猫のしっぽ カエルの手「漆の里へ〜能登半島〜」 2015.12.09


日本海の荒波が冬を迎えたばかりの能登半島へ打ち寄せる…京都・大原から特急とバスを乗り継いで5時間以上。
日本の昔ながらの暮らしを愛するベニシアさんはいつかこの地を訪れたいと願っていた。
気付けばもう年の瀬が近い。
さまざまな事があった一年の終わりに憧れの地輪島を訪れた。
大原の日曜市では常連のベニシアさん。
輪島の朝市を楽しみにしていた。
その昔物々交換から始まったという伝統の朝市は1,000年以上も前から続いている。
(ベニシア)おはようございます。
おはようございます。
今もなお地元民の台所として栄えるこの市は寒くなるほど活気づく。
食べてみる?ハハハ。
この時期の旬はズワイガニ。
う〜ん…。
めちゃくちゃおいしい。
何かすごい顔してる…。
きれい。
潮の香り漂う輪島の朝市。
港から直送の新鮮な魚介類が並ぶ。
魚たくさんあるね。
はい。
この辺で取ったんですか?全部ここです。
じゃあ魚いっぱい食べてるんじゃないですか?はい。
私はお刺身は大好きです。
こっちで取れた魚はおいしいですよね。
相当うまいさかいね。
違いますよ。
はいありがとう。
これおばあちゃんが作ったものですか?そうです。
へえ〜すごいじゃない。
これ自分で…。
畑に植えてあるんです。
この辺こういうふうに昔からやってるんですか?そうです。
玄関飾っとくと魔よけ。
魔よけ。
そうか。
お米に入れると虫よけにもなるしね。
お米に入れて虫よけになる。
もうちょっと干してからよ。
乾いてから入れたらいいですよ。
ここで昔からやってるんですか?何年ぐらい?20年も30年もたつかね。
ああ20年か30年。
こうして出とれば誰とでもしゃべられるからいいですよ。
そうそうそう。
うん。
ありがとう。
うんありがとね。
どうもね。
ありがとね。
どうもどうもありがとうございました。
漆塗りの器が好きなベニシアさん。
ここ輪島は日本を代表するその産地だ。
昔ながらの間口を構える老舗の輪島塗工房を訪ねた。
すいませんこんにちは。
(大崎)こんにちは。
いらっしゃいませ。
この家の4代目…何かびっくりした。
こんなすごい家初めて見た。
そうですか?う〜ん。
輪島の漆塗り職人の家は独特だ。
間口は狭く細長い土間が奥へと続く。
住まいが手前で奥が仕事場。
あの〜僕のところはご存じのように漆の仕事をしていますからそれで仕事を後ろでやる訳ですね。
その時にほこりとかそういうものをやっぱり気を遣う訳で構造的にこういう細長い造りになってます。
漆を使うものがほこりになったら…。
そうなんです。
奥に仕事場がありますんでご案内しましょう。
見たい。
お願いします。
ざっと100mあるんですね奥まで。
ええ!?玄関から…。
ここからここまで?ずっと一番奥まで100mぐらいある。
100mあるの?はい。
へえ〜それびっくりですね。
そこを毎日行ったり来たりしてるとね結構やっぱり歩いてますよ。
ああここで作ってるの。
そうなんです。
へえ〜。
長い長い廊下の奥にようやく工房があった。
フフフフ。
へえ〜すごい。
ここが下塗りと研ぎをやるスペース。
輪島塗では20回以上も漆を塗り重ねて漆器が出来上がるという。
ここは下地を塗る部屋。
何で輪島は漆がそんなに有名になったんですか?それはねあの〜これなんですよ。
このこれは土なんですけど珪藻土なんです。
これはこの近くの土?これは何?山で見つけます?そうですね。
それをだんごにして焼いて粉末にしてあるんですけどもこれがとっても優れもんでねパウダーがガラスのように硬くって。
それが…。
これが輪島の丈夫さの秘密の兵器なんです。
これが江戸時代に使われるようになって輪島塗っていうのはもう一躍有名になって丈夫だねっていう認められて。
これが今漆に珪藻土を混ぜてる。
ああ〜。
輪島塗の基本は丈夫な実用漆器。
珪藻土を混ぜた漆は乾燥を待ってみたび塗り重ねる。
こちらの作業は布着せと呼ばれるもの。
文字どおり木で作った器に布を着せるように貼り付ける。
接着剤代わりにもなる漆を布になじませて貼る事で木が欠けるのを防ぐ。
毎日使う器を長くもたせるためにしっかりと土台を作る。
これすごいドアですけど何ですか?これは土蔵です。
