30年継続を宣言したオンラインRPG「ココロア」は2年で休止となりました。すでに休止から1年以上が過ぎていますが、再開は未定のままです。
運営会社は現在、東京から沖縄に移転して県の補助金2000万円以上を使い、スマホアプリを作っています。
この会社に補助金を出して本当に大丈夫なのか、何とかココロアを再開させる方法はないのか、これまでに調べたり試したりしたことを紹介しています。
「ココロア」はガリアレボリューション株式会社が同社のゲームポータルサイト「ゲームハート」で運営するオンラインRPGで、2012年5月23日に正式サービスを開始しました。
開始に先立つ5月11日には公式サイトに、「<重要>エグゼクティブ・ディレクター清水のお願い」と題した文書が掲載されます。その中にあった「私たち運営スタッフは、その辺のくそ運営会社とはまったく違う動きをしようと集まったゲーム運営経験者の集団です。」(原文ママ)という衝撃的な一文は、ゲームファンの間で話題となりました。
「30年継続宣言」や他社を「くそ運営会社」と表現したインパクトもあり、開始当初は大いに賑わったココロアでしたが、次第にプレイヤーが減少し2014年7月31日に休止となりました。再開時期は未定とされています。
ネット上のサービスが終了したり休止したりするのは、やむを得ない場合もありますが、ココロアはサービスの開始に際し30年間運営を継続することを宣言していたため、問題となりました。
現在も「30年継続宣言!」がページタイトルに含まれるココロア公式サイト
30年継続宣言をアピールするYahooウォレットのインタビュー記事
ユーザーが1人になっても30年継続すると答えるゲーム情報サイトのインタビュー記事
ココロアはアイテム課金制のオンラインゲームです。ユーザーはサービスが30年継続されることを前提に課金アイテムを購入しています。無期限の休止となった現在も返金や補償などに関する発表はなく、2014年12月3日に「明確な再開日のご案内が困難な状態が継続しております」というお知らせがあったのが最後となっています。
(2015年10月6日、ポイント返金の案内が発表されました)
また、ある時期(遅くとも2014年12月20日)からは公式サイトにアクセスすると60秒間のウェイトが挿入されるようになり、表示が非常に遅くなりました。これは2015年の2月頃まで続きます。
さらに2015年7月11日、公式サイトに接続できなくなります。7月14日に再び接続できるようになりましたが、それについての説明は何もありませんでした。
そして2015年7月31日には休止から1年となり、「7月31日にてサービスの一時停止をし」という公式サイトの記述に年号を入れないと正確な説明にならなくなりましたが、現在に至るまで修正は行われていません。
2015年10月6日、ゲームハートポイントを返金すること、未だ再開の目途が立たないことが発表されました。
ただ、これは現在保有しているポイントに対する措置です。ゲームハートポイントは、決済手段を経てポータル内の通貨としてストックされている数値です。ココロアではゲーム内でこのポイントを利用し、有料アイテム等を入手できる仕組みになっていました。今回返金されるのは未使用分のポイントだけです。30年継続を前提に、実際にポイントを利用した分については補償されません。
ガリアレボリューションはココロアの運営開始時には東京を拠点としていましたが、現在は沖縄に移転しています。沖縄県は各種産業の振興策が充実しており、沖縄に移転するとそれらを活用して事業を行うことができます。
【インタビュー記事】東京から沖縄、そして世界へ! ~大ヒットゲーム開発を目指して~ ガリアレボリューション株式会社様
このインタビュー記事は一般社団法人 沖縄デジタルコンテンツ産業振興協議会(OADC)のサイトに掲載されているものです。OADCは沖縄県の補助金を活用した事業などを行っている団体で、ガリアレボリューションも会員となっています。
ガリアレボリューションはOADCから、沖縄本社事務所の提供を受けています。また、ガリアレボリューションには2014年度と2015年度にそれぞれ、OADCの「沖縄クリエイティブシティ形成促進事業」を通じて補助金が交付されています。
「沖縄クリエイティブシティ形成促進事業」の財源は、沖縄県の「産業振興基金」です。これは国から110億円の補助を受けて沖縄県が運用し、その収益を用いるもので平成元年に創設されて現在まで続いています。
公的な資金を用いた事業を行うのですから、その企業には高い信頼性や健全性が求められます。現状では「30年継続」の約束を果たせておらず、その後の対応にも問題が多いことから、ガリアレボリューションが補助事業にふさわしい会社といえるか疑問が残ります。信頼に値する会社となるよう働きかける中で、ココロアの再開を求めていくことが出来るのではないかと考え、2つのアクションを起こしました。
2015年7月11日、公式サイトに接続できなくなった際にOADCに対し問い合わせを行いました。ココロアの現状を説明し、ガリアレボリューションが県の予算を投じるにふさわしい企業か疑問である旨を伝えました。
これに対してOADCより回答があり、ガリアレボリューションに確認したところ直接回答したいとのことだったがメールアドレスを教えてよいかと問われました。メールアドレスを伝えることを許諾し、ガリアレボリューションから回答を得ました。
それによれば、ココロアの開発会社である韓国イヤソフトが北米版の準備を優先しており、日本版のアップデートや不具合の修正が滞っているとのことでした。また、サイトが表示されなくなったのは台風による停電のため、とのことでした。
しかし、アップデートや不具合の修正が遅れていることはサービス休止の理由にはなりません。休止までは正常に稼働しており、現状のまま運営を続けることは技術的には可能なはずです。アップデートの遅れによる収益性の悪化や不具合によるサポートの負担増加もガリアレボリューション内部の問題ですから、ユーザーとの約束を違える理由にはなりません。「その辺のくそ運営会社とはまったく違う動きをしようと集まったゲーム運営経験者の集団」であればオンラインゲーム運営のリスクや困難も十分に分かっていたはずです。それなら始めから、30年継続の宣言などするべきではありませんでした。
