人生と実用的なノウハウ
以下の記事を読みました。
MemoFlowyへと合流したふたつの流れについて(MemoFlowy開発チーム誕生の経緯)| 単純作業に心を込めて
著者の方がいかにして「MemoFlowy」の開発に関わることになったのか、というお話が語られています。
この記事には、教訓や実用的なノウハウはありません。「こうすればアプリを作ることができますよ」とか「こうすればWorkFlowyの共有トピックでプロジェクトを進められますよ」という話がしたいわけではありません。
よくよく考えてみると、「人生」に実用的なノウハウはありません。「人生」を構成するパーツに対して適用できるノウハウはあるにせよ、「人生を生きる」ことそのものについてはないのです。
だって、「あなたの人生」は一回きりのものであり、あなた以外の誰も生きないのですから。他人が提供する「ノウハウ」などあり得るはずがありません。それっぽく見えるものは、それっぽく見えるように仕立てられているだけです。
予想内の予想外?
人生は何が起こるかわかりません。
著者の方は、「よし、こういうブログを書いていれば、いずれアプリ開発に関われる」と思ってブログを書いていたわけではないでしょう。予想外の展開だったはずです。結果から逆算して行動を計画していたわけではないのです。
でも、Webという場所に自分の「価値」となりうるものを置き続けた。それが、結果として「予想外」の出来事を起こした。
でもって、そういうことは容易に起こりえます。この時代では、予想外の出来事が起こりやすくなっているのです。それは、これまでの社会と違い、多様なクラスタと接続できる環境がある、というようなことがポイントで、それは次の時代の足音なわけですが、それについてはいつか書く『僕らの生存戦略』という本でまとめるとしましょう。
それまでは以下の本でもご覧ください。きっとヒントはたくさんあります。
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さて、ここには伝達におけるジレンマがあります。
話をわかりやすくしようとすると、ねじ曲がる恐れがあるのです。
「これこれこういうことをしました。だからこうなりました。さあ、あなたもこうしましょう」
わかりやすいノウハウです。でも、ここには「予想外のこと」が織り込まれていません。
しかし、はたしてそれを織り込むことはできるのでしょうか。
「予想外のことが起こりますよ」
というのは、予想内ではないでしょうか。予想内で予想外のことが起こる? いささかざらついた感触があります。
与えるために与える
同じようなジレンマは「GIVE戦略」にもあります。
海と月社
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「自分は受け取ることを考えず、与えて与えて与えまくっている人が、最終的には多くを受け取ることになる」
たしかにその取りかもしれません。じゃあ、とばかりに「成功するためには、与えて与えて与えまくるんだ」と行動に移せばどうなるでしょうか。結局それは一周回って「受け取るために、与えている」ことになるでしょう。つまりそれは、純粋な「GIVE戦略」ではなく、それを装った「TAKE戦略」なのです。強奪者の理論です。
こういうジレンマはなかなかやっかいです。それに、人生を鋳型にはめて息苦しくしてしまうような効果もあります。なぜならば「こうすれば、こうなる」型の思考に支配されていますし、それはつまり「人生は何が起こるかわかりません」型の思考を拒絶しているからです。
「人生は何が起こるかわかりません」型の思考を拒否するということは、「人生は何が起こるかわかっている」ということであり、カメラを引いていけば、自分を全知全能の存在に置いていることとイコールです。おうまいごっど。傲慢極まりありません。
さいごに
話はごくシンプルなのです。さまざまに異なる人生において、共通的に言えることがあるとしたら、それはもうごくシンプルで限られたことになるでしょう。
Webにいろいろ出していけば、それに価値を認める人が出てきて、そこからつながりが生まれる。そのつながりは、(それまでの)人生に揺さぶりをかけ、そんなことが起こるとはまったく思っていなかったようなことが起こる場所に自分を接続してくれる__可能性がある。
文章にすると長くなりましたが、言ってることはシンプルですね。
ここでは何も保証できませんし、具体的なノウハウも提供できません。それは、個々の事例で(つまり一人ひとりの人生において)異なっているからです。
もう一度言いますが、人生は何が起こるかわかりません。言い換えれば、人生は後からしか理解できません。まずはそこがスタートラインになるでしょう。