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<人口激減の足音>市場縮小 業者半減も

開発が続く秋田市内の住宅地。人口減少の局面でも、マイホーム需要は今のところ落ち込んでいない

◎先行県・秋田のいま(2)マイホーム

<建築費が高騰>
 県庁所在地の秋田市で3年以上、分譲用マンションの供給が止まっている。中心市街地に2012年9月に完成した物件が最後。ただ、人口減少が直接の要因ではないとの見方が大勢だ。「事業に取り組む業者がいないだけ」と地元の不動産関係者は言う。
 県外のデベロッパーが撤退し、地元企業は経営方針の変更で開発をやめた。関係者は「年200戸程度の需要は今もある。東日本大震災後の建築費高騰で、造っても一般には手が届かない値付けになってしまう」と背景を解説する。

<一戸建て堅調>
 県経済の先行き不安や止まらぬ地価下落、増え続ける空き家。夢のマイホーム購入に二の足を踏ませる悪材料があふれているが、県内の住宅販売は実は一戸建てを中心に堅調だ。
 県統計によると、10年度以降、県内の住宅着工戸数(貸家など含む)は3500〜4000戸で推移。とくに13年度は消費税が8%に上がる前の駆け込み需要で4300戸超に急増した。15年度は10月までの累計で2501戸と前年同期(2511戸)並みを維持。景気回復の影響もあって需要は底堅い。
 基準地価は住宅地が17年連続、商業地は23年連続で下落。住宅地の平均価格は06年から10年連続で全国最低と悲惨な状況だ。ただそれは手頃な価格で土地を買えることも意味する。「売却するのでなければ地価下落の影響はない。固定資産税が減っていい」と冗談めかした話すら聞かれる。
 若い世代も手が届くとされる土地・建物込みで2500万円以下の物件も出て、人気を呼んでいる。昨今の低金利も住宅購入を後押しする。変動金利で年1%を大きく割り込む水準を提示する金融機関も珍しくない。

<奪い合い激化>
 とはいえ業界の先行きの見通しは暗い。ある住宅会社幹部は「今後5年以内に県内の住宅会社は半減する」と予想する。17年4月に消費税の10%への増税が予定されており、需要の先食いが終わるとパイの奪い合いが一層激化するからだ。
 県南部と秋田市を中心に年間100棟以上を請け負うサンコーホーム(横手市)は売り上げの9割を新築が占める。今後はリフォームやリノベーション(大規模改修)にも力を入れ、10年後には新築との比率を五分五分にまで持っていく経営戦略を描く。
 後藤直生専務は「人口減や高齢化が進む中でマーケットは拡大しない。変化できなければ会社はつぶれる」と厳しい表情で話す。
 年間約30棟を手掛ける住宅会社の幹部は、市場の縮小で数を追い掛ける販売方法は難しいと考えている。自然素材の家造りを前面に、高いデザイン力や木のぬくもりを生かした内外装をアピール。「他の会社がまねできない素材や建て方に特化し、安心して商売が続けられるマーケットを自らつくり出す」と力を込める。
 荒波に備えて、ビジネスモデルを見つめ直すことが求められている。


関連ページ: 秋田 経済

2015年12月09日水曜日

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