藤森かもめ
2015年12月10日10時23分
大阪の玄関口である新大阪駅。そのタクシー乗り場には、客が利用しやすいように、と11年前に近距離専用乗り場が設けられたが、評判はあまり芳しくないという。なぜなのか。今秋の夜、現場を歩いてみた。
同駅のタクシー乗り場は、近距離、小型、中型、ジャンボの4カ所に分かれている。近距離は駅から「概(おおむ)ね3キロ圏内」を指し、地図も掲示されている。「近距離客に対し、乗務員が文句を言ったり、乗車を拒んだりして、苦情が相次いだ」(公益財団法人大阪タクシーセンター)のがきっかけで、2004年4月に区分けされた。
新幹線が到着するたび、近距離乗り場には5~30人ほどの行列ができる。しかし、他の乗り場にはほとんど人影が見えない。
近距離乗り場に並んでいた大阪府吹田市の女性会社員(32)は「向こうの乗り場はガラガラ」と恨めしそう。同市の男性会社員(48)も「急いでいる時こそタクシーに乗るのに。距離で分けず、どれでも乗れるようにした方がいい」。
大阪タクシーセンターに、近距離乗り場の導入前後の苦情件数を問うと、「導入前のデータはない」。ただ、アンケート(14年9~10月実施)では、新大阪駅の近距離乗り場の必要性について739件の回答を得た。「必要」42・3%、「必要ない」15・6%、「知らない」42・1%だった。しかし、10月末に取材した10人中、近距離を歓迎した人は「遠慮なく乗れる」などと答えた2人だけだった。
客の不満の一つは、近距離乗り場が混んでいることだ。同センターの輸送実態調査(14年5月実施)によると、大阪府内の主要鉄道駅の中では、新大阪駅が輸送回数が最多だった。しかし、比率は、近距離乗り場70・2%、小型18・2%、中型11・0%、ジャンボ0・6%と偏っていた。同センターに「近距離乗り場を増やしたら?」と問うと、「乗務員は長距離客を乗せたがる。近距離乗り場を増やしても、並ぶタクシーがいるかどうか」と懐疑的。近距離を利用したがる客と、長距離を望む運転手と、それぞれのニーズの違いは埋まりそうにない。
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朝日新聞社会部
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