレビ1
相棒 season 14 #8[字]
「最終回の奇跡」水谷豊×反町隆史
車いすの女流漫画家が殺人を予言!?
最終回を執筆中、そのラストシーンと全く同じ状況で殺人事件が発生!!
右京と亘が予言の謎に迫る!!
詳細情報
◇番組内容
第8話「最終回の奇跡」
大怪我から復帰した人気漫画家・箱崎咲良(玄理)が最終回を執筆中、彼女の著作権を管理する会社社長が刺殺された。殺害現場が咲良の描いた最終回と全く同じ状況だったことから、殺人事件を予言した奇跡として報道される。咲良ファンの米沢(六角精児)に捜査を頼まれた右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は捜査を開始。姉のますみ(原田佳奈)と二人で暮らしている車いすの咲良は、最終回は神様からの啓示で描いたと…
◇出演者
水谷豊、反町隆史
川原和久、山中崇史、山西惇、六角精児
【ゲスト】玄理、原田佳奈
◇スタッフ
【脚本】藤井清美
【監督】池澤辰也
◇音楽
池頼広
◇おしらせ
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【フェイスブック】http://www.facebook.com/AibouNow
【ウェブ】http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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