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東京電力福島第一原発事故がもたらす健康影響。肝心の被曝(ひばく)との関連はどこまで解明できるのか。

 

■《甲状腺がん》 推定に悪戦苦闘

 原発事故当時、18歳以下だった約38万人を対象に福島県が実施する甲状腺検査。これまで計115人で甲状腺がんが確定した。

 県検討委員会は「現時点で放射線の影響とは考えにくい」とする。だが、一人ひとりにどの程度の甲状腺への被曝があったか、実はわからない。密接に関係する放射性ヨウ素の半減期は8日。事故直後に測らなくてはならないが、データが決定的に不足している。

 国の対策本部は2011年3月下旬、飯舘村と川俣町、いわき市で1千人余りの子どもを対象に甲状腺被曝の簡易測定をした。1080人分のデータから甲状腺がんのリスクが明らかに増える100ミリシーベルト超はなかったと判断する根拠になっている。だが精度が低く、当時の国の原子力安全委員会は「個人の健康影響やリスクを評価することは適切でない」とした。

 また、簡易測定後の追跡調査については「本人や家族、地域社会に不安を与えるおそれがある」などの理由を付けて見送られたことが明らかになっている。

 これ以外では、翌4月に浪江町と南相馬市の住民62人を対象に独自に調査した弘前大のデータなどがあるくらいだ。

 事故から5年近くになる今も被曝量の推定について悪戦苦闘が続いている。