12月03日 20時10分
来年3月に開業する北海道新幹線で焦点になっていた新函館北斗と東京の間の所要時間について、JR北海道は、最も速い列車で4時間2分とし、地元から強い要望があった4時間未満の列車の運行を見送ることを正式に発表しました。
JR北海道とJR東日本の発表によりますと、北海道新幹線の開業時のダイヤで新函館北斗と東京の間の所要時間は最も速い列車で4時間2分とし、4時間未満で結ぶ列車の運行は見送ります。
また、新函館北斗と新青森の間は最も速い列車で1時間1分になるとしています。
新函館北斗と東京の間の所要時間は、これまで、およそ4時間とされてきましたが移動に4時間以上かかると鉄道よりも飛行機を選ぶ人が増えるという調査があることなどから、北海道や青森県などは4時間切りを強く要望していました。
しかし、北海道新幹線は、青函トンネルを中心に貨物列車との共用区間があるためほかの新幹線以上に運行が難しいとされ、JR北海道では、安全性を重視し、無理なく定時運行できるダイヤにするため、4時間未満の運行を見送ることにしたものです。
JRは、詳しいダイヤを月内に発表する予定ですが、4時間切りを求めてきた沿線の自治体などの間で波紋を広げることも予想されます。
函館市の30代の女性は「北海道新幹線は速ければ速いほどビジネスや観光に利用する頻度が高くなるとは思う。ただ4時間を切らなくても今よりは東京に気軽に行けるようになるので、利用したい」と話していました。
また、70代の男性は「金額を考えると4時間はかかりすぎだと思うので飛行機を利用する。速くするのが無理であれば安全に運行してほしい」と話していました。
北海道新幹線の所要時間が4時間を切るよう要請してきた函館商工会議所などでつくる新幹線開業対策推進機構の永澤大樹事務局長は、「3時間台の運行を要望してきただけに願いが叶わず残念だ。青函トンネル内で減速せず全区間を時速260キロで走行することで所要時間の短縮を求めているので、引き続き活動を続けたい」と話していました。
また、函館市の工藤寿樹市長は「市としては残念な思いはあるものの、まずは安全性を優先しての決定であると受け止めている。青函トンネルでの高速走行の実現に向けた問題の解決に向けて引き続き要望していきたい」とコメントしています。
【“4時間の壁”
新幹線vs飛行機】
なぜ新函館北斗と東京の間の所要時間が大きな焦点になってきたのか。
背景にあるのが所要時間が4時間を超えると多くの利用客が鉄道ではなく飛行機を選ぶとされる「4時間の壁」と呼ばれる問題です。
JR各社の昨年度のデータによりますと、新幹線で最速2時間59分の東京・新青森間では、79%の人が新幹線を、21%の人が飛行機を選んでいます。
また、最速3時間44分の東京・広島間では、新幹線を選ぶ人の割合は下がりますが、それでも59.6%と、半数以上となっています。
しかし、最速4時間47分と4時間を上回る東京・博多間では新幹線を選ぶ利用者の割合は急激に減り、7.3%と1割を下回ります。
こうしたことから、道や沿線の自治体、それに経済界からは4時間を切ることへの強い要望が上がっていました。
【なぜ見送り?JRの考えは】
自治体や経済界から強い要望があったにもかかわらず4時間未満の運行を見送るのは、「安全性」と「定時運行」を優先させたためです。
JRとしても、出来れば4時間未満の列車を1日1本でも走らせたい意向で、実際、3時間59分といった具体的な検討もされた模様です。
ただ、新幹線は高い安全性を確保するため、気象やレールの状況などに応じて徐行しなければいけません。
北海道新幹線は、貨物列車との共用区間があるため、夜間、レールを整備する時間がほかの新幹線より短いうえ、雪も降るため、一定の頻度で徐行が発生すると見られます。
余裕がないダイヤを組んでしまうと、高い安全性と定時運行という新幹線のブランドに傷をつけかねないと判断したものとみられます。
【4時間未満見送りで今後は】
JRのいまの想定では、北海道新幹線の利用客は1日5000人で、乗車率にして26%ほどです。利用客の増加に向けては、割引切符などの導入はもちろん、特に利便性が高まることになる東北圏に対するビジネス・観光面でのアピールがカギになるとみられ、東京まで3時間台というPRは出来なくなったなかで、今後はJRだけでなく官民あげた利用の促進策がいっそう求められることになりそうです。
新着ニュース