NHK高校講座 地学基礎「地球の熱収支」 2015.12.09


(関口)144でじゃあ支出のトータルっていうのは…。
あらっ144。
お見事帳尻合っとりますな〜。
(垣内)隊長こんにちは。
ういっす。
よいしょ〜。
んっ?何真剣に計算してるんですか?ひょっとして家計簿?似合わないですね。
こんなとこで家計簿の計算する訳ないじゃないよ〜。
うん?地球の熱の出入りを計算してたの!んっ?地球の熱の出入りって何ですか?地球ってさ入ってくる熱と地球から出てく熱ってのがある訳ですよ。
でそのバランスを計算してたの。
えっ地球に入ってくる熱と出ていく熱のバランスですか?はい。
でそれ計算の結果どうなったんですか?それがねすごいんですよ。
どうすごいんですか?秘密。
え〜!隊長ずるいですよ。
後のお楽しみっちゅう事で。
という事で今日のテーマは「地球の熱収支」です。
地球の熱収支?はい。
早速今日のキーワードいきます?お願いします。
はいおりゃ。
じゃあまずこの「太陽放射」からいってみますかね。
はい。
かっきーは太陽から出てるものっつったら何を思いつきますか?んっ。
それはやっぱりこう…光じゃないですか。
ですわね。
まあ普通そうだよね。
でも太陽が出してんのは光…つまりは目に見える可視光線っていうやつだけじゃなくて目に見えないね例えば赤外線とかの電磁波も出してんのよね。
でその全部を太陽からのエネルギーっちゅう訳ですよ。
それをこの太陽放射というんですな。
なるほど。
でもですよその…実はね地球上のほとんど全てのエネルギーの源っていうのはこの太陽放射な訳ね。
うんうん。
でさっきあんたが言ってた家計簿でいうんだったら入ってくる分いわゆる収入に当たる訳ですねこれは。
収入ですか?じゃあ……どのくらいなんですか?それを知るためにはですね覚えて頂かなきゃいけないキーワードがございます。
何でしょう?これ…「太陽定数」?そう。
太陽定数というのはこれこれ。
んっ?何ですか?1m×1mでこういう…んっ?隊長ちょっと待って下さい。
え〜っと大気の外とか太陽に向かってまっすぐとかポンポン言われても分かんないです。
駄目?はい。
あっそう。
じゃあ分かったよ。
こっちで説明するわ。
あっまだあるんですか。
あります〜。
用意がいいですね。
はい。
はい。
え〜これが1m1mの紙だと思ってね。
あっさっき出してくれた黒い…。
そうそうそうそう。
でこれをここね大気の外ってここなんだけどここに持ってって太陽光に垂直に当てる訳ですよ。
そん時にこの紙が1秒間に受ける太陽のエネルギー量がこの太陽定数っていう事になるのね。
なるほど。
うん。
でこの太陽定数を人工衛星で測定したところ1.37kWだっちゅう事が分かったのね。
でこの太陽定数に地球の断面積を…これね掛けると地球が受け取ってる太陽放射の総エネルギー量っちゅうのが分かる訳なんですな。
ん〜。
でそれ計算するとどのくらいなんですか?え〜大気の外では地球全体に1秒間に届く……っちゅう事になりました。
えっ1.75×10kWはどのくらいの量ですか?分かんないよね。
え〜例えば原子力発電所1基辺りの平均的な発電の量を100万kWだとします。
はい。
するってえと太陽からはなんと原発1億7,500万基分でございます。
とんでもない量のエネルギーが届いてる事になる訳ですな。
すごい量ですね。
でしょう。
はい。
でもこの…どういう事ですか?こちらを見て下さいね。
そのすっごい量の太陽放射を100だとするでしょ。
うん。
するってえと20は大気とか雲に吸収されちゃう訳ですね。
更に大気や雲から反射もするじゃない。
それが22。
で地表面からの反射は9なのね。
で合わせて31は宇宙に戻っちゃう訳。
その結果地表面が吸収するのは49。
およそ半分になっちゃうんですね。
えっそんな減っちゃうんですか。
