クローズアップ現代「家族の名字どう考えますか?〜“夫婦別姓”のゆくえ〜」 2015.12.08


90年代に大ヒットした結婚式の定番ソング。
♪〜結婚したら、名字が変わる。
明治以来続くこの制度についてまもなく重大な判断が示されます。
最高裁判所の大法廷。
夫婦別姓を求める訴えに対し来週、判決を言い渡します。

少子化が進む今一人娘の結婚で名字を継ぐ人がいなくなり墓じまいを考えている女性。
今の制度に、疑問を感じています。

両親の離婚を経験した女性は同じ名字を持つことが家族の一体感につながると考えています。

夫婦や家族にとって名字って、何なんでしょう?今夜は、一緒に考えてみませんか?
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
名前は人格の重要な一部で個人の尊厳に関わるとされています。
民法の規定では婚姻に際し、夫か妻の姓を名乗るとしていまして現状では、夫婦の96%が夫の姓を名乗っています。
嫁ぐと女性は相手方の家の一員となってその家のために尽くすという考えが明治以降長らく続き昭和22年の憲法施行後家制度が廃止されたあとも女性がいわゆる嫁に行くという慣習が根強く残りました。
今、共働きが当たり前になり結婚前にキャリアを積んだ女性が結婚後に名字を変えることで不利益を被ると感じるケースが少なくありません。
また少子化で一人っ子どうしの結婚も珍しくなくなりました。
こうした中、夫婦は同じ名字同姓という制度を維持するのか。
それとも夫婦が別々の名字を選択できる選択的夫婦別姓に変えるべきか。
来週言い渡される、最高裁判所の判断が注目されています。
先月、NHKが行った選択的夫婦別姓に関する世論調査では夫婦は同じ名字を名乗るべきだと答えた人が50%同じ名字か別の名字か選べるようにするべきだと答えた人が46%で大きく2つに分かれています。
年代別では50代以下は選べるようにするべきだという答えが多い一方で年齢が上がると、同じ名字を名乗るべきだと考える人が多いことが分かりました。
世論調査とは別にインターネットでアンケートを実施したところ家族の絆や親子の関係がバラバラになってしまうなど夫婦別姓を取り入れたら家族の崩壊が進むと不安を感じる声が聞かれました。
一日に600組余りが離婚。
結婚したカップルの4組に1組は再婚という現代。
名字の意味を重く受け止める家族の姿を取材しました。

こんにちは。
よろしくお願いいたします。
大阪府に住む乾紀子さんです。
20歳のときに介護福祉士の資格を取得して以来介護の最前線で働いてきました。
お年寄りからは乾ちゃんと名字で呼ばれ頼りにされていました。
33歳で結婚し夫の名字に変えた乾さん。
職場では、乾の名前でキャリアを積んできたことを大切にしたいと、経営者に旧姓の使用を申し出ました。
しかし…
乾さんと同じような経験をしたという人の声がNHKが行ったアンケートにも数多く寄せられました。

上司の考えで強制的に戸籍姓に変えられた。

社内電話帳から、旧姓が消えたことで、辞めたと誤解され対応が大変だった。

さらに乾さんは名字が原因でプライバシーがさらされてしまう事態にも直面しました。
40歳で離婚し旧姓の乾に戻ったときのこと。
仕事を辞めていたため離婚後すぐに就職活動を始めました。
履歴書は乾、しかし資格の証明書は前の夫の名字のままでした。
変更手続きが間に合わなかったのです。
面接のたびに名字が違う理由を説明しなければなりませんでした。

その後、乾さんは今の夫と出会いました。
これまでの乾さんの経験を聞いた夫は、別姓のままでいようと事実婚を提案しました。
ところが、共同で住宅ローンを組もうとしたとき、金融機関からある条件を示されました。

さらに、所得税の控除が受けられないなど、いくつもの支障があることが分かりました。
悩んだ末、婚姻届を出しました。
夫に自分と同じ思いをさせたくないと夫の名字に変えました。

さらに、アンケートからは少子化で名字を引き継ぐのが難しくなっている現実も見えてきました。

娘が結婚することで家の名がなくなる。
先祖に申し訳ない。

アンケートを寄せた北海道釧路市に暮らす三藤真知子さんです。
江戸時代から代々続く三藤の名字を真知子さんは大切にしてきました。

しかし、一人娘が結婚。
名字が変わり、三藤の名字を引き継ぐ人はいなくなりました。
実は真知子さん自身も三藤家の唯一の跡取りでした。
名字を守るため、夫の薫さんに名字を三藤に変えてもらいました。
男性が名字を変える夫婦はごく僅か。
周囲から、冷ややかな視線を感じることもしばしばでした。

