相続手続きのため、銀行で手続きをなさった経験があられる方はお分かりになられるかと思いますが、戸籍を集めたり、他の相続人のハンコを集めたり、本当に大変です。亡くなられた方が遺言を残してくださっていたら、もらえるもらえないは別にして、手続きはより簡単になるのですが。
大変、大変というか面倒なのは、銀行ごとによって微妙に取り扱いが違うことですね。これは、特に、相続人のお一人から自分の相続分のみの引き落としを請求した場合により顕著になります。
本来は、金銭債権(預貯金債権も金銭債権です。)は、可分債権なので、相続人の一人から、自分の相続分を請求された場合、応じなければなりません。銀行は。郵便局の通常貯金も、原則通り、法律上はこの取扱いになります。
ただ、郵便局の定額郵便貯金だけは別でして、法律により、金銭債権だけども可分債権ではない=相続人全員のハンコ持ってきてねwと言われてしまう場面がある、ということになっています(逆に言うと、もともとは定額郵便貯金であっても、相続人の一人から自分の相続分のみを請求できる場面はあります。)。
今回は、他の銀行と比較して、ちょっと特殊な、郵便局の定額郵便貯金について、ご説明したいと思います。
重要な情報1
これは、司法書士なら、弁護士なら、誰でも知ってるレヴェルの超重要判例なのですが、最判平成22年10月8日民集64巻7号1719頁という判決があり、結論としては、平成19年10月1日より前に預け入れた定額郵便貯金は、金銭債権だけども、可分債権ではない、相続人全員のハンコが必要だ!ということになっています。ここは結論だけ。
重要な情報2
『平成19年10月1日に現に存する郵便貯金は、廃止前の郵便貯金法の規定が適用され、定額郵便貯金は、預入の日から起算して10年が経過したときに、通常貯金となっています(廃止前の郵便貯金法57条1項)。』
通常貯金だから、相続人の一人から、自分の相続分のみの請求ができます。
重要な情報3
『平成19年10月1日より前に預け入れた定額郵便貯金は、預入の日から10年経過で通常貯金となり、さらに10年経過で、いわゆる睡眠貯金となります。睡眠貯金となったら、相続人の一部からの請求はできません。』
法律制定の経緯(法律上は、誰に返して!と言っているのか?)
独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構です。
『定額貯金契約を含めた郵便貯金に関する業務は、平成15年4月、国から日本郵政公社に承継されました。』
『独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構は、平成19年10月1日に郵政民営化法及び独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法が施行されたことにより設立された独立行政法人であり、同年9月30日以前に預け入れられた郵便貯金に関する業務のうち通常郵便貯金を除くものに係る権利義務を日本郵政公社から承継しています。』
『独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構は、同年9月30日以前に預け入れられた定額郵便貯金に関する窓口業務を株式会社ゆうちょ銀行に委託し、株式会社ゆうちょ銀行は、これを日本郵便株式会社(平成24年10月1日統合前の商号は郵便局株式会社でした。)に再委託しています。』
まとめ
平成19年10月1日より前に預け入れた定額郵便貯金、のハナシでした。これを読んでいただくと、他の方の記事も若干読みやすくなるかと思います。『』でくくられている記載は、ちょっと自信ないところです。『』でくくられていない所も、間違いはあるかと思います。ご指摘いただければ助かります。
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