ええ。
お宅の言う家計簿で言いますと100の収入があっても税金とか何だかで天引きされて手取りは49って事ですかね。
は〜厳しいですね。
ただこの手取り半分になっても全く使わなかったらどんどん貯金が増えてく訳だからね。
そうですね。
同様に地表面に届く49のエネルギーは地表が吸収するだけだった日には地球はどんどん熱くなって住めなくなっちゃう訳ですよ。
ですね。
でも実際はそんなに熱くなってないですよね。
うん。
…って事はどうなってるんでしょう。
ためるばっかりじゃなくて使ってるって事ですよね。
うん。
今度は地表面から出てくエネルギーつまり支出についてね考えてみますか。
それがこのキーワードだったのよ。
隊長。
はい。
太陽放射が太陽から出しているエネルギーの事だったから…そういう事です。
んっ。
じゃあその地球放射は火山がこう噴火した時とかに出ていくんですか?いやいやいや…えっいつも出てるんですか?うん。
あんまり実感がないですけど。
そりゃ当然ですわ。
え〜じゃあ本当に出てるのか分からないじゃないですか〜。
それを調べてくんのがあんたの仕事でしょ。
そうでした。
じゃあ私地球放射の赤外線調べてきます。
よろしく。
行ってきます。
よいしょ。
切り替えの早い子だね。
という事で地球が本当に赤外線を出しているのか…でも垣内隊員1人じゃ心細いので助っ人をお願いしちゃいました。
先生お願いします。
(武田)よろしくお願いします。
手伝ってくれるのは…どうやって調べるんですか?このサーモグラフィーで調べたいんですね。
このサーモグラフィーはね表面の温度測定できるんですよ。
サーモグラフィーとはさまざまな物体が出している赤外線を検出して物体の表面の温度を表示してくれる装置。
ちなみに垣内隊員の顔から出ている赤外線を温度に換算すると36.0度でした。
朝5時日の出前。
地表面にはまだ太陽放射が届いていないので地球放射を測定するのにうってつけの時間です。
何度だか分かります?今その表面が。
ブルーの部分が…。
ええ。
1度〜2度ぐらいの範囲ですよね。
今すごくね冷えてるんですね。
えっそうなんだ…。
でもこうやって温度が測れるって事は赤外線が地表から出ている。
ああそういう事か。
こうやって地球の表面から赤外線が昼も夜も出てるという事が分かりますよね。
なるほど。
隊長。
はい。
地球は確かにエネルギーを出していました。
でしょ。
はい。
じゃあ地表面からどのぐらいのエネルギーが出てくのかっちゅうのさっきの図で見てみますか。
はい。
この図の割合で示すと地表面から出てんのは114。
えっだって太陽から地表面には49のエネルギーしか届いてないですよ。
でも地球から114も出てっちゃったらめちゃくちゃ大幅な赤字になってますけど大丈夫ですか?だね。
貯金で言やあマイナスだわね。
うん。
地球はどんどん寒くなってっちゃう訳ですな。
うん。
でも別にどんどん寒くなっていってはないですよね。
そうだね。
一年を平均してみりゃあ地球が生物が住める快適な温度を保ってますわよね。
…っちゅう事は地球の熱収支は赤字でも黒字でもないと。
つりあってるって事だよね。
はっ隊長。
もしかすると隊長が最初に言ってたすごい事ってその……って事ですか?やっと分かった?はっでも…何でですか?それにはカラクリがあるんです。
カラクリ?はい。
それがこのキーワードです。
温室効果って温室のように暖かくなるって事ですか?まあ簡単に言うとそういう事だけどね。
垣内隊員。
はい。
温室はどうしてあんなに暖かいと思いますか?んっそれはビニールか何かで覆われてるからじゃないですか?そのとおりなんですけど実はそれでは答えにはなっていないんですね。
えっ。
あのね。
はい。
温室を覆ってるガラスとかビニールっていうのは透明なのであの…太陽の光を通す訳でしょ。
