皇室に何が
皇太子発言の真意は
皇太子様がヨーロッパ歴訪前の記者会見で話された事が大きく報じられた。皇太子様はお后を迎え
られるに当たって随分と苦労された経緯がある。本来であれば国の象徴である天皇家なのだから、
お嫁さん候補がたくさんあっても不思議な事ではない。しかし、現実はまったく異なっていた。幾人もの
女性の名前が候補者として上がりながら、雅子様に決まるまでには長い時間を要した。
天皇家に接近したい人や、その地位や名誉を利用したい人はたくさんいても、いざ自分の娘や孫娘
を皇室に嫁がせるとなると敬遠する人が非常に多いのが現実だ。何故なのだろうか。今回の異例とも
思われるような発言が皇太子様自身から出たことの遠因が、この辺にあるような気がしてならない。
形を変えただけの身分制度
いずれ皇太子様から発言の本意が明らかにされると思われるが、私なりの意見を述べてみたい。
戦後、皇室は国民の象徴として存続することになった。明治政府が出来たとき新政府の拠り所とする
のは明治天皇であり皇室であった。そして、明治維新に功績のあった人やかつての大名は爵位を
得て天皇を頂点とする新たな身分制度を作った。明治維新とは武士だとか平民だとかという身分制度
をなくするための革命だったと思われるのだが、残念ながら日本の場合は形を変えただけのもので
あった。そして、第二次世界大戦で日本が敗れるまでこの制度は続いた。戦前までは国会に貴族院
があった。
戸籍に関する差別
余談になるが、私達の戸籍について少し触れてみたい。私は先日、先祖の事について調べてみよう
と思い、家内や私の戸籍について調査した。各市町村に手紙を書いて戸籍謄本の請求を行った。
しかし、出てきた戸籍は明治維新以降のものだけであって、それ以前に遡ったものはありませんとの
返事だった。明治維新後に新しい戸籍に関する法律が定められ、それ以前のものはすべてを抹消して
しまったと言うことだった。
その目的は、部落民と呼ばれ差別されてきた人達を救済するための措置だった。そのこと自体は
非常に良いことで何ら問題はないのだが、侯爵や子爵や男爵と言われた人達の家系は厳然として
温存され続けてきた。(彼らの戸籍がどうなっているのか調べていないので分からないが)これは
新たなる差別ではなかったのだろうか。一般の国民の戸籍はすべて消されてしまい、自分のルーツを
たどることすら出来なくなっている。一方、爵位を得たような人達は、仮に戸籍は抹消されていても
自分たちのルーツをたどることは出来るようになっていた。
皇室の閉鎖性と逆差別
こうした事が背景にあって、今回の皇太子様の発言に繋がったような気がしてならない。皇室は
過去の経緯から解き放たれて、もっと開かれた存在であるべきではないだろうか。開かれた皇室を
と一方では言われながら、実際はますます閉鎖性を強めているような気がしてならない。
戦後一貫して人は生まれや身分で論ずるべきではないと説きながら、皇室だけは権威という固い
殻に閉じこめておくのは皇族に対する差別ではないのだろうか。もし私が皇族の立場であったとしたら、
とても我慢は出来ないに違いない。もちろん皇室と言うからには、品位を保つための一定の行動
制限は必要かも知れない。しかし、それも限度あっての事だ。
たまたま生まれたところが皇室であったばかりに苦労されているその姿は痛々しくてならない。
ましてや雅子様のように女性外交官として第一線で活躍していた人が、今までとまるで異なる世界
に押し込められたとなると、その思いは悲痛ですらある。皇室を取り囲む一部の人達のエゴのために、
皇室の方々が犠牲になっているような気がしてならない。
人としてこの世に生まれて来たからには、あれもしたいこれもしたいと思うのは当然の事である。
それにも関わらず、皇室に仕える人達の一方的な判断や考えで、皇室の権威を保つことにのみ
目を向け皇族の方々を縛っているような事はないのだろうか。
いずれ、全容の解明は難しくても、いくらかは明らかになるのでしょう。そして、一日も早く雅子様
が健康を回復され、明るい笑顔を見せてくれることを心から願っています。
2004年6月8日掲載
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