14年前、娘の由加さんが結婚する際、真知子さんは三藤にはこだわらなくていいと伝えました。

名字の違う娘に、仏壇や墓の維持を任せるのは申し訳ない。
真知子さんは墓じまいを考えています。

結婚後も夫婦が希望すれば別々の名字のままでいられる選択的夫婦別姓。
19年前法務省の審議会は、夫婦別姓を選ぶことができるようにする民法の改正案を法務大臣に答申しました。
しかし、国会議員の中に家族の絆が弱まるなどの反対意見があり改正は実現しませんでした。
国連の女子差別撤廃委員会からは是正を求められています。
別姓を認めない日本の制度を差別的だと批判しています。
委員長を務める弁護士の林陽子さんは、日本は対応を急ぐべきだと指摘します。

一方、たとえ選択的であっても制度が変わるとさまざまな混乱が起こるという考えがあります。
憲法学者の高乗正臣さんです。
例えば、夫婦別姓が選べるようになると、子どもの名字をどちらにするかという問題が生じます。
親子の間で名字が異なることで家族の絆が弱まってしまうというのです。
さらにすでに結婚している夫婦でも。

えー?
法務省の審議会では制度が変わって1年以内なら旧姓に戻せるという案が示されています。

家族の名字はどうあるべきか。
この問題を考える中で家族とは何か見つめ直した夫婦もいます。
札幌市に住む上田さん夫妻です。
大学時代に法律を勉強していた夫の貴鋭さん。
夫婦別姓について学び今の制度に疑問を感じていました。
結婚するとき、名字をどうするか妻のゆかりさんに尋ねました。

しかし、ゆかりさんは夫の名字である上田になりたいと答えました。
両親の離婚を経験していたため夫婦が同じ名字であることを強く望んでいたのです。

その後、名字について考えることはなかったという上田さん夫妻。
高校生と中学生、2人の子どもはどう考えているのか。
上田さんに聞いてもらいました。

互いを大切に思いながらも名字への考え方はそれぞれ異なっていました。

今夜のゲストは、30年以上にわたって、全国で結婚支援に当たり、変わりゆく家族観、そして、結婚観を見つめてこられました板本洋子さん、そして最高裁判所の判決について、判断につきまして取材に当たっています、社会部の中島記者と共にお伝えしてまいります。
板本さん、それぞれの方の抱える問題、思いは複雑なんですけれども、世論調査で見ても、この問題についての意見は真っ二つに割れている。
どのように捉えていらっしゃいますか?
真っ二つに分かれるだろうなと。
結局、こっちがいいとか、こっちが悪いとかっていうふうにならないだろうと。
それは名字を変えるというだけじゃなくって、たぶん、その後ろには、家を継ぐ、あるいは地域を守る、あるいは墓場をどうするかという、そういった日本人独特の継ぐという問題、守るという問題が存在しているので、これはもう、年代によって、性別によって、地域によって、時代によって、それぞれの軸で、この問題の捉え方っていうのは違うんではないかっていうことを感じました。
今のリポートで、三藤さん、自分の一人娘が結婚して名前が変わって、先祖には申し訳ないけれども、墓じまいしなければならないのかなとおっしゃっていた。
この名字を巡るこの問題、継ぐ、家を守ると。
どれほど深刻なんですか?
これはもうすでにね、1960年代に、子どもが2人というふうになってきたときから、ずっと続いている問題で、それが最近は少子化で、さらに1人っ子、2人っ子が増えるという中では、もっと深刻になってきてるんですね。
ですから結婚相談所とか、必ずその人が長男であるか、あるいは次男であるか、娘さんだけのきょうだいなのか、こういうことはもう、みんな意識はしていますね。
別に農村に限らず。
ですから、その深刻度っていうのは、もうもらった、お嫁さんをもらったほうは、結婚式でにぎやかにやったけど、手放したほうは、なんかちょっと、ショックが大きいとかね、そういうのが目に見えるなんていう現場もありますし、親が必死になって、本人は恋愛しているんだけれども、止めざるをえないということで、そこらへんで、もやもやしたものが、いつまでも続くことによって、結婚先送りっていう現状もありますので、これは簡単な問題ではないし、ずっと時代の中で続いてきてる問題だって見ています。
つまり今おっしゃったのは、女性の場合は、名前を変えてもいいと思っている、あるいは男性が女性の姓になってもいいと思っているけれども、周りがそれを許さない。
そうですね、まず親が許さない。
でも、親も比較的、若い年代はそうでもないんですけど、祖父母が許さないっていうか、許さないっていうか、祖父母がとても守りに入ってますから、とても気にする。
そういう意味で、家族、一族、親族、それをものすごく気にして、それが地方圏に入ると、周囲まで、それがうわさとして、世間体として及ぶということがあります。
結局、家が崩壊すると、地域が崩壊するだろうという、ものすごい不安感の中から出てるんだと思います。