で中の土暖めるよね。
で暖まった土っていうのはその熱を赤外線という形で実は放出…出している訳なんだよ外に。
ところがこの透明なガラスとかビニールっていうのは赤外線は通しにくいっていう性質がある訳なんですよ。
だから温室の中の熱が逃げにくくて暖かいっちゅう仕組みなんでございますね。
へえ〜温室は暖かいものだって単純に思ってましたけどちゃんとした理由があったんですね。
はい。
でその…実は…んっ?地球の大気がビニールやガラスですか?そうなの。
これ見て。
はい。
え〜っと大気中にある水蒸気とか二酸化炭素とかメタンとかはね地表面から出た赤外線の多くを吸収する訳なの。
しかもねそれを再び地表面に返すっちゅう働きがあるんですね。
ふ〜ん。
こういう作用の事を温室効果っていうんだね。
うん。
この温室効果がさっき言った熱収支のカラクリに当たる訳ですよ。
んっ。
でその…そういう事なんですな。
ふ〜ん。
はいもう一度この図を見て頂きますが…。
ここ地表面に注目して頂きまして熱収支を計算してみます。
じゃあまず地表面から出ていく熱エネルギーですねはい。
で地表面からの放射によって114。
114。
ほんで対流・伝導によって30。
合計は?えっと合わせて144になります。
出ていく熱のエネルギーが144ですね。
うん。
今度は地表面に入ってくる熱エネルギーいきますか。
太陽放射による地表面への吸収これね49。
49。
それに加えまして大気からの放射95があります。
はい。
で大気からの放射は宇宙に向かって放射されるものもあるしそれから地表面に向かって放射されるものもあるんだけど今は地表面の熱収支を考えてる訳だから温室効果によって大気から地表面に戻ってくるエネルギーが95。
だから49と95を足すっちゅう事かな。
いくつ?えっとですね144。
あらっ…ご名答。
びっくり。
入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーこの2つ同じになりましたね。
収支がつりあいました。
そうなんですよ…でその環境が保たれてるのは地球の大気のおかげっていう事ですね。
じゃあですよもし…あのね大変な事になるのよ。
へえ〜。
大気がないっちゅう事は大気からの放射がない訳ですからねっあの…地表面が受け取る熱のエネルギーはガンッと少なくなっちゃう訳だよね。
うん。
という事は地表の温度はどんどん下がってって…じゃあ「地球の大気ありがとう」「温室効果ありがとう」って感じですね。
でも今問題になっちゃってますね。
大気中の二酸化炭素が増えちゃってさ。
うんうん。
温室効果が大きくなってきちゃって。
地球の平均気温は逆に高くなっちゃうんじゃないかって考えられてる訳ですからね。
そうですよね。
まあ地球ってうまくできてるというかすごくデリケートなんですね。
そうだよね。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
いやいやあの…地球放射って夜どんどん寒くなってくのあれ地球放射ですよね?そうですね。
あれの事?ええそれねそれをね利用した写真があるんですよ。
まずねこれは太陽光…太陽放射で撮った写真ですよね。
だから昼間しか写ってない。
で白いのが雲ですよね。
まあ大体30%ぐらい地球がこう反射してますよね。
うん。
でこっちは…。
これ何その…地球放射の方で撮ったのかな?そうそうそうこれ真夜中なんですよ。
真夜中は可視光線では撮れない。
でこれは地球放射の赤外線で撮影した地球全体の写真。
え〜あっ天気予報とかはその地球放射を使って24時間見るみたいな事…。
そうそうだから24時間の雲の動きが分かると。
え〜。
地球放射で撮るとね雲っていうのはあの〜赤外線通さないから実は黒くなるんですよ。
地面が白いんですよ。