さらに停電については、ココロアのWebサイトが置かれているインターリンクの障害情報のページに該当するものがありませんでした。沖縄電力の停電情報でも7月11日の午前11時には一部の島を除いて復旧していることを確認しており、7月14日まで障害が続いていた理由にはなりません。
一番の問題は、これらの情報が今に至るまで一切告知されていないことです。再開へ向けた準備の進捗もサイト不具合の理由もユーザーには知らされず、「30年継続宣言」という言葉だけが宙に浮いたままとなっています。
ガリアレボリューションには2度にわたり、沖縄県からの補助金が交付されています。
いずれも沖縄県産業振興基金を財源とし、OADCが会員企業に対して公募を行うものです。ガリアレボリューションもOADCに補助事業の応募を行い、審査の結果採択されています。公的な資金が適切に利用されているのか確認するために、情報の開示請求を行い以下の3点が開示されました。
まず、「第1次沖縄クリエイティブシティ形成促進事業決定のご報告」P3を確認すると、「クローズドコミュニケーションサービス」の開発費用としてガリアレボリューションに1600万円が交付されていることが分かります。これは現在、スマホアプリの「タラッター」として公開されているものです。
「平成26年度産業振興基金事業実績報告書」でタラッターについての報告を見ると、P17にはダウンロード数が8000であったこと、P19には開始2か月で180万円の広告収入があったことなどが記載されており、おおむね順調であるような内容となっています。
しかし、GooglePlayで表示されるタラッターAndroid版のインストール数は2015年10月3日現在、10~50で8000には程遠い数字です。iOS版のアプリストアであるAppStoreでは数字が表示されないため正確には分かりませんが、iOSとAndroidのシェアが同程度であることを考えると、8000という数字は非常に不自然です。
さらに、遅くとも2015年7月24日からはタラッターを起動すると「データ取得エラー」「サーバー接続エラー」と表示されて一切のニュースが取得できず、9月29日までこの状態が続きました(Android版で確認)。また、アプリ内のユーザー投稿も完全に止まった状態であること、各アプリストアのユーザー評価数が極めて少ない(2015年10月3日時点でAppStore9件、GooglePlay4件)ことを考えると、利用者はほとんどいないものと思われます。
普及を図ったものの結果として失敗したのであれば仕方がないかもしれません。しかしタラッターのリリース直後を除いて、Web上にはプロモーション活動の痕跡が全く残っていません。 無料で簡単に宣伝できる自社のツイッターやフェイスブック上ですら、一言の告知も行っていないのです。長期にわたりアップデートも無かった(Android版は3月9日から9月29日まで更新なし、iOS版は2月25日から10月3日時点で更新なし)ことも、公的な資金を1600万円も用いているアプリとして大きな問題があると言わざるをえないでしょう。
「第2次沖縄クリエイティブシティ形成促進事業決定のご報告」P1を見ると、2015年度分として新たに500万円の補助金が交付されています。これはパズルゲームなどのアプリ開発費用として認められたものですが、タラッターとの相乗効果を前提に収益性を説明する内容となっており、現状を考えると実現性に乏しいものとなっています。
また、「第1次沖縄クリエイティブシティ形成促進事業決定のご報告」P28、「第2次沖縄クリエイティブシティ形成促進事業決定のご報告」P18にはそれぞれ、ガリアレボリューションの事業説明が記載されています。同社のゲームポータルサイト「ゲームハート」で運営してきたタイトルを挙げ、実績をアピールする内容です。文中には「ユーザーを回遊・継続利用させる為の企画・運営と分析を得意としております」という記述がありますが、これは「ゲームハート」の現状を見ると、とても事実とは言えません。
「ゲームハート」では2014年に次々とサービスが終了・休止し、2015年10月3日現在、遊ぶことができるゲームは他社が提供・運営する1タイトルだけとなっています。そして終了した各ゲームのWebページを閉鎖した後も、ポータル内のリンクが適切に修正されておらず、デッドリンクだらけ(2015年10月12日時点で20か所を確認)になっています。
トップページから「Hオンライン」へのリンクが不通
トップページの「Site Menu開く」から「Hオンライン」「ダンジョンヒーロー」「エターナルブレイド」へのリンクが不通
ココロア公式ページから「ゼノビアン」「アマガル」へのリンクが不通
戦極姫WEB公式ページから「ダンジョンヒーロー」「エターナルブレイド」へのリンクが不通
お知らせから「注目のお知らせ」全6項目へのリンクが不通
お知らせ2ページ目から「注目のお知らせ」全6項目へのリンクが不通
サービスが提供されなければ、そもそも継続利用することは出来ません。リンクの設定すら行われていないのにユーザーを回遊させることが得意というのは無理があります。
ココロアについても補助金を用いた事業運営についても、ガリアレボリューションには大きな問題があると言わざるをえません。ただ、この取り組みの目的はあくまでも30年継続を約束したココロアの再開です。
ガリアレボリューションには、これまで投じられた2100万円の補助金を無駄にしないよう、タラッターの活性化や面白いアプリの開発に取り組んでいく責務があります。何より、「長く続けていくことを約束することで、安心してゆっくり楽しんでいただきたいと思っています」と言い切ったココロアの再開を果たして、会社としての信頼を取り戻してほしいと願っています。