こちらに選択的夫婦別姓に関する世論調査の結果があるんですけれども、一番、夫婦は同じ名字を名乗るべきだという声が多いのが、70代。
一番それが少ないのが50代。
本当に年代でもさまざまですね。
そうですね、70代は守りに入るし、老後、先が見えてるので、いろんな万端準備したいという思いもあるから、守りの中で言ってると思います。
50代は、もう子育ても終わって、結婚生活20年、30年やってきた経験上、これをラフに考えようとすることもあるんじゃないかと思います。
なるほどね。
中島さん、今のリポートにも、これは国際的に見ると、96%が女性側が姓を変えるというのは、結果として、女性に不利益が及んでるのではないか、差別ではないかという視点があると。
国際的には今、どういう動きになってますか?
そうですね、国によって制度や慣習が違うので、一概には言えないと思うんですけれども、ただ、欧米を中心に、海外の多くの国では、同じ姓を名乗ってもいいし、または別々の姓にする。
またはくっつけて複合姓にしてもいいと、そういったものを選べる国が多いと思います。
日本の政府もですね、夫婦で同じ名字にするように、法律で義務づけている国は、日本以外は把握できていないとしています。
例えばですけれども、例えばドイツなんですが、夫婦のどちらかの名字を選ぶ。
ただ、決まらない場合は、夫の姓にするというルールがあったんですけれども、やはり女性差別だということで、1990年代に見直されました。
またアジアでも、例えばタイは、妻が夫の名字にするということを義務づけていたんですけれども、これも2005年に、法律改正によって見直されているんですね。
こうした背景があるからこそ、国連の女子差別撤廃委員会が、日本に再三、対応を求めているということがあると思います。
ただ、その一方で、国内では、日本の戸籍制度、この戸籍制度は、非常に独特の、世界から見ても独特のものですので、海外の事情と単純に比較すべきではないと、そういう意見があることも事実です。
家族が崩壊するんではないか、絆が弱まるんではないかという意見もあるわけですけれども、そういった中でも、ずっと国会での議論が、なかなか決着を見ない中で、注目されているのが、来週の最高裁判所の判断ということになるわけですよね。
そうですね、今回の裁判、裁判官15人全員でですね、参加して、大法廷で審理しているんですが、これはやはり、憲法判断が必要なときなど、重要な案件に限られるんですね。
仮にではあるんですけれども、今の制度が憲法違反だという判決が出た場合は、これはもう、政府や国会では、民法を改正しなければならない状態になると、そういった方向で議論が進められると思います。
では一方ですね、合憲、憲法に違反しないと判断された場合は、これは憲法上の問題はないという判断だと思います。
ただ、判決とともに、判決理由というものが示されますので、この判決理由の中で、裁判所が国会などに、なんらかの対応を求めるのかどうか、そういった点を注目しないと、この展開は分からないと思います。
難しい問題ですね。
板本さん、今や4組に1組が再婚。
3組に1組離婚ですものね。
というようなその時代の中で、名字と結婚、このことを考えるうえで、この大事な視点、ずっと結婚支援をされてきた、そのまなざしで、どのように今、捉えてらっしゃいますか?
とにかく今、未婚化、晩婚化がすごく大きな問題になっているわけです。
これを阻んでいる壁は何かということを、私たちは考えなきゃいけない。
その一つの中に、社会的に見たときに、名字とか継ぐという問題があれば、それは簡単ではないけど、どういうふうにクリアしていくかということだと思います。
つまり、結婚を一つの王道で捉えない、捉えられない時代が来たっていうふうに、私は踏んでます。
その王道っていうのは、女性が。
女性が96%、名前を変えて、男は嫌だから変えないで、子どもさん2人産んで、一つの家族っていうだけではなくて、事実婚も含めて働き方も変わってきてるので、多様な新しいね、私たちは結婚のオリジナルのそれぞれ、型紙を作るべきではないかというふうに思います。
それぞれがオリジナルの型紙?
一つでははまらないということだと考えます。
ありがとうございました。
板本洋子さん、そして中島記者と共にお伝えしてまいりました。
2015/12/08(火) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「家族の名字どう考えますか?〜“夫婦別姓”のゆくえ〜」[字][再]

夫婦が、どちらかの姓を名乗ることを定めた民法の規定について、12月に最高裁が判断を示す。別姓が良い?いやいや、夫婦は同姓であるべき!名字をめぐる論争の今を取材。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】NPO法人全国地域結婚支援センター代表…板本洋子,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】NPO法人全国地域結婚支援センター代表…板本洋子,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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