「学費も家賃もタダです。お小遣いとして毎月10万円渡します。引っ越し代、渡航費も出します。まじめに勉強すれば大学院卒になれます」。
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あなたのもとに、こんな夢のような留学の誘いが舞いこんだらどうするだろうか。しかもその大学は東京大学より上とされる、あの大学。果たしてどこの大学だろうか。
■ 学費、家賃タダ! しかも東大より上位の大学とは?
東大より上位の大学といえば、ハーバードやスタンフォード、ケンブリッジ大学などが思い浮かぶに違いない。だがその大学は、トップ校が集まる欧米ではなくアジアにある。
羽田空港から直行便で約8時間、赤道直下の国、シンガポールにあるシンガポール国立大学(National University of Singapore、通称NUS)だ。
世界の大学ランキングで有名な英教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションによると、東大は世界で43位。一方でNUSは26位。タイムズと同じく大学ランキングの指標として有名な英国クアクアレリ・シモンズ(QS)でも東大は39位、NUSは12位だ。
東大は昨年まで、タイムズのランキングでアジアトップの23位だった。だが今年はランキングを20位も落とした。その結果NUSは両ランキングで東大を上回り、アジア1位の座を確かなものにしている。
私は昨年、冒頭の条件を示したNUSからの甘い誘いにつられ同校に進学した。合格メールをみた瞬間、「ほんまかいな」とビックリし、「何か裏があるのでは」と疑いの目で慣れない英文を何度も読み返してしまった。同時に、ここまでして生徒を集めるNUSの姿勢を目の当たりにし、「日本の大学は絶対にかなわないな」と痛感した。
文部科学省が火消しに追われた文系廃止、コピペした論文で博士号を得た小保方事件、G(グローバル)型・L(ローカル)型大学など、「日本の教育は本当に大丈夫か?」、「日本の教育だけでグローバル人材になれるのか?」、「いっそのこと、海外の学校に子どもを進学させようか?」と思われる方も多いのではないだろうか。
東大の最大のライバルであるNUSで学んだいま、はっきりといえる。「日本の大学の未来は暗い」と。
今回はハーバードではなくシンガポールでの体験から、日本の大学がアジアの大学にさえも負ける理由を取りあげたい。
■ 資金はどこからやってくるのか
みなさんは「そんな簡単に奨学金をもらえるの?」と疑問に思うだろう。そもそも海外の奨学金は無償の給付型で日本のような借金ではない。確かに多くの大学では一部の人しか奨学金は支給されない。だが、私が学んだNUSのリー・クアンユー公共政策大学院では「留学生の半分が奨学金を受けている」という。
同級生の中には派遣元からの補助、地元の奨学金を受けている生徒もいた。そういった生徒を除いた同級生に限ると、私の課程では多くが同校の奨学金を受けていた。実際に「この学校はとても気前がいいからね」と学校長が語っていたほど余裕がある。
資金はどこからやってくるのだろうか。提供元をたどると海を越えた華僑のネットワークが浮かんでくる。
たとえば私は東南アジア有数の金持ちといわれたシンガポールの李光前の財団から計500万円を受けていた。ルームメイトはアジア1の金持ちともいわれる香港の李嘉誠の財団から。ほかにも台湾の張栄発(海運、航空業を営むエバーグリーン〈長栄〉・グループの創業者)やインドネシア系華僑など、おカネの先をたどると世界でも有名な中華系の富豪があがる。しかも学校側がグローバル規模で生徒を集めようと外部から資金を調達してくるため、奨学金はかなり充実していた。11月にも中国と台湾の首脳会談を仲介するなど、華僑が人口の7割を占めるシンガポールならではのおカネの集め方だ。
在学中に受け取ったのは奨学金だけはない。1週間のインド旅行にもタダで行かせてくれた。
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