2015年12月10日10時42分
「火垂(ほた)るの墓」や「アメリカひじき」などの小説、「四畳半襖(ふすま)の下張」裁判やヒット曲「黒の舟唄」などで知られる黒めがねがトレードマークの作家、野坂昭如(のさか・あきゆき)さんが9日、東京都内の病院で死去した。85歳だった。
神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大文学部仏文科中退。1963年、作詞した「おもちゃのチャチャチャ」が、レコード大賞童謡賞を受賞。67年に、敗戦と占領から日米親善という時代を生きる男の米国に対する屈折した心理を描く「アメリカひじき」と、戦争中栄養失調で亡くなった義妹をモデルに兄の記憶をつづりアニメ化もされた「火垂るの墓」で直木賞を受賞した。
執筆のかたわら、歌手としてデビュー、映画出演やキックボクシングの試合に出場するなど多彩な活動で話題を呼んだ。72年、雑誌「面白半分」の編集長だった時、永井荷風作とされる「四畳半襖の下張」を同誌に掲載、わいせつ文書販売の罪で起訴され、80年に有罪が確定する。
74年に参院選に立候補して落選。83年に参院比例代表区で当選するが、同年に辞職し、田中角栄元首相の新潟3区から総選挙に立候補。金権政治の打破を訴えたが、次点で落選した。
97年に「同心円」で吉川英治文学賞、02年「文壇」とこれまでの業績に対し、泉鏡花賞を受賞。戦争を忘れてはいけないという思いから、「戦争童話集」の作成に取り組んだ。
2003年に脳こうそくで倒れ、リハビリを続けていた。