だから色白黒逆転してますよね。
あ〜。
あっ地球放射がなかったら天気予報が昼間しか予想がつかない…。
そう夜雲見えないから。
ねえどうなってるか分かんないけども地球放射を使ってこの雲画像を撮ってこれで天気予報ができるというね。
そういう使い方があるんですよね。
なるほど。
ところで地球放射ってあの…地球ってこれだから白夜の所があったり何か太陽が昇んない場所が出てきちゃったりこういうとこ。
あれ同じ収支になるんですっけ?ええ。
一年を通して同じになるんですけど私も南極にいましたが。
いた。
そう。
太陽がずっと2か月間出る時はどんどん…ねっ暖かいですよね結構ね。
で太陽が出てこない1か月半は本当どんどん…冷えましたよ。
マイナス40度近くまで下がっちゃって。
じゃああの…南極だの北極だのが寒いのをその…太陽放射がなくて地球放射ばっかりだからみたいな言い方がつまりできるって事…。
そうですね。
太陽がずっと当たればどんどん暖かくなるし太陽が当たらない時はどんどん寒くなる。
でも一年通してそれは平均すれば…。
一緒?毎年毎年変わらないと。
いや何か意外と複雑な割にはごわさんっていう話だから。
ごわさんの割には複雑な話だから。
まあその地域で見ればそれは差が大きいんですけど地球全体で見れば平均15度というね。
うまくできてますよね。
そうなんですね。
この話がさ不思議な気がさせられるのは何かっていうとさもしさ大気も何もなくてね太陽から熱が地球に当たるじゃん。
うん。
んで今度隠れたらさ全部それが出てったとすりゃあさプラマイゼロですごい分かりがいい訳だよね。
ところがあんな複雑な話なのにさ収支が合っててとかさだってもしさ太陽が当たってない時間にさきれいにあの…きれいになくなるか分かんないでしょ。
単純に言ったって。
残ってるかもしれないじゃん。
どんどん増えてくはずなんだよね。
でもちゃんとバランスが…。
そうだよ。
間にいろんなもの挟まってんのにきれいに…。
不思議ですよね。
どういう帳尻の合い方なんだねこれ…っていうのがさ。
いっくら説明できるようになっても逆に不思議さが増すね。
増しますね。
しかもそのおかげでまあ温暖化とかいろいろありますけど大体15度ぐらいで平均的に保たれてるっていうので私たちが地球で生きていける訳じゃないですか。
そうだよ。
このバランスのすごさはよ〜く我々が知っとかないとあのバランスを我々が壊しちゃう事になっちゃうんだろうね。
そうですね。
だからやっぱりいろいろ気を付けていかないと駄目ですよね。
そうですよ。
うん。
2015/12/09(水) 14:40〜15:00
NHKEテレ1大阪
NHK高校講座 地学基礎「地球の熱収支」[字]

「地球」は私たちにとってかけがえのない存在です。その地球を、「宇宙の中の1つの星」「地球という物体」「地球の歴史」そして「環境」という視点から学んでいきます。

詳細情報
番組内容
地球は太陽から熱(エネルギー)を受け、地球からも熱を出している。太陽からの可視光線などの電磁波を太陽放射、地球から出ていく電磁波を地球放射という。出入りするエネルギーの量は同じで、地球の平均気温は一定に保たれている。大気中の水蒸気や二酸化炭素などは地表面から出る赤外線を吸収し、温室効果をもたらす。この回では地球全体の熱収支を理解しよう。【出演】関口知宏、垣内彩未、【講師】武田康男
出演者
【司会】関口知宏,垣内彩未,【出演】日本教育大学院大学客員教授…武田康男,【語り】市川展丈

ジャンル :
趣味/教育 – 中学生・高校生
趣味/教育 – 大学生・受験
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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