土蔵?すごい大きい。
温度や湿度を一定に保つ土蔵。
完成品の保存場所としてまた塗りの最終工程の作業場として昔は輪島塗に欠かせない場所だった。
大崎さんは今でも蔵の中での作業にこだわっている。
ハハハ何か秘密の場所な感じします。
そうなんです。
ここはねほこりが絶対許されないそういうスペースなんですけども今日は中塗りという作業ですからそ〜っとここから見る分には大丈夫です。
へえ〜。
じゃああんまり普通の人は見られないんだね。
あれ今何作ってるんでしょう。
あれはねお皿ですよね。
はい。
こういう場所を造って大体漆作ってる人みんなこんな感じでやるんですか?う〜んエアコンが作られて温度湿度が自由にコントロールできるようになったらもう土蔵が必要なくなったんですけどもね。
ただやっぱり僕は漆っていうのは天然の素材ですからエアコンで温度湿度をコントロールするのはよくないと思ってますから壁土を通して温度湿度が伝わるっていう事が大切だなと。
そうか。
なるほど。
仕上げの上塗りには国産の漆を20年30年と寝かせてから使う。
堅ろうさと美しさ両方そろってこその輪島塗。
我が子の晴れ姿を眺めるように目を細める大崎さん夫婦。
ギャラリーにはあらゆる用途の輪島塗の漆器が並ぶ。
こっちはコーヒーとか。
(悦子)そうです。
熱いもの大丈夫?
(悦子)大丈夫です。
熱を外に伝えないから熱くても持てますし口に運ぶ事もできます。
これ酒飲むためのものかな。
そうですね。
微妙にいろんな色があるでしょう?同じ赤でもこんなようなね。
ああちょっと違う。
(大崎)いろんな色があるんですよ。
これ何か形がいいね。
私の主人酒が好きだから。
(大崎)ああ。
何世代にもわたって使われる丈夫な輪島の漆器。
そこには伝統を守り抜くという強い精神が反映されている。
輪島の漆器は隆盛を極めた江戸の時代から各工程を専門の職人が誇りを持って担当してきた。
わんを作るのは木地職人。
手に宿る感覚を頼りに薄く美しく形を整える。
刃を替え角度を変え少しずつ丁寧に代々伝わる伝統の形に近づけていく。
熟練の技で削られたわんは漆塗りの職人へと引き継がれる。
明かりにかざすのは木目の隙間からキラキラと漏れる光で精密な薄さを確認するため。
そこに輪島の漆を塗り込む事で表と裏から漆が固まりしっかりとした土台となる。
木地作りから下地塗り上塗りまで100を超える工程を経て完成までには1年以上の月日を要する。
そうして出来た漆器は一生物。
飾り物ではなく毎日使う物。
輪島の食卓に漆の器は欠かせない。
旅先でもなるべく畳で眠りたいというベニシアさん。
この日の宿を求めて輪島の隣町へやって来た。
能登半島の真ん中に位置する…何か木も竹も家も全部大きいような感じ。
これもすごい何か大きな蔵。
静かな田舎町。
ここで地元農家が民宿を営んでいると聞きベニシアさん興味を持った。
ごめんくださ〜い。

(さがの)は〜い。
すいません。
ベニシアです。
(さがの)あっこんにちは。
初めまして。
初めまして。
ようこそいらっしゃいました。
迎えてくれたのはこの宿を営む山本さん夫婦。
私も古い家に住んでるけどこっちいいですね。
囲炉裏もありますね。
どうぞどうぞ。
昔はずっとガスとかないからこればっかりで生活しとったみたいなもんですから。
でもいいですね。
(さがの)はい。
フフフ。
ここの家がどのぐらい古いですか?130年ぐらい。
何かびっくりしたのはこの辺の家は結構大きさが大原よりももっと大きい家が多い。
そうやね平均大きいわね…。
昔はほれ何て言うかな…。
(不二哉)冠婚葬祭。
冠婚葬祭自分のうちで全部やったから。
私も嫁に来た時ここのうち来たんです。
式場とかそんなとこじゃなくってすぐここへ来たもんで。
全体の感じがだから広いっていう感じやね。
(さがの)まあ広いは広いね。
へえ〜。
いや〜何か懐かしいっていうか私が「懐かしい」言うたらみんな笑うけどね。
日本で生まれてないけど。
まあでもすごく来る人喜ぶと思うのね。
何かこういう事なかなかないですね。
ここは山本さん夫婦が生活している家そのもの。
便利や娯楽とは無縁の昔ながらの田舎の暮らし。
そんな素朴な時間を求めて全国からお客さんがやって来る。
かつて林業で栄えたこの地で山本さん夫婦が民宿を始めたのは地域の過疎高齢化がきっかけだったという。
地元の有志の発案で村おこしに参加した。
周辺には同じような農家民宿が30件ほどある。
週末の朝早く恒例のおはぎ作り。
地元の直売所へ卸すためのものだ。
10年ほど前に出来たこの店も村おこしの一環。
おはようございま〜す。
当日収穫したばかりの新鮮な野菜や天然のキノコなど山の幸が並ぶ。
ほかには自宅の台所で作った田舎料理なども持ち寄ってみんなで交代で店番をしながら運営している。
ほんなら今日お願いしま〜す。
(不二哉)お願いします。
自然豊かなふるさとを無くさないように慣れない民宿運営も地域の仲間で助け合いながら今日までやってきた。
ご近所へお裾分け。
こんにちは。
何しとる?今。
(藤田)小豆の皮むしり。
へえ〜。
いっぱいあったっけ?今年。
(藤田)そうやねまあいつもほどやね。
(さがの)ああホント。
こんにゃく少し持ってきたし食べて。
いつもありがとね。
(さがの)いえいえ。
入って。
2件隣の藤田さんも農家民宿を営む仲間だ。
5年前に民宿を始めた藤田さんは山本さん夫婦の1年先輩。
たあいのない事もお茶を飲みながら語り合う仲。
行ったり来たりしとったさかい野菜や一品のうても山本さんとこへもらいに行ったり借りに行ったり。
こんにゃくはちょくちょくね私らのところお客が来る時藤田さんたちも大抵来とるさけえほんならあんた煮物にしてあげてとかっちゅって。
でもやっぱり若い子どもが来たらにぎやかだしこの間おはぎ作ったら軟らかいとか気持ちいいとかっちゅって触って食べにかかったら今度は普通私らは「ああおいしいわ」ぐらいに済むけど若い子らは「超おいしい」とかっちゅって。
面白いし楽しみだわ。
う〜ん。
やっぱり作ったもんみんな食べてくれたらうれしいわ。
(藤田)そうやね。
ねえ。
人生の後半で始まった出会いに満ちた新しい仕事をこの地の人たちは大切にしている。
お客さんと一緒に畑へ出るのも楽しみの一つ。
私も今年ね初めてダイコン作ってる。
あっホント。
大体ハーブが多いからお野菜ちょっとやりたいなと…。
ダイコンいいのなった?まだ小さいけどこのぐらい。
ここからそっちが私の畑。
あっちがタマネギで次がキャベツで。
冬野菜がたくさん育つ畑夕食に使う食材を収穫する。
(さがの)これが豆なんです。
これが白豆。
白豆?ええ。
これ。
今は取ってんの明日呉汁っていうかおみそ汁に…。
入れてんの?入れて食べる。
入れてっていうかすり潰してね。
ああそう。
何で潰すの?食べやすいしよりおいしいの。
うまみが出てね。
食べていい?どうぞいいですよ。
うんおいしい。
(さがの)フフフフ。
よっ!2〜3本取っていかにゃね。
呉汁という郷土料理のために地元で白豆と呼ばれる大豆を収穫する。
ハハハハハ!はいありがとう。
おばあちゃんはここで結婚して来た時から野菜を作った?それでその前にも来る前にも大体…。
来る前におばあちゃんたち畑作っとった。
ここへ来てからほれおばあちゃんに習うたり手伝いしてるうちに覚えて結局何て言うか作る楽しみを覚えて来年もこうしようとか今年はこうしてみようかなとかっていろいろね。
おじいちゃん何作ってんの?ああ〜。
これおみこしさん。
おみこしさん?子どものおもちゃや。
お祭りに担ぐ。
ああ〜。
へえ〜。
へえ〜。
(さがの)おみこしよ。
おみこし。
昔おもちゃは大体自分で作ったんやね。
(不二哉)手作りやね。
ねえ。
収穫したカボチャが転がる庭に見慣れないものが。
これ不思議ですね。
これ何ですか?おじいちゃん。
これ何?分からない。
こんにゃく芋。
こんにゃく芋?へえ〜。
これ今年そこから出た…。
へえ〜。
こんなふうにしてここが…。
へえ〜。
(さがの)これは今こんにゃくにすれば出来るけど。
あっこれ食べるの?うん3年生それ。
3年植え替えしないとこんにゃくにはならない。
ええ〜すごいのなあ。
これはこんにゃくにならんからまた来年春になったらまた植える1年生。
それが雪が降らんかったら畑にずっと置いとけば3年間置いておけばいいけどこの辺は雪が降るから一回一回掘らんとこんな小さいのは腐ってしまう。
ええ〜でもすごいね。
初めて見た。
芋から作る自家製こんにゃくはこの宿の看板メニュー。
むいてもらえるけ。
はい。
完全にむいてしもうたらこうして1cmぐらいの幅にさいの目に切るの。
何かピンクの色になってる。
うん薄いピンク色になる。
ミキサーにかけピンク色になったこんにゃく芋を4倍の量の水に入れストーブの火にかける。
鍋を最初置いて…。
今入れると色が変わる…。
色変わる…。
少しかき混ぜたら凝固剤の炭酸ソーダを加える。
(さがの)ほら変わってきたやろ。
へえ〜。
だんだん固まる…。
少しずつ固まってきたのが分かるやろう?私の孫が大好きよ。
(さがの)ホントけえ。
ジョー君。
これ大体何分ぐらい…。
大体ね少なくても30分ぐらいは。
30分ぐらい。
最後はトレーに移して固まるまで1晩寝かせる。
何かあのさっきの芋からこうなってるのちょっとびっくりするよね。
はい出来上がり。
わあすごい。
ありがとうございました。
え〜おじいちゃんすごい。
手作りこんにゃく。
食べるのが楽しみ。
囲炉裏では川で釣ったヤマメを焼く。
収穫した白豆をすり潰してみそ汁に加え呉汁を作る。
(さがの)ほら噴いてきた噴いてきた。
大豆がふわふわになってきたら食べ頃だ。
ポタージュのように滑らかな舌触り。
ありがとう。
はいどうぞお待ちどおさま。
50年以上この家で使われている輪島塗のお膳に夕食が整った。
(さがの)どれでも好きなものみんな食べてみて。
刺身…初めての手作り。
こんにゃくの刺身。
おじいちゃんおいしい!う〜ん。
すごくおいしいこれ。
軟らかいよね。
これ食べたらいつも売ってるもの食べられへん。
すごいおいしい。
やっぱり最初作った時1回や2回ちょっとこんな完全なもんにならん時あった。
そのうちにみんな誰が食べても「おいしいね」って言われるさかいよかったなと…。
ホントにすごいおいしい。
この米も自分の米ですね。
米も自分やしこんにゃくも自分やし魚は息子が川から釣ってきてくれるし。
あっそう。
ほいでこの呉汁のお豆も自分で作っとるし。
大体ほとんど自分で作ったようなもんばっかり。
ああこれもおいしいよね。
(さがの)ホントありがとう。
おじいちゃんとおばあちゃんが普通の事やってるんですけどでもやっぱり勉強になったよね。
ここはちょっと家庭的な感じですからすごく温かい気持ちを感じてここ囲炉裏があるのやっぱりなかなか民宿で囲炉裏があるのこのごろないのね。
でも今何か自分の生き方がちょっと何て言うの早くなって便利になったけどいろんなもの失っているっていう。
(さがの)そうそうそう。
こういう所来たらちょっと泊まったらそうかこういうふうにすればいいっていう何か考えると思うからね。
特に若い人ね。
そういうふうになったらいいのにな…。
手間ひまかけた料理と心温かなもてなし。
ベニシアさんにとって理想の宿。
輪島塗は数え切れないほど多くの工程を経て初めて完成する。
こんにゃくは芋が育つまで3年の間待たなければ作る事ができない。
そうして時間をかける事こそが人生を豊かにする美徳なのだとベニシアさんは改めて思う。
2015/12/09(水) 12:25〜12:55
NHKEテレ1大阪
猫のしっぽ カエルの手「漆の里へ〜能登半島〜」[字][再]

ベニシアさん、石川県能登半島を訪ねる。輪島の朝市で元気なおばあちゃんとの会話を楽しみ、輪島塗の工房を見学。老夫婦が営む農家民宿を訪れ、いろりを囲み郷土料理に舌鼓

詳細情報
番組内容
ベニシアさん、日本の古き伝統と景観が残る石川県能登半島を訪ねる。有名な輪島の朝市では、新鮮な魚やカニ、地の野菜を手に取り、売り子のおばあちゃんたちとの会話を楽しむ。輪島塗の工房を訪ね、100以上の工程を経て作り上げられる輪島塗の伝統の技に感銘を受ける。日本の原風景が広がる能登町に山本さん夫婦が営む農家民宿を訪ねる。手作りのコンニャク作りに挑戦、夜はいろりを囲み、山本さんの作った郷土料理に舌鼓を打つ
出演者
【出演】ベニシア・スタンリー・スミス,【語り】山崎樹範

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
趣味/教育 – 園芸・ペット